• 検索結果がありません。

描画特徴の「人物像の顔の方向」と共感性(調査研究⑤)

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 76-84)

第5章 描画特徴と共感性

第1節  描画特徴の「人物像の顔の方向」と共感性(調査研究⑤)

壌閤題

 本調査研究⑤では,第3章(調査研究①,②,③)で作成された共感性尺度(以下,

体共感性尺度」と記す)と,描画表現にみられる共感性との関連を検討する。

 本章では描画法の申でも,K:FDとKSDを併せて用いる。また,描画からは多くの 情報が得られるが,本研究(調査研究⑤)では,描画特徴のうち「人物像の顔の方向」

に着目する。

 石川(1986)は,顔は人を代表し,そのまま本人の気分をあらわすと述べている。高 橋・高橋(1991)は,人物画の顔の方向は,被験者自身の自己概念および,他者への親 和・愛情・拒否などの被験者の人問関係への態度をあらわすと述べている。Machoverは,

絵の内容分析においては顔こそ重要部分であり,基本的な性格特徴を示すと述べている

(深田,王gge)。ヨ比(1988,1994)は, KFDや人物描画法における人物の顔面には,

被験者の世界に対する基本姿勢が投影され,その人物像の顔の方向については,正面は 肯定,横顔は半肯定もむくは半否定,背面は否定感情と関連する場合が多いと述べてい る。これらの研究から,KFDとK:SDにおける人物像の顔の方向には,描画者の,そ の描かれた人物に対する感情が表れると考えられる。

 本研究(調査研究⑤)では,人物像の顔の方向が,描画者の人間関係への態度として の,その感情の共感の程度から生じている可能性があるとの臨床的仮説を提起する。そ して,本共感性尺度との関係を調べることにより,仮説を客観的に検証することを試み

る。

2 目的

乱逆感性尺度を用いて,描画特徴の「人物像の顔の方向」と共感性との関連を検討す る。描画については,KFDとKSDとを併せて用いるが,それは,家族と社会(学校)

という異質の場面設定を行うことで,被験者の全体的な心の状態や対人関係が浮き彫り になるとの考えからである。

3 方法

(1)調査謁象者

 A県及びB県内の大学生,短大生,專門学校生,(男子193名,女子273名),B県内 の申高校生(男子184名,女子220名)の計870名を対象に調査した結果を用いた。

(2)調査時期:200◎年4月〜5月であった。

(3)調壷手続き

 (1)の調査対象者に対して,教室において本共感性質問紙の終了後,KFDとKSD を以下の手順で集団面接法により実施した。KFDとKSDの所要時間は約45分であっ

た。用いた湘南感性質問紙を,本論文末尾の,Appendix 3に示す。

1)教示

KF[)についての教示

 「自分も含めて,あなたの家族の人たちが,何かをしているところを描いてください。

マンガや棒のような人物を描いてはいけません。人物全体を描くようにしてください。」

KSDについての教示

 「次にもう1枚の用紙に学校の絵を描いてください。その絵には,自分,自分の先生 を1人,友だちを描くようにしてください。友だちは何人描いてもかまいません。これ についても,マンガや棒のような人物を描いてはいけません。人物全体を描くようにし

てください。」

2)案施方法

 A4稽紙, B又は2Bの鉛筆,消しゴムを使用する。 KFDの描画活動が終了後,描 かれた人物が誰か,人物を描いた順序,人物の行為,自分と「最も共感する人」(最も親

しい人)は誰か,自分と「最も共感しない人」(最も親しくない人)は誰かを,被験者に 用紙の裏に記入させた。「共感する人」「共感しない人」と「親しい人」「親しくない人」

とは同義ではないが,被験者には次のような説明をした。まず,ヂ共感する」とは三人 の体験を自分も問じように感じたり理解することjあるいは「相手の気持ちがわかるこ

と」などと説明したうえで,例えば描画申に描いた人物の中では,「共感する人」は,よ く話しをする人や親しい人などを想定し,「共感しない人」は,話をしない人,親しくな い人などを想定することを例示した。その後,続けてKSDを描くように指示した。 K

SDの描画活動が終了した後, KFDと同じ質問について被験者に用紙の裏に記入させ

た。全体の所要時問は約60分であった。なお,KFDとKSDのシステム法(Kn。ff

&Prout,1985)の実施方法に従い, KFDの終了後引き続いてKSDを実施した。

4 結果

 被験者の各下位尺度得点の平均と標準偏差をTable 5・1・1に示す。さらに, K F Dと KSDにおける人物像の顔の方向(正面,横向き,背面,輪郭のみ)ごとに被験者を分 類し,共感性の各下位尺度得点の平均と標準偏差を求め,1要因4水準の分散分析を行 い,二二な違いのみられた結果を,Table 5・1・2〜Table 5・1・7に示す。なお,顔の方向 のTableごと(Table 5・1・2〜Table 5・1・ 7)の被験数の違いは欠損値の相違による ものである。分析には,描画テスト終了後に書かせた「最も共感する人」と「最も共感 しない人」の顔の方向を用い,以下,それぞれを「親しい相手」「親しくない相手」と記

す。

Table S・・1−1校種別・痴女別の4つの下位尺度得点の平均と標準偏差  男子

中高  大掌

女子 中高  大学

総和 全体          3.02 3.li

肯定感惰共有不金

         (g.79) (OBI)

3D5 3.06

(O.75) (O.79)

3.06

(O.78)

肯定感情共有 3.30 3.66

(O.87) (O.74)

3.72 3.99

(O.69) (O.56)

3.70

(e.75)

否定感情共有 3.◎2    3.肇2

(O.79) (O.77)

3.30 3.32

(O.69> (O.65)

3.21

(O.?3)

         2.9g 2.95

否建感情共有不全

         (O.89) (O.85)

  人数      184  193

2.94 2.95

(e.71) (O.77)

220 273

2.96

(e.so)

87C

注:括弧内は標準偏差(SD>である

 KFDの「親しい相手の顔の方向」について,共感性下位尺度得点に違いがみられる かどうかを分析した結果,肯定感情共有下位尺度得点に有意な違いがみられた(F(3/690)

・・3.89,p〈.◎1)。 LSD法による多重比較を行った結果,「背面」と「横向きj,「背面」

と「正面」との問に有意な違いがみられた(p〈.01)。Table 5・1−2から親しい相手を「背 面jで描いた人は,「横向き」や「正面」に描いた人に比べて,書定感情共有下位尺度得 点が低く,肯定感情を共有しにくいと考えられる。

 また,職向き」と「輪郭のみ」の聞にも有意な違いがみられた(p<.◎5)。Table 5・王・2 から,「横向きjに描いた人は,「輪郭のみ」を描いた人に比べて,欝定感情共有下位尺 度得点が高く,肯定感情を共有しやすいと考えられる。

Table S−1・・2 KFDにおける親しい相手の顔の向きごとの下位尺慶得点の平均と標準偏差 のm   感情共有不全   、tb、 rs       姦: 騨   不    n

     まノリ650りρQ

70り757

0︒α0︒α︵︵︵ノ巳〜﹄弓ΩUウ偏n◎−ゆ9⁝ O

a323

鞭轄

3.64 (O.67)

3.54 (e.86)

3.83 (O.71)

3.75 (O.70)

3.25〈O.65)

3.纏⑩.?8)

3.3g (e.66>

3.24 (e.73>

2.98 (O.70)

2.93 (O.86)

289 (g.87)

2.99 (O.75)

89 101 156 348 注:括弧内は標準偏差くSD)である

 KFDの「親しくない相手の顔の方向」について,共感性下位尺度得点に違いがみら れるかどうかを分析した結果,肯定感情共有下位尺度得点と否定感情共有下位尺度得点

に有意差がみられた(F(3/690)=3.6◎,p〈.◎5, F(3/690)=2。94,p<.05)。 LSD法によ る多重比較を行った結果,肯定感情共有因子では,「輪郭のみ」と「横向き」,「輪郭のみ」

と「正面」との問に有意な違いがみられた(pく.05)。また,「背面」と「横向き」,「背面」

と「正面」との問に有意な違いがみられた(p〈.05)。さらに,否定感情共有因子では,「輪 郭のみ」と「正面」の間に有意な違いがみられた(p〈.◎1)。Table 5−1−3から,親しくな い相手を「輪郭のみ」で描いた人は,「横向きJや「正面」に描いた人に比べて,肯定感 情共有下位尺度得点が低く,肯定感情を共有しにくいと考えられる。また,親しくない 相手を「背面」で描いた人は,「横向き」や「正面jに描いた人に比べて,肯定感情共有 下位尺度得点が低く,肯定感情を共有しにくいと考えられる。さらに,「輪郭のみjと「正 面」との間にも有意な違いがみられた(p〈.01)。Table 5・1・3から,親しくない櫓手の「輪 郭のみ」を描いた人は,「正面」に描いた人に比べて,否定肯定感情共有下位尺度得点が 低く,否定感情の共有をしにくいと考えられる。

Table・5−1−3 KFDにおける親しくない相手の顔の向きごとの下位尺度得点の平均と標準偏差 顔の向き 肯定感情共有不全 肯定感惰共有  否定感情共有 否定感情共有不全  n 輪郭のみ  3.24(0.83)

季琴 醸     3.◎6(0.84)

横向き   3.00(0.76)

iE 薗     3.05〈◎.75)

3.60 (e.76)

3.60 (O.82)

3.81 (O.69)

3.80 (O.70)

3.og 〈g.?7>

3.唾7(αフ8)

3.25 (e.62)

3.3a (O.72)

3.oc (e.7g)

2.96 (O.88)

2.96 〈g.77)

2.94 〈G79)

97 104 163 2フ9 注:括弧内は標準爾差(SB)である

 KSDの「親しい相手の顔の方向」について,共感性下位尺度得点に違いがみられる かどうかを分析した結果,肯定感情共有下位尺度得点と否定感情共有下位尺度得点に膚

意差がみられた(F(3/69◎)謙3.89,〆.◎1,F(3/69◎)=2.91,p〈.05)。 LSD法による多 重比較を行った結果,肯定感情共有因子に関しては,「背面」と「横向き」,「背面」と「正 面」の間に有意な違いがみられ(p〈.01),否定感清共有因子に関しては,「正面」と「背 面」,「正面」と「横向き」に有意な違いがみられた(p<.◎5)。Table 5・1・4から,親しい 相手を「背面」で描いた人は,「横向き」や「正面」に描いた人に比べて,肯定感情共有 下位尺度得点が低く,肯定感情を共有しにくいと考えられる。また,親しい相手を「正 面」に描いた人は,i背面」や横向きゴに描いた人に比べて,否定感情共有下位尺度得 点が高く,否定感情を共有しやすいと考えられる。

Table S−1−4 KSDにおける親しい相手の顔の向きごとの下位尺度得点の平均と標準偏差 顔の向き 欝建感構共祷不全 肯定慈情共有  否定感情共膚 否定感構共有不金  n 輪郭のみ  3.05(O.79)

背 面     3.◎4(0.77)

横向き   3。09(O.79)

正  野蚕     3.◎6(0.75)

3S8 (e.65)

3.54 (O.87)

3.76 (g.70)

3.80 (O.67)

3.19 (O.71)

3.14 (O.76)

3.16 (e.74)

3.32 (e.67)

2.92 (e.74)

2.94 〈O.83)

3.05 (O.77)

2.95 (e.79)

le1 122 166 281 注:摺署内は標準撫育(SD)である

 KSDの「親しくない相手の顔の方向」について,共感性下位尺度得点に違いがみら れるかどうかを分析した。1要因4水準の分散分析を行った結果(Table 5・1・5),ど の下位尺度得点にも有意な違いはみられなかった。

Tab韮e・5−1−5 KSDにおける親しくない相手の顔の向きごとの下位尺度得点の平均と標準偏差 顔の向き 轡定感情藁有箏金 肯定感備共薦  否定感情共膚 否定感情共有不全  n 輪郭のみ  3Dl(O.77)

背 薗     3.04(◎.77)

横陶き  3.11(α79)

正 面     3.07(0.76)

3.72 (O.66)

3.64 (e81)

3.76 (e.70)

3.76 (O.69)

3.21 (O.77)

3.15 (O.74)

3.28 (O.75)

3.23 (O.66)

29g (e.77)

2.95 (O.81)

3.eg (o.so)

299 (O.77)

86 171 153 251 注:揺弧内は標準偏差(SD)である

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 76-84)