描画法にみられる共感性についての研究
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(2) 目次 貰. はじめに. 第1部 共感性尺度の作成. 第1章共感性の概念規定と研究方法 雪−筑りり96. 第1節 本研究における圏的と構成 …・・……………・……・…………・・……………. 第2節 共感性の概念規定と研究方法 ……………………………・・……・………… 第3飾共感性の発達 ……・・…………・・………………・・…・………・……・…………. 第4節 心理療法における共感(カウンセリングと共感) ………………・s……・. 第2節 動的家族画と動的学校画の研究 ・……………・……………………・………. 第3節本研究における動的家族画と動的学校画の位置づけ ………・・………・…. り47﹂◎︾. 第1節 描画テストと描画療法研究の概観 ………・……………………・……・……. ウ漏り乙り4. 第2章描画テストと描画療法. 第3章 共感性の糞証的研究 第1節 共感性の規定因構造(調査研究①) ………………・……………・・…・…・・32. 一青年期の共感性の規定因の探索的検討一 第2節 共感性尺度の構成(調査研究②)………………t……………一・・………・46. 第3節 共感性尺度の信頼性と妥当性の検討(調査研究③)………………・……一54. 第E部 描画法と共感性の関連の検討 第4章 TATにおける親私傾向と描画特徴との関係(調査研究④) 一共感牲の対象についての探索的研究一 第1節 TATにおける親和傾向 ・……………・…・・……………・…………・・……・・62 第2節 共感性の対象を探る ……・・…………・…・………・……・…・……・………・… 64. 第5章 描画特徴と共感性 第1節 描画特徴の「人物像の顔の方向」と共感性(調査醗究⑤)……………… 71 第2節 描画特徴の「包囲」「区分」と共感性(調査研究⑥) ……・……・……・… 79. 第6章臨床場面における共感性 第1節 カウンセラー評定の共感性とクライエントの自己評定の共感性との関違 (調査研究⑦)………………・…・・86. 第2節描画から被験者の共感性を分析する(調査研究⑧〉………………・……tt 91.
(3) 第鐵部 事例的研究と数理統計的研究の相補関係の検討. 第7章臨床描画による事例的検証 第1節 TATにおける親和傾向と描画特徴との関係(事例的検討①)…………1◎2 一共感性の対象を探る事例的研究一. 第2節 描画特徴の;包囲」「区分」と共感性(事例的検討②)………………・一llO 第8章 薦接過程における事例的考察 第1節 非行タイプの学校不適応生の面接過程における共感性(事例的検討③)…119 第2節 摂食障害などの身体症状を訴え続けた大学生の面接過程における共感性 (事例的検討④)………138 第9章 要約および結論 一一全体的考察と今後の課題一 第1節 数理統計的研究から得られた成果について ・…………・……・………………160 第2節 事例的検討から得られた成集について …………・…………………・……・…165 第3節 両研究方法の相補関係 ・…・……………・……・…・………・……・…・………・…167. おわりに 文献……・…………・………………………………・…・…………………・……・…・………・・171 Append i x.
(4) はじめに 我々は,他入の体験を自分もまったく同じように感じたり,理解することを,‘‘共感 (empa£hy)”と呼び,この共感については,これまで心理学の多様な分野での研究テー マとされてきた。‘‘共感”の概念は心理学以前の学問領域から今日の心理学の領域に至り 多義的に用いられてきている。. 著者は,教育相談や学生相談のカウンセリング,学校=ンサルテーションの=ンサル タント,あるいはスクールカウンセラーやスーパーバイザーなどとして,学校不適応の 問題をはじめとした児童生徒や学生の心の問題に関わる申で,共感について次のような. 疑問をもつようになった。一つは,学校場面において教師が子どもに対応するとき,指 導者としての立場と共感者としての立場との対立が,しばしばみられることについてで ある。例えば,学校現場では,問題行動とされる行為をした子ども達に受容的,共感的 に接することを,「甘やかし」と受け止めることが多い。二つには,子ども達がよく訴え. る院生は(親は)全然わかってくれない」という言葉の背景にある,自分の気持ちが わかってくれないという思いである。子ども達の言う「相手が自分の気持ちをわかって くれる」というのは,いったいどういうことなのか。「先生や親が,自分の気持ちをわか ってくれない」と訴える子どもの言葉の背:景に,自分が理解されること,しかも完全に. 理解されることを望んでいる場合が少なくないことは,これまで何度も経験してきた。 このように,日常的に何気なく使われている「共感」は,実際には多面的なものではな いだろうか。こうして著者は,カウンセラーのクライエント理解に共感が役立ち,さら にこのことは,カウンセリングだけでなく,学校場面での学校教師の教育実践において も,共感が重要であることにつながると考えている。. 最近の子ども達や青年は,同情や思いやりの気持ちが希薄になったといわれる。一方,. 学校や家庭で子どもが不適応を示した場合,教師や親はその子の心の理解ができないた め,適切な対応がとれず,さらに子どもを追い詰めたり,事態を悪くしたり,教師や親 自らが自身の中に起こっている感情を捉えることができなかったりすることが生じる。 こうしたことから,子どもの心やパーソナリティの理解,さらには人格形成の援助に, 共感が不可欠であると考えられる。心理治療場面におけるカウンセラS一一一のクライエント. への共感と同時に,対人関係を基本とする学校教師においても,共感は重要であり,ポ ジティブな共感だけではなく,教師が子どもを理解できない体験をどうとらえ直すか, すなわちネガティブな共感をどう扱うかなどについても重要な課題であると考える。.
(5) こうして,治療場面でクライエントに共感できないカウンセラーの,共感性のとらえ 直しについて検討することは,学校場面で子どもに共感できない教師の,共感性のとら え直しについても有用であると考える。臨床場面における治療者の共感や共感的理解お よびクライエントの共感について,さらにその梢互関係について検討し,そこから得ら れた臨床的知見と実証研究による知見をつなぐことを検討したい。それらのためには, まずは共感性の機能や構造について理解する必要がある。このような共感研究への思い が,本論文の出発点となった。. そこで,はじ’めに質問紙を矯いて,数理統計的な調査研究を行い,新たに共感性尺度 の作成を試みたい。次に,この本人の自己報告による質問紙法だけでなく,投影法の一v一一一th. つである描画法にみられる共感性についても検討したい。さらには,著者自身の心理治 療経験や教育実践経験に基づく,事例的な共感研究を行い,両研究法からのアプローチ を試みることで,共感研究を深めたい。二つの研究は,著者の申では次第につながりを もち始めているようにも思える。しかし,それは‘‘共感}’そのもののほんの一部分を検. 証しようとしているにすぎないのではないかと思う。本研究から得られた共感について の知見をもとに,今後も研究を続けることで,共感について,より深い理解に至ること ができるものと考える。.
(6) 第1部 共感性尺度の作成. 第1章々感性の概念規定と研究方法 第1節 本研究の目的と構成 1 本観究の目的 共感の概念は,これまで心理学全般において多義的に用いられてきた。共感には,認 知的側面と感情的側面からの捉え方があり,最近の研究ではそれらを統合して捉える方 向がみられる(HoffmaR,1978,1982;Davis,1994;など)。. これまでの共感性研究は,共感性が重要なテ・…一マであるだけに,幅広く色々な領域で. なされてきているが,ほとんどが各領域ごとに研究されてきた。その中でも,投影法と. 共感性との関係についての検討はほとんど試みられていない。ところで,我々は,教育 相談や学生相談などにおいて,クライエントを理解し状態の改善をはかるために様々な 投影法を用いたカウンセリングを行っている。なかでも描画法は,描画者が気づいてい ない,あるいは需葉で表現しにくい感情や欲求,パーソナリティの理解に有用な方法と されている。学校現場との関わりの深い教育相談では描画法は,隅じ投影法の箱庭療法 などに比べても簡便に実施できるという利点もある。一方,教育相談をはじめとするカ ウンセリングや心理治療において,共感性は,クライエントの自己探索や自己確立につ ながるものとしても,重要な意味を持つとされている。. 本論文では,共感性に注目し,代表的な投影法の一つである描画法の描画表現と共感 性との関係を検討することを鼠的とする。描画法における描画表現というクライエント の無意識やそれに近い部分のメッセージから,クライエントの共感性を読みとることを. 試み,描画者の共感性のありさまが表現されている可能性を検討する試みを行う。意識 水準による質問紙法による尺度では測れない,心の深層部分の表れやすい投影法を用い て,共感性を調べることを試みる。. ところで,共感という複雑な現象を心理学的に研究するとき,それをどのような形で 捉えて測定していくかということは重要であり,そのとらえ方には,大きく二つの立場 がある。一一つはその対象である他者の体験として客観的に捉える立場である。これは,. 一1一.
(7) 人格特性としての共感性をみる場合であり,通常「共感性」と呼ばれるものである。こ の概究は法則定立的な共感研究のあり方となり,数理統計的研究によるものが主となる。 もう一つの立場は,実際の共感を研究者や心理治療者自身の体験として扱うものである。. この研究は数理統計的な研究対象とはなりにくく,個性記述的な共感研究のあり方とな り,事例的研究によるものが主となる。これは一般的な意味での「共感性」ではなく, 内省的な視点から,治療者の体験を通して論じる「共感」ということになる。さらに, この「共感」の中にも,他者とほぼ同時に同質の体験を共有することが基礎となり,体. 験としてとらえられるものと,それをさらに吟味したり内省して初めて得られる,いわ ゆる心理療法に見られるような専門的な共感的理解とが考えられる。. 本論文の研究方法としては,まず数理統計的な調査研究の立場からアプローチし,次 に事例的研究としての立場からアブlra・一一チする。そして,両者の相補的な関連について. も検討する。人格特性としての共感研究から得られた知立は,共感の構造や機能,その 成立基盤などを明らかにするとされている。この知見はもう一方の内省的な共感研究と しての事例的研究を行うにあたって,そこから得られた体験を検討するうえでの準拠の 枠組みを提供することにもなる。. そこでまず,これまでの共感性の構造に関する基礎的研究や臨床的研究および臨床経 験から得られた知晃などを仮説的枠組みとして,共感性尺度を検討する。そして,描画 表現にみられる共感性を客観的に把握するために,描画特徴にみられる共感性を測定す ることのできる,新たな共感性尺度の作成を試みる。さらに,その信頼性や妥当性を検 討し,青年期における性差や発達段階の検討も行う。. 新たに作成された共感性尺度を用いて,描画法の描画表現にみられる共感性に関する. 臨床的仮説を,客観的に検証することを試みる。描画特徴と共感性の関係について,数 理統計的に検討する。さらに,作成された共感性尺度を用いて,面接過程のカウンセラ ーとクライエントの共感性を検討する。実際の描画から描画者の共感性を分析する。こ うして得られたこれらの実証的検討の結果について,実際に描画法を用いたカウンセリ ングや心理治療の事例的研究を通して検証する。. 本論文のはじめにでも述べたように,共感という人間関係における親密さの一つの側 面は,青年期の生活感情の重要なテ…一一一マととらえられている。最近では人間関係が希薄. で,対人関係のとり方の苦手な若者が増えている。今後は臼常的な対人行動としての共 感性の育成が必要であり,この共感の解萌には,青年期の共感性の構造を明らかにし,. 共感を理解することが必要であると考えた。そこで,本論文では,主に青年期の共感性. 一2一.
(8) をとりあげた。. 2 本研究の構成 本論文は大きく3部から構成されている。第1部では,まず共感性の概念規定や研究 方法について文献的概究から萌らかにしたうえで,共感性尺度(質問紙法)の作成をめ ざす。作成した尺度と既存の共感性尺度や他の人格特性との関遮ならびに性差について も検討する。さらに,投影法の一つである描画法と共感性の関係を検討する。そのため. に,描画表現にみられる共感性を客観的に検討することのできる共感性尺度の構成を試 みる。その際,これまでの共感研究や,描画法についての臨床的知見から,感情の種類 による共感性の違いが、共感性の本質的な属性であるとする仮説が提起された。. ag ll部では,描画法と共感性の関係について,数理統面的検討を行う。第1部におい. て新たに作成した共感性尺度を用いて,描画表現にみられる共感性を検討する。描画表 現における描画特徴と共感性尺度得点との関係を明らかにする。さらに,共感性尺度を 用いて面接場面でのカウンセラPtとクライエントの共感性について検討する。また,実 際の描画から描画者の共感性を分析する。専門家と非専門家が実際の描画から読みとる 描画者の共感性について検討する。. 第m部では,事例的検討を行う。第∬部における調査研究における数理統計的結果に,. カウンセリングや心理治療場面において描かれた描画にみられる共感性について,臨床 的知見を加味して,描画にみられる共感性を検討しようとしたものである。さらに描画 を用いた心理治療事例において,心理治療関係におけるカウンセラーとクライエントの 共感現象や,面接過程で施行された描画にみられる共感性についても検討する。このよ うに,第1部と第H部における調査研究から得られた知見をふまえて事例的検討を行い, 調査研究と事例研究の相補的検討を行う。 以下に,各駅の概要を述べる。. 第1部第1章では,共感性の概念規定や研究方法について,文献的研究から開らかに しょうとする。第2章では,投影法の代表的な一つである描画法についての概要を述べ,. その中でも特に,動的家族画と動的学校画についての,これまでの研究成果と,本研究 での位置づけについて述べる。第3章では,描画表現にみられる共感性を客観的に把握 することのできる共感性尺度を作成する。その際,描画法にみられる共感性の特徴を明. 確にしたうえで尺度構成を行う。まず第3章第1節では,共感性の規定因を解明し,そ れを構造という観点から整理しようとし,共感性の規定因に関する記述的・探索的研究. 一3一.
(9) を行う(調査研究①)。次に第2節では,描画表現にみられる共感性を測定できる共感性. 尺度の作成を試み,質闘紙法による調査を実施し,検証的因子分析により,仮定されて いる因子構造が適切かどうかを検討するなどし,独自の共感性尺度を構成する(調査研 究②)。第3節では,作成した共感性尺度の信頼性および妥当性の検討を行う。その際 既存の共感性尺度や他の人格特性との関連ならびに性差についても検討する(調査研究 @)o. ag U部の第4章から第6章では,第3章において薪たに作成した共感性尺度を用いて,. 描画表現にみられる共感性を数理統計的に検討する(調査研究④,調査研究⑤,調査研 究⑥,調査研究⑦,調査研究⑧)。第4章では,投影法の中でも,塊較的言語=ミュニケ. ーションを用いるTAT(主題統覚検査)と動的家族画(KFD>における描画特徴と の関係から共感性の対象についての探索的研究を行う(調査研究④)。第5章では,描画. 表現における描画特徴と共感性の関係を検討する。第1節では,描画特徴のうち,動的 家族画と動的学校画におけるf人物像の顔の方向」と共感性の関連を検討する(調査研 究⑤)。第2節では,描画特徴の様式のうち,動的家族画と動的学校画における「包囲」 「区分」と共感性の関連を検討する(調査研究⑥)。第6章では,臨床場面における共感. 性を数理統計的に検討する。第1節では,面接過程においてクライエントの共感性の程 度を判断する場合,カウンセラーはクライエントの共感性のどのような側面を判断材料 にしているのかを,作成された共感性尺度を用いて検討する(調査研究⑦)。第2節では,. 実際の描画から描画者の共感性を分析する。描画法を専門的に用いるカウンセラー(専 門家)と描画法やカウンセリングについての専門的でない者(非専門家)とで,描画表. 現を通しての共感性の読みとりに違いがあるかどうかを,作成した共感性尺度を用いて 分析する(調査研究⑧)。. 火皿部において,第7章では,第1部,99 9部における数理統計的な調査研究から得 られた知見を,実際の臨床事例において検証を行う。第8章では,実際に描画法を用い た心理治療事例を通して検討し,面接過程におけるカウンセラーとクライエントの共感 について,個性記述的な意味での共感研究を行い,描画表現にみられる共感性について. も検討する。最後に第9章は,まとめの章である。第1節では,数理統計的研究から得 られた成果について,第2節では,事例的研究から得られた成果について,第3節では, 両研究方法の相補的関係について,全体的考察を行い,今後の課題を提起する。. 一4一.
(10) 第2節 共感性の概念規定と研究方法 1 共感研究に関する歴史的考察 本飾では,これまでに共感的な現象が,それらの学問領域でどのように概念化されて きたかを概観し,心理学における共感の定義を整理し明確にしたうえで,これまでの共 感性研究の問題点について考察する。さらに,共感性の発達研究および心理療法やカウ ンセリングと共感性についても概観する。. (1)初期の心理学における共感. 共感研究を歴史的に概観すると,まず心理学以前の省議領域では,19世紀後半に,ド イツの美学においてζ‘感情移入”という語が用いられはじめた。Lee〈1985)は,感情移 入という語を‘‘sympathy”と翻訳し,感情が自己の知覚する形態に入り込み没入すると. き,岡情が活性化されるとした。感情移入(sympathy)の概念をはじめて心理学にとり いれたのはLipps(1903)とされている。後に彼は19◎5年に,他者の内的過程が把握され. るのは,他者の動作と共鳴する観察者側の内的模倣によるものと論じた。さらに, T2tcheiter(1909)は,感情移入を“empathy”と英訳した。このように,初期の心理学. 者としてのLippsやTitchenerは,共感について,感情移入の機制を重視し,他者を把 握する際の直感的な過程としての内的模倣の過程を強調する立場をとった。. その後,共感概念は主に人格心理学の領域で検討されていった。この人格心理学にお ける共感研究を歴史的にみると,まず糟神分析学のFreuCl(1949,1960)は,共感性を 自我から遠い他者における事柄を理解するのに最も重要な役割を果たすものとし,他者 理解における共感の役割を指摘したが,この考えはそれ以上には発展しなかったとされ る。また,D◎職ey(1929)は,単に内的模倣だけでなく全ての自己経験を対象に投射する. 包括的な過程として共感をとらえ,共感と他者の人格理解の過程とが近似している観点 について述べた。さらに,Allport(1937)は,共感の生起する機制について述べ,共感は. まず模倣的想定から生じること,さらに共感は,直感と推論の中間にあるものあるいは その混合物とした。彼のこの理論が,現代の人格理論の中に共感の概念を確立するに至 ったとされている。Murphy(1947)はAIIpertよりも,共感における他者の心的状態の直 感的認識の過程を重視し,共感における外示的な身体参与の役割を強調した。Dollard& Miller(1950)は,共感を他者の感情をコピーすること,あるいはそのサインに反応する こととし,共感する側の感情反応の側面を重視した。 以上,人格心理学を申心にした195◎年頃までの共感性研究の諸論文を申心に述べたが,. 一5一.
(11) 次の2点は,今Hの共感研究に至るまで未整理のままの課題といえる。一一つは,共感の 定義について,共感を他者理解とするか,あるいは感情反応とするかが,いまだ統一さ れていないということである。さらにもう一点は,共感の生起する機制についてである。. これについては,感情移入,役割とり,模倣認知など,その過程が示され今Hに至っ ているが,これらについてもいまだ未整理の段階といえる。 (2)認知的側面と感情的側面. これまでの共感研究を通して,共感性には認知的要素と感情的要素があることは多く の研究者が述べてきた(Feshbach,1957;Hoffman,1984,など)。本項(1)でも述べたよ. うに,かつては「いかに正確に他者の内面を推測するか」という認知的要素が注賢され たが(Dymond,1949),196◎年代に実験場面で他者の感情体験を知覚・観察させ,その. ときに起こる「代理的感情反応」を測定する研究(Berger,1962;St◎da翻&Dunn, 1963;Stotland,1969)が行われ,「状態共感」と呼ばれる代理的感情反応としての共感 に注意が向けられるようになった。そして,子どもの状態共感を測定する方法(Feskbach. &Roe,1968)や,状態共感を起こす個人特性を測定する質問紙尺度が開発された (Mehrabian & Epstein, 1972; Scetland, Mathews, Sherrnan, Haltssolt & Richardson,. 1978;Davis,198◎;Byyant,1982)。さらに,197◎年代半ばから,援助行動における愛 他動機としての共感性の機能を実験的に検討する研究(Krebs,1975;Coke, Bats。n& McDavis, 1978; Batson, 9ttRcan, Ackerman, Buckley & Birch,1981;Toi & Batsen,1982). が相次いで行われた。そこでは,他者の苦痛に接したときに起こる反応として,他者に 向けられる「共感的関心」と自己に向けられる「個人的苦痛」の区別が指摘され,どち らの反応が主であるかによって援助行動をする動機が異なることが示唆された。また, 「その人の気持ちを想像してください」と教示する「視点取得条件」が共感的反応を増. 加させる効果があることが萌らかになった。Stotlandほか(1978)の研究では,小説や 映画のなかの人物に感情移入する傾向を測定する空想的共感性尺度が,生理的指標で測 定する状態共感と有意な相関をもつことが示されている。. 歴史的には,前者に関しては,B◎rke(1971)およびDeutsch&甑dle(1975)らは共 感を「他者の考え,視点,感じ方を認識,理解する認知能力」と定義し,「視点取り]殴. 割とり」に非常に近似した概念を示した。後者に関しては,Feshbach&Roe(1968), ScotlaRd(1969), HoffmaR(1975,1982)らが,共感を「他者の感情に一致するが,必. ずしも同一でない感情の代理的経験,あるいは共有」とし,共感における感情反応の生 起を強調したが,これらの研究者たちは,共感には認知的側面も含まれていると考えて. 一6一.
(12) いる。. (3>類似概念との比較 共感性の類似概念も様々にあるが,次にその主なものについて述べる。 ・投影(pr◎jeotion): 投影(投射)とは,自分自身の感情や観念,衝動を他者に帰属 すること(Dymond,195◎)である。自己の考え方や感じ方が他者に帰属されることから,. 共感のように他者が経験している考え方や感じ方に沿うものではないと考えられ,共感 とは異なるものとされている。しかし,共感にはこの“投影”の過程も含まれるという 考え方もあり,実際にそれらを区別して測定することは容易ではない。 ・同一化(identifloati◎R): 岡一化とは, Symonds(1946)によると,個人が他者を. 模倣しようとし,考え方や感じ方,行為において他者を手本にすることであり,心理的 過程としては無意識とされる。Dym◎ndは同一化と共感の過程の差異について,同一化は. 役割とりの特別の一例であり,共感よりも持続し,頻度が少なく,情動性が強いとして いる。また,同一化は,他者のようでありたいとか,他者と鹸い情動的結びつきをもち. たいという願望を暗示しているとされる。さらに,精神分析学の観点から Greenso鷺(1960)は,同一化は不安を克服することがその目標である無意識の永続的な過. 程であるとし,一方,共感は前意識的で一時的なものであり,本質的には理解しようと する努力であると述べている。. ・岡情,同感,感情移入: この三つの概念については,これまであいまいに用いられ てきた。広辞苑(泊村出血,1991)によると,“共感”は“同感”とほぼ法面とされてい. る。同感は「同じように感ずること,同じ考え」とされ,どちらも感ずる対象は相手の. 考え方であって,相手の感情そのものではないという点では,認知的側面を強調した定 義ということができる。また‘‘同情”は,「他人の感情,とくに苦悩,不幸などをその身. になって共に感じること」とされており,現在の共感概念にかなり近い定義づけがなさ れている。“共感”と“同情”の違いについては,一一般に同情は対象が他者の苦悩や不幸,. 悲しみに限定された共感ということもできる。また,Buckheimer(1963)は,共感と岡 情に含まれている過程の違いによって両者を区分し,共感の過程は一時的な“没入”の 段階をもち,他者とCCともに”感じることであるが,同情は他者に“沿って”感じるこ とで必ずしも他者に“入り込む”ものではないとの考えを示している。また,“感情移入”. は,「他人の心理や芸術作贔または自然対象のうちに,自分自身の精神を投射してそれを 直接に理解すること」。とされている。. 一7一.
(13) 2 定義 〈1>感情的アプローチ. Plutchik(1987)は,人間が生量的に持つ一つの特質としての共感性について,共感. 反応の本質は,ある有機体から他の有機体への感情状態の=ミュニケーシgンとし,共 感を「他者の感情を共有したり,理解したりする能力のこと」と定義した。この共感の 概念は今日まで心理学のさまざまな分野で広く用いられてきた。EiseRberg& Mussen(1989)は,共感とは相応の情動の状態あるいは条件から生じ,その状態や条件に. 伴ってこちら側に起きる代理的な感情のあり方としている。Lipps(1go5)は,共感は主 体が他者の感情状態をまず知覚し,それによって過去の体験に基づくイメージを呼び起 こす事が契機となるもので,その際呼び起こされた感情体験は自分の注意が他者に向け られているために,主体の体験でありながら他者の感情として体験されると論じている。 Jliit9(1921)は,感情移入(共感)は,他者が主体の関心の中に組み入れる過程であり,. 他者を自分と同一化する同化過程と捉えている。特徴的なのは,共感が機能する際に主 体の能動的側面が重要だと考えた点である。Freud(1949)は他者理解における共感の役 割を指摘したのち,感情移入(共感)が同一化の機制を基盤とすることから発展的な観 点を示唆し,これが後の精神分析における人格機能としての共感のとらえ方の原型とな ったと考えられている。これについて詳細は本章第3節で述べる。Bryant(1987)は, 感情反応をとくに重視する立場から,共感は他者によって経験された感情への感情的反 応であり,他者の視点取りのような道具的能力ではないとし,感情的反応の発達過程は 視点取りのぞれとは異なるとしている。 (2)認知的アブes・・一チ. Piajet(1932)は,発達心理学の領域で,役割取得あるいは脱中心化の観点から共感を. 捉えようとした。彼は,子どもははじめ未成熟で自己中心的に自分を取り巻く社会の環 境を理解するが,やがて成熟した認知状態へと発達し他者の視点を想像できるようにな るとしている。初期の心理学では,Mead(1934>が社会心理学的立場から,役割取得の概 念を中心に捉え,共感そのものには言及していないが,「あなた自身を彼の立場におく」. 能力として役割取得を論じている。特に,社会心理学や発達心理学の分野における共感 性研究は,197◎年前後から盛んにおこなわれるようになった。. 近年では,Wispe(1991)が,共感とは,他者のnegativeな経験とpositiveな経験を評 価なしに理解しようとする自己の意識化された試みであるとし,彼の定義する共感はカ ウンセリングの分野における共感的理解と非常に近いものといえる。. 一8一.
(14) (3>感情と認知の両面からのアプm一チ 最近では,これまでの研究における認知的アブ丁目チと感情的アプローチとを統合し てとらえようという傾向がある。KeffmaR(1978>は,発達の初期の利他的動機の成長や. 変化について,共感の認知的側面と感情的賊心との両方を強調した理論を提起した。 H。ffmanの理論は,共感を広い発達的な展望のなかで考え,それを年齢とともに変化し, 認知的能力の向上に伴うものとして,また感情的過程の成熟として考えようとしており, 今後の共感性研究の申での発展が期待される。Feshbachら(1978>は,共感を認知的用語. のみで定義することは,共感現象を一面的にしか捉えられないのではないかと述べ,両 側面を包括しようとする立場をとる。近年では,角田(1998)は,共感を,他者理解を 前提とした感情・認知両アプローチを統合したものと捉え,「他者の立場に自分を置き,. 他者と自己の個別性の認識のもとに,他者の感情を体験すること」と定義している。ま た,首藤(1994>は,共感は心理学の多くの分野で用いられる概念であり,その定義は研. 究領域によって異なり,全ての研究者を満足させる包揺的な定義は,まだ得られていな いとし,共感を代理的な感情反応として定義している。ここでは共感とは他者の感情を 認知する際にその他者と共有される感情反応とし,同情とは区別されるものとしている。 澤細(1996)は,共感を単なる他者理解という認知過程ではなく,認知と感情の両方を含 む過程であり,他者の感情の代理的経験あるいは共有を必ず伴うものと定義している。. 3 測定法 共感という複雑な現象を心理学的に研究するとき,それをどのような形で捉えて測定 していくかということは重要であり,これまでにさまざまな方法が用いられている。 澤購(1996),弱田(1999),登張(200◎)などにより,これまでの共感性の測定法を 整理し,次にまとめる。. 共感性には多様な特性があり,その測定方法も様々に考案されている。また,共感の. 測定に関しては,感情の種類による個人差や,2種類以上の感情の混合物に対する共感 性や,共感対象の範囲の測定にも考慮しなければならない。このような研究成果を背景 に,特性共感についても,それが単一の構成概念ではなく,認知的要素と感情的要素の 両方を含む多次元的概念として捉えられるべきであるとする見方が生まれてきた。そこ で,Davis(1980)は,特性共感の個人差を多次元的に捉えるための質問紙尺度「介入的 反応性指標」(IRterpersena1 Reactivity IRdex;IRI)を開発し,その後そのN本語版 が作成されている(桜井,1988;画工,1998)。このIRIは,共感性の認知的側面である視. 一9一.
(15) 点取得尺度,架空の人物への岡一化傾向である空想尺度,不運な他者への同情や思いや りに関する共感性の構動的側面である共感的関心尺度,他者の苦しみに対する苦痛感や 不快感に関する個人的苦痛尺度の4つの下位尺度から構成されている①avis,1994)。. 明国(1999)によると,このIRIは,共感を多面的に捉えようとする多次元的共感性尺 度としては数少ない試みの一つであり,さらに下位尺度を共感組織モデルという全体的 な枠組みの中に位置づけようとしている点においても,いくつかの検討課題をもちつつ も,有用性の高い測度であると考えられる。. この各次元と,実験的に引き起こされた共感関連反応やさまざまなパーソナリティ変 数,向社会的行動などとの関係を検討する多次元的視点による研究が行なわれ(Davis, 1983;BatsoR, Belen, Cross & NegringerwwBenefiel, 1986; Davis, Hu!1, YouRg& WarreR,. 1987; Eisenherg, Schaller, Fabes, Bu$tamante, Mathy, Shell & Rhodes, 1988;. EiseRberg, Fabes, Murphy, Karbon,雛aszk, Smith,0’Boyle& Suh, 1994), 共感桑生. を多次元的に捉える見方は定着しつつあるといえる。. これまで多くの測度が開発されてきたが,主として成人を対象とした認知的側面から の測度には,HogaR(1969)の共感性尺度(Empathy Scale;EM)があげられているが,. 実際には認知的共感性と共変ずる性格特性が測定されており,共感の認知的所産の直接 の測度としては若干あいまいさが残るという指摘がある。また,従来の共感性に関する このような実証的研究の中には,記述的,標準的研究から出発していない点が問題点と して指摘されている。. 共感エピソードの特定の側面に焦点をあてる測度として,感情的所産の測度のうち,. 自己評定による測度で広く使用されているものにMehrabian&Epstein(1972)の情動 顧慮感性尺度(Qgestionnaire Measures of Em◎tioRal Empathy, QMEE)がある。ここで. は,共感の感情的所産に焦点があてられ,さまざまな場面でそのような感情反応を起こ すような内容の項目が選定されている。加藤・高木(1980)はQMEEをもとに,田本版の. 情動共感性尺度を作成L,そこでは感情的暖かさ・感情的冷淡さ・感情的被影響性の3 下位尺度が設けられている。この尺度は多くの共感研究で広く使用され,検討も行われ ている。(明照,199◎;大住・明濁,1997)。また,Bryan鼠1982)により,無慮が子ども. 対象に改訂され,日本語版が作成されている(浅州・松本,1984;桜井,1986)。. 4 これまでの共感研究の考察と今後の課題 これまでに,多くの共感性についての研究成果や研究動向が概観されている(春木・. 一IO一.
(16) 岩下,1975;安藤,1991;久保,1992;澤田,1992;Davis,1994;斉藤,1997; 1998)。ところで登張(2◎0◎)によると,共感性は向社会的行動(Eise酌鍵霧翻iller,1987;. 平井・浜綺,1985;菊池1983,1991;慰ise曲erg&Mussen,1989;松崎・浜崎,199◎;. Ba£son, 1991;Eisenbeyg&Fabes,1998)や攻撃性(Miller&Eise蜘erg,1988; Mehrabian,1997)との関係においても注Eされている。これらの関係を開確にするため には,共感性を多次元的に検討することが求められる。ところが,これまでの共感研究 の中には,多次元的視点の必要性を述べても,その次元ごとの研究成果を展望するもの はない。今後は,共感性の生起や発達の条件,その効果について考えていくうえでこの ような試みが求められよう。. 共感の捉え方には,感情的側面と認知的側面のどちらを重視するかという点,さらに また,過程と結果のどちらに焦点化するかなどの点についても,ますます多様な立場が とられてきている。このような状況に対して,Davis(1994)は,共感を広義にとらえ, 他者の感情経験に直面した観察者が,何らかの認知的,感情的あるいは行動的に反応す るプ画影スとしての一連のできごと,すなわちエピソ・・一一ドとして捉えた,共感の組織モ. デルを報告している。明田(1999)によると,このDavisの典型的な共感エピソードは,. 先行要因,過程,個人内所産,個人間所産の相互に関連するとみられる4つの構成要素 によって組織化され,このような組織モデルによって,これまでに行われてきたさまざ まな共感研究,共感概念,共感測度を整理し,関連づけることができると考えられた。. これは,共感を狭義に捉えるのではなく,共感に関連するさまざまな現象や過程を一連 のできごととして広く多面的にとらえ,それらの関連性の整理を試みたものといえる。. 亡国はこれまで,概念定義や研究方法などに明確な統一性のみられなかった共感研究に は,有効な枠組みの一つとなるのではないかと述べている。. 以上概観したように,これまでの共感研究は,共感の定義や概念の使用に関して統一 した見解がなく,さまざまな考え方や測定法に基づいて研究がなされてきたといえよう。. また,このように共感性は,各領域ごとに別々に研究されることが多かったということ ができる。今後は,概念の整理と体型化の必要性が多くの研究者により指摘されている (澤閏,1992;Davis,1994;息急,1999)。今後は共感は,より多面的・多次元的に研究 されることが必要になると思われる。. 5 本論文における立場 既に述べたように,共感の定義についての最も重要な対立は,共感を他者理解の過程. 一重董一.
(17) (認知的要棄)とするか,他者との感情の共有の過程(感情的要素)とするかの違いで あり,近年まで引き続き論争されてきた。近年の共感研究の動向としては,感情的側面 と認知的側面とを統合的に捉える傾向がある。また,これまで共感性は一面的に研究さ. れてきたが,近年の動肉として,共感性を多次元的に捉える見方が定着しつつあり,多 次元的視点によるこれまでの研究には,Davis(1980)の4次元尺度などがある(登張, 2000)。このように,共感の定義は,研究者によって異なり,測定法も様々に考案されて. きた。菊池(1999)は,認知と感情の両側面を合わせた定義が妥当で,この両者の関係 が重要であると述べている。. 角田(1994)は, 「共有経験因子」と「共有不全経験因子」の2困子を抽出して尺度 化(ESSR)し,2軸の高低の組み合わせから,共感性の4タイプ化を行った。ここでは, 感情の種類としての肯定感情や否定感情を分離することなく扱っている。しかし,二宮 (1995)は,共感性の情緒の種類の違いについて比較し,例えば喜びに対する共感性と 悲しみに対する共感性では,発達に違いがあると述べている。このように,感情の違い, この肯定感情か否定感情かにより,共感性に違いがみられる可能性がある。そのため, 肯定感情と否定感情に対する共感性を別々に捉えた共感性尺度が必要と考えられる。 本論文においては, 「自他の個別性の認識のもとに,感情の種類により他者の感情を. 代理的に経験しあるいは共有することである」と共感性を定義する。共感を,他者の感 情に一致するが,必ずしもft 一ではない感情の代理的経験あるいは共有とし,感情的側. 面と認知的側面を分離したうえで,両者の関係を明確にし,そのうえで,単なる他者理. 解という認知過程ではなく,感情の種類による共感性の違いというのが,共感性の本質 的な属性であると認識する。. 一12一.
(18) 第3節 共感性の発達 1 共感の発達的研究 本節では,共感の基礎としての他者の感情に対する認知能力及び理解能力の発達,さ らに乳児期における単期の共感のあり様,それ以後の年齢での共感発達のあり様などに ついての,これまでの理論的あるいは実証的研究について概観する。. 共感がかなり早期から出現し,それ以降発達あるいは抑制されるとすると,そこには 子どもをとりまく環:境が重要な影響を与えていると考えられる。そこで,その中心とな る,主に家庭環境に焦点をあて,親子の愛着関係,親自身の共感性および親の養育態度,. 兄弟やその他の家族などの家族成員での共感性や,社会環境としての仲間関係などと子 どもの共感性との関係についての研究を論じる。なお,親の共感性の欠如が,子どもへ の虐待や,子どもの人格形成にどのように影響するかについての応診にも言及する。. 2 人格発達に及ぼす共感の役割とその研究 Hoffman(1987)は,共感と察己の形成や社会性,道徳性との関連について次のよう に論じている。共感は,社会性の発達と密接に関係し,特に思いやりの原理との結びつ きが強く,その発遠に貢献している。道徳場面で共感的感情が喚起されると,思いやり の原理が活性化してくることや,さらに共感が,相手を援助するといった利他的な行動 を動機づけたり,媒介する役割を果たしている。KesteBbaumら(1989)は,母親との早 期の愛着関係について,安定,回避的,抵抗的の3つのタイプの愛着関係を示している。. Evans(1980)では,親の共感の欠如と虐待について,子ども虐待の母親の人格特性と養 育態度について,虐待しない母親は,虐待する母親よりも,子どもに対して信頼的,支 持的であるようなTAT反応が示された。 Feshbach(1987)は,両親の共感と子どもの適. 応の観点から,親の虐待と子どもの不適応とが関連すると述べている。このffvaftSと Feshbachの二つの研究では,親の共感の低さは子どもの身体的な虐待につながる要因の 一つとなり,子どもの自己統翻の低さや不適応行動にもつながる可能性があることが示 唆されている。また,Evans(1980)は,体罰を否定する教師は,体罰を否定しない教師. よりも,児童生徒に対して,信頼的,支持的であるようなTAT反応が示され,共感性 が高いといった仮説を導き出している。. さらに,親の養育態度に関しては,次のような研究がある。Bryant(1987)は,子どもた ちのストレス経験に対する親の支持的な態度が子どもの社:会・感情的発達を促すと論じ. 一13一.
(19) ている。Rutherford&Mussen(1968)やBarnett &Corbin(1979)は,子どもの寛容 さと競争的な教育態度と共感との関係について,他者との過剰な競争心の子どもは,他. 者への寛容さが少なく,共感性が低いことを示している。Bamettら(1979)は,子ども の競争心と共感性との関係について,過度に子どもの競争心をあおることは,他者の要 求を受容し,応答する傾向を妨害すると述べている。また,共感と遂行課題の関係につ いて,Barnett&BryaR(1974),」曲Rs◎lt&Johnsolt(1974),Barnett&London(1970). は,競争的な震標は,分与行動や慰め行動と負に関係すると述べている。これらの研究か. ら,子どもたちの世界において,過度な競争心は競争の勝者と敗者を生じさせ,両者の. 対等な関係性は失われる。それにより,相手は自分とは異なるものとして知覚されるた め,感情の共有の生起が困難になると考えられる。. 子どもたちの共感発達にかかわる条件として,まず親との関係についての研究を概観 したが,その他にも兄弟や祖父母など,さらには伸間との対人関係がある。親との愛着 関係と剛叢に,これらの人物との親密な関係が共感性を高めることが期待されている。 また,彼らが共感的な人物であるなら,彼らの他者への感受性と共感性の表出は子ども にとってのモデルとなるであろう。このようなモデルへの岡一化,モデジングの過程を. 通じて子どもたちの共感的,利他的な行動が促されると考えられる。兄弟,仲間,祖父 母とのかかわりについては次のような研究がある。まず,兄弟については,兄弟は家庭 での同一経験を共有することが多く,互いに共感が生じやすい関係があるといえる。ま. た,特に年上の兄や姉は,弟や妹へのN常の母親の養育的な応答の仕方をモデルにして 模倣し,共感的応答の能力を身につけていくことも考えられる。次に,Barnett〈1987) は,子どもの共感性について,仲間は共感の発達にとくに影響力をもつ社会化の対象で あることを指摘している。兄弟の場合とほぼ同様に,同一の経験を共有しあったり,親. 密に交流し合うことによって,共感が生じやすくなる一方で,仲間との葛藤と対立は兄 弟以上に強い影響を与え,他者の視点取りをより促すこともある。しかし,仲間とのか かわりが共感や視点取りの発達を促すことについての実証的研究は非常に少ない。これ には仲聞とのかかわりを統制することの難しさなどが背景にあると思われるが,数少な い研究の一つとして,Bryan(1987)は,伸間とのかかわりの測度として,欝常の接触度,. 親密な会話,仲聞との非公式の活動への参加の度合いなどをその指標としてあげ,子ど もの共感や視点取りの発達との関係を検討したが,そこでは共感ではなく視点取りとの み有意な関係がみられた。さらに,祖父母や老人とのかかわりが子どもの共感発達と関. 連する理由として,祖父母は子どもがストレスや危機にあるとき,養育態度を引き受け. 一14一.
(20) がちであることが指摘されている(Streib,1958;Tinsley&Parke,1984)。さらに祖 父母は親とは違って非判断的な対応と子どもの感情の無条件の受容を与えるので,子ど. もが自己と他者の感情を探究し,認識する機会を作り出す存在であると考えられる (BTyaat, 1995; BarRett, 1987).. 3 青年期の共感性 相手との心理的距離のとり方や親密さをめぐる葛藤は,現代膏年の人間関係における 重要なテーマとなってきている(上腎ら,1994;聞濁,1995)。現代の青年にとって,い. かに友人との距離を適度に保つかということは「個」のあり方の研究と相補する大きな 課題となっている(藤井,2001)。このように,青年の心理を理解するうえでは,相手と. の心理的距離のあらわれとしての,孤独感や共感といった研究が必要であると考えられ る。落合(1999)は,SpraRger(1924)やBuh!er(1921)における,憧れの重要性などか. ら,憧れと不離一体の関係にある孤独感は青年期の根底にある感情であり,青年心理の. 理解には必要不可欠であるとしている。ところで,落合は孤独感の構造について因子分 析の結果「人間同士の理解・共感についての考え方」と「自己(人間)の個別性の自覚」. の2因子を抽出し,さらに,この2因子は互いに独立したものであるとし,2要因の組 み合わせにより,孤独感を4類型化している。このように,落合は,青年期の孤独感の 規定因構造の一つに「共感」についての考え方があることを明らかにしている。青年期 の心理において,人間関係の親密さの一側面である共感は重要であり,共感は青年期の 生活感情の重要なテーマと考えられる。また,橋本(2000d,2001b,2001d,2◎◎1e,2◎◎lh). は,教育実践や教育相談事例やその調査研究を通して,青年期の共感性の重要性やその特 徴について述べている。本研究では主に青年期の共感性をとりあげる。. 一15一.
(21) 第4節 心理療法における共感(カウンセリングと共感) 1 カウンセリングと心理療法 心理療法を広義に捉えた場合,その課題には大きく二つの側面があるとされている。 一つには,クライエントが抱えている悩みや苦しみなどの問題を解決することであり, 二つには,クライエントが以前に好ましくない環境において,ネガティブに解決した問 題を矯正していく援助を行い,クライエントの人格の発達を促すことである。また,こ. れら二つを総称してカウンセリングという書葉を用いることもある。一方,狭義に捉え た場合,一一つ目の側面に重点がおかれるものをカウンセリングといい,二つ目をいわゆ. る心理療法と捉えることもある。この狭義の心理療法では,Marcia(1987)によると, クライエントの自我の発達過程にとって望ましい環境と対人的相互作用の機会を与える ことが重要な意味をもつことになる。しかし,どちらの側面に重点をおくかに関わりな く,全ての心理療法あるいはカウンセリングにはコミュニケ…一ションが存在し,共感と. いう現象はこの二者間のコミュニケーシgン過程において生じるといえるであろう。. 本論文では,これらの共感については,この広義の心理療法あるいはカウンセリング において捉えることとし,総称する場合はカウンセリング,あるいはカウンセリングや 心理療法と表し,狭義には心理療法と表すが,厳密には区別せず,ほぼ六義に用いる。 また,カウンセラーとセラピストについてほぼ同義に用い,心理療法と心理治療につい ても同義に用いる。. 他者と感情を共有するということは,他者と感情のレベルで結びつくことであり,ま さに人と人とを結びつける絆としての役割を果たしているともいえる。さらに,心に悩 みをもち苦しむクライエントを援助する心理臨床の場面で,クライエントの人格的成長 を促すのに共感の過程が重要な役割を果たしているという考え方もある。共感を重視す る心理療法にもさまざまな理論的立場があるが,それぞれの理論において共感はどのよ うに位置づけられているかを,その主な心理療法について概観する。 ・来談者中心療法(クライエント申心療法). 我が国のカウンセリングの分野の共感研究は,R◎gers(1957)の共感的理解の提唱を契. 機に発展してきた。これは,カウンセラーはクライXントの感情に注目し,それが認識 されていてもされていなくてもその感情を許容し,クライエントの内的世界について得 たその感覚を正確に,感情的に理解できるやり方でクライエントに映し返す,この過程 を共感として示すものであった。それは体験的または現象学的側面をもつものでもあっ. 一16一.
(22) た。その後,それがオウム返しにすぎないという批判に対してRogers(1975)は,共感 的理解について,詳細でかなり長い定義づけを行った。その概要としては,共感は過程 であり,他者の個人的知覚的世界に入り込み,その中に完全にとどまるようになること を意味するとし,共感を,クライエントが自らの体験を十分に生きることを援助する過 程として再定義している。さらに,Rogers(1980)は,共感について次のように述べてい る。「共感は他者の私的な知的世界に潜入し,そこですっかりくつろぐことである。その. 人の生の中に一時的に住まい,その申を何の批評もせずに細やかに動き間り,その人が ほとんどといってもよいほどに意識していない意味を感じとることである。」このような. 共感を,Rogersは治療者の基本的条件の一つにあげている。これがRogersのカウンセ リングの3本の柱の一つとしての「共感的理解」である。しかし,これら3条件は理想 的条件ではあるが,実践することがきわめて困難であることを体験している。Rogersの. 残る2本の柱としての嚥条件の肯定的積極的尊重」「自己一致(純粋性)」ともに岡様 と考えられている。すなわち,クライエントのどんな言動にも自己開示して聞き,無条. 件の肯定的関心を持ち,共感的理解を示すことは不可能に近いのかもしれないが,少な くともそれに向かって進む努力の過程が共感的理解にとっては重要と考えられる(橋本, 2good) .. Rogersの感情の明確化とオウム返しについては,言葉をそのまま返すことが感情の明 確化につながるとした誤解がしばしば存在する。我々が言葉で何かを表現する場合,明 快な書葉の背景にも複雑で言葉に表現し尽くせない思いがある。クライエントが,それ に気づいていないこともある。その気づいていない部分に気づかせるのがRogersのカウ ンセリングのねらいでもある。それは,カウンセラーがクライエントの獄丁によって触. 発された自己の内的プロセスを凝視し,それを踏まえて言葉を返すことによって初めて 達せられる。カウンセラーが自己の意識の場にどれだけ敏感でいられるかが,クライエ ントの意識の場の背景を感じ取ることにつながり,しばしばクライエントの感じてはい. るが気づいていないプUセスに気づかせることができる(成田,氏原,1999)。これが Rogersのいう感情の嗣確化である。 このようなRogersの来談者中心療法に対して, Rollo May(1989)は,来談者中心療. 法のセラピストがクライエントの怒り,敵意,ネガティブな感情を処理しない,あるい は処理できないと指摘している。R◎gersは後にグループカウンセリングを手がけていく 中で,共感的理解を基本としながらも,怒りや嫌悪感,退屈感を感じたら相手の行動に よって自分がそのように感じていることを表明して対決することが望ましい結果をもた. 一17一.
(23) らすことを示唆している(Landreth,1984)。. 近年,共感の治療的効果に関する実証的研究が進むにつれて,カウンセラーの共感は ある事例においては治療に対して促進的であるが,他の事例においては促進的でないこ とが明らかにされてきている(成田,氏原,1999)。Marcia(1987)は,共感がコミュニケ. ートされる必要がない場合もあるとし,それは極度に強磁観念的,あるいは攻撃的な相 談者であるために共感することが困難であり,また共感することが有害な結果をもたら. すような場合があること,さらには他者によって共感され,知られることがある種の侵 入として感じられ,不快や苦痛として経験されるような相談者がいる場合があることを 指摘している。. ・精神分析的心理療法 精神分析学派では,Rogers(1957)の共感的理解に対しては評価が低いとされてきた。 Freudの精神分析理論では,内省がその申核を占める。Freudは,共感をそれによって我々. が他者の心的生活に対して何らかの態度をとることができるようになるメカニズムであ るとし,他者の心的生活に近づく唯一の手段は直接的及び代理的内省,すなわち共感的 内省であると述べている。さらに,Stewart(1956)は,このFreudの考えに基づいた,心. 理療法の過程についての4段階を提案している。. 一方,自己心理学を創始し,精神分析的治療に大きな影響を与えたとされている Kohttt(1959)も共感を強調した研究者の一人である。 Kohutは,共感を,他者の内的状態. を理解する方法ととらえている。成田(1999)によると,Kohutによる共感の定義は次 の3点にまとめられている。①他者の中に自己を認識すること ②他者を包含しようと する自己の拡大であり,個々の人々の間の強力な心理的結合となる。 ③自己によって 引き出される,受容し確認し理解する人聞的反響であり,心理的な栄養分である。さら に,Kohutは,その早期の論文(1971)において,共感は他者の内的生活についての客観 的な知識の獲得のためにあるとした。しかしその後の論文において,共感を,客観的な. 観察者の姿勢を保ちながら同時にもう一人の内的世界を経験しようとすることと定義レ 共感の二つのレベルである,①情報収集活動としての共感と②人々の問の強い感情的結 びつきとしての共感を区別した。衣笠(1992)は,Kohutの共感は“理解”を主目的と し,その背景には独自の発達論があるとし,安易に鷺本語で韓常的に使われる《‘共感”. と同じだと考えてはならないと述べている。さらに,Kohutは共感を‘‘代理的内省”と 定義づけ,それは他者の内的状態の理解を主砲的にしたもので,その背景には独自の発. 達論があると考えられる。すなわち,他者の中に自己を認識しようとする,あるいは他. 一18一.
(24) 者を包含しようとする自己の拡大として定義づけている。そして,治療における共感の 役割として,正確な共感がクライエントに適切な母性的及び治療的分析的行為を知らせ, 共感それ自体が広い意味で治療的行為であZ] 、有益な行為であるという点をあげている。. さらに,治療はクライエントが感じ,考え,イメージすることを繰り返し確認すること や“理解する”ことによってではなく,解釈レベルでの説明を与えることでなされると する。そして,理解することから説明することへの移行は,共感のより低い形式から高 い形式への移行であると述べている(Kohut,1981,1991)。解釈とは,ある人格の内外・. 去来・自他間の状況の事実認識一内的な作業,自己像の造形,自己の展望の付与,自己 への投資,人格的援助の誘発一社会的要請の潜在的な伝達,共感の媒体とする(成田, 氏原:1999)。. 精神分析用語辞典(1996)によると,共感は,他者の心理状態や経験を知覚する特別 の様式であり,それは他の人間を知的にというより,むしろ情緒的に知ることとしてい る。共感するとは,他者の感情を一時的に共有し体験することを意味する。感情の量で はなく質を,またその程度ではなく種類を共にするもとのしている。 ・対象関係療法. 対象関係療法では,Fairbairft(1952)が,人格の発達的変化を, Fxeudが強調したリビ. ドー集中の領域の移行によるのではなく,他者との関係の進歩的成熟様式に基づいてい るとした。また,Winnicott(1965)とGURtrip(1971)は,心理療法を本質的に母子関係で あるとみなした。聡n難ic。tt〈1965>によると,心理治療における治療的要因は,古典的精. 神分析が強調してきた解釈機能の中にあるのではなく,クライエントに失われていた親 的賦与を提供し,早期の発達的要求を満たすような治療関係の中にあるとする。このよ うに人格発達における対象関係性,とくに養育者と子どもの相互作用の過程を重視して いる。このような過程において共感は,カウンセラーがポジティブな対人的な場を作り 出すことを促す役割を果たす。そしてその中でカウンセラーは,クライエントが内面化 でき,クライエントにとっての補償的な自己構造の核になるような自己一対象になるの である。Greenberg&Mitche11(1983)は,これをある種の「発達的第二次機会」である とした。. 対象関係理論では,共感自体を,とくにその感情的側面を治療の重要な成分とみなす 立場とは異なり,共感は解釈過程に対してのみ有用であると考える。Mahlerら(1975>は. 共感を,洞察と解釈に役立つ,一つの分析的道具として重要であると述べ,共感の認知 的側面を強調している。. 一19一.
(25) 2 カウンセリングと心理治療における共感の過程と著者の立場 共感について,Rogersは「他者の私的な知覚世界に潜入し,そこですっかりくつろぐ」. とし,Kohutは「他者の中に自己を認識しようとする」あるいは「他者を包含しようと する自己の拡大」とした。さらに,Kainer(1984)は,「他者の申に普遍的な自己の特徴. を見出す]とした。自他の区別は存在したままで,自らが潜入したり拡大して他を包含 したりすることである。Kltoutの「他者を包含しようとする自己の拡大」に対しては,. Rogersの「心の深いところに潜入し,そこですっかりくつろぐ」とは相異なるものと理 解される。共感が自他の拡大なのか,樋回すること」あるいは「無私」に近いものなの かは論の分かれるところである(証悟,1996)。このように,カウンセリングや心理治療 においては,共感は治療者の機能として重視されてきた。. 共感の過程において,Uジャーズ学派は,共感を強調し,精神分析学派は解釈を重視 しているということができよう。. ここで,著者の心理療法における立場を述べるなら,ロジャーズの来談者中心療法を 基盤とし,個々のクライエントや問題の状況に応じて,精神分析や行動療法などをはじ めとする様々な心理療法を柔軟に適宜用いる折衷的な立場とする。それは,一つの理論. や技法で,すべての問題を解決することはないと考えるからでもある。著者はこれまで 教育相談や学生相談のカウンセリング,スクールカウンセラ・一・・…として,あるいはそのス. ーパーバイザ・一一一や学校コンサルテーションの=ンサルタントとして,児童生徒や青年の. 心理教育的問題の解決にあたってきた。そして,それらの実践や経験を通して,カウン セリングや心理教育場面における「共感」についての様々な知見を得ている(橋本,1998a, 2◎◎◎b,2◎◎◎d, 2001h)。次第に, H常的に何気なく使われている「共感」は,多様で. 多面的な側面をもつと考えるようになった。ところで,共感には,カウンセラー側の要 因とクライエント側の要:因が影響Lあうことについての見解がある。このように共感の. 過程をふり返ると,カウンセラーの共感行動はカウンセラー側の要因のみではなく,ど のようなクライエントに対して生じやすく,あるいは生じにくいかということも,検討 すべき問題であると考えられる。この両者の関係は,学校教師と児童生徒や学生との関 係にも共通する点も多いと考えられる(橋本,20◎Ob,2◎◎0δ)。. クライエントの特性がカウンセラーの共感に異なる影響を与えることについての研究 は,これまでいくつかなされている。まず,クライエントの感情的両価性,友好性,敵. 意,不安,抑うっ,従順,関心,社会・経済的地位,身体障害などが,クライXント側. 一20一.
(26) の共感の要因として検討されてきた。例えば,MelHick(1974)は,職業的・教育的関心を. もつクライエントよりも,社会的・個人的関心をもつクライエントに対して,カウンセ ラPtの共感水準がより高かったことを見出している。 S!aδe鼠1982>は,カウンセラーと. クライエントの人種と社会・経済的地位が類似しているとき,クライエントによって最 も高く評定されたカウンセラーの共感が得られたとしている。次にカウンセリング場面 でのクライエントの行動が,カウンセラーの共感行動にどのような影響を与えるかにつ いては,Taylor(1972)は,クライエントがカウンセリング場面でカウンセラーに怒り,. ないしは敵意を示したとき,カウンセラーの共感性が低くなり,クライエントが得意, ないしは高い覚醒を示したとき,カウンセラkOの共感が高まったことを見出している。 また,Ham〈1987)は,カウンセラ・一一一の共感はクライエントの破壊的行動よりも従順な行動. に対してより高かったとしている。. 本論文では,クライエントの共感性の測定について実証的検討を行い,さらに,臨床 :事例を通して,このクライエントの共感とカウンセラーの共感の関連についても検討す る。. 一21一.
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