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描画特徴の『包囲」「区分」と共感性(調査研究⑥)

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 84-91)

第5章 描画特徴と共感性

第2節  描画特徴の『包囲」「区分」と共感性(調査研究⑥)

唱問題

 本研究(調査研究⑥)では,調査研究⑤に引き続き,描画特徴と本共感性尺度との関 連から,描画表現にみられる共感性について検討する。

 本章では描画法の申でも,KFDとKSDを併せて粥いる。また,描画からは多くの

情報が得られるが,本研究(調査研究⑥)では,描画特徴のうち「身体の一部の省略」

「包囲」「区分」と共感性の関係について検討する。

2 目的

 本共感性尺度を用いて,描画特徴の「身体の一一部の省賂」「包囲」「区分」と共感性の 関連を調べる。

3 方法

(1)調査対象者

 A県及びB県内の大学生,短大生,専門学校生の女子273名を対象に調査した結果を

用いた。

(2)調査時期:2◎0◎年7月であった。

(3)調i盃手続き

 (1) の調査対象者に対して,教室において本共感性質問紙(Appendix 3)の終了 後,KFDとKSDを以下の手順で集団面接法により実:施した。全体の所要時間は約6◎

分(共感性質問紙は約15分,KFDとKSDは約45分)であった。 K:FDとKSDの

教示は,本調査研究⑤と同じであった。.

 A4用紙B又は2Bの鉛筆,消しゴムを使用する。 KFDの描画活動ボ終了後,描

かれた人物が誰か,人物を描いた順序,人物の行為,自分と「最も共感する人」(最も親 い・相手)は誰か,自分と「最も共感しない人」(最も親しくない相手)は誰かを,被験 者に用紙の裏に記入させた。「共感する人j「共感しない人」と「親しい相手」「親しくな い相手」とは同義ではないが,被験者には次のような説明をした。まず,「共感する」と は「他人の体験を自分も同じように感じたり理解すること」あるいは「相手の気持ちが わかること」などと説明したうえで,例えば描画中に描いた人物の申では,「共感する人j は,よく話しをする人や親しい人などを想定し,「共感しない人」は,話をしない人,親

しくない人などを想定することを例示した。その後,続けてKSDを描くように指示し た。KSDの描画活動が終了した後, KFDと同様の質問について被験者に用紙の裏に

記入させた。全体の所要時間は約5◎分であった。なお,KFDとKSDのシステム法

(KRoff&Prout,1985)の実施方法に従い, K F Dの終了後引き続いてKSDを実施し た。以下「最も共感する人」と「最も共感しない人」を,それぞれを「親しい相手」,「親

しくない相手」と記す。

4 結果

 「身体の一部の省略」「包囲」「区分」の有無により被験者を分け,群ごとに共感性に 関する各下位尺度得点の平均と分散を求め,t検定を行った。しかし,各要因の有無の 条件ごとに人数に大きな片寄りがあり,さらに,それぞれの要区1が必ずしも独立したも のであるかどうかは確かめられていない。そこで本研究(調査研究⑥)では,統計的な 分析のみには頼らず,後章において臨床的な知見をもとにした考察を加え,共感性と描 画表現にみられる特徴との関係を検討することとする。なお,それぞれの要因の有無に ついて,一方に該当する人数が極めて少ない場合には統計的な分析は行わなかった。

 被験者の下位尺度得点の平均と標準偏差を(Table 5・2・1)に示す。共感性各下位尺 度得点に違いがあるかどうかを分析した結果をTable 5・2・2〜Table 5・2・6に示す。

Table5−2−1女臼学生の下強尺度揚点の平均と標準偏差(n=273)

下 倣 飛 度 琴

情定定精

共感感共

有情私有

払共共不

全有有全

平 均 標準 傭 差

感肯否感

定  定

肯  哲

60り2置0◎◎り3QV

3332

O.79

e.56 0.65 0.7フ

(1>il身体の一一esの省略がある群とない群毒について

KFDではtt肯定感情共有不全下位尺度得点について有意な傾向がみられた(t・=

L95,酸薫271,ρ〈.96)。 Table 5・2−2から,身体の一一部を省略して描いた人は,省略し なかった人に比べて,肯定感情共有不全下位尺度得点が低いことが示された。

 KSDでは,肯定感情共有不全下位尺度得点と否定感情莫有不全下位尺度得点に有意

な傾向がみられた(t=:1. 82,df=271,p〈.08;t・1.85, df ・271,ρ<.◎7)。 Table 5・2−3

から,身体の一部を省略して描いた人は,省略しなかった人に比べて,肯定感情共有不 全下位尺度得点と否定感情共有不全下位尺度得点ともに高いことが示された。

 このように,KSDにおいて省略がみられた人は,みられなかった人に比べて,肯定 感情および否定感情ともに感情を共有しにくいことを示唆する結果が得られた。描画に おける省略は,孤立感や拒否的感情の強さと関連するものであるとする臨床的な知見(加 藤,1991;高橋,1991)とこの結果は一致する方向のものである。しかし,KFDに関

して,こうした臨床的知見とは必ずしも一一一 twしなかった。

Table・5−2−2身体の一部の省略がある群とない群の箪均と標準偏差(KFO)

省略あり(N ・30) 省略なし(N=243) 検定結果 下位尺度名  平均 (SD) 平均 (SD)  t値(dfi=271) P 肯定感惰共有不全  2.80⑩.75)

  肯定感情共i有    4.07 (◎.62)

  否定感情共有  3.23(O.47)

否定感情共有不全  2,77(O.64)

3.10 (O.79)

3.98 (O.55)

3.33 (O.66)

2.98 (O.79)

1.95  十

〇.84 n.s.

O.84 n.s.

1.36 n.$.

〈+:p〈.10)

Table 5−2−3身体の一部の省略がある群とない群の平均と標準偏差(KSD)

省絡あ9(N=37) 省略なし(N・・236) 検定結果 下位尺度名  平均 (SD) 平均  (S9>    匙髄(《浮=271)  p

肯定感情共有不全  3.28(0.85)

  肯定感守勢共剥ぎ    4.◎1 (◎.55)

  否定感構共有  3.27(C.58)

否定感情共有不全  3.17(α72)

3D3 (e.77)

3.98 (O.56)

3.33 (O.66)

2.92 〈e.78)

i.82  十

〇.32 R.s.

O.46 n.s.

1.85  十

(÷:P<.給)

(2)『包囲の出現がある群とない群』について

 KFDでは,否定感情共有下位尺度得点に有意差がみられた(t・ 2. 09, df ==

271,p〈.04)。 Table 5・2・4から,包囲を用いた人は用いなかった人に比べて,否定感情 共有下位尺度得点が低いことが示唆された。KSDにはどの下位尺度得点にも有意な違 いはみられなかった(Table 5・2・5)。

Table 5−2−4包囲がある群とない群の平均と標準偏差(KFD)

包囲あり(N=43) 包囲なし(N=230) 検定結粟

「ド{立尺度名    平均  (Sl)) 箪均 (SD)

3.08 (O.78)

4.00 (O.53)

3.35 (O.61)

2.98 (O.75)

電{直(dfur271)  P

肯定感情共有不全   肯定感情共膚   否定感情共有 否定感情共有不全

2.96 (O.85)

3. 91 (OX)

3.13 (e.78)

2.84 (O.89)

e.94 0.91 2.09

1S8

B.S.

R.S.

n.s.

(*:p〈.05)

Tab葉e§一2−5時置がある群とない群の平均と標準偏差(KS◎)

包囲あり(N=43) 包囲なしくN=230) 検定結果

業位尺度名  平均 (Sb) 平均 (SO)

3.06 (O.80)

3.98 (e.56)

3.31 (O.65)

2.96 (O.78)

な値(df=27望) P

肯定感情共有不全   冑定感情共有   否定感情共有 否定感情共有不全

3.li (g.50)

4.02 (e.59)

3.52 (O.47)

2.87 (O.59)

O.20

C27

1.11 0.40

n.s.

n.s.

轟.S.

n.s.

(3痔区分の出現がある群とない群誰について

 KFDでは,肯定感情共有不全下位尺度得点に有意な傾向がみられ(t・1.74,df・=

271,p〈.09),否定感情共有不全下位尺度得点に有意差がみられた(t瓢2.59, df諜 271,ρ〈,◎2)。Table 5・2・6から,区分を用いた人は用いなかった人に比べて,肯定感情 共有不全下位尺度得点と否定感情共有不全下位尺度得点がともに高いことが示唆された。

 KSDでは,否定感情共有不全下位尺度得点に有意差がみられた(t=2.31,df ・・

271,p〈.◎3)。 Table 5・2・7から区分を用いた人は用いなかった人に比べて,否定感情共 有不全が高いことが示唆された。

Table・5−2−6区分がある群とない群の平均と標準偏差(KFD)

匿分ありくN ・14) 区分なし(N=259) 検定結果   下位尺度名  平均 (S【))

肯定感情共有不全  3,42(◎.87)

  肯定感情共有  3.88(◎.6◎〉

  沓定感情共有  3.07(◎.63)

否定感情共有不全  3.47(C.69)

箪均 (S9)

3.04 (O.78)

4.00 (O.56)

3.33 (OS5)

2.93 (O.77)

之値(df=271)  P 1.74 0.72 1.47 2.59

n.$.

n.s.

(*:p〈.os> (+:p〈.lg)

Tab韮¢5−2−7匿分がある群とない群の平均と標準偏差IKS肇))

医分あり(N=22) 区分なし(N・・251) 検定結果   下位尺度名  平均 (SD)

肯定感情共膚不全  3.15(0.80>

  肯定感情共有  3.92(O.64)

  否定感惜共有  3.17(9.70)

否定感情共膚不全  3.32(0.75)

平均 (SD)

3S6 (O.79)

4.00 (O.55)

3.33 (e.64)

2.92 (e.77)

t値(dfE=2フ1) P O.53 0.61 1.t2 2.31

n.s.

腱.S.

n.s.

(*=Pく.e5)

5 考察

 これらの結果から,KFDで「区分」を用いる人は,肯定感情および否定感情ともに 感情を共有しにくいこと,KSDで「区分」を用いる人は,否定感情が共有しにくいこ とが示唆された。さらに,KFDで「包囲」を用いる人は,否定感情を共有しにくいこ とが示唆された。

 Burns&Kaufman(1972)は,描画の様式を,区分,折り紙区分,包囲,辺縁位,人物下 線,上部の線,下部の線の7つに分類している。それらを参考にして脚湯(1998)は,

KFDにおける「区分」が社会的孤立や,引っ込み思案の児童の描画に多く見られるこ と,家族の感情的隔離を意味すること,また「包囲」が他者に対してあるいは他者との 関係における自分自身に開放的な感情態度を持ち得ない時,他者あるいは自分自身を閉 じこめてしまう様式であると述べている。高橋・高橋(1991)は,人物画を構成する必 須部分の「省略」は,その領域の象徴するものに対する葛藤や関心を表していると述べ ている。加藤(1991)は,身体部分の「雀略」された人物像は,その人物への葛藤,不 安,心理否定を示すと述べている。

 ところで,「包囲」と「区分」とは,関係性に関わる心的構えの反映として類似した様 式であることから,『包囲と区分』の結果を包括的に見た場合,本調査研究⑥の結果から,

これらを用いた人は,用いなかった人に比べて,肯定感情および否定感情ともに共有で きない経験が多く,否定感情については共有できた経験も少ないという可能性がある。

このような結果について,様式の中の「区分」の特徴(対人的交流の抑制,社会的孤立,

家族の感情的隔離)や「包囲」の特徴(当該人物を感情的に閉じこめる様式)と一致し,

臨床的にもこの結果は十分に容認できるものと考えられる。

 KSDでは,人物の身体の一一部を省略する人は,肯定感情と否定感情ともに共有しに くいが,一一方でKFDでは,肯定感情については共有しにくいとは欝えないことが示さ れた。このように,KFDについては一般的な解釈があてはまらない。この原因として

は,KFDとKSDにおける人間関係の違いがあると考えられる。 KFDにおける人間

関係は家族という,いわば継続的な関係が中心であり,それは変化の少ないものである。

それに対してKSDにおける人間関係は,断片的なものが中心であり,それは変化し続 けるものであり,一時的なものでもある。こうした描画における対人関係の継続性や緊 密度の高さの違いが反映しているとも推察される。しかし,どのような違いが反映され ていたのかを本調査研究⑥を通して明らかにすることはできなかった。

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 84-91)