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本研究における動的家族画と動的学校画の位置づけ

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 34-37)

第2章 描画テストと描画療法

第3節  本研究における動的家族画と動的学校画の位置づけ

1 動的家族画と動的学校画システム法の利点

KFDでは,家族画に 動き を導入することで,質量ともに,描爾から得られる診断 的情報を増加させ,家族画を一層深めた。さらに,描画法の人格的アセスメント法とし ての奥行を大きく広げたということもできる。

 90ward, K蓑。鐸&Prout(1985)は, K F DとKSDの両方を問時に使用し,その違い を比較することなどによる利点として,次の①〜③をあげている。①家庭と学校にまた がる子どもの問題の広がりを知ることができる ②学校での態度や行動の原因の背景に ある家庭や家族の問題が何か,また家族や家族の行動に影響を及ぼす学校や教室の問題 は何かを確かめることができる ③その状況に特徴的な関係,つまり子どもの聞題に役 立ち,治療の情報源として有益な相互作用を分離してとりだすことができる。

2 動的家族画と動的学校法の臨床的適用とその知見

 著者は,これまで教育センターの教育相談室や大学の学生相談などのカウンセリング において,さまざまな描画法を用いてきた。その目的の一つは,クライエントのパーソ ナリティ理解に役立っことがあるが,むしろ,クライエント自身の気付いていないある いは書面で表現しにくい感情や欲求の理解のために有用な心理技法としての使用でもあ る。その他,例えば箱庭療法など他の投影法に比べて実施が簡便であることも,学校現 場でも使用しやすい利点につながると考えている。

 その中でも著者自身は,不登校をはじめとする学校不適応の子どものカウンセリング

には,KFDとKSDを組み合わせて使用する「家族・学校動的描画システム」の有効

性を検証L,様々な臨床的知見を得てきた(橋本:エ991,1998a,1998b,1999a,1999b,

1999c)。それらを通して,使用についての適切な配慮を前提としてKSDを用いること は,学校に関しての言語表現や情報伝達の難しい学校不適応の子どもの言語的認ミュニ ケーーシgンを補い,学校イメージや学校に関するさまざまな情報を得ることにもつなが る(橋本:1998a,1998b,1999a,1999b)。また,学校カウンセリングの過程での描画は,

子ども理解を助け,そこには心の変化が投影されていく。また,KFDからは家族像が,

さらにKSDを組み合わせることで,子どもの学校像さらには全体像が見え,学校との 環境調整にも役だつことなども示されている。

 このようにパbUソナリテKを評定する以外に,動的描画法は,子どもや青年のカウン

セリングや心理臨床の面において実用的な手助けともなる。この動的描画法の 描写状 態 という性質がカウンセリングの進行状況を知る上でのモニタリングともなるし,ま た子どもが現在とらわれている心理的問題を提示しやすくしてくれる。ことばでの表現 が苦手な子どもにとっては,この方法は特に有効である。また,動的描画法は,治療場 面でのプmセスの中で非形式な質問の延長として使用されることもある。

3 本研究における動的家族画と動的学校画の使用の國的とその位置づけ

 描画法は,投影法のなかでも構成度が低く自由度が高いがゆえに,客観的な描画の評 価・解釈基準を設けるのは難しい(松瀬,1995)という指摘があるが,一方では,これ まで幾つかの課題描画法には客観化の試みがなされており(青木,1986:Buck,1948:

皆藤,1994:Koppitz,1996:Vane翻is磯,1965),そこから見いだされた病的指標・

発達的指標などは解釈の目安としてある程度の成果を得ている。

 ところで,これまでの共感性研究では,投影法と共感性の関係について検討したもの は非常に少なく,とりわけ描画にみられる共感性を検討したものはほとんどない。そこ で,本論文では,投影法と共感性の関係について検討するが,具体的には投影法の代表 的な一つである描画法をとりあげる。描画法を通してみた共感性の構造として,描画表 現にみられる共感性について検討する。意識水準による質問紙法による尺度では測れな い無意識部分あるいは無意識から意識層にわたるものの測定としての投影法を使:訳して、

共感性を測ることを試みる。まずは投影法の中でも,TATによる共感性の測定を試み るが,言語が介在し,訳語コミュニケーシsuンという手段を用いるTATでは,無意識 層に近い部分の測定には限界があると考えられる。そこで,言語を媒体とせず,より自

由な自己表現の許される,描画法にみられる共感性についての検討を試みる。

 さらに,描画法の中でもKFDとKSDを用いたのは,次のような理由によるところ

が大きい。

 描画法は,バウムテストなどの少数のものを除いて,人物像もしくは人物像を含んだ ものを課題とするものが多い。これまでの描画に関する臨床発達研究の成果として,次 のように描画能力を発達的に見ることができよう。Di Leo(1973)によると,このよう な描画能力の発達過程は,時代や社会を問わず人類に共通のものであり,年少児にとっ ては,描画で最も親しみやすく容易なものは人物像である。このような理由から,描画 法では人物像をその課題とすることが多いと考えられる。人生の初期から最も慣れ親し んだものを,しかも非言語的に遂行することは,検査に際しての被験者の抵抗を少なく

し,心理検査として適している。事実,臨床場懸において,児童や青年は,好んでこの 課題に取り組むことが多く,さらに,成人についても,たとえ書葉では拒否した人でも,

結局最後には描画を完成させてしまうことはめずらしくない。例えば,家族画(DAF)

で,描画者が家族の描画に示しがちな定例的な手法を除外するために,「それぞれの人が,

何かをしているところ・…  jといった,ほんのちょっとした刺激をDAFの教示に 挿入することにより,KFDが得られるわけである。すなわち,描画者,とりわけ児童・

青年の理解に真に有用となる情報の質的側面が,動的描画の中にはより明白にみられる ということができよう。

 Di Le◎(1970) 1:よ:ると,児童,青年が自分の家族を描くように求められて描いた絵は,

自分自身と家族について,どのように感じているのかを伝えてくるのであって,相当に 情緒的なものであり,彼が知っているものは,ほとんど伝えられない。つまり,人物画 には児童,青年の家族に対する知的理解よりも,はるかに情緒的理解が投影されるとい

う見解であり,これについては,多くの臨床的知見が得られている(日比,1986:加藤,

1986:橋本,1997,1998a,1998b,1999a,1999b)。このように,児童・青年の家族画で は,家族に対する一般的知的理解よりも,個別的情緒的理解の投影される割合が高いと 考えられている。

 こうして,本論文においては,描画表現にみられる共感性の特徴が,感情の種類の違 いによる共感性にあるとの仮説が設定された。そこで,質問紙法による共感性尺度の下 位尺度として,感情的側面を測ることのできる共感性尺度の作成を試みた。

 家族・学校動的描画法の使用と解釈の詳細については,本論文末尾の,Appendix 1

に示す。

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 34-37)