• 検索結果がありません。

摂食障害などの身体症状を訴え続けた大学生の面接過程      における共感性(事例的検討④)

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 143-152)

第8章 面接過程における共感性の事例的考察

第2節  摂食障害などの身体症状を訴え続けた大学生の面接過程      における共感性(事例的検討④)

1 問題と鼠的

 青年期の共感性について,カウンセラーの共感的理解とクライXントの共感との相互 関係についての典型的な事例を,事例研究として報告し,面接過程における共感につい て考察する。さらに,カウンセリングの過程で施行された描画と共感性の関連について,

臨床的知見と調査研究の知見をあわせて検討する。

2 方法

 本事例では,摂食障害などの身体症状を訴えた大学生の面接過程における共感に焦点 化して,考察する。ここでは,共感あるいは共感的理解がどのように生起するかをふり 返り,カウンセラーの側の共感性とともに,クライエントの側の共感性について考察す

る。その際,面接過程における心理アセスメントなども参考にする。また,施行された 描画法における描画特徴と共感性の関係についても検討する。

 本:事例における著者の援助態度としては,R◎gersのクライエント中心療法を核とする が,適宜柔軟に他の技法を使用するといった折衷的な立場をとった。

 なお,本事例はかなりのセッシsンがもたれたため,すべてのセッシsンを記述する ことはできないので,共感についての重要なエピソードの一部を,断片的に取り上げて 記述し検討する。なお,母子カウンセリングのうち,E子の面接過程を中心に既述する。

3 事例の概要

(1)クライエント:E子(高校2年で相談の再来,今画の初翻面接時短大2年女子)

〈2)主訴:摂食障害(過食と拒食:を繰り返す),学校不適応

(3)生育歴,家族構成=父(会社員),母(会社員),E子,弟(高校2年生)の4人        家族。

 前嗣高校生で来所時の情報と今回のインチ・一一・ク面接からの情報をまとめる。380◎gで 自然出産。幼少期から,親や先生の言うことを聞く 良い子 で,学校の成績も上位だ った。気弱で対人関係は苦手だが,友人は何人かいた。誰にでも優しく親切にし,高校 受験当日,発作で倒れた通りがかりの女性を,試験に遅刻しそうになりながらも救急車 の到着まで介抱したというエピソードもある。その他,病気の友達の見舞いとノート作

りを侮カ月も続けたことなど,これまでの親切は数えきれない。母親は,E子には過保 護過干渉の養育傾向にある。父親は楽天的でのんびりした性格で,そこが母親には気に 入らず,夫婦は不和でけんかが絶えなかった。子育て,家のやりくりともに母親に実権 がある。弟との姉弟関係は特に良好ではないが,弟は男子だから別といった性差を表面 的には抵抗なく受け入れて育った。E子は高校2年の2学期に不登校傾向と情緒不安を 主訴に,高校からの紹介で相談来所した。母子関係など解決すべき問題も推察されたが,

自宅および母親の勤務先も遠方であり,本人のみの通所とし,4カ月程でほぼ不登校が 回復し通学が再会し終了した。その頃実施したTK式診断的新親子関係テストでも,干 渉,溺愛,心配などに低得点の親と高得点の子どもの差が大きく,思春期の子どもの評 価であることを考慮しても,親の自己評価と子どもの受け取り方のズレが明確に示され た。過保護で過干渉な母親の姿が浮き彫りになり,E子の真の自海や活動は育ちにくか ったと思われた。葛藤的で不伸の両親像も推察された。

(4)相談までの経緯

 E子は,小学生の頃からの夢である短大医療福祉系学科に進学した。最初は学科の成 績も良く順調だったが,2年生になり初めての実習先で患者への対応のまずさを指摘さ れた。担当の主任からは,人間関係の経験に寮に入ったらどうかと勧められた。幼少期 から誰にでも人一倍優しくするE子には,患者への接し方を指摘されたことが余程ショ

ックだったらしく,6月,周囲の反対も押し切りすぐに入寮したが,極度の緊張が続い た。間もなく,寮の先輩の「仕事のてきぱきできる人は痩せている」という言葉を聞い たのがきっかけで,E子はダイエットを始めた。55 kgの体重も42 kgまで減った(身長 157 cm)。夏休みもほとんど帰宅せず寮で過ごし,後期授業が始まり, E子はスーーパーで 籠いっぱいの食料を買い,帰って一気に食べた。翌日も翌々Hも買い込んで食べた。と ころが気がつくと,E子はトイレで吐いていた。その後は,買い込んで食べ,食べた後 はお腹がはったり,食べ過ぎた後海などで,大量の下剤を飲んでお腹を空にする行動が 続いた。ダイエットで痩せ始めた頃はうまくいき出したと思っていた実習も,失敗ばか りで叱られる臼が続き,食べては下剤を飲む生活が自分の意志では=ントm一ルできな くなった。誰にも会えず,寮の自室からは一歩も出なくなる。体重も40kgを切り,短大 の先生の半ば強制的な判断で,半年ぶりに寮を出て家に戻ったが,食行動は改善されな かった。母親はE子の症状が受け入れられず,E子を責めるばかりだった。父親は2年 前からほぼ別居状態であった。短大からは,実習不適応を指摘され,このままでは実習

単位不認定で進級できないと告げられたE子は,2年生の10角半ば,転勤で異動してい た薯者の職場を探し相談に来た。

(5)治療方針

 症状や前回来所時の心理アセスメントなどから推測されるE子の自己防衛規制や,母 親との母子共生関係に象徴される家族力動などを踏まえ,クライエント回心療法を核と するが,柔軟に折衷的に対応する。面接では受容と共感を重視し,E子自身の人格の成 長への:支援と同時に,家庭環境特に母子関係の改善にも配慮する。

4 面接経過

 面接はX年10月から翌翌年3月まで,約2年5ヶ月53回であり,初年度は原則週 1回1時間としたが,次年度までには2週に1回程度とし,さらに回復に伴って,E子

からの申し込み時に適宜実施することとした。

 各セッションを#○で示し,経過状況の説明の記載についてはその時期を,対応する セッションを用いて(#○〜#○)のように示す。

 「」はE子(クライエント)の言葉,〈 〉は著者(以下,Thと記す)の書葉を

表す

〈第1期〉 (#1〜#7)短大2年後期【奇妙な言動を訴える時期】(精神病理まで      を視野に入れながら,摂食障害に対応する)

 (#1〜#5)1◎月半ば,E子は食症状に苦しみ,頼ってもいい対象が見つからず,

自分自身が=ントロールできなくなり,不安と混乱に陥りく先生助けてほしい〉とThを 探して来た。Thには,高校生時の豊かな身体つきとは別人のように見え,体重減少も 20%を超え,洗浄強迫などの神経症状も続き,E子の内界に身体が反応しての身体症状

とは考えられるが,身体面からE子を支えてくれる存在としての医療が必要と考え,ま ずは病院受診をすすめ,E子はかかりつけの診療所の内科から,同診療所内の神経内科

を紹介され受診した。抵癬圧はあるが,体重減少の劉には身体機能などに異常所見はみ あたらず,主治医と相談し,当面は通院で身体管理しながら,カウンセリングで対応す ることになった。カウンセリングでは,摂食障害を取り除くことだけに焦点化せず,E 子をありのままに認め,E子のかかえる問題を総合的にみていくこととした。高校生で 相談来所時の面接では,E子のパーソナリティの未熟さが印象的であった。

 #1#2#3:E子は,「誰かが呼ぶ声がして,気が付いたら公園で一人プラン=に乗

っている。行け行けと言われて,外に飛び出してボールを蹴ってることもある。いつも 私一人だけなんだけどj「友達や先生が悪口を言っている。みんなが集まってこそこそ言

うのが聞こえる」「まわりの人たちはみんなわたしのこと嫌ってる,悪口ばかりこそこそ 書ってる,私もう絶えられない」「周りの声が気持ち悪くて,人前で,このやろうとか大 声で書ってしまいそうで怖い」「誰かに見られていて眠れない」。「もうやっていけないと 思うと恐くてたまらない」など,食症状の他にもさまざまに訴えた。その他にも,母親 からの聴取からは,洗浄強迫や不潔恐怖等々,様々な症状が伺えた。そのような中,E 子が自ら治療行動へと向いたことにむしろ驚いが,「大学続けたい,資格取りたいから」

とE子は訴えた。

 #4#5:「もうだめかもしれない。私は病気かもしれない?どうしてこんなにおかし な症状になるの?」「どうしてこんなになるのかわからない,教えてほしい,調べてほし い」と訴え,困惑していた。体重減少は落ち着くが,強迫症状も見られ主治医と連絡を

とり,連携を再度確認した。まずは面接で心の安定を図りながら,あくまで心理状態を 知る参考程度ということで,無理のないペースで,#3ではバウムテストを,#4では 動的家族画(以下,KFDとする)を実施した。#5では下田式性格検査(以下, SP

Iとする)を実施した。そのKFDをFig8・2・1に示す。

 「病気ではないか?」と不安が高まっていた£子は,参考程度の心理テストや面接を 通して くそれほど心配しなくていいんじゃないかと思うよ〉 と返答することで,情 緒的にかなり安定したようだった。E子の「自分を変えなければならない?」「どうした

ら自分が変えられるの?」の問いに,Thからは,<無理に変える必要はないと思うよ,

少しずつでも自分を表現できている程度で大丈夫と思うよ。〉と当面のR標設定をした。

〈第E期〉 〈#6〜#19)幼児のよう1:共感的応答を求め,母子関係や対人関係を語       る【身体症状の安定する時期】

 (#6〜#11)E子の話はまず身体症状の説明から始まり,大学を申心とした,家 族以外の身近な人間関係への不満や批判が続いた。友人から疎外されたこと,まじめに やれば「良いかっこうしい」と言われたこと,実習先の先輩から,翌日の予定を知らさ れずに忘れ物を重ね,「こんなこともできないの」と責められたこと,教官たちから「あ なたはこの仕事にむいてないのと違う?」と何度も叱責されたこと等々,E子のこの吐 き出しは2ヶ月近く続き,過去から現在までの対面関係を中心とした周囲への批判が続 いた。話の内容からは,人には親切にするが,自分も優しくされないと傷つくことの多

ドキュメント内 描画法にみられる共感性についての研究 (ページ 143-152)