• 検索結果がありません。

第 2 章 ケース業界の概況とケースの選択

3. ケースデザイン

3.3 長安汽車の信頼性と妥当性の測定

ケースの記述に先立って, 本項では, 本ケース・スタディの信頼性と妥当性を評価する。

研究を評価する基準としては, 「構成概念妥当性」, 「内的妥当性」, 「外的妥当性」と

「信頼性」の四つが提案されている(Yin, 2018)。Yinはそれぞれの項目における具体的 な検証方法を以下のように示してる。

表2-4ケースの信頼性と妥当性の評価方法

項目 目標 方法

構成概念妥 当性

調査対象となる概念の正確で操作可 能な測定尺度を形成する。

①複数の証拠源の利用

②証拠の連鎖の確立

③主要な情報提供者によるケー ス・スタディ・レポートのレビュ ー

内的妥当性 さまざまな事象から因果関係を見つ けること, すなわち, 特定の条件が別の 特定の結果を引き起こすことを証明す ること。

①パターン適合の実施

②説明構築の実施

③時系列分析

④論理モデル

⑤ケース間統合 外的妥当性 外部妥当性が意味するのは,ケー

ス・スタディにおける発見は,また別 の標的集団にも適用できることであ る。

①理論ガイドを使用したケー ス・スタディ

②複数ケース・ スタディでの 追試の論理の利用

信頼性 ケース・スタディの各ステップは繰 り返し可能であり, このスタディを繰 り返しても同じ結果が得られる。

①調査プロトコルの利用

②データベースの開発

出所:Yin(2018)をもとに筆者作成。

以下では本研究のケースにおいて上記の四つの側面をそれぞれ検討する。

(1) 構成概念妥当性

まず構成概念(construct)とは, 「理論的仮説において用いられる, 意識的に厳密に定 義された, 抽象的な概念」のことである(藤本, 2006)。構成概念妥当性(construct

validity)とは, 指標が意図された概念および理論を正確に反映している度合いである

(藤本, 2006)。この研究の構成概念の妥当性を確保するために, 複数の情報源の利用と,

②証拠連鎖(後述)の確立, そして企業の関係者によるケース・スタディ・レポートの 内容確認を依頼するという方法を採用した。

①複数の情報源の利用とはつまり, 二つ以上のソースから, 同じ事実あるいは現象を立 証する方法であり, 「三角測量法」とも呼ばれる(Yin, 2018)。上で述べたように本研究 ではインタビュー調査資料, 各種統計資料, 企業内部資料, 直接観察, 文献資料, 新聞, 雑 誌, インターネット上の記事, 調査報告書, 有価証券報告書などの公開資料に基づいて資 料を収集した。したがって本研究は多数の情報源を利用していると言えだろう。

次に②証拠連鎖の確立とは, 最初の研究課題からどのような過程を経て最終的な結論が 導き出されたのかということを, データベースを駆使し, ある記述に対して関連する証拠 を引用し, 最初から最後の結論の導出までつないでいくことである。これによって読者 は, 結論が客観的なデータに基づいて導き出されたと判断することができる。

本研究では, 様々なデータを駆使して, 研究課題から結論までの導出過程を明示した。

最後に本研究は③主要な情報提供者にケース・スタディ・レポートのレビューも依頼 した。すなわち, 本ケース・スタディのすべての内容を長安の担当者に送信し, フィード バックを受け取り, 修正を行う形で繰り返し連絡を取った。

(2) 内的妥当性

内的妥当性(internal validity)とは, ある事例で観察された変数間の関係が, 実は他の変 数によって引き起こされている可能性が排除されている程度である(桑嶋, 2006)。つま り, 本指標は変数間の因果関係の評価に関する評価指標であり, あるいは他の無関係な要 因によって妨害されていない程度を表している。

Yin(2018) は内的妥当性を確保するための方法として, パターン適合, 説明構築, 時

系列分析, プログラム論理モデルという四つの主要な分析方法と, 部分分析単位の分析,

反復観察の実施, ケース・サーベイの実施という三つの補助的な分析方法を提出した。本 研究では内部妥当性を改善するため, 以下の方法を用いた。

 パターン適合・・・経験にもとづくパターンと予測されるパターンを比較し,因果的 推論における独立変数と従属変数の関連性を考察する。

 説明構築の実施・・・確実な要因の存在とその関連性の明確化により, 現象を説明す る。

要するに本研究では, 変数間の因果関係に注目し, 事実を体系的に分析する。

 時系列分析・・・この方法は年代ごとに各証拠の因果関係を追及するものである。

本研究では, 時系列に沿って出来事を示し, さらに出来事間の因果関係を明確にする。

(3) 外的妥当性

外的妥当性(external validity)とは研究結果の類推あるいは一般化しうる範囲に関する 評価指標である。

それを確保するため, 本章ではまず①理論に基づいたケース・スタディの実施を行う。

本研究では先行研究をレビューした上で, 社会ネットワークの三つの特性とDCの関係の 分析フレーム・ワークを構築した。社会ネットワークの三つの特性に関する理論を本研 究の理論的根拠として採用した。

(4)信頼性

信頼性(reliability)とは, データ収集の手続きなど研究の操作を繰りかえして, 同じ結 果が得られるかどうかに関する評価指標である。

本章ではケースデータベースの開発という方法を用いた。その方法はデータベースを 作成することによってデータを体系化し管理することを意味する。

本研究では, 収集した各資料, 例えば, ケース記録資料, ケース企業が所在する業界資 料, ケース企業に関する他の研究者の研究資料, 外部環境に関する調査資料を分類し, 体 系化し, 長安の企業研究データベースを構築し, 信頼性が高いケース・スタディとは判断 される。

以下では, 長安汽車の概要を紹介する。