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第 2 章 ケース業界の概況とケースの選択

2. 中国自動車業界の概況

2.4 中国自動車産業の課題

中国の自動車産業は飛躍的に成長してきたにもかかわらず, なおいくつかの課題を抱 えている。その中でも特に, 次のふたつの課題に着目したい。

ひとつ目の課題は, 自主開発能力の低下にある。とくに国有系自動車企業の多くはいま だにコア技術をもたず,外資企業に強く依存したままである。

その理由のひとつ目は, 国有系自動車企業が以前から「市場換技術」の方針を堅持した 上で合弁事業を行い, 外国企業の技術に依存して発展していたことにある。そのために他 社のコア技術を習得することに至らず, 独自の技術開発を進めることができなかった。

また, 一部の企業は長期的な利益より短期的な利益を盲目的に追及し,独自の研究開発 活動に与える資金や人力を削減したことも大きい。

近年上記の課題を意識し始めた企業の数は増えている。そうした企業は積極的に自主 開発能力の向上を図っているが, 今の段階ではコア部品の自主開発能力がまだ低いと言わ ざるをえない。

国有系自動車企業が抱えるふたつ目の課題は, 全体的な国際競争力の低さである。海外 の自動車企業と比較したとき, 中国の自動車企業の売上台数にはまだ大きな差がある。

図2-7, 図2-8 はそれぞれ2018-2019年における中国, 世界のトップ10自動車企業 グループの販売台数を示している。

図2-7 2018年-2019年における中国トップ10の自動車企業グループの販売台数 注:上記のデータには各企業の合弁企業の販売量も含まれる。

出所:中国汽車工業協会「2019汽車工業運営状況」をもとに筆者作成。

一方, 世界のトップ10自動車企業グループの販売台数は図2-8の通りとなる。

図2-8 2018年-2019年における世界トップ10の自動車企業グループの販売量 出所:ネット公開記事をもとに筆者作成。

①AUTOMOTIVE JOBS「【2019年版】世界自動車メーカー売上高ランキング -トヨタ は30兆円超えも, 2位に後退」(https://automotive.ten-navi.com/article/31369/ ), 2020年

11月20日閲覧。

②AUTOMOTIVE JOBS「【2020年版】世界自動車メーカー販売台数ランキング|VWが4年 連続の首位をキープ」(AUTOMOTIVE JOBS https://automotive.ten-navi.com/article/33257/ ) 2020年11月20日閲覧。

これらの図(図2-7,図2-8)より読み取れるように, 中国と世界のトップ10自動車企 業の販売台数のあいだには大きなギャップがある。

さらに,中国の自動車各年輸出台数を確認していく。以下の図では2001年-2019年に おける中国自動車の輸出台数の推移を示している。

図2-9 2001年-2019年における中国自動車輸出台数の推移

出所:各年度の『中国自動車工業年鑑』,中国汽車工業協会『中国汽車工業産销快訊』

をもとに筆者作成。

上の図2-9を図2-1に示されている2001-2019年の中国自動車生産台数と比較する と, 中国の自動車生産台数は世界一であるものの,その輸出台数が生産台数に占める割合

はほぼ4%未満であることがわかった。

以上に示されたデータから,中国自動車産業の国際競争力が低いことを確認すること ができた。その理由としては, 中国製自動車はその品質と技術, 特許,ブランド力の面に おいて外国自動車企業に大きく劣るのに加えて, 多くの企業がコストリーダーシップ戦 略を採用しているために, 販売網, 専門ディーラー網とアフターサービスなどが完全に整 備されていないことが挙げられる。