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第 2 章 ケース業界の概況とケースの選択

4. 長安汽車のケース

次に,重慶長安汽車の構成と株主出資図(2019年時点)を以下の図で示す。

図2-10 長安汽車の構成と株主出資図 注:①パーセンテージ(%)は当該企業の投資比率を示す。

②中国長安汽車集団有限公司は中国兵器装備集団の子会社であり,その前身は2005年 に設立された「中国南方工業汽車股份有限公司」であり,2009年に「中国長安汽車集団 股份有限公司」と改称し,さらに 2019 年 2 月に「中国長安汽車集団有限公司」に改名 された。

③「長馬発動機」は「長安マツダ・エンジン有限公司」を指す。

④「長安汽車国際銷售」は「重慶長安汽車国際銷售服務有限公司」を指す。

⑥「重慶長安汽車服務」は「重慶長安汽車客戶服務有限公司」を指す。

⑦「鎮江德茂海潤股権」は「鎮江德茂海潤股権投資基金合伙企業」を指す。

出所:長安2019年年次報告書をもとに筆者作成。

長安汽車の事業範囲をみるなら, 当社は軽自動車40(主に軽型バン,軽型バスといった 商用車)・エンジンの生産を起点として, 事業分野を乗用車, 新エネルギー自動車にまで 拡大し, 現在はテクノロジー企業へ転換している。それと並行して長安汽車は研究開発に も投資を続け, 2003年から2011年にかけて, 「5か国9か所」のグローバル研究開発ネッ トワークを確立する41(図2-11)。

40 中国語は微車。そこの軽自動車は軽トラックと軽バン, 軽バスが含まれる。

41 5か国9カ所とは, 中国, イタリア, 英国, 米国, 日本の「5か国」と, 重慶, 北京, 上海, 江西, ハルビ ン, トリノ, バーミンガム(2010年に,英国研究開発センターはノッティンガムで設立されたが,2015 年にバーミンガムに移転された。), デトロイト, 横浜の「9カ所」を指す。 その中でも重慶は全体計 画, 戦略の策定に取り組み, 上海はグローバル人材の採用, 工程設計, 北京は政策, 法規および新エネル ギー技術の研究開発に取り組んでいる。ハルビンや江西ではグループ傘下の自主ブランド企業である哈 飛汽車や昌河汽車の研究開発をサポートする。海外拠点では, イタリアがエクステリア・デザイン, 本が内外装のデザイン, 英国がパワー研究開発, 米国がシャシーの研究開発を担当している。

図2-11 長安の「5か国9か所」のグローバル研究開発 出所:長安の各年度の年次報告書および各新聞記事をもとに筆者作成。

さらに, 長安研究総院42の下に, CAEセンター, 乗用車開発, 衝突安全センター, NVH研 究所, 先端技術研究などの16つの研究部門が設置されている。このように, 5ヵ国9ヵ所 に研究拠点, 16つの研究所の間に連動しながら, 24時間体制で自主ブランドの研究開発研 究を行っている。

現在の長安は自主開発能力の面において, 長安を持つ技術が広範囲を網羅しており, 国 有系自動車企業の中でも高い水準にある。車両全体の開発に一定の成功を収めただけで なく, コア部品であるエンジンの自主ブランドを有し, 新エネルギー車に代表される最先 端の研究でも一定の成果を挙げている43

42前身は1995年に設立され長安汽車工程研究院であった。2010年7, 長安汽車工程研究総院に改称され た。

(2)長安汽車の合弁企業の歴史的進展とブランド一覧

本項では長安汽車の合弁事業の歴史を通覧する。次の表2-5は, 長安の主要な合弁企 業を一覧にしてまとめたものである。

表2-5長安汽車の主要な合弁企業の歴史的進展 設立時間 企業の名称

1993年5月 重慶長安鈴木汽車有限公司(長安スズキ)44 2001年4月 長安福特汽車有限公司(長安フォード)45 2004年10月 江鈴控股有限公司46

2005年10月 長安馬自達発動機有限公司(長安マツダ・

エンジン)47

2006年3月 長安福特馬自達汽車有限公司(長安フォー ド・マツダ)48

44 当時,長安汽車, 鈴木自動車, 日商岩井(現:双日,日本総合商社),鈴木中国投資有限公司の出資 比率はそれぞれ50%, 25%, 15%, 10%であった。また19991月に出資比率はそれぞれ51%, 25%, 14%,

10%に更新された。ただし201894日, スズキは長安汽車との合弁事業を解消し, 長安スズキのスズ

キ保有株式50%分を長安汽車に譲渡することで合意した(詳細は「長安汽車:関于收購重慶長安鈴木汽車

有限公司50%股権的関連交易公告」長安汽車を参照)。また鈴木自動車は,日本の四輪車および二輪車

のメーカーである。

45 長安フォードは, 2001年4月に長安汽車,中国長安,フォード汽車,フォード汽車(中国)有限公司に よって設立された中外合弁会社である。各社の株式保有率はそれぞれ26%, 24%,25%,25%であった。

2003年に,長安汽車は中国長安の保有する「長安フォード」企業の全株式を購入し,長安フォードの株

式の50%を所有することになった。

46 200410月時点で長安汽車と江陵汽車によって設立された合弁会社であり,それぞれの持株比率は5:5 であった。20198月に中国の愛馳汽車(Aiways,電気自動車企業)も参入し,江鈴控股は愛馳汽車, 江陵汽車, 長安汽車によって再編された。各社の持ち株比率は2:1:1であった。

47 その前身は,長安福特馬自達発動機有限公司(長安フォード・マツダエンジン,CFME)であった。

当時長安, フォード, マツダはそれぞれ2:1:1の株式を保有していた。20191月に,マツダはフォード が保有する長安フォード・マツダ・エンジンの全株式を購入した。それにより,長安とマツダはそれぞ れ会社の株式の50%を保有し,会社名も「長安馬自達発動機有限公司」(長安マツダ・エンジン)に変 更された。

48 マツダ汽車(株式会社)は, 20054月に設立された長安フォード有限公司南京公司のフォード株の

15%を取得し,長安フォード有限公司南京公司は長安, フォード, マツダによって50:35:15の持株比

率で再編成され,社名を長安フォード・マツダに変更した。さらに,2012827日, 長安フォード・

マツダ自動車有限公司が再編成・分立された。長安フォード有限公司はフォード・ブランド汽車にかか

2011年11月 長安標致雪鉄龍汽車有限公司(長安PSA, 英語略称:CAPSA)49

出所:長安の各年度の年次報告書をもとに筆者作成。

この表に示されているように長安汽車は国内および海外の多数の企業と合弁事業を展 開してきた。続いて,長安傘下のブランドと商品の一覧を示す。

図2-12 長安汽車傘下のブランドと商品一覧図

わる仕事を担当し,た。南京には長安マツダ自動車有限公司が新しく設立され, これはマツダ・ブランド 汽車にかかわる仕事を担当する。長安とマツダの持株比率はそれぞれ50%である。

49 ただし,当該企業は,2011年11月に中国長安とフランスのプジョーシ・トロエン(PSA)グループと の共同で設立された合弁企業であった。各社がそれぞれ株式の50%を所有していた。その後,2012年12

出所:興業証券データ「長安汽車業務研究報告2019版」 をもとに筆者作成。