第 1 章 研究の背景と目的
6. 本論文の構成
最後に, 本研究の章構成と各章の概要について説明していこう。
本研究の構成を図示するなら, 次の図1-4のようになる。
図1-4 本論文の構造フロー 出所:筆者作成。
まず, 第1章(本章)から3章から構成される第Ⅰ部では, 本研究の問題意識, リサー チ・クエスチョンを提示し, 研究方法と意義, 中国の製造業と自動車産業の発展現状を報 告する。
第1章では本研究の現実的および理論的な背景を述べた。そのうえで,本研究の研究対 象を述べながら,6つのリサーチ・クエスチョンを明らかにした。本研究では,研究対象 が中国の製造業を選定している。特にDCの過程に関する研究は,中国の製造業の中の外 資依存型に焦点を当てる。そして研究方法と意義を提示し,論文の構成を明らかにした。
第2章では, 実践的観点から自動車産業の歴史的変遷, 現状と特徴を論述する。その後, 本論文に取り上げたケースの選択, 収集, 分析と研究評価の具体的な方法を述べる。
第Ⅱ部は第3章と第3章の補論から構成され, DCの先行研究と構成次元に関する考察の 内容となっている。
第3章では,DCの概念,DCを構成する次元およびその内実を明らかにすることが目的 である。まず, DC理論に関する先行研究を整理し, 理論成果を考察する。そこで, DCの 先行研究を整理した上で, 本論文で論じるDCの概念を明確にする。また,今までDC次 元に関する研究を基に, その議論を拡張することを試みる。そのために本章では, 先行研 究のレビューを行いながら, 中国製造業の事情を踏まえたうえで, DCを構成する諸次元お よびそれらの次元の内実を確定する。
第3章の補論では,CiteSpaceの情報可視化解析ソフトウェアを用い, 俯瞰的にDC領域 の先行研究を考察することによって研究重点, トレンドの推移を明らかにする。それら の検討によって, 本研究における理論的な土台を確立する。
第4章から6章で構成される第Ⅲ部は社会ネットワークとDCの形成・変化の間の関係 および過程を明らかにすることを目的としている。
第4章においてはDCの形成・変化, 社会ネットワークの理論研究, 両者の関係に関す る研究を検討しながら, 本論文の理論的位置づけを論述する。そして社会ネットワークの 強度, 中心性, 異質性という三つの特性を取り上げ, それらの特性とDCの関係に着目し, 具体的に既存の先行研究をレビューしながら仮説を提示する。
第5章では最初に仮説モデルを構築し, 次に中国の製造業を対象とするアンケートを統 計的に分析することで導き出された結果について検討する。
第6章の目的は, 上記の仮説の妥当性を検証するとともに, 中国の外資依存型の製造業 において,社会ネットワークはいかにDCに影響を与えるのかを明確にすることである。
この章では, 分析フレーム・ワークを構築し, 取り上げた事例に対する分析も行う。そ の際, 中国の自動車メーカーである長安汽車企業を取り上げる。まず企業概要やその企業 の発展経緯について述べる。続いて, 本フレーム・ワークを使用し, ケースを時系列に沿 って考察する。第4章の社会ネットワークとDC関係に関する仮説をケースで検証すると ともに, その二者間の影響関係を明確化にする。
第7章から9章で構成される第Ⅳ部では, OCおよび組織のライフサイクルの視点におい てDCと競争優位との関係, およびDCの形成・進化過程を検討する。
まず第7章は, 競争優位, オーディナリー・ケイパビリティ(OC), DCの関係および組 織のライフサイクルに関する先行研究を検討することで, それらの間の関係に関する仮 説を提示する。
そして第8章では, 上記の仮説検証を行う。その方法としては, アンケートの実施や得 られたデータの統計分析を採用する。
第9章では第6章と同様のアプローチを使用する。すなわちこの章では最初にケースの 分析フレーム・ワークを提示し, その後で, 長安のケースを通じて「中国の外資依存型の 製造業において, 競争優位を獲得・維持するためにDCはどのように形成され, 進化した きたのか」を明確にする。同時に,長安のケースを通じてDCがどのようにして競争優位 に影響を与えているのかを細かく検討を加えることによって,上記の仮説を実例に検証 し, 適用性があるかどうかを確認する。
最後の第Ⅴ部は第10章のみから構成される。
第10章では本稿で取り上げた内容を総括するとともに, 本研究の貢献および今後の中 国および発展途上国の製造業に対する提言を行う。まず本論文に行った考察から得られ た理論的な貢献, 実際的なイン プリケーションを明示する。最後に今後に向けた課題に ついて言及する。