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第 4 章 DC と社会ネットワークとの関係に関する仮説提示

4. 小括

本章では本論文で論じるDCの構成次元と内実を確定した。DCを構成する4つの能力 はそれぞれ果たす役割が異なる。ここで各能力の役割を今一度要約しつつ確認しておこ う。

環境感知能力とは, 企業が環境の変化を感知し, 機会と脅威を特定し, 将来発展の方向 性を決定する能力であり, 企業の成長にとって最も基礎的な能力である。

さらに企業は学習能力と統合能力を用い, 知識を学習したうえで, それらの資源と組織 従来の知識と結合て, 新しい知識を生み出す。それら二つの能力は新技術と製品を開発し, 顧客に新しい価値を提供するため, 競争優位の維持にとっての重要な基盤となる。

最後に再構築能力は, 競争優位を維持するための補助的役割を果たしている。企業が新 しい戦略の策定, 事業規模の拡大などにともない, それに対応する組織変革も必要になる。

その際に企業は再構築能力を用いて組織の硬直性を克服し, 相応しい組織構造と形態の改 編, 作業規則, 手順の更新または修正を行う。

本章で提案した仮説が正しければ, これら4 つの能力は企業のDCの不可欠な部分であ る。これらの能力は互いに補完的であり, 効果的に統合されている場合にのみ相乗効果を 発揮ことができる。

第3章補論 CiteSpace にもとづく DC 先行研究の計量書誌学分 析

1.はじめに

本章は,第3章の補論として,DCの先行研究を俯瞰的観点から考察するものである。

DC分野の研究動向, 文献間の参照関係に関する包括的な研究レビューはまだ少ない。DC 領域の成果は蓄積されつつあるが, それにもかかわらず, 出版物の参照を視覚的なツール で分析した研究はほとんどない。しかしDCは, 組織および競争優位の領域で最も重要な 概念である以上, DC研究の動向を分析するレビューが急務である。

以上の状況を踏まえて,本章の目的は, DCの研究ホット・スポットと動向などを考察 すること, DC理論の著者, ジャーナル, 国, 参考文献などに関する幅広い情報を提供する こと, そして当該領域における今後の研究課題を提起すること, この3つである。

方法としては, 1990年から2019年10月までの期間にWOS(Web of Science)コレクシ ョンで収録されている経営学と経済学およびビジネス領域でDCに関連する文献をもとに

CiteSpaceと呼ばれるソフトウェアを用いることとする。

本章の構成は以下の通りである。第2節では研究方法と目的を論述する。続く第節では データの出所と検索手順を説明し, 第4節の解釈部分においては, 参照文献, 著者, 文献 の共引用分析, キーワード共現分析, 協力ネットワーク(国, 機関)を考察し, 最後に第5 節では, 調査結果をまとめて, 分析で得た結論と課題およびDC理論における課題を提起 する。

2.研究方法と目的

以下では,本章の研究方法と目的について述べる。

2.1 研究方法

方法として計量書誌学を用いる。計量書誌学は現存する文献の統計分析の手法であり, 特定の分野における出版物の定量分析を提供するために使用される(Mayr & Scharnhorst, 2014)。

計量書誌学の主な分析カテゴリーは, 著者, キーワード, 参考文献, ジャーナル, 国, 機 関, および特別分野の傾向である(Abramo, D’Angelo & Viel, 2011)。計量書誌学は, 1900 年代初頭に出現した文学の定量的研究に端を発し, それ以来, 計量書誌学にもとづく文献 分析は学術研究に広く応用されてきた(Diem & Wolter, 2013)。そして計量書誌学の視覚 化研究は, コンピューター技術を用い, 実施することができる。例えば, Ucinet, Pajek,

CiteSpaceなどが挙げられる。

本節はその中のCiteSpaceという研究ツールを使用する。CiteSpace はChen et al.53が開 発した, 科学文献の情報を包括的に分析し, 視覚的な知識ビューを描画し, 研究テーマの 発展動向を把握するのに役立つツールである(Chen, 2004)。CiteSpaceは主に共引用分析 理論(co-ciationとパスファインダーアルゴリズム(pathfinder)の方法にもとづき, 特定 分野の文献を分析する。

CiteSpaceの分析過程を以下(図補-1)に示している。

53 詳細として,米国のドレクセル大学情報科学技術学部の陳超美(Chen Chaome よび中国の大連理工大学 WISE研究室が共同開発したソフトウェアである。

図補-1 CiteSpaceの分析過程

出所:「CiteSpace知識図譜的方法論功能」(陳悦, 陳超美, 2015)をもとに筆者翻訳・

作図。

また, CiteSpaceは3つの視覚化ビューを提供している。それぞれクラスター・ビュー

(Cluster View), タイムゾーン・ビュー(Timezone View), およびタイムライン・ビュ ー(Timeline View)である。クラスター・ビューは, さまざまな研究分野の知識構造に 焦点を当て, タイムゾーン・ビューは, 時間経過にともなう各研究トピックの進化の傾向 と相互作用を描写することに焦点を当てている。CiteSpaceの入力データの主なソースは Web of Science(Chen, 2013)である。

視覚化ビューの見方を説明しておく。図補-2に示すようにノードは参照文献を表し, ノードの大きさは, 論文引用の頻度に比例する。ノードのリングは文献引用のいわば歴 史であって, 年輪の色が当該文献が引用された時期を表している。青に近いほど古く, 逆 に赤に近いほどより最近の引用であることが読み取れる。なお, 各リングの太さは, 指定 されたタイムスライスにおける引用数に比例する。多数の年輪をもつ参照文献は, 引用回 数が多く, 共引用ネットワークの中で中心的な位置を占める。他方, ノード間のリンクは, 共引用の関係を表し, その太さは共引用の強度を示している54

図補-2 視覚化分析結果の例

出所: Chen, C.(2006)。

さらに詳細な分析を加えるために, 本節では以下3つの手法を選んだ。

①共引用55分析法

ふたつの論文間の類似性を, それらが(定期刊行物, 文書, 著者などで)同時に引用さ れた回数によって測定する。共引用分析法のひとつにクラスター分析がある。クラスタ ー分析は, 文献を互いの類似性によって異なるグループ(「クラスター」)に分類する 作業である。クラスター内の要素間には高い類似性があり, 異なるクラスター間には高 度の非類似性がある(Chen & Morris, 2003)。また, CiteSpaceでは, クラスター化のため のラベルは引用された文献のタイトル, インデックス, または要約から抽出することがで きる(陳悅等,2015 )。本節は, 参照文献, 著者, 文献の共引用分析を行う。

②協力ネットワーク分析

協力ネットワーク分析は主に, 研究者(機関および国)の科学的・技術的成果の共著を 分析するために行われる。本節では, 各機関と国の協力ネットワーク分析を実施する。

③キーワードの共起分析56

キーワード共起分析は, 理論の構造を解明し, 研究ホット・スポットを調査し, 研究トレ ンドを発見するための効果的な方法である。

2.2研究目的

本節は次の4点を明らかにすることが目的である。すなわち①DC分野における論文間 の参照(引用関係と共引用関係)関係, ②時系列に沿った研究分野の発展の推移, そして

③当分野で最も引用された学者, ジャーナル, 研究機関, そして最後に, ④現在までの当

55 共引用は, ある文献が二つの文献を同時に引用している場合に,この2つの文献が共引用関係を形成す るという仕方で定義される。共引用関係は, 文献間の関連性と類似度を見るための一つの尺度であ る.共引用された二つの文献は何らかの関連を持ち, これらの文献が共引用される頻度が高ければ関連 度も高いと考えられる(Small H., 1973)。著者の共引用,ジャーナルの共引用も同様である。

56キーワードの共起分析は, 同じ文献の中にキーワードが同時に出現する頻度を分析する。通常, 同じ文 献の中にキーワードの出現頻度が多いほど, 2つのトピック間の関係がより緊密であると考えられる。キ ーワードのペアが同じ文献内現れる頻度をカウントすると, ふたつの単語の関連付けが共起分析ネット ワークを形成する。

分野における研究動向と研究ホット・スポット, 以上4点を明らかにすることが本節の目 的にほかならない。

3. データの出所と検索手順

本研究に使用するデータはWoS57から取得した。「Dynamic Capability」と「Dynamic

Capabilities」という二つのフレーズで検索をかけ, 1990年から調査時点である2019年まで

58に収録されたデータにトピック検索をかけた。さらに, 経営学, 経済学, およびビジネ ス領域分野を限定し, 無関係な主題の文献を取り除いた後, 一部のレコードタイプ(編集 資料, 議事録など)を除外して, 記事とレビューに検索範囲を限定した。その結果, 5534 件の文献が抽出された。これらの文献についてCiteSpaceを用いた視覚化を行った。

次に, データがCiteSpaceソフトウェアに導入される前に, 重複データ3件が除去され, 5,

531件を取得した。各項目の設定は以下の通りである。

表補-1 CiteSpaceにおけるデータ処理の設定値 時間範囲

(TimeSlicing)

1990-2019年

時分割 1年

ソース(term source)

文書のタイトル(title), 要約(abstract), 著者 キーワード(author keywords)とキーワード

(keywords)

単語の種類

(term type)

ハイライトされた単語(burst terms)

しきい値 Top 50%

57 Thomson ReutersWoS-Science Citation Index Expanded(SCI-EXPANDED), Social Sciences Citation Index(SSCI), Arts & Humanities Citation Index(AHCI)などのデータベースを含む世界中の約

12,000の主要ジャーナルが収録されているため, 強力なアクセスを提供しているという (Van Leeuwen,

2006)。

58 DC90年代に急激的な環境を背景の下, Teece & Pisano(1994)は提唱された概念であるため, 期間