第 3 章 2030 年までの省エネルギーポテンシャルおよび費用対効果分析
3.1. 省エネルギーポテンシャルの試算方法
3.1.7. 運輸部門
70 出典:日本エネルギー経済研究所
図3-14 業務部門のエネルギー需要見通し(BaUケースとALTケース比較)
71 出典:Statistics Indonesia (BPS)
図3-15 自動車保有台数の推移
新車販売台数
2012年よりインドネシアの乗用車販売台数は100万台に乗った。2014年には120.8万 台に増加、10年前の2005年比倍以上となった。ちなみに、インドネシアはASEAN国中 初の100万台に達した国である。
出典:International Organization of Motor Vehicle Manufacturers (2016) “2012-2016 HALF-YEAR SALES STATISTICS”
図3-16 新車販売台数の推移
0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 バイク保有台数(千台)
自動車保有台数(千台)
バイク 乗用車 バス 貨物車
364 222 315 425 359
541 602
781 880 879 170
97 119
179 127
223 292
335
350 329
534 319
433 604
486 765
894 1,116
1,230 1,208
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
販売台数(千台)
トラック 乗用車
72
ブランド別トップ10の販売シェア(2015年)
ブランド別の販売シェアのトップ10としては、アバンザ(トヨタ)10%、グランマッ クス ピックアップ(ダイハツ)5%、アギア(トヨタ)4%、キャリイ ピックアップ(ス ズキ)4%、イノーバ(トヨタ)3%、セニア(ダイハツ)3%、アイラ(ダイハツ)3%、
ブリオ・サティヤ(ホンダ)2%、エルティガ(スズキ)2%、HR-V(ホンダ)2%となっ ている。いずれも日系メーカーである。これらの自動車はいずれもMPVであり、インド ネシアの多人数の家族構成に適したものである。
出典:各種資料より作成
図3-17 ブランド別トップ10の自動車販売シェア(2015年)
2. 国別販売シェア(2014年)
国別の販売シェアとしては、日本が96.3%を占め、ほぼ100%が日本車となっている。
出典:Association of Indonesia Automotive Industries (2016) “Domestic Auto Market by Brand (2010-2014)”
図3-18 国別別トップ10の自動車販売シェア(2015年)
10%
5% 4%
4% 3% 3% 3% 2% 2% 2%
0%
2%
4%
6%
8%
10%
12%
アバンザ・T グランマックスピックアップ・D アギア・T キャリイピックアップ・S イノーバ・T セニア・D アイラ・D ブリオ・サティヤ・H エルティガ・S HR-V・H
96.3%
1.9% 0.9% 0.7% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
0.0%
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
73 3. 自動車燃費の状況
インドネシアの乗用車燃費は新車ベースでは2013年6.9l/kmで、2005年に比べて4%改善 した。通常先進国でも燃費改善率が1~2%であることから、インドネシアの改善率が低い。
表3-2 インドネシアの乗用車燃費(2005~2013)
出典:Global Fuel Economy Initiative (2011) “Working Paper 5/10, International comparison of light-duty vehicle fuel economy and related characteristics”, Global Fuel Economy Initiative (2015) “GFEI Working Paper 11,
International comparison of light-duty vehicle fuel economy: Evolution over 8 years from 2005 to 2013”
4. 自動車普及台数の予測
乗用車の普及台数の予測
旅客部門の保有台数の予測はロジスティック曲線に当てはめて定式化した。
)
1 e
a(x bp k
(5)ただし、
x
は一人あたり所得、k
は普及率の上限値、a
は所得間の自動車普及率の最大段 差率、b
は普及率が上限値k
の半分における所得水準である。この曲線は次のように線形変 換を行い、回帰分析からパラメータを求めることができる。ab ax
r
(6)2005 2008 2012 2013
Japan 6.7 6.7 5.2 4.9
France 6.6 6.6 5.2 5.0
Italy 6.4 6.4 5.5 5.3
Turkey 7.2 7.2 5.5 5.3
UK 7.3 7.3 5.6 5.4
Germany 7.5 7.5 5.9 5.7
Mexico 7.5 7.5 7.3 7.4
Chile 7.5 7.5 7.1 7.1
Australia 9.8 9.8 8.3 8.0
USA 9.7 9.7 9.2 9.0
India 5.6 5.6 5.7 5.7
Thailand 8.3 8.3 6.2 6.3
South Africa 7.7 7.7 6.6 6.4
Egypt 7.3 7.3 6.7 6.8
Argentina 7.6 7.6 6.7 6.7
Malaysia 7.6 7.6 6.8 6.8
Brazil 7.3 7.3 7.0 6.9
In don e sia 7 .2 7 .2 7 .0 6 .9
Ukraine 7.8 7.8 7.0 7.0
China 7.8 7.8 7.6 7.5
Russia 8.3 8.3 7.7 7.7
World Ave rage 7 .5 7 .5 6 .7 6 .6
74 ただし、
) log( k p r p
(7)回帰に用いたデータ
x
は国連が公表した人口統計、弊所・日本エネルギー経済研究所が発 行したエネルギー経済統計要覧のGDP統計による算出、実績自動車普及率は世界自動車統 計年報等による算出した。表3-3 所得水準と普及台数の関係
出典:各種資料より作成
推計結果として、
k
を50%とした場合に、a
は0.000284、b
は16057.88として推計結果が 得られる。一方、将来の人口は国連の中位人口見通しを使用した。その結果として、2030 年の普及台数が3,533万台に増加し、2000年比4.0倍、2014年比2.8倍となる。表3-4 乗用車の普及台数の普及予測
出典:日本エネルギー経済研究所試算
トラック台数の推計
トラック台数(バスを含む)の推定はGDPの弾性値0.85(2000年~2014年の実績値)を 利用して行った。その結果、2030年に1,421万台に増加し、2000年比2.0倍、2014年の1.6
人口 GDP 一人あたり
GDP
乗用車保有 台数
百万 (2000年p
B.USD) ドル/人 千台
UN 統計要覧 計算値 世界自動車
統計年報等
Japan 127 5,094 40,002 58,366
EU27 501 9,713 19,370 245,601
US 312 11,548 36,983 130,892
China 1,360 3,246 2,387 58,616
India 1,206 989 821 13,300
Indonesia 241 275 1,142 5,625
S. Africa 51 188 3,647 5,100
Brazil 195 920 4,710 31,258
Russia 144 415 2,892 34,350
指標 人口 GDP GDP成長率 人当たりGDP
(2010年価格)
人当たりGDP
(2000年価格) 乗用車普及率 自動車保有台数
単位 百万 (2010年価格
十億米ドル) % ドル/人 ドル/人 台/100人 千台
出所 UN 統計要覧 IEA等 計算値 計算値 計算値 実績は中央統計庁
2010 241 755 4.9% 3,137 1,126 3.7 8,891
2020 269 1,352 6.0% 5,019 1,802 6.9 18,713
2030 293 2,141 4.7% 7,294 2,618 12.0 35,331
75 倍となる。
表3-5 トラック普及台数の普及予測
出典:日本エネルギー経済研究所試算
バイクの普及台数の推定
バイク普及率の推定は下記ロジスティクス曲線を利用して推計した。その結果、バイク の普及台数は2030年に1億8,412万台で、2000年比3.0倍、2014年の2倍となると試算さ れる。
出典:日本エネルギー経済研究所試算
図3-19 バイク普及率の推定
指標 GDP成長率 GDP 普及台数対GDP弾性値 トラック保有台数
単位 % 2010年価格十億米ドル 千台
出所 IEA等 実績はWB 2000~2014年実績 計算値
2010 4.9% 755 0.85 6,938
2020 6.0% 1,352 0.85 10,561
2030 4.7% 2,141 0.85 14,210
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010 2013 2016 2019 2022 2025 2028 2031 2034
バイク普及率(台/千人)
推定値
実績(1980~2014)
76
表3-6 バイク普及台数の普及予測
出典:日本エネルギー経済研究所試算
自動車の普及台数の合計
動車の普及台数の合計は2030年に2.3億台と予測される。
表3-7 自動車普及台数の普及予測(合計)
出典:日本エネルギー経済研究所試算
5. 自動車省エネルギーポテンシャルの試算
台あたりのエネルギー需要及び2030年の運輸部門のエネルギー需要見通し
途上国でも先進国でも見られるように、自動車の年間台たりのエネルギー消費量(乗用 車換算、詳細は下表を参照)は自動車普及率の増加に伴い減少する。インドネシアの場合、
2014年では1.3toeであったが、2030年に1.0toeになると予測される。
指標 人口 普及率 バイク保有台数
単位 百万 台/千人 千台
出所 UN 実績と計算値 実績と計算値
2010 241 254 61,078
2020 269 509 137,192
2030 293 627 184,117
指標 乗用車 トラック バイク 合計
単位 千台 千台 千台 千台
2010 8,891 6,938 61,078 76,907
2020 18,713 10,561 137,192 166,466
2030 35,331 14,210 184,117 233,659
77 出典:日本エネルギー経済研究所試算
図3-20 台あたりのエネルギー消費
省エネルギーポテンシャルの推計
燃費水準が現状のままと仮定した場合、台あたりのエネルギー消費量が普及率の増加に 従って減少するが、エネルギー消費量は2030年に61.7Mtoeに増加するとされる。
資料25によればインドネシアでは販売台数上位10位の自動車の平均燃費(CO2換算)が
180gCO2/lであり、ガソリンの品質を改善(現状のEURO2基準からEURO4基準に改善)
した上で燃費基準を導入と強化すれば、120gCO/lに改善できると予想される。本試算では 2017年から新車販売にこうした燃費基準が導入されることを仮定する。そうした場合、2030 年までに自動車のエネルギー消費量が42.7Mtoeに減少すると試算される。省エネルギーポ テンシャルは19.0Mtoe(31%)となる。これは自動車単体対策による自動車の省エネルギー 量となる。
一方、ジャカルタを中心とした首都圏においては交通渋滞が蔓延している。JICA専門家 の調査26ではジャカルタの平均時速が30キロ未満と報告されている。ジャカルタでは全国 60%の自動車が集中しているため、ジャカルタだけでも道路状況の改善や公共交通機関の促 進等の対策で交通渋滞を解消しエネルギー消費量を減少させるポテンシャルが多いと考え られる。仮に首都圏道路交通環境が改善され、自動車の平均時速は30キロから60キロに 向上した場合、これが燃費改善率に換算すると26%27に相当する。本試算では煩雑の試算を 避けて単純に上記の改善率を仮定する。この場合、道路交通状況の改善によるインドネシ ア全国のエネルギー消費量はさらに36.1Mtoe(11.0%)に減少すると試算される。
25第1章 TCC Expert Presenting at the 11th Indonesia International Automotive Conference (IIAC) http://transportandclimatechange.org/news-events/iiac-2016/
26ジャカルタ新聞 http://www.jakartashimbun.com/free/detail/21150.html
27 内閣府資料:http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/max-speed/k_3/pdf/s9-1.pdf
y = 2.5229x-0.297 R² = 0.6962
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 2026 2028 2030
台当たりエネルギー消費(toe/台・年) 台あたり実績値
台あたり エネルギー消費
78
表3-8 自動車のエネルギー消費量の推計と結果
出典:日本エネルギー経済研究所試算
図3-21 エネルギー需要の予測
インドネシアの運輸部門(本試算では道路部門)における省エネルギーポテンシャルは 上図に示したとおりである。
指標 乗用車
保有台数 トラック 保有台数
バイク 保有台数
乗用車換算 保有台数計
エネル ギー 需要
(Bau)
台あたり エネルギー
消費 推計 新車販売
2017年以 降累計新車 販売
2017以前 保有台数
燃費改善 後のエネ ルギー需 要
道路対策で 燃費改善率
道路対策 後のエネ ルギー需 要
単位 千台
千台
(1.5台換 算)
千台
(0.05台換 算)
千台 Mtoe toe/台 千台
千台
(廃車率 1/25)
千台
180gco2/l
→ 120gco2/l
燃費指数 85→115
(首都30km
→60km)
Mtoe (首都エネ 60%)
2000 3,039 3,560 678 8,413 18.6 2.2 681 0 0 18.6 0.0 18.6
2010 8,891 10,407 3,054 24,654 29.8 1.2 2,283 0 0 29.8 0.0 29.8 2014 12,599 12,951 4,649 32,258 40.7 1.3 2,828 0 0 40.7 0.0 40.7 2020 18,713 15,842 6,860 42,819 43.7 1.0 3,667 14,037 28,781 39.0 0.06 37.5 2030 35,331 21,315 9,206 67,765 61.7 0.9 5,834 62,341 5,424 42.7 0.26 36.1
61.7
42.7
40.7 36.1
10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0
2000 2003 2006 2009 2012 2015 2018 2021 2024 2027 2030
エネルギー消費量(Mtoe)
BAU 燃費改善 交通流対策
燃費 改善 31%
交通 流策 11%
79