第 5 章 2050 年までの再生可能エネルギー導入ポテンシャルと導入促進に向けた政策の費用
5.2. 地方電力供給における再生可能エネルギーの導入量に関する分析
5.2.2. 系統の整備状況が再エネ導入量に対する影響(スンバ島のケーススタディ) 117
117 出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-5 年平均kWhあたり発電コストの変化の見通し
118 出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-6 蓄電設備がない場合(左)とある場合(右)の電源構成(Region1)
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-7 蓄電設備容量と接続可能太陽光発電容量の関係(スンバ島の場合)
(2)地域間連系線増強による効果
現在、Region1とRegion2の系統連系は非常に限定的である。そこで、連系線を増強する ことでどの程度太陽光発電の接続可能量が増加するかを分析する。図5-8は、地域間連系線 が増強された場合のRegio1とRegion2の1週間の電源構成を示す。地域間連系線の増強に よって、Region1の太陽光発電の余剰電力がRegion2に融通されていることがわかる。
0 1 2 3 4 5 6 7
0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00
[MW]
Hydro Biomass Geothermal
Fossil fuel interconnection in Wind
PV RE storage in interconnection out
RE storage out Ele demand
0 1 2 3 4 5 6 7
0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00
[MW]
Hydro Biomass Geothermal
Fossil fuel interconnection in Wind
PV RE storage in interconnection out
RE storage out Ele demand
0 5 10 15 20 25
0 10 20 30
太陽光の最大導入可能量(MW)
蓄電設備(MWh) Region1
Region2 Total
119
(Region1) ( Region2)
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-8 地域間連系線による電力融通の状況
図5-9は、地域間連系線の増強がRegion1における太陽光発電の接続可能量に与える影響 を示す。まず、議論の単純化のため、Region2の太陽光発電導入量を0としている。地域間 の電力融通がない場合でもRegion1においては、約5MWの太陽光発電が接続可能であるが、
地域間連系線を増強することで、接続可能量は増加する。ただし、連系線がある一定規模
(ここでは1.5MW)を超えるとRegion1における接続可能量の更なる増加は見込まれない。
これは、Region2において、Region1から融通される電力を受け入れる上限に達することに 起因する。
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-9 地域間連系線の増強が太陽光発電の接続可能量に与える影響(Region1)
0 1 2 3 4 5 6 7
0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00
[MW]
Hydro Biomass Geothermal
Fossil fuel interconnection in Wind
PV RE storage in interconnection out
RE storage out Ele demand
0 1 2 3 4 5 6 7
0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00
[MW]
Hydro Biomass Geothermal
Fossil fuel interconnection in Wind
PV RE storage in interconnection out
RE storage out Ele demand
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 2 3 4
太陽光発電の最大導入可能量(MW)
系統連系線(MW)
120
5.2.3. 太陽光発電によるディーゼル発電の置き換えに関するケーススタディ
5.2.1では東インドネシア地域における2050年までの地方電力供給における再生可能エネル
ギー発電技術の導入可能量とその場合の費用と便益をディーゼル発電の場合と比較、分析 した。なお、本節では再生可能エネルギーの中でも近年そのコスト低下の著しい太陽光発 電に焦点を当て、太陽光発電によるディーゼル発電を置き換える場合の費用と便益を評価 し、インドネシアにおけるディーゼル発電を代替するための太陽光発電の市場ポテンシャ ルを推計する。パプア地域における現在ディーゼル発電量(2015 年 1,107GWh)の 10%を 太陽光発電による代替場合、ライフサイクルの費用と便益の変化を図5-10 に示す。試算の 主要前提条件を表 5-2に纏める。
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-10 太陽光発電によるディーゼル発電を置き換える際にライフサイクルの費用と便益
の変化
表 5-2 太陽光発電とディーゼル発電コスト試算の主要な前提条件
出典:各種資料による想定 190
-25 -50 -74 -96
-118 -139
-159 -179
-198 -216
-233 -250 -266 -282
-297 -311
-325 -338 -351 -364 164 140
116 93 71 50
30 11
-8 -26 -44
-60 -77 -92 -107 -122 -135
-149 -162 -174
-400 -300 -200 -100 0 100 200 300
Year 1 Year 2 Year 3 Year 4 Year 5 Year 6 Year 7 Year 8 Year 9 Year 10
Year 11
Year 12
Year 13
Year 14
Year 15
Year 16
Year 17
Year 18
Year 19
Year 20
PV Initial Cost Cumulative Diesel Fuel Cost Avoided Net Cost of PV million US$ (2015 value)
太陽光発電 ディーゼル発電 初期投資 2400 US$/kW 400 US$/kW 運転維持費(燃料費以外) 4 US¢/MWh 3.8US¢/MWh
燃料費 0 0.75US$/L
設備稼働率 16% 80%
熱効率 - 30%
耐用年数 20 20
121
2015年パプア地域におけるディーゼル発電量の10%を太陽光発電による代替すると、約 80MW の太陽光発電設備を設置する必要がある。太陽光発電設備の導入によって発生した 初期投資は約1億9千万ドルである。他方、太陽光発電の導入によって年間約34,061kLの 発電用ディーゼルは削減される。将来ディーゼル価格の上昇も加味して、太陽光発電を導 入後8年~9年目時点で、回避されたディーゼルの累積コストの現在価値は太陽光発電設備 の初期投資と同等となる。
結論としてパプア地域におけるディーゼル発電量の 10%を太陽光発電による置き換える と、約1億9千万ドルの初期投資が発生するが、ライフサイクル全体で見ると3億6400万 のディーゼル燃料費が回避され、1億7400万ドルの総発電費用が節約できる。
太陽光発電を用いてディーゼル発電を代替すると、ライフサイクルの総発電コスト削減 に繋がる一方、5.2.2 にも説明したように、太陽光発電だけではディーゼル発電を全部置き 換えることができない。太陽光発電によるディーゼル発電の代替可能量は、電力の負荷パ ターン、既存の電源構成などにも影響される。5.2.2 の分析対象地域であるスンバ島は大き く2つの地域、Region1とRegion2 に分けられ、Region2ではディーゼル発電に加え水力発 電も用いているのが特徴である。こうした電力の負荷パターンと既存の再生可能エネルギ ーを有効利用すること、ならびに蓄電設備の設置や地域間の電力融通を考慮しないことを 前提としてスンバ島での、太陽光発電によるディーゼル発電を置き換えられる最大可能量 を推計するとディーゼル発電量の25.8%前後56となる。なお、これをインドネシア全体に例 えると、2015 年インドネシア全国のディーゼル発電量は 18,859GWh57であり、その内の最
大 25.8%を太陽光による代替可能だとする場合、必要な太陽光発電の設備容量は 3,471MW
であると推計される。
本節(5.2)では東インドネシア地域を対象に、2050年までに地方電化における再生可能 エネルギーの導入可能量ならびに、再生可能エネルギーを最大限導入する場合の費用と便 益について定量的な評価を行った。また、蓄電設備や地域間電力連系線の設置状況が太陽 光発電の導入可能量に対する影響と太陽光発電によるディーゼル発電の置き換えに関する ケーススタディを実施した。
結論として地方の電力供給における再生可能エネルギーの導入可能量は2025年で33TWh、
2050年で179TWhになると推計された。他方、KENで定められた新・再生可能エネルギー
導入目標を実現するために、2025年と2050年における再生可能エネルギーによる発電量は
それぞれ128TWh と466TWhに達すとインドネシアの国家エネルギー委員会が予測してい
56 地域によって電力負荷パターンが異なり、太陽光発電によるディーゼル発電の最大代替可能比率も多少 差がある。
57 総発電量の11%に占める
122
る(図5-11)58。再生可能エネルギーの導入目標を達成するために、地方の電力供給以外で
も再生可能エネルギーの導入拡大に取り組む必要がある。
出典:Dewan Energi Nasional国家エネルギー委員会 (2016) “Outlook Energi Indonesia 2016”, 日本エネルギー 経済研究所推計
図5-11 地方における再生可能エネルギーの導入可能量と再生可能エネルギー目標との比
較(2025年(左)、2050年(右))