第 6 章 日本企業の事業機会とリスクを含めた示唆・日本政府のインドネシアに向けた政策
7.1. 省エネルギー
7.1.1. 部門別の省エネルギー推進
インドネシアでは、国家エネルギー計画において省エネルギーの推進が重要な政策項目と して打ち出されており、2025年までに1%のエネルギー原単位改善目標ならびにエネルギー 弾性値を2025年に1以下とする目標を設定している。目標達成に向けたフォローアップメ カニズムを構築すると共に、これらの目標を達成するためにも産業、運輸、家庭、業務の 各部門において省エネルギーを推進するためにも、長期的な視点から実施される政策やプ ログラムがシナジーを発揮しうるように整合的に制度を構築することが必要である。以下 の通り、これらの部門における政策提言を提示する。
産業部門
エネルギー管理を通じた省エネルギーを実施する事業所のエネルギー消費量は年間石油
換算6,000toeであり、日本の 1500kL(石油換算1,287toe)の4倍以上であり、同制度で対
象となる事業場が大規模工場等に限定されることからも、カバー率を上げるなど、国内の 産業部門におけるエネルギー効率改善を行うには裾野のさらなる拡大が必要である。また 高効率設備の導入に向け、事業者の技術に関する理解向上に資する技術リストを作成し、
それらの導入に関して補助金支給や低利融資を行うなど政府支援の実現が必須である。
運輸部門
エネルギー需要が最も伸びている部門として、燃費規制の導入支援を急ぐ必要があり、
これに関連した車検制度の導入と石油精製の品質向上も欠かせない。現状のインドネシア 主要都市で起きている乗用車への過剰依存の低減し、渋滞を解消しつつエネルギー消費を 節減、LCGCに代表される低燃費車の性能が発揮できるよう、公共交通インフラ整備ならび に乗用車利用の適正化に向けた政策・制度形成の支援が必要である。
家庭部門
家庭部門の省エネルギー推進における最も根本的な課題は、電化率が低いことや低アン ペア契約の世帯が全体の 65%を占める点にある。これは、家電全般、高効率家電製品の普 及の阻害要因の一つであると言える。その対策として、地方電化率の向上や 2A/4A 契約を 撤廃し、6A契約への移行促進が必要である。その代わりに、これまで2A/4A契約世帯に支 給された補助金を電力インフラの形成や地域特有の再エネ資源の開発に資する目的で活用 すると共に、省エネ技術・機器への投資へシフトさせる必要もあるだろう。
電力・エネルギー価格が相対的に安価であるため、消費者の省エネ意識を喚起するため
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には、電力料金の適正化、省エネ意識向上に向けた啓発活動や情報提供にさらに注力する 必要がある。定期的なエネルギー消費実態調査や省エネ意識調査に基づくモニタリングま たは政策評価に資する情報収集も考えられる。
普及が進むテレビや冷蔵庫などの家電製品の省エネルギー推進に当たって、MEPSの導入 やラベリング制度の対象製品の拡大は不可欠である。基準に適合した製品が市場に流通す るために、試験場での適格な検査が必要されており、それに伴い、製品試験場での人材育 成や設備の充実化も求められる。
高効率家電機器の普及促進に当たって、優遇措置、補助金等の助成、日本のエコポイン ト制度のような措置を創設し、高アンペア契約への移行推進と共に実施されることも考え られる。住宅の断熱性能基準の導入による住宅の省エネ性能の向上も長期的には必要であ る。
業務部門
インドネシアにおける業務部門の省エネルギー推進課題に対応するためにも、政策・規 制ならびに遵守メカニズムの構築、ならびに低利融資等のファイナンスメカニズムの構築 が必要である。具体的には、現行のエネルギー管理制度における業務部門のカバー率は全
体の1%(35事業者)と限定的であり、対象範囲を述べ床面積5万㎡、年間エネルギー消費
量700toeに下げるなど、対象を拡大する必要がある。また、資金調達コストが膨大となる
ことを阻害要因として、省エネ投資は積極的に行われていないため、利子補給等の低利融 資に向けた政府支援が必要である。
7.1.2. 費用対効果を考慮した省エネルギー技術の導入拡大
インドネシアでは、CFL、エアコンに続いて今後、冷蔵庫、炊飯器、モーター、洗濯機な どに拡大する予定である。他方、第 3 章で行った分析では、業務部門の照明や冷蔵庫、産 業部門のリジェネバーナー(鉄鋼)、回収ボイラー(紙パルプ)など、2030年の費用対効果 分析ではエネルギー需要の石油換算トン当たりの節減にかかるネットコストがマイナスと なる技術があった。すなわち、2030 年に向けた省エネルギーによる社会的な便益を考慮す ると、便益が費用を上回る技術があることを踏まえ、コスト効果性に配慮した技術の導入 が望まれる。具体的には、家庭部門を対象とした機器のみならず、産業や業務部門を対象 とした技術は稼働時間が長いことから省エネルギーによる社会的便益が相対的に大きく、
コスト回収年数が数年と短い場合がある。こうした技術の導入促進に向け、例えば産業部 門での排熱回収技術導入の義務化といった制度の導入が期待される。
インドネシアの省エネルギーマスタープランであるRIKENでは、高効率技術の導入に向 けた経済インセンティブの付与が重要であり、制度構築が重要であるとの認識が提示され ているものの、現状では高効率技術導入に係る経済インセンティブは提供されていない60。
60 インドネシア財務省の機関であるOGKが環境ファイナンスを行っており、Investment Grade Audit事業に
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エネルギー管理対象事業者である産業や業務部門での省エネ技術導入に関するガイドライ ンを策定、ガイドラインに記載された技術に対して補助金や低利融資等の経済インセンテ ィブを付与するといったシステムの構築が求められる。その際、原資として、現在電力や 石油に付与される補助金をシフトさせるなど、政策の転換が求められる。
MEPSや省エネルギー技術導入、経済インセンティブ付与についてのモニタリングと検証 メカニズムの構築は、政策効果を把握する上で肝要である。エアコンのMEPSが2016年7 月に導入されたところではあるが、同政策の省エネルギー効果を計測できるモニタリング メカニズムはいまだ形成されていない。MEPS制度下では、関連業界との協力を構築し、ラ べリング制度と共に輸出や販売事業者が添付するラベルのデータを収集するメカニズムを 構築、MEMR 省エネルギー局の関連機関として収集したデータを評価する機能を有する機 関を形成することが必要である。同様に、ガイドラインにリストとして記載された技術に 対する経済インセンティブの付与についても、同様の機能を有する独立機関が経済インセ ンティブの付与から省エネルギー効果の検証を担うことが期待される
7.1.3. 新たな政策導入の検討
産業部門の分析から示唆として得られる通り、高効率技術の導入にあたっては、現行の エネルギー管理制度に加え、日本で実施されるベンチマーク制度や自主行動プログラム、
ならびに経済インセンティブの付与等、様々な施策の実施が望まれる。特にベンチマーク 制度や自主行動プログラムなど、日本の場合は同業種内での高効率技術導入に関する知見 の水平展開が行われている点を事業者ごとに真摯な省エネルギー推進に向けた取組みに加 えて共有することも重要である。
7.1.4. 省エネルギー推進におけるエネルギー供給事業者の役割
長期的な視点から省エネルギーはインドネシアのエネルギー安全保障と地球温暖化対策 として有効な手段を提示し得る。前述の通り、費用対効果の観点からも長期的に省エネ分 を輸出に向けることにえられる便益が省エネ投資を上回る技術の導入に期待が寄せられる。
加えて、こうした技術の導入に向けエネルギー供給事業者の果たす役割は重要である。具 体的には、国営電力会社であるPLN社が電力販売として有する消費者との直接のコンタク トを活用、省エネルギーアドバイスや高効率技術導入に関するリベート付与といった役割 を担うことが期待される。インドネシアにおける将来的な電力需要の拡大を見込み、発電 から送配電インフラの形成に必要な投資と省エネルギーへの投資の比較、将来的に必要と なる負荷平準化に向けた対応としても高効率技術の導入を行うことは、PLN 社にとっても 経済合理性の高い投資となりうる点への認識が共有される必要がある。
関連した融資が実施されることになっている。