第 5 章 2050 年までの再生可能エネルギー導入ポテンシャルと導入促進に向けた政策の費用
5.3. 再生可能エネルギーのコスト競争力を向上させるための政策措置に関する分析
122
る(図5-11)58。再生可能エネルギーの導入目標を達成するために、地方の電力供給以外で
も再生可能エネルギーの導入拡大に取り組む必要がある。
出典:Dewan Energi Nasional国家エネルギー委員会 (2016) “Outlook Energi Indonesia 2016”, 日本エネルギー 経済研究所推計
図5-11 地方における再生可能エネルギーの導入可能量と再生可能エネルギー目標との比
較(2025年(左)、2050年(右))
123
え、低金利融資は再生可能エネルギー発電コスト削減の有効な措置であると考えられる。
FIT メカニズムおよび低金利融資を導入した場合の再生可能エネルギーの導入拡大効果 に対する定量化評価を5.3.1で、その内FITメカニズムの費用と電気料金への影響等に関す
る分析を5.3.2に示す。
5.3.1. FITメカニズムと低金利融資の政策効果
分析の対象地域はインドネシア全国である。インドネシア全国における電力需要は2025
年に527TWh、2030年に785TWh、2050年に2,607TWhになっていくと予測している。それ
に対する電力供給の中で、2050年までの再生可能エネルギーの導入拡大効果を推計するた めに、FITと低金利融資(Low Interest Loan, LIL)を導入しないレファレンスケース(Ref)
と導入するケース(FIT+LIL)を想定した。電源開発モデルを用い、それぞれのケースにお いての電源構成と総発電コスト等を計算する。
化石燃料価格と再生可能エネルギー設備コストに関しては、太陽光発電以外、図5-1と同 様の想定をしている。太陽光発電の設備コストについては、地方に設置される場合、設備 の運搬コストを考慮し、全国平均より割高であることを想定している。太陽光発電の設備 コストの試算前提を図5-12に示す。
出典:各種資料による想定
図5-12 太陽光発電の設備コストに関する想定(地方に設置する場合と全国平均レベル)
FIT+LILケースにおける再生可能エネルギー買取価格と買取期間は2016年時点の政策に
基づいて想定している(表 5-3)が,本制度は2025年以降にフェーズアウトされることを仮 定している。また、低金利融資(LIL)における再生可能エネルギープロジェクトに対する 融資金利は1%~4%59にあると設定している。
59 再生可能エネルギー発電技術によって異なる融資金利を想定
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
2015 2050
地方電力供 給 PV
全国平均レベ ル PV
US$/kW
124
表 5-3 FITの買取価格と買取期間の想定
出典:各種資料による想定
RefケースとFIT+LILケースにおける2050年までの電源構成と再生可能エネルギー発電
量の見通し結果を図5-13と図5-14に示す。2030年以降再生可能エネルギーのシェアは下が っているが、発電量は引き続き伸びている。FITおよび再生可能エネルギーに対する低金利 融資を実施すると、再生可能エネルギーの発電量は2025年に28TWh、2030年に47TWh、
2050年に98TWhの導入拡大効果が期待される。
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-13 インドネシア全国の電源構成見通し(RefケースとFIT+LILケース)
買取価格 (¢/kWh)
買取期間 (年)
地熱発電 11.8 30
小水力 8.73 20
バイオマス発電 8.6 20
太陽光発電 16 20
58% 60% 54% 59% 52%
76% 74%
9% 6%
6% 7%
7%
3% 3%
21% 17%
17% 18%
18%
11% 9%
11% 17% 23% 16% 23% 10% 14%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
Ref FIT+LIL Ref FIT+LIL Ref FIT+LIL
2015 2025 2030 2050
再エネ
ガス
石油
石炭
125 出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-14 RefケースとFIT+LILケースにおける再生可能エネルギーの発電量見通し
5.3.2. FIT制度の費用と便益に関する分析
5.3.1 と同様な前提条件で、FIT 制度のみ導入したケースの試算結果をレファレンスケー
ス(FIT制度導入しない)と比較し、累積発電コストの差を図5-15、FIT制度が消費者負担 に対する影響を図5-16に示す。FIT制度の導入によって発生した追加コストは累積で2025 年まで160億ドル、2030年まで230億ドルほどに上る。他方、FIT 制度を導入した場合の 再生可能エネルギーの導入拡大効果で、火力発電の代替効果、すなわち化石燃料費の回避 効果も大きい。また、FITを実施すると、中心地域でも発電コストが比較的に高い太陽光発 電が導入されるようになり、導入量の増加に伴い、学習効果による発電コストの低減がス ピードアップすることは期待できる。FIT制度は2025年以降にフェーズアウトされても、
前述の理由によって、FIT 制度の導入のおかげで、2050 年まで FIT を実施しない場合より 150億ドルほどの総発電コストの節約が期待できる。
FITの導入によって発生した追加コストの累積は2027年頃にピークとなり、それ以降FIT 導入による発電コストの節約効果が現れ、FITケースの単年度平均発電コストはFITなしケ ースより安くなっていく。FIT導入により発生した単年度の追加コストを全国の電力消費者 に転嫁する場合、2025年時点での消費者負担は約0.003US$/kWhである(図5-16)。
27.0
76.7 104.5 114.0 160.8
241.5 339.6
0 50 100 150 200 250 300 350 400
Ref FIT+LIL Ref FIT+LIL Ref FIT+LIL
2015 2025 2030 2050
126 出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-15 FITの導入によって発生した追加発電コストの累積見通し(現在価値に換算)
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-16 FITの導入によって消費者負担の変化見通し