第 2 章 省エネルギー目標達成に向けた現状と課題
2.8. 省エネルギー導入目標・温暖化目標達成に向けた現状把握及び課題
2.8.3. 家庭部門
39
部門では年率9.5%で投資の拡大の必要があるとし、2010~2014年の間に総額19京9,495兆 ルピアの投資を見込んでいた。
5. 課題を解決する技術の提案
インドネシアは国内石油生産の低迷に伴い、石油消費を抑制する方針を打ち出している。
具体的には一次エネルギー消費に占める石油の割合を現状(2013年)の46%から2025年
に25%までに削減する計画となっている。 自動車は石油消費の80%以上を占めているた
め、石油消費の削減の担い手となっている。自動車普及台数は2025年に2倍程度増加する と試算されているため、自動車の石油消費の削減が課題である。しかし、燃費基準等の規 制措置が形成されていない。ただし、燃費基準の導入は燃料品質の向上、とりわけ硫黄分 の減少が急務となっている。現状ではEURO2にも満たさない場合があるから、燃料品質の 向上にとって最大のネックとなっている。
一方、既存の自動車に関しては、車検制度の導入により大量にある年式の自動車の廃止 が期待されている。また、自動車単体の省エネルギー政策のほか、公共交通機関の整備、
道路状況の改善、道路交通信号の合理化も重要な省エネルギー政策となっている。
40
出典:International Energy Agency (2016) “World Energy Statistics and Balances 2016”より作成
図2-20 家庭部門のエネルギー消費の推移
2. 省エネルギー目標
国家省エネルギーマスタープラン(RIKEN、2005)によれば、家庭部門における省エネ 目標は、2025年にBaU比15%削減としているが、技術別の目標が不明である。
3. 省エネルギー政策とその課題
インドネシアでは、家電製品の省エネラベリング制度が策定され、2011年10月より蛍光 灯電球に対する省エネラベルが開始された。エネルギー効率基準はワット当たりの照度を4 段階(同量のエネルギーで最も明るいものを4星)に分けている。冷蔵庫、エアコン、テ レビ等にも順次導入する予定である。図2-21にインドネシアの省エネラベリングを示す。
出典:Edi Hilman and Mustafa Said(2009)”Energy Efficiency Standard and Labeling Policy in Indonesia”
図2-21 インドネシアの省エネラベリング
機器のエネルギー効率基準においては、蛍光灯電球およびエアコンの最低エネルギー性 能基準(MEPS:Minimum Energy Performance Standards)が導入されているが、その他の機 器のエネルギー効率基準は任意基準となっている。MEPSは今後、冷蔵庫、扇風機、電子安
0 1 2 3 4 5 6
71 75 80 85 90 95 00 05 10 14
(Mtoe)
石油 再生可能エネル
ギー・廃棄物等
電力 天然ガス
41
定器、電気モーター、LED 電球、洗濯機、井戸のくみ上げに使うポンプ、アイロン、テレ ビに拡大してゆく予定である。住宅に関しては、住宅の断熱性能、空調、照明、建物のエ ネルギー監査に関する任意基準を策定しているが、基準の義務化には至っていない。
インドネシアの家庭部門における省エネ施策は、ASEAN諸国と比較してラベリング制度 やMEPSの普及は圧倒的に低い状況にある。2016年にエアコンのMEPSが導入された以外、
エネルギー効率基準は自主取り組みであるため、効率改善に対する強制力が働かない。
MEPS対象機器は、ASEAN諸国の中で最も少ない(表2-18)。
表2-18 ASEAN諸国におけるMEPS対象機器
国 MEPS対象機器
インドネシア 2機器:蛍光灯電球、エアコン
フィリピン 8機器:蛍光灯安定器、小型蛍光ランプ、冷凍庫、冷凍冷蔵 庫、冷蔵庫、モーター、室外機付エアコン、窓型エアコン タイ 6機器:蛍光灯、CFL、3相モーター、エアコン、LPGガス
ストーブ、冷蔵庫
マレーシア 5機器:冷蔵庫、エアコン、テレビ、家庭用ファン、照明(蛍 光灯、CFL、LEDと白熱灯)
出典:各資料より作成
ラベリングは2014年に照明ランプが義務化された後、エアコンの省エネ規制導入ととも にラベリングについても義務化されているがその他は自主ベースとなっている。また、図 2-22の製品試験場の人材と設備を見ると、ASEAN諸国と比較して、インドネシアのエアコ ン試験場の能力は、人材、設備、マネジメント、維持、手法において圧倒的に立ち遅れて おり、キャパビルと共にMEPS、ラベリングの義務化を推進する必要がある。
42
出典:日本電機工業会 (2016) “Summary of the Result of Mutual Evaluation Test and Training”
図2-22 ASEAN諸国の製品試験場の能力比較
そのほか、省エネ機器の普及促進に欠かせない優遇措置や補助金などの助成も実施され ておらず(表2-19)、一般消費者は初期費用が高い高効率型機器の長期的な経済メリットに 対する認識が足りない。これが高効率型機器の普及が進まない一因である。
表2-19 ASEAN諸国での省エネ経済助成制度の比較
国 経済助成制度 インドネシア なし。
フィリピン (1) 省エネ事業に対し、税制面での優遇措置を実施 (2) 固定資産税の還付(ケソン市)
(3) 省エネルギー設備・機器の投資資金ローン支援
タイ (1) ENCON Fund
(2) 省エネルギー標準設備基準30%援助プログラム (3) 省エネ税優遇制度
(4) 省エネ型電気機器の普及促進の為のDSMプログラム (5) 省エネ循環基金
マレーシア (1) 省エネ機器の免税措置
(2) 環境に優しい建物を対象とした免税措置 (3) 省エネ家電割り戻し制度
出典:各資料より作成
住宅の断熱性の基準においては、ASEAN諸国全般的に、住宅の断熱性の等省エネルギー
0%
50%
100%
Engineer
Method
Maintenance Management
Facility/System
タイ
PJ2013 / 92%PJ2014 / 94%
PJ2015 / 96%
0%
50%
100%
Engineer
Method
Maintenance Management
Facility/System
インドネシア
PJ2013 / 52%PJ2014 / 55%
PJ2015 / 57%
0%
50%
100%
Engineer
Method
Maintenance Management
Facility/System
マレーシア
PJ2013 / 86%PJ2014 / 91%
PJ2015 / 93%
0%
50%
100%
Engineer
Method
Maintenance Management
Facility/Syste m
フィリピン
PJ2013 / 67%PJ2014 / 77%
PJ2015 / 83%
エンジニア
設備
管理 維持
手法
43
化に向けた基準は、表2-20に示した通り義務化されていない。インドネシアにおいても建 築基準法に省エネルギー基準が適用されておらず、高断熱化等の強制力が働かない。
表2-20 ASEAN諸国の住宅の断熱性能基準
国 住宅の断熱性能
インドネシア 断熱性能、空調、照明、建物のエネルギー監査に関する任 意基準を設定。
フィリピン 建築物の省エネルギー推進に関するガイドラインを設定。
タイ 業務部門のビルディングコードは 2009 年に発効している が、住宅向けの省エネ基準は策定されていない。
マレーシア 住宅を含む建築物の省エネルギーガイドラインを策定し て、いるが基準の義務化には至っていない。
出典:各資料より作成
また、家庭の電気料金において、ASEAN諸国と比較して、インドネシアの電気料金は平 均で、最も低い水準にあり(表2-21)、家庭部門の省エネ意識の醸成に向けた課題として指 摘できる。インドネシアにおける6,000万世帯のうち、20%に対して電力供給がなされてい ないところ、補助金支給対象となる世帯の契約アンペア 2A, 4A の世帯がそれぞれ全体の
35%、30%を占めている(図2-23)。これらの契約世帯への補助金支給の撤廃が省エネルギ
ー意識の醸成に向け重要である。
表2-21 ASEAN諸国の電気料金比較
国 家庭向け電気料金比較
インドネシア 758.16(ルビア/kWh)or 6円/kWh フィリピン 5.69(ペソ/kWh)or 13円/kWh
タイ 2.15-4.58(バーツ/kWh)or 7-14円/kWh
マレーシア 0.34(リンギット/kWh)or 10円/kWh 出典:日本貿易振興機構ホームページ「投資コスト比較」
低アンペア契約(2A/4A)の世帯は、全体の65%を占めており、電力供給容量の制限があ る中で、低ワット、低コスト家電製品の方が好まれている。家電の同時運転は不可能であ り、エネルギー消費の高いエアコンの普及率は、まだ 15%しかない。また、エアコン販売 量に占めるインバータ機の割合は 3%程度、ASEAN 諸国の中で最も低く、省エネ性能も低 い契約電力の制限でうまく発揮できない。
44 出典:現地ヒアリング調査資料より作成
図2-23 インドネシアにおける6,000万世帯の電力契約アンペアの現状
4. 課題を解決する対策ならびに技術の提案
家庭部門の省エネルギー推進における最も根本的な課題は、電化率が低いことや低アン ペア契約の世帯が大勢にいる点にある。これは、家電全般、高効率家電製品の普及の阻害 要因の一つであると言える。その対策として、地方電化率の向上や 2A/4A 契約を撤廃し、
6A契約への移行促進が必要である。その代わりに、これまで2A/4A契約世帯に支給された 補助金を電力インフラの形成や地域特有の再エネ資源の開発に資する目的で活用すると共 に、省エネ技術・機器への投資へ還流させる必要もあるだろう。
電力・エネルギー価格が相対的に安価であるため、消費者の省エネルギー意識を喚起す るためには、電力料金の適正化、省エネルギー意識向上に向けた啓発活動や情報提供にさ らに注力する必要がある。定期的なエネルギー消費実態調査や省エネ意識調査に基づくモ ニタリングまたは政策評価に資する情報収集も考えられる。
普及が進むテレビや冷蔵庫などの家電製品の省エネルギー推進に当たって、MEPSの導入 やラベリング制度の対象製品の拡大は不可欠である。また、基準に適合した製品が市場に 流通するために、試験場での適格な検査が必要されており、それに伴い、製品試験場での 人材育成や設備の充実化も求められる。
高効率家電機器の普及促進に当たって、優遇措置、補助金等の助成、日本のエコポイン ト制度のような措置を創設し、高アンペア契約への移行推進と共に実施されることも考え られる。住宅の断熱性能基準の導入による住宅の省エネルギー性能の向上も長期的には必 要である。
技術面での対策としては、照明のLED 化、ならびに2016年に MEPSが導入されたエア コンの更なる基準向上、そして今後MEPS導入が予定されている冷蔵庫、テレビ、洗濯機、
炊飯器の高効率化が望まれる。
電力供給なし 20%
450W (2A) 35%
900W (4A) 30%
1300W (6A) 10%
>2200W (10A) 5%