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産業部門

ドキュメント内 第1章 (ページ 39-57)

第 2 章 省エネルギー目標達成に向けた現状と課題

2.8. 省エネルギー導入目標・温暖化目標達成に向けた現状把握及び課題

2.8.1. 産業部門

1. エネルギー消費の推移

産業部門のエネルギー消費は、IEA (2016)によれば、1990年から2014年までの間に年率

3.3%で増加し、2014年には1990年と比べ2.2倍に増加した。最終エネルギー消費に占める

産業部門のエネルギー消費は、1990年の32%から2014年の30%でほぼ横ばいで推移してい る。産業部門の燃料別のエネルギー消費量は、約39Mtoe(2014年)であり、燃料種別内訳 は天然ガス33%、石油20%、再生可能エネルギー・廃棄物等17%、石炭17%、電力14%と なっている(図 2-5)。

出典: International Energy Agency (2016) “World Energy Statistics and Balances 2016”

より作成

図 2-5 産業部門の燃料別エネルギー消費の推移

産業部門の業種別のエネルギー消費量は、2014年の業種種別内訳は他製造業53%、電力

14%となっており、業種が特定できている割合は 33%に留まっている(図 2-6)。業種が把

握できているエネルギー消費量は、約13Mtoe(2014年)であり、この中での内訳はガラス・

陶磁器・セメントなど非金属鉱物工業31%、非鉄金属工業13%、紙パ・印刷業 10%、繊維・

皮革工業7%、金属鉱業・砕石業6%、鉄鋼業5%、食料品・タバコ工業4%、などとなってい

る(図 2-7)。

2014 年における産業部門の業種別燃料別エネルギー消費をみると、電力および天然ガス の約8割が、他の製造業に計上されている。この両者を合計すると16Mtoeとなり、産業部 門のエネルギー消費39Mtoeの41%に相当する(表 2-7)。

石炭 石油

再生可能エネル 天然ガス ギー・廃棄物等

電力

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

71 75 80 85 90 95 00 05 10 14

(Mtoe)

19

出典: International Energy Agency (2016) “World Energy Statistics and Balances 2016”より作成 図 2-6 産業部門の業種別エネルギー消費の推移

出典: International Energy Agency (2016) “World Energy Statistics and Balances 2016”より作成 図 2-7 産業部門の業種別エネルギー消費の推移(他製造業、電力を除く)

鉄鋼業

化学・石油化学工 ガラス・陶磁器・セメ

ントなど非金属鉱 物工業 他製造業 電力(産業合計)

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

71 75 80 85 90 95 00 05 10 14

(Mtoe)

鉄鋼業

化学・石油化学工

非鉄金属工業 ガラス・陶磁器・セメ

ントなど非金属鉱 物工業 金属製品・一般・電

気機械工業

金属鉱業・砕石業 食料品・タバコ工業

紙パ・印刷工業 建設業 繊維・皮革工業

0 2 4 6 8 10 12 14 16

71 75 80 85 90 95 00 05 10 14

(Mtoe)

20

表 2-7 産業部門の業種別燃料別エネルギー消費(2014年)

出典: International Energy Agency (2016) “World Energy Statistics and Balances 2016”より作成

産業分野のエネルギー消費状況は、公表されている機関の間でデータが不整合・未整備 であるために正確に把握することは困難な状況となっている。工業省(MoI(2012))によれ ば、産業部門のエネルギー消費の60~70%はエネルギー多消費産業の主要7 業種(化学肥 料、紙パ、繊維、セメント、鉄鋼、窯業、食品(パームオイル精製))が占めているとされ ている。この主要7業種のエネルギー消費量の伸びはBaUケースで2012年から2025年で 2.1倍(90.1TWh→188.4TWh)の見通しで、これに対する省エネ量は、22.1TWh (BaU比 11.7%) となっている(図 2-8)。また、2012年時点でエネルギー消費量が多い産業は紙パ、繊維と なっている。しかし、表 2-7 に見られるように IEA(2016)ではその他産業部門に電力及 び天然ガスの消費量の大部分が計上されている等、必ずしも主要 7 業種の正確なエネルギ ー消費量は把握されていない模様である。

(単位: Mtoe)

石炭 石油 天然ガス 再生可能エネル

ギー・廃棄物等 電力 合計

鉄鋼業 0.18 0.34 0.17 0.00 - 0.00 0.69

化学・石油化学

工業 0.00 0.45 2.27 0.00 - 0.00 2.73

非鉄金属工業 1.71 0.00 0.00 0.00 - 0.00 1.71

ガラス・陶磁器・

セメントなど非金 属鉱物工業

3.39 0.64 0.00 0.00 - 0.00 4.02

金属製品・一般・

電気機械工業 0.00 0.06 0.00 0.00 - 0.00 0.06

金属鉱業・砕石

0.00 0.79 0.00 0.00 - 0.00 0.79

食料品・タバコ工

0.00 0.48 0.00 0.00 - 0.00 0.48

紙パ・印刷工業 1.28 0.00 0.00 0.00 - 0.00 1.28

建設業 0.00 0.27 0.00 0.00 - 0.00 0.27

繊維・皮革工業 0.00 0.88 0.00 0.00 - 0.00 0.88

他製造業 0.01 3.79 10.43 6.60 - 0.00 20.82

電力

(産業合計) - - - - 5.67 - 5.67

合計 6.57 7.68 12.87 6.60 5.67 0.00 39.39

21

出典:Ministry of Industry (2012) “Industrial Energy Efficiency Initiatives & Standards”

図 2-8 エネルギー多消費産業の業種別エネルギー需要予測(BaUケース)

2. 経済活動の推移

インドネシアの2015年の名目GDPは8,619億ドルで、そのうち製造業21%、農林水産業

14%、鉱業 8%を占めている。また、近年の経済成長率(実質)は、5~6%程度で推移して

いる。

2015年の粗鋼生産量は、世界鉄鋼協会(WSA: World Steel Association)によれば4,854千ト ン(図 2-9)で91ヶ国中30位となっている。2015年の紙・板紙生産量は、国連食糧機関(FAO:

Food and Agriculture Ogranization)が10,470千トンと推定している(図 2-10)。2013年のセメ ント生産量は、欧州セメント協会(CEMBUREAU: The European Cement Association)によれば、

56,000千トンである。

0 20 40 60 80 100

2012 2015 2020 2025

TWh

鉄鋼 繊維 化学肥料 紙パ

パームオイル精製 セメント

窯業

5% 5% 6% 6%

23% 24% 25% 27%

5% 5% 6% 6%

59% 57% 51% 46%

0% 0% 0% 0%

7% 7% 10% 12%

1% 1% 2% 2%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2012 2015 2020 2025

窯業 セメント

パームオイル精製 紙パ

化学肥料 繊維 鉄鋼

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出典:World Steel Asociation (2016) “Steel Statistical Yearbook”

図 2-9 インドネシアの粗鋼生産量の推移

出典:Food and Agriculture Organization of the United Nations “FAOSTAT”

図 2-10 インドネシアの紙・板紙生産量の推移

出典:European Cement Association “World Statistical Review”

図 2-11 インドネシアのセメント生産量の推移

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000

76 80 85 90 95 00 05 10 15

(kt)

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000

71 76 80 85 90 95 00 05 10 15

(kt)

0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000

67 70 75 80 85 90 95 00 05 10 15

(kt)

23 3. 省エネルギー目標

国家省エネルギーマスタープラン(RIKEN(2005))によれば、基本計画策定時から 2025 年までの各部門における省エネポテンシャルは、それぞれ、産業部門(17%)、業務部門(15%)、 運輸部門(20%)、家庭部門(20%)としている。産業部門における省エネ目標は、2025年

にBaU比17%削減としているが、技術別の目標が不明である。

工業省(MoI(2012))に基づけば、経済加速ケースのエネルギー多消費産業の主要7業種 の2025年における省エネ率は12.4%と算出されている。BaUケースにも同様な業種別省エ ネ率を想定した場合は、2025 年における省エネ率は 11.7%と算出されている。しかしなが ら、RIKEN(2005)の産業分門の17%目標を満たしていない状況である。

4. 省エネルギー政策とその課題

 産業部門の省エネ関連法令

産業部門の省エネ関連法令は、エネルギー法、省エネルギー政令、新国家エネルギー政 策、エネルギー管理に関する規則、国営電力会社(PLN)の電力料金に関する規則、エネルギ ー管理士・エネルギー診断士の国家能力基準に関する規則が主たる法制度となっている。

表 2-8 産業部門の省エネ関連法令

関連法令 内容

エネルギー法200730 エネルギー部門を統括管理するための法律。国家エ ネルギー委員会(DEN)の設置、国家エネルギー政策 の策定のほか省エネルギー政策を規定。

省エネルギー政令200970 エネルギー法に基づいて制定。省エネルギーマスタ ープランの策定、エネルギー管理制度、省エネ基 準・ラベルを規定。

新国家エネルギー政策(政令)201479 2025 年におけるエネルギー弾性値を 1 以下。2025 年までにエネルギー原単位を1%で減少。

エネルギー管理に関するMEMR省令201214 省エネルギー政令の第13条(5)項、第19条(3)項、第 21条(2)項、および第27条のエネルギー管理制度の 実施細則

国営電力会社(PLN)の電力料金に関する MEMR 201419

国営会社(PLN)の電力料金の設定に関する省令

産業部門のエネルギー管理士の能力基準に関する MEMR省令201013

エネルギー管理士およびエネルギー診断士の国家 能力基準

産業部門のエネルギー管理士の国家職業技能適性 基準に関するMOM&T省令2011321

24 エネルギー診断士の国家職業技能適性基準に関す MOM&T省令2012614

出典:エネルギー鉱物資源省WEBサイト(法規集14)など各種資料より作成

 エネルギー管理制度

省エネルギー政令でエネルギー管理者の任命などのエネルギー管理制度が定められてお り、実施細則はエネルギー管理に関する規則で定められている。また、エネルギー管理士 およびエネルギー診断士の国家能力基準が定められている。

(1). エネルギー多消費事業者(6,000toe以上)

年間 6,000toe 以上のエネルギーを使用するエネルギー多消費事業者は、以下のエネルギ ー管理を通じた省エネルギーを実施することが求められている。

• エネルギー管理者の任命

• 省エネルギープログラムの策定

• 定期的な省エネルギー診断(エネルギー監査)の実施

• 省エネルギー診断の結果に基づく提案の実施

• 省エネルギーの実施状況の定期報告

(2). エネルギー管理士、エネルギー診断士

任命されるエネルギー管理者は、エネルギー管理士認証が義務付けられている。省エネ ルギー診断は、内部のエネルギー診断士または認定機関が実施し、この省エネルギー診断 を実施するエネルギー診断士もエネルギー診断士認証が義務付けられている。

(3). 省エネルギー実施の成功基準

省エネルギー実施の成功基準は、一定期間にエネルギー原単位(SEC: Specific Energy Consumption)、またはエネルギー消費弾性値が減少することである。エネルギー管理に関す る規則では、一定期間の間に連続して3年間、エネルギー原単位の年2%以上の改善と定め られている。

(4). インセンティブ、ディスインセンティブ

定期報告の評価結果が省エネルギー実施の成功基準を満たしている時、以下のインセン ティブを申請することができる。

• 省エネ設備の税制優遇

• 省エネ設備の地方税の減免または免除

• 輸入省エネ設備の関税免除

• 省エネ投資の低利融資

• 政府による財政支援されたパートナーシップによる省エネルギー診断

また、エネルギー管理を通じた省エネルギーを実施していない場合、以下のディスイン センティブが科される。

14 http://jdih.esdm.go.id/?page=home

25

• 書面による警告

• マスメディアでの公表

• 罰金

• エネルギー供給の削減

5. 省エネ施策の実施状況と課題

 省エネ施策の実施状況と課題の概要

省エネ法の執行状況は、エネルギー集約産業の265事業者のうち、101事業者がエネル ギー使用状況を報告し、提出率は38%と低い。法の執行強化が課題となっている。

2016年8月現在で、エネルギー管理士認証者は 306名、エネルギー診断士認証者は196 名となった(表 2-11、表 2-12)。2016年2月現在で必要なエネルギー管理士数827名であ り、その充足率が27%(経済産業省 (2016a))だったものから37%に向上中であるが、引き 続き認証者数の拡大・育成が課題となっている。2011~2014年に、517事業者(発電、化学 工業、紙パ、食品・飲料、繊維、鉄鋼、農産業)の省エネ診断が実施された。低コストの 省エネ対策の提案は、ほぼ実施済みとなっている。2014~2015年に、10事業者(繊維、化 学工業、鉄鋼)の省エネ設備導入などの省エネ投資を目的とした投資対象省エネ診断(IGA:

Investment Grade Audit)15が実施された。中高コストの省エネ投資に対する財政支援、これ

ら投資対象省エネ対策(IGA)に対する専門知識の不足が課題である(表 2-9)。外部機関 からも同様指摘がなされており、これらに加えて、エネルギー管理システムの未構築、省 エネ対策の具体化能力が低いことなどが指摘されている(表 2-10)。

表 2-9 2015年時点でのMEMRの省エネ施策の実施状況と課題の概要(産業部門)

省エネ施策

政府予算による省エネ 診断の実施

2011年~2014年の間に517件(火力発電 所、化学、紙パ、食品飲料、繊維、鉄鋼、

農産業)に対して省エネ診断を実施

コスト負担が無い、または低コストの省 エネ対策の提案は、ほぼ実施済み

中高コストの省エネ対策提案の実施 のための財政支援の不足

自覚の不足

認証エネルギー診断士の人数の不足

政府予算による投資対 象省エネ診断(IGA)の 実施

2014年~2015年にかけて10件の投資対象省エ ネ診断(IGA)の実施(繊維、化学、鉄鋼)

投資対象省エネ診断(IGA)を実施する国 内専門家の不足

エネルギーマネジメン トシステム(ISO50001)

の実施:UNIDOサポート

2012年~2017年目標:繊維、紙パ、食品 飲料、化学

エネルギーマネジメントシステムおよび

工場経営層のエネルギーマネジメン トシステムに関する自覚および情報 の不足

15 投資対象省エネ診断(IGA)とは、省エネ投資を要する省エネプロジェクトベースの詳細診断のことで、計 測診断や経済性分析が実施される。

ドキュメント内 第1章 (ページ 39-57)