第 5 章 2050 年までの再生可能エネルギー導入ポテンシャルと導入促進に向けた政策の費用
5.2. 地方電力供給における再生可能エネルギーの導入量に関する分析
5.2.1. 東インドネシアの地方電力供給における再生可能エネルギーの活用
この分析では、東インドネシア地域を対象にし、同地域における2050年までの電力需要 を推計し、それに対して電力供給を再生可能エネルギーの導入が進まないレファレンスケ ース(ELectr_Ref)と再生可能エネルギー最大導入ケース(Electr_RE)の二つのケースを想 定し、電源開発モデルでそれぞれのケースにおいての電源構成を分析する。
試算で用いた化石燃料の価格想定と主な再生可能エネルギー技術の設備コストの想定を 図5-1に示す。2050年にかけて、石炭価格は据え置き、天然ガス価格は年率1.2%、ディー ゼルの価格は年率 2.2%で伸びていくと想定している。なお、地方発電用のディーゼルにつ いて、燃料の運搬費用が高いため、調達価格は全国レベルより大幅に上回っている。再生 可能エネルギーに関して、バイオマス発電の設備コストを一定にし、太陽光発電と風力発 電の設備コストは今後引き続き低減していくことを想定している。特に太陽光発電はこれ からもコスト削減の余地が大きい。水力発電と地熱発電については、サイトによって初期 コストが異なる。水力発電の初期コストは 2,300~3,100US$/kW、地熱発電の初期コストは
2,567~5,000US$/kWと想定しており、将来には安易に開発できるサイトが段々減っていくた
め初期コストも上がっていくを前提としている。
出典:各種資料により想定
図5-1 化石燃料コスト(左)と主な再生可能エネルギー技術の設備コスト(右)の想定
東インドネシアにおける電力需要は 2025 年に 45TWh、2030 年に 67TWh、2050 年に
227TWhになると予測している。同地域における電力需要はインドネシア全国需要の8%強
に占める。
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000
2015 2050
US$/kW
風力
バイオマス
太陽光 0
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
2015 2050
US$/toe
地方発電 用ディーゼル
ディーゼル
ガス 石炭
115
2050 年までの電力需要に対して、前述二つのケースにおける電源構成と再生可能エネル ギー発電量の見通し結果を図5-2と図5-3に示す。再生可能エネルギーの最大限活用を実現 した場合、レファレンスケースと比較すると年間火力発電の代替可能量は 2025 年に
26.3TWh、2030年に45.0TWh、2050年に141.2TWhとなる。
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-2 地方電力供給の電源構成見通し(レファレンスケースと再生可能エネルギー最大導
入ケース)
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-3 レファレンスケースと再生可能エネルギー最大導入ケースにおける再生可能エネ
ルギー発電量見通し
26%
8% 5% 7% 3% 4% 2%
36%
56%
10%
58%
5%
53%
7%
24% 22%
11%
22%
11%
26%
12%
14% 14%
74%
13%
81%
17%
79%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
Electr_Ref Electr_RE Electr_Ref Electr_RE Electr_Ref Electr_RE
2015 2025 2030 2050
再エネ
ガス
石油
石炭
5.9 6.3
32.6 8.8
53.6 38.3
179.1
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
Electr_Ref Electr_RE Electr_Ref Electr_RE Electr_Ref Electr_RE
2015 2025 2030 2050
TWh
116
再生可能エネルギー技術の初期コストが高いため、同じ電力需要を供給する場合、火力 発電と比べると、短期~中期的に総発電コストは増加する。Electr_REケース(再生可能エ ネルギー促進ケース)と ELectr_Ref ケース(レファレンスケース)における累積総発電コ ストを見ると、2025年まで前者の方は約80億ドルほど高い(図5-4)。他方、バイオマス以 外の再生可能エネルギー発電技術は殆ど燃料費がかからないため、運転費が火力発電より 安い。また、将来には化石燃料価格の上昇傾向に対し、太陽光や風力発電など再生可能エ ネルギー発電技術の設備コストが低減し続けることが予想される。実は地方における化石 燃料の調達コストが高いため、再生可能エネルギー技術の導入による燃料費回避の経済効 果はより早期に現れる。単年度の発電コストを比較すると、2025年時点でもElectr_REケー スにおける平均発電コストはELectr_Refより下回っている(図5-5)。累積でみると、2030
年までElectr_REケースのコスト増は2025年までより減少している。さらに2050年までの
時点には、火力発電の代わりに再生可能エネルギー技術を導入すると、総発電コストの節 約が期待できる。Electr_RE ケースにおける2050年までの累積発電コストはELectr_Ref よ り540億ドルほど安くなる。
出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-4 再生可能エネルギー導入拡大による追加発電コストの累積(現在価値に換算)の見
通し
8 4
-54
-60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20
~2025 ~2030 ~2050
brillion US$ (2015 value)
117 出典:日本エネルギー経済研究所推計
図5-5 年平均kWhあたり発電コストの変化の見通し