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運営適正化委員会における対応・解決

ドキュメント内 教育・保育関係の (ページ 139-148)

第4章 保育関係紛争の裁判外解決・処理

第2節 クレーム対応及び苦情解決の具体例

3 運営適正化委員会における対応・解決

2000(平成 12)年に各都道府県の社会福祉協議会に運営適正化委員会が設置され、以 後、苦情受付・解決状況の年次調査結果が全国社会福祉協議会より示されている。また、

各社会福祉協議会においては、さらに具体的な苦情事例等を公表しており、概況を知る ことができる(57)。「平成 20 年度都道府県運営適正化委員会 苦情受付・解決状況の調査 結果の概要」には、各都道府県の運営適正化委員会で扱った苦情受付・解決の件数なら びに苦情の種類が集計されている。

それによれば、サービス分野別(老人・障害・児童・その他)のうちの「児童」の苦 情件数は、総受付件数 2,554 件数中 219 件(8.6%)である。ここでの「児童」は保育所 と保育所以外(児童養護施設、児童自立支援施設、助産施設、肢体不自由児施設、重症 心身障害児施設、母子生活支援施設)にいる子ども達を含めた数値である。障害 1,119 件(43.8%)、老人 991 件(38.8%)その他 225 件(8.8%)の中で「児童」は最も少な い。

苦情受付の制度が始まった平成 12 年度の受付総数が 461 件、児童が 33 件(7.2%)、

翌 13 年度の総受付件数は急激に増加して、1,335 件、うち児童が 137 件(10.3%)、そ の後年度を重ねるにつれ徐々に受付総数が増加し、2005(平成 17)年度から 2500 件台

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になる。2008(平成 20)年度の都道府県別内訳は、東京都 40 件、次いで愛知県 15 件、

京都府と大阪府が 14 件、埼玉県 11 件、神奈川県 10 件と、人口の多い都府県に受付件数 が多く、他の県は数件ないし 0 件である。他の福祉施設に比べ、「児童」の苦情受付件数 がきわめて少ないのは、保育所内での相対交渉により、あるいは保育所の第三者委員を 介して大部分が処理・解決され、運営適正化委員会に事案が上がらない、または保育園 利用の保護者に運営適正化委員会が周知されていないからであると思われる。

苦情の種類は、件数の多い順から、職員接遇 82 件、サービスの質や量 53 件、説明・

情報提供 35 件、その他 20 件、権利侵害 13 件、被害・損害 11 件、利用料 5 件である。

(1)東京都運営適正化委員会での対応

苦情処理件数が全国で最も多い東京都運営適正化委員会の 2007(平成 19)年度事業報 告を見てみる。同委員会は運営監視及び苦情解決の 2 つの各合議体からなる。苦情解決 合議体は、委員 4 名と臨時委員 2 名、苦情解決合議体委員長、副委員長各 1 名、全体会

(運営監視・苦情解決)委員長、副委員長(苦情解決合議体委員長兼任)各 1 名の計 10 名で構成される。所属の内訳は大学教授 5 名、日本教育会会長 1 名、弁護士3名、都立 中部総合精神保健福祉センター部長 1 名、である。苦情解決合議体の開催は年度内 10 回、主な事業は、巡回訪問の実施 8 箇所、区市町村苦情対応機関や福祉サービス事業所 への苦情対応への支援や研修会の開催、都の苦情対応調査の協力、事業所への苦情の解 決のしくみ作りの支援、苦情対応の情報提供、他機関との連携などである(58)

平成 19 年度の苦情等の受付概況は、苦情・相談 377 件(来所 17 件、書面・電話等 360 件)、うち、苦情の新規受付は 30 件(苦情解決合議体 29 件、運営監視合議体 1 件)、相 談が 347 件である。その他、区市町村・事業者支援の問い合わせ等 177 件で、計 554 件 の相談を受け付けた。困難ケースの対応には都内 3 弁護士会と連携し、19 件を弁護士会 に紹介している。児童福祉の苦情等は、全体 377 件中 15 件(4%)であった。

東京都は独自の苦情解決の三層、すなわち、事業所段階・区市町村段階・運営適正化 委員会を設けており、区市町村段階での苦情対応は都の「福祉サービス総合支援事業」

により整備が進められている。その対応の方法は、それぞれの機関により、A「調査・調 整」タイプ(相談のほか、調査・解決に向けた調整を行なう)と、B「専門相談」タイプ

(弁護士等の専門員の助言等をもとに自身で解決する)、の 2 つのタイプのどちらかまた は両方を備えている。保育分野の相談において前者のタイプを備えているのは、千代田 区、文京区、墨田区等27区市であり、後者は新宿区、荒川区、葛飾区等8区市である

(59)。機関により取り扱いの範囲がまちまちであることなどを含め、今後の課題として、

苦情対応機関の未設置区市町村の解消と、苦情対応の仕組みの実質的な機能のための施 策・運営の拡充などが挙げられている(60)

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(2)運営適正化委員会で扱った苦情例

以下に、公表されている苦情事例をインターネットからいくつかのケースを紹介する こととする。

運営適正化委員会の調査区分での苦情の内容は、次の5項目、①サービス内容、②説 明・情報提供、③被害・損害、④権利侵害、⑤その他、である。

以下、この5項目に沿って若干述べる。

①サービス内容の事例

申出人:利用者の母親(受付手段:電話)

内容:最近「食育」が言われ、自分の子どもが利用している保育所でも食べたくないも のでも頭を押さえつけて食べさせる等、行き過ぎと思うところがある。自分がそ の状況を見たときに保育所へ言えばよかったのだが、子どもを人質に取られてい るようなので言えなかった。ほかの保育所の保育士に相談したら運営適正化委員 会を紹介された。「このような行き過ぎをしないように」と全施設へ通達でも出し て貰えないか。

助言:当運営適正化委員会は、個々の利用者からの要望に対して対象サービス業者へ指 導・助言等を行うところであり、要望のように全施設へ通達するような権限も性 格もない。この要望ならば、指導権限のある県青少年家庭課へ出されたがよい。

結果:申し出人は「分かりました、電話してみます」と納得(61)

②説明・情報提供の事例

内容:3 月の卒園式以降は延長保育が利用できないといわれた。事前説明がなく、納得 できない。

対応:委員会より行政所管課への相談を紹介(62)

③被害・損害の事例 申出人:家族

内容:園は事故を反省し、きちんと謝罪してほしい。登園児に他の園児から異物を口に 入れられ,すぐに吐き出し大事にはいたらなかったが、保育園長の事故後の対応の まずさや事業所の第三者委員の対応等に不満。

対応:申出人からヒアリングの上、事業所及び区市町村に事実関係の調査を行なった。

事故発生後の対応に不手際が認められたので、改善を指摘した。区市町村の進行 管理のもとで、改善策がすでに着手されていた。申し出人に文書で結果報告をし

134 た(63)

④権利侵害の事例 申出人:保護者

内容:最近保育園から帰ってきた子どもの体に、痣があることがあった。行く時にはな かったので不思議に思い、子どもに聞くが要領を得ない。保育士に園での出来事 は園外で話さないように口止めされているようだ。保育士に聞いても相談に乗っ てくれないので心配になり、他の親と保育時間中に見学に行ったところ、子ども に暴言を吐いたり、手で叩いたり突き飛ばしたりしていた。

対応:委員会から保育園に連絡し、事実関係の調査。保育園の発表会が近づき、保育士 の力が入りすぎ、つい怒鳴ったり、手が出てしまった。保育園で保育士会を開催 し、事実確認と暴言や体罰は絶対あってはならないと確認し、話し合う。保護者 には連絡帳の充実を約束する(64)

⑤その他の事例

内容:職員の対応と保育園の保育方針が矛盾している。

対応:苦情取り下げ(65)

これらは、公表されているケースのごく一部である。第三者委員の事実関係の調査な どの専門性を求められる事案もあれば、説明や助言・指導の事案もあるが、多くは運営 適正化委員会で解決・処理され、訴訟に発展するものは非常に少ないようである。次に、

各保育園レベルでの対応・解決の事案を幾つかの項目別に見ることにする。

これまでに見た保育所(保育園)での苦情とその対応の状況に加え、以下に筆者自身 が直接見聞した保育サービスの様子を記してみる。

K保育園の登園風景は、子どもも親も実に身軽である。保育園には園児それぞれの着 替えが 4 枚ずつほどストックされており、下着を含めて衣類の洗濯は、日々の保育活動 と並行して保育士が行い、園で乾燥する。園には洗濯機が 4 台設置されており、フル稼 働である。親は洗濯の労がなく、それが当然の日常となる。同園の保育士によると、い つからかこうした洗濯を園でやるようになり、園としても出来るだけ親の要望に応えて いきたいと思うが、自分自身としては、親の要望に何もかも応じていくことが果たして 本当にいいのかどうか疑問に思うこともある、とのことであった。

子どもが保育園で汚した衣類は、一日の子どもの活動を知る手がかりでもある。親は、

衣類の汚れ具合からわが子が今日一日どんな遊びをしてどんな様子だったか想像しなが

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