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アメリカの障害児教育ADR

ドキュメント内 教育・保育関係の (ページ 181-186)

第5章 裁判及び裁判外の教育・保育紛争解決

第2節 アメリカの障害児教育ADR

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ことは、「クレーム社会」の度を増していくであろう現代日本の状況に、小さからず寄与 できると考えるのである。アンケートの結果にも部分的に示唆されているように、教育・

保育に関するトラブル・紛争は、事案によっては訴訟よりも、紛争当事者が多かれ少な かれ、いわば当事者自身のコントロールのもとで主体的に解決しうる、ADR方式が有 効かつ有益であると考えることができる。そこで最後に、相対(あいたい)交渉でも裁 判でもない紛争解決方式としての、前にも触れたADR(裁判外紛争解決方式)の教育 分野における適用ないし応用の可能性について、アメリカにおける障害児教育ADRの 例をも差し挟みながら、そのアイデアを述べて、本論文のしめくくりとする。

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「子どもの受給サービスの受給資格や受給が学区と合意できない場合、どうなります か?」という質問を提示し、答えとして、まず「教師、校長、学区職員との話し合いで、

意見の不一致の解決が可能である」ことを示し、次に、連邦法や州法が規定する「紛争 解決」(dispute resolution)の手続きがあることや、それらの手続きとして、行政審査

(Administrative review)、調停(Mediation)、IEPファシリテーション(IEP facilitation)、州不服申立て手続き(State complaint procedures)、公平で正当な手続 きを踏んだ聞き取り(ヒアリング)(Impartial due process hearing)、審理に先立つ解 決ミーティングの促進(ファシリテーション)(Resolution meeting facilitation prior to a due process hearing)の 6 項目があることを示している。

解決のプロセスとしては、親の懸案事項は、最初に、行政審査(学校の職員又は学区 の責任者との協議)において、学区職員と話し合うことにより、学区レベルで意見の不 一致の解消を試みるのが最善であると勧めている(It is best to first attempt to settle disagreements at the district level by discussing your concerns with district staff members in administrative reviews (discussions with a school staff member or with your school district superintendent))。

続いて、「ただし、州の紛争解決の手続に直接進むこともできる」とし、「調停、IE Pファシリテーション、州不服申し立て、公平で正当な手続きを踏んだ聞き取り、又は 解決ミーティングの促進」を示している。(However, you may choose to go directly to state dispute resolution procedures, such as mediation, IEP facilitation, state complaint, impartial due process hearing or resolution meeting facilitation.)

一方また、「学区はまたこれらの地方や州レベルの選択権を行使できる」(The school district may also use these local and state-level options.) と、解決のプロセスを踏む のは親だけではないことをも付記している。手引きについては、上記の各項目について さらに詳細にQ&A形式で解説している。以下、その幾つかの概要を述べる。

(1)不服申立て

不服申立て手続き(The complaint process)とは、IDEA並びに州法違反の是正措 置を提供することで、親や学区は無料で不服申し立てが迅速に解決できるものである。

また 不 服申 立 ては 、 聴 聞手 続 きに 比 べて 、 論 争が 起 こり に くい 可 能 性が あ る(The complaint process also may be less controversial than a due process hearing)。当事 者(親、学区や機関)は、不服申立て書面(章末別添資料)を提出し、その写しを相手側 の学区最高責任者に送る義務がある。不服申立ての内容には次の事項が含まれている必 要がある。

・特殊教育に適用する連邦法、州法、規則の要件に公立学校が違反したという記述。

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・不服申立ての根拠となる事実(問題の内容、発生日)

・不服申立て人のサインと連絡先情報

・問題に対する解決案。最終解決はオハイオ州教育省特別児童部局(Ohio Department of Education The Office for Exceptional Children)が決定する。

・特定の子どもや子どもたちの違反を主張する場合は、子どもの氏名・住所、学校名等 を記載する。

・不服申立ての案件は、不服申立てが受理された日から1年以内に発生した違反である こと。

記載に不備があった場合は、「記載不備通知」が届けられ、受理・調査はされない。不 服申立ては不備を変更・追加し、再提出ができる。不服申立ての調査は、特別児童部局 が、全ての関連する記録を検討し、現地調査を含め、調査を行わなければならない。(The Office for Exceptional Children must conduct an investigation of the complaint which must include a review of all related records and may include an on-site in-vestigation)。

調査が終了すると、法律や規定を遵守したかどうかを同部局が判断し、調査結果を当 事者に書面で回答する。

・行政審査(Administrative review)は、親の申し立てを受けてから 20 日以内に学 区長(または学 区長が 指名する人物) が遅滞 なく実施する。 行政上 の聞き取り

(Administrative hearing)を行って良い。当事者者全員に書面で裁定(decision)

を通知する(Within 20 days of receiving your complaint: the superintendent (or someone the superintendent designates; 1) will conduct a review without un-necessary delay; 2) may hold an administrative hearing; and 3) will notify all parties of the decision in writing)。

・審査は全当事者に都合の良い時間と場所で行われる(A review will take place at a time and place convenient to all parties)。

・学区責任者が審査を実施する必要が有り、不服申立てのヒアリングを行うことがで きる(The superintendent must conduct a review and may hold an administra-tive hearing)。

・意見の不一致を解決 するため、行政審査で あらゆる努力がなされ る必要がある

(Every effort should be made to resolve any disagreements at the administra-tive review)。

・親と学区は、弁護士を含め、行政審査に第三者を呼ぶ権利を有する(You and the school district have the right to invite others to participate in the administrative

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(2)調停

「調停とは何か」という説明の後、調停のメリットや、知っておくべきことがいくつ か挙げられている。メリットとしては、・親と学区責任者がともに最終合意を作成する、・ 当事者が協調して働き結果を調整できる、・両者が達成した合意は、全当事者に大きな満 足が得られる、・調停によって当事者に新たな視点を理解する機会が与えられ、費用が安 く、迅速である、・合意書の内容を当事者が守りやすい、等々が挙げられている。

また「知っておくべきこと」では、・調停は両当事者にとり自発的なものである、・非 公開である、・電子的に記録されてはならない、・調停者が州の関係者や学区の被雇用者 であってはならない、等が示されている。調停合意の法的拘束性についてのQ&Aでは、

当事者が合意の内容に違反した場合、違反当事者が提訴されることが示されている。

(3)聴聞(ヒアリング)

当事者の意見の不一致を解消するために開かれるヒアリングの内容は、子どもの評価、

IEP等の公教育事項で、親、学区ほか関係機関等全てを要請できる。ヒアリング担当 者は公平な審問官で、弁護士資格を有し、法律の実務原則に基づき、裁定を下す。費用 は学区が負担する。

ヒアリングに臨むに当たり、親には次の権利がある。

①その案件の対象の子どもを出席させる権利。

②ヒアリングを一般公開する権利。

③弁護士や、障害児の問題に関する専門的な知識や研修を受けている人に同席してもら い助言を得る権利。

④証拠を提示し、相手方当事者に対面して反対尋問し、証人の出席を要請する権利。

(Present evidence, confront and cross-examine other parties and require the at-tendance of witnesses)

⑤ヒアリングの記録、事実認定、裁定の記録は、希望すれば書面あるいは電子データで 無料入手する権利。

(4)解決ミーティング

親がヒアリングを要請した場合、ヒアリングが開催される前に、解決ミーティングが 実施される。ここで、親には不服申立てを論議する機会が与えられ、学区には親の申立 てを解決する機会が与えられる。その目的は、親が不服申し立てとその根拠となる事実 を論じることで、不服申立ての元にある係争事項を解消する機会を学区に与えることで

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ある。ミーティングは、調停の場合を除き、実施されなければならない。ただし、学区 が「公平で正当な手続きを踏んだヒアリング」を要請する場合は、解決ミーティングを 実施する必要はない。

学区は、親と不服申し立ての内容に詳しい専門家 1 名以上のメンバーでミーティング を実施する。専門家メンバーは親と学区が決める。このミーティングは、親の正当な不 服申立て通知を学区が受け取ってから 15 日以内に実施されなければならない。迅速な処 理を要請されている場合は 7 日以内に行わなければならない。また、親が弁護士を同伴 しない限り、学区側は弁護士を同伴させない。

解決に向けて、助言者(ファシリテーター facilitator)が当事者を援助する。ファ シリテーターは、当事者同士コミュニケーションができるように援助し、当事者のディ スカッションを誘導し、意見の不一致を当事者が解決できるように助ける。解決ミーテ ィングで親の不服申し立てが解消した場合、法的合意(和解合意書)を実行する。当事 者の合意が得られなかった場合はヒアリングを行う。

これら一問一答のQ&A方式の解説書を概観すると、基本は当事者同士の相対の解決で あり、それがうまくいかない場合、不服申立ての手続が取られ、学区や学校がそれに応 じた調査をする。また、ファシリテーターや専門家の同席のもと、解決ミーティングで 当事者同士が問題を解決する場が設定される。合意に至らない場合、法的専門家である 第三者のヒアリングによる裁決や調停に進むという一連の紛争解決のプロセスが見られ る。解決に当たり、法的な専門家と特殊教育におけるそれぞれの専門家の知見や助言者

(ファシリテーター)の存在も大きい。

日本の行政型ADR(教育委員会設置の学校問題解決支援チーム等)との違いは、こ れらの紛争解決システムが、連邦法である個別障害者教育法(Individuals with Disa-bilities Education Act IDEA)や各州法の法令や規定に違反しているかどうかにつ いて、法的視点からクレームを処理し、さらに、障害のある子どもの権利や親の権利を 前面に打ち出して、救済にあたっている点である。日本における障害者教育をめぐる紛 争ひいては教育・保育をめぐる解決システムをどのようにしていくべきか、アメリカの 障害児教育ADRシステムは有益な示唆を与えてくれると思われる。

2 障害児教育におけるヒアリング事例

正当な法的手続きを踏んだヒアリングにおける裁決には法的拘束力があり、また各州 の行政ヒアリング部局(Office of Administrative Hearings)は、一般にヒアリングの 内容を公開している。先のオハイオ州の紛争解決手引きによれば、正当な法的手続きを 踏んだ州のヒアリングは、話し合いや調停では解決がつかない場合の案件を扱う。

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