第1章 教育・保育関係のクレーム・紛争
第4節 教育・保育関係クレームの分類
2 クレーム分類の視点と類型
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・通学路の整備を学校に求める
・教室へのエアコンの設置を一方的に求める
・生徒の声がうるさく静かにさせるよう学校に要求
・自己の用事で、学校行事の日程変更を求める
・問題行動の原因は学校にあると責任を追及
・保護者が意図的に子どもを登校させない
・校則の見直しと違反を認めるよう要求
・親族間のトラブルの相談
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校庭の土が強風に舞って洗濯物が汚れるとか、水道水に異物が混入しているとか、プー ルの水質が悪いとかいったクレームがこれに該当するであろう。
⑦ 政治・政策事項要求型 もっぱら政治的・政策的な教育事項に対する要求であって学 校・教師が対応するのになじまないもの。教育法令の改廃や教科書検定のあり方、教育 委員会の年度計画などに関するクレーム等がこれに該当するであろう。
上の類型は、実際にはその内容が相互に重なる部分も少なくない。以下、ここでは、そ れらが主としてどこに寄せられることになるかに焦点を置いて若干コメントしてみる。実 際には、ケースごとに複雑な軌跡を描くことになることはいうまでもない。
① [教育外事項要求型]のクレームは、学校に持ち込まれることが多いであろう。しかしこ れらは、当該保護者にとって悩みの種であるとしても、学校・教師としてはこれに口を 出す権限はなく、基本的には解決・処理に乗り出す必要もないものである。
② [学校依存要求型]のクレームは、担任や養護教諭など保護者に近い教師に向けら れるであろうと思われる。現実には、放っておけない子どもを目の前にすれば、教師と しては家庭訪問や子どもの面倒を見るなど、何らかの関与をせざるをえないであろうが、
これは学校・教師の本来の業務とは言い難い。
③ [在学関係事項要求型]のクレームは、学校や教育行政当局に持ち込まれる場合が多い。
そしてこれへの対応が子ども・保護者側の満足に至らないような場合には、時に支援者 を伴って訴訟提起となることもありうる。
③ [教育活動是正要求型]のクレームは、保護者から学校・教師に寄せられるクレームの中 心をなし、しかもその内容はきわめて広範に及ぶ。担任のほか各種主任・教頭・校長を はじめ、学校の頭越しに教育委員会に通告されることもあり、またその内容も、「難ク セ・イチャモン・無理難題」の類が少なくない。教師がこの種のクレームに悩まされ、
心身を病むに至ることも、この類型においてであろう。
④ [学校管理・運営是正要求型]のクレームは、校長や教育委員会、地元の有力者、政治家 などに持ち込まれることが多い。保護者会や各種団体の構成員・代表者が学校に赴い て要望書を提出したりすることもある。
⑥ [施設・設備是正要求型]のクレームは、保護者のほか近隣住民が電話等で学校の事務室 や校長・教師に向けることがあり、また、学校を飛び越えて行政当局や地元議員に働き かけたりする場合もある。この種のクレームは、学校のみでは十分に対応しきれないと ころもあり、行政当局が解決・処理に当たることとなる場合が多い。
⑦ [政治・政策事項要求型]のクレームは、保護者や時には教師が、個別に又は集団的に、
自治体や国に対して申し立てるもので、運動・闘争といった形態をとることが少なくな い。いずれも個々の学校・教師が対応することには性質上なじまない。
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クレームをどこにどのように持ち込むかは、もっぱら保護者に委ねられる。しかし実際 には、その多くは学校・教師に向けられ、学校・教師が第一次的な対応者とならざるをえ ないこと、そしてそれがまた現代日本においては、学校・教師に求められる「専門性」で あり義務の一環をなしつつあることは、避け難い事実なのである。
<注>
(1) 例えば、
・小野田正利 (2005)「学校現場における保護者対応の現状に関するアンケート調査」教 育アンケート調査年鑑 2005 年版(下)創育社、
・金子真人(2007)「学校における保護者対応に関する調査研究」群馬県総合教育センタ ー紀要 239 集、
・佐藤利章(2008)「保護者への対応に関する調査研究―トラブル防止マニュアルの作成 と活用を通して―」群馬県総合教育センター紀要 240 集、
・関根眞一総監修(2009)『日本苦情白書』メデュケーション株式会社、
・清水和夫・入澤 充(2010)「親の無理難題要求に対応するための同僚性と協働性」季刊 教育法№165 27 頁以下、
・イチャモン研究会(新・学校保護者関係研究会)「保護者の学校意識に関する調査報告 書」 http://ichamon.com/record/292/、等々。
(2) 更新講習が発足して 2 年目の平成 22 年度における講習対象は、生年月日が、昭和 30
(1955)年 4 月 2 日~昭和 32(1957)年 4 月 1 日、昭和 40(1965)年 4 月 2 日~昭和 42(1967)年 4 月 1 日、昭和 50(1975)年 4 月 2 日~昭和 52(1977)年 4 月 1 日の者 である。
(3) 文部科学省(2010)『文部科学統計要覧(平成 22 年度版)』日経印刷
(4) 「小野田正利先生(大阪大学)に聞く『モンスター』というレッテル貼りでは解決し ない」季刊教育法№165(2010) 4 頁
(5) 例えば、小野田正利(大阪大学教授)が 2005 年 3 月から 4 月にかけて関西の教師らを 対象に行った調査では、「無理難題」が増えたとする者が小学校で 89%、中学校で 82%、
高等学校で 78%に上り、それがいつから増えたかについては、「10 年ほど前から」37%、
「5 年ほど前から」25%となっている。朝日新聞 2005 年 6 月 26 日特集記事。
(6) 文部科学省「平成 20 年度教育職員に係る懲戒処分等の状況について」文部科学省ホー ムページ
(7) 朝日新聞 2010 年 7 月 20 日
(8) 1996 年 10 月 28 日 朝日新聞「精神性疾患、毎年 1100 人の現実、深刻化する先生たち の不登校」
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(9) 文部科学省「平成 21 年度教育職員に係る懲戒処分等の状況について(表 13 病気休職 者数の推移)」
(10) 文部科学省初等中等教育局児童生徒課 平成 22 年度「児童生徒の問題行動生徒指導 上の諸問題に関する調査」について 平成 23 年 8 月 4 日
(11)「教諭殴り、父親逮捕 傷害容疑で徳島/徳島県」朝日新聞 2005 年 8 月 31 日 (12) 朝日新聞 2005 年 11 月 10 日(朝日新聞記 事検索サービス聞蔵)
(13) 文部科学省『平成 21 年度学校マネジメント支援に関する調査研究事業成果報告』 岡 山県教育庁「学校に対する苦情・不当要求への対応」
(14) 文部科学省初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)「保護者や地域等からの要望 等に関する教育委員会における取組」平成 22 年 8 月、では 26 都道府県市教委の苦情 対応マニュアルが紹介されているが、このほかにも多くの自治体で、保護者対応のマ ニュアルが作成されている。
(15) 例えば、
・尾木直樹編『校長・教頭のための困った親への対処法!』教育開発研究所 2005 年、
・土田雄一編『これで安心”保護者とのトラブルへの対応“ 保護者を味方につける 55 の秘策』教職研究 11 月号増刊 教育開発研究所 平成 18 年 11 月、
・関根正明編『「保護者のクレーム」対処法 保護者とのいい関係づくり”実践編“』
教職研修 12 月号増刊 教育開発研究所 平成 19 年 12 月、
・渋井哲也『解決!学校クレーム-“理不尽”保護者の実態と対応実践-』2009 年 株 式会社河出書房新社、等々。
(16) 文部科学省「学校基本調査」平成 23 年 8 月 4 日公表
(17) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課『特別支援教育資料(平成 22 年度)第一 部 集計編』平成 23 年 3 月
(18)(19) 文部科学省「特別支援教育の対象の概念図[義務教育段階]」平成 20 年 5 月 1 日 現在
(20) 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 「2 特別支援学校教諭等免許状の保有 率」『特別支援教育資料(平成 22 年度) 第 3 部 資料編』平成 23 年4月 (21) 文部科学省「平成 22 年度中間報告 学校基本調査」2011 年 7 月 28 日公表 (22) 文部科学省『特別支援教育資料(平成 22 年度)第 3 部 資料編』 前出
(23) 内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付障害者施設担当「『教育・育成』に関する 調査 報告書」『障害者施設総合調査 2008(平成 20 年度)』平成 21 年 3 月
(24) 多田房之輔著『学校家庭連絡の方法』シリーズ: 通俗教育全書 ; 第 39 編 明治 27 年 野口竹次郎発行 博文舘(発売元)
(25) 仲 新他編『学校の歴史第 2 巻小学校の歴史』 昭和 54 年 第一法規 62―63 頁 (26) 同上 348 頁
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(27) 倉沢剛『小学校の歴史Ⅰ』 ジャパンライブラリービューロー 昭和 38 年 33 頁 (28) 一倉喜好『スケッチ群馬の学校 100 年上 朝倉だより2』 2005 年 朝日印刷 116
頁
(29) 同上 135-137 頁
(30) 大松沢寿、大内彦次郎編『家庭の枝折』南郷村(宮城県)大松沢寿・大内彦次郎共同 刊行、明治 27 年
(31) 家庭訪問は佐波郡玉村尋常小学校で 1892(明治 25)年より開始。1899(明治 32)都 市から実施の教育懇話会では、職員が各大字に出張して家庭に関する要項を説明し、
また保護者の意見を聞く。一倉喜好『スケッチ群馬の学校 100 年上朝倉だより2』前 出 124 頁
(32)(33)(34)(35) 一倉喜好著『スケッチ群馬の学校 100 年上朝倉だより2』前出 151-154 頁
(36) 例えば、1951 年に出された無着成恭編『山びこ学校』(青銅社)には、生徒たちの間 に「勝手だべ」という言葉が流行したことが記されている。佐藤藤三郎「答辞」
(37) 群馬県盲教育史編集委員会編『群馬県盲教育史』 群馬県盲教育 70 周年記念事業実行 委員会発行 昭和 53 年 428 頁
(38) 広田照幸「学校像の変容と<教育問題>」佐伯胖、他編『岩波講座現代の教育 第 2 巻学校像の変容』1998 年 pp.147-169
(39)『新英和中辞典(第三版)』 研究者 1971 年 なお、比較的新しいもの、例えば、『ア ドバンストフェイバリット英和辞典』 東京書籍 2002 年には、「主張する、言い張る、
断言する。(疑いや反対などに対して、正当性や事実を主張する)」とある。
(40) 和田安弘『法と紛争の社会学―法社会学入門』 世界思想社 1994 年 241 頁 (41) 樫村四郎『「もめごと」の法社会学』 弘文堂 平成元年 122 頁
(42) 朝日新聞 2005 年 6 月 26 日 (43) 朝日新聞 2007 年 7 月 29 日
(44)(45) 広田照幸『日本人のしつけは衰退したか「教育する家族」のゆくえ』 72―73 頁、
79-81 頁
(46) 群馬県精薄教育史編纂委員会編『群馬県精神薄弱教育史』(非売品) 群馬県精薄教育 研究会発行 昭和 40 年 69 頁
(47)「第 4 部教育行財政改革の基本方向」臨時教育審議会「教育改革に関する第二次答申」
昭和 61 年 4 月 23 日 『文部時報 8 月臨時増刊号』 ぎょうせい昭和 62 年 9 月 170
-171 頁
(48) 尾木直樹「クレームの内容とクレームをつける気持ち」 教職研修平成 19 年 12 月号 10 頁以下
(49) 小野田正利『学校参加ブックレット・プチ 2007』 大阪大学人間科学研究室 2007