• 検索結果がありません。

保育のあり方をめぐる裁判例

ドキュメント内 教育・保育関係の (ページ 97-106)

第3章 保育裁判

第2節 保育判例の内容と検討

1 保育のあり方をめぐる裁判例

1, 4, 5, 9, 10, 11, 16, 20, 22, 23, 28, 30, 32, 33, 34, 35, 37, 42, 43, 44, 47, 49, 50, 53, 54, 55, 58, 59, 60, 62, 64, 67, 68, 69, 73, 75, 82, 85, 89, 99, 103, 107, 109, 116,

2 保育環境をめぐる 裁判 58 例

2, 7, 8, 12, 14, 15, 17, 18, 19, 24, 25, 26, 27, 29, 31, 36, 38, 40, 41, 45, 46, 56, 66, 70, 71, 72, 76, 77, 79, 80, 81, 83, 84, 86①, 86②, 87, 88, 90, 92, 94, 97, 98, 100, 102, 104, 105, 108, 111, 112, 113, 114, 115, 117, 118, 121, 122, 123, 124, 126

3 保育者のありかたを めぐる裁判 24 例

3, 6, 13, 21, 39, 48, 51, 52, 57, 61, 63, 65, 74, 78, 91, 93, 95, 96, 101, 106, 110, 119, 120, 125,

90

「保育のあり方をめぐる裁判」は 44 件、「保育環境をめぐる裁判」は 58 件、「保育者の あり方をめぐる裁判」は 24 件である。「保育のあり方をめぐる裁判」は、主に保育中や 通園途中の事故等から保育のあり方を問う裁判である。「保育環境をめぐる裁判」は、主 に保育所の物的環境と人的環境の裁判である。前者は、①入園許可、設置統廃合、民間 委託の問題に関する裁判と、②保育料、国庫負担等をめぐる裁判、③日照権、騒音等を めぐる裁判である。後者の人的環境をめぐる裁判は、①子どものいじめ、トラブル ② 保育者の体罰、暴行、わいせつ等をめぐる裁判である。「保育者のあり方をめぐる裁判」

は、主に保育者の公務災害や、人事、勤務に関する裁判である。

第2節 保育判例の内容と検討

1 保育のあり方をめぐる裁判例

保育の中心的場面は保育所であるが、そこでの事故をめぐり保育方法について保護者 と保育所、保育士とのトラブルが訴訟に至った事案と、保育中の事故、保育内容の裁判 例を紹介する。

(1)保育方法

1)窒息事故(乳幼児の監視義務・安全配慮義務)

保育所の事故で裁判例が多いのが、睡眠中の乳幼児窒息死亡事故である。例えば次の ようなものがある。無認可保育園の乳幼児死亡事故(東京地裁 昭和 54 年 7 月 18 日判決)、

託児所における幼児死亡事故(高知簡裁 昭和 58 年 1 月 17 日判決)、保育中の乳幼児窒 息死(名古屋地裁 昭和 59 年 3 月 7 日判決)、保育を委託された幼児の急死(東京地裁 昭和 59 年 9 月 6 日判決)、無認可保育園の午睡時の窒息事故(千葉地裁松戸支部 昭和 63 年 12 月 2 日判決)、保育園での生後 6 か月の乳児窒息死(横浜地裁 平成 3 年 9 月 25 日判決)、無認可保育所の乳幼児の窒息死(千葉地裁 平成 4 年 3 月 23 日判決)、保育施 設乳児死亡事故(東京地裁 平成 4 年 5 月 28 日判決)、保育委託中の乳児窒息死(東京 地裁 平成 4 年 6 月 19 日判決)、 25 分間隣室での作業中の乳幼児の放置事故(千葉地 裁 平成 5 年 12 月 22 日判決)、保育中の幼児死亡事故(京都地裁 平成 6 年 9 月 22 日 判決)、無認可保育所での乳児窒息死(東京地裁 平成 15 年 1 月 22 日判決)、保育園入 園中の生後 4 か月女児の死亡事故(福岡地裁 平成 15 年 1 月 30 日判決)等々。これら のの多くは、保育士が監視義務を怠ったとされる事例である。

ここで、幼児が保育中に死亡した事案を見てみる。生後 1 年 2 ヶ月の乳児Aが、私立

91

の乳児保育園Yで、ベッドで伏臥中、吐いた物を吸引し、声門部を閉塞させ窒息死した 損害賠償請求事件(京都地裁昭和 50 年 8 月 5 日判決 判例タイムズ 332 号 311 頁)であ る。

Aは風邪をひきやすく、それがもとで下痢を起こすことが多く、保育所在籍 72 日間中、

13 日しか当園していない健康状態であった。事件の 20 日前には強い下痢を起こし、事 件前日の保育日誌には全身がザラザラの肌であったとあり、下痢のため栄養状態が悪か った。判決はAの親が保育士にAの健康状態を告げていないことから保育士の過失は認 めなかった。

「死亡時の5日前には水様の下痢が5回もあり、気管支炎を恵(ママ)って体力がなか ったので健康児しか預かれないという被告の方針からいえばむしろ休ますべきで」ある。

「保母のNやMは一郎がよく休園するのを知っていたのはもちろん一郎が消化不良が ちで1月 26 日には身体に湿疹を生じ死亡前日は全身の肌がざらざらにあれていたのを 知っていたのであるから、できたらもっとよく一郎を観察し、特に食事をもっと減らし たほうがよかったといえるが、原告らの方から特に連絡がなかったので、そこまで気が 廻らなかったものでそれをしなかったといって被告の方に過失があるとみるのは相当で ない」。

保育所は健康な子どもを預かるという前提のもと、体調の悪い子どもの管理に責任を 負えず、そこまでの監視義務はないという判断である。昭和 52 年当時の判決は多くの子 どもを預かる保育所において、体調の悪い子どもの管理は親からの連絡がない限り、た とえ子どもの状態が悪いことが保育所内で明らかであっても、多忙で目も手も行き届か ない保育士に寛容であった観がある。

しかし、近時、保育園での窒息事故において、保護者が事故調査委員会の設置を求め たり、第三者委員会の調査を強く要請したり、また一個人の問題にとどまらず、保育内 容・運営・制度の改善や利用者の権利の問題としてインターネットを通じて、ネット署 名を集めるなどし、行政に働きかける動きも見受けられる(平成 24 年 10 月4日 かし の木保育園死亡事故における遺族要望書、等)。

我が子を亡くした親の悲嘆や怒りが、保育内容・設備などの貧困さに目を向かせ、さ らには世論に訴え、市民運動となり、この国の保育行政改革に及ぶほどの大きなうねり となる。保育事故やそれに伴うトラブルで生じた保護者の怒りのエネルギーは、非常に 強い。

2)保育中の事故

保育中の事故には、保育活動中の人的な事故と施設・設備の瑕疵による事故があり、

いずれも安全配慮義務が問われる。厚生労働省の「保育施設における事故報告集計」(平

92

成 25 年 1 月 18 日)は、平成 24 年 1 月1日から 12 月 31 日までに、保育施設において発 生し、死亡事故や治療に要する期間が 30 日以上の負傷や疾病を伴う重篤な事故等で報告 のあったものを集計している。それによると、報告件数 145 件中、負傷等は 127 件(う ち5歳 48 名)、死亡事例が 18 件(うち 0 歳 10 名)である。事故の発生場所は、保育施 設の室外が 65 名と多く、死亡事故は保育施設の室内が 16 名、室外が1名、園外が 1 名 である。また、負傷等で最も多いのが、骨折で 96 件、火傷 2 件、意識不明 1 件、その他、

指の切断、唇、歯の裂傷等が 28 件である。

独立行政法人日本スポーツ振興センターの『学校の管理下の災害 25』では、平成 23 年度災害共済給付の対象(治療費 5000 円以上)となった負傷・疾病、死亡事故の件数が 報告されている。保育所の場合、加入者数が毎年約 90%であり、園児数の 1 割にあたる 21~22 万人が未加入であることや、年度集計であること、また、前記の厚生労働省の対 象と治療期間・治療費等で異なることなどを勘案すると、双方の集計を単純に比較でき ず、実際、死亡者数にも双方の集計に相違があるが、保育事故対策を考える上で、有用 な資料である。上記2つの統計は毎年公表され、事故の発生場所、活動内容、年齢等詳 細も明らかにされている。

保育所は園での生活時間が長く、したがって事故発生率も幼稚園より多い。また乳児 の突然死・窒息死や1~2歳の事故も多く、保育士の危機管理意識や子どもたちへの安 全教育、保育所施設の安全対策は幼稚園以上に注意を払わなければならないのであるが、

しかし、例年事故件数はきわだった減少傾向に向かわず、横ばい状態である。前述の事 故統計や事故事例が、保育所の危機管理に必ずしも反映されていない現状がある。

3)食物アレルギーの事故

2012(平成 24)年 12 月、東京都調布市の小学校で、食物アレルギーのある女児がチ ーズ入りチヂミを食べ死亡した事故があり、東京都教育委員会は当時の担任を、給食に アレルギー症状を引き起こす食材が入っているかどうか確認を怠り配食したとして、停 職1カ月の懲戒処分とした。また、当時の校長を戒告とした。

文科省は 2011(平成 23)年 5 月、「学校給食における食物アレルギー対応に関する調 査研究協力者会議」を設置して検討を行い、同年7月、学校給食での食物アレルギー対 応における基本的考え方や具体的な取組等に関する中間まとめ「学校給食における食物 アレルギー対応について」(学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力 者会議)を発表し、今後のアレルギー対応の基本的考え方として4つの基本的な考え方 を挙げた。すなわち、「食物アレルギーの児童生徒が他の児童生徒と同じように給食を楽 しめることを目指すことが重要であり、各学校、各調理場の能力や環境に応じて食物ア レルギーの児童生徒の視点に立ったアレルギー対応給食を提供することを目指す」こと

93

をはじめとして、最後の項目は、「個々の教職員の責任を求めるのではなく、組織として 対応していくことが重要」と、日常の取り組みや、万が一事故が起きた場合の組織対応 の基本姿勢を示している。これは、アレルギーに限らず、学校事故全てにおける基本姿 勢である。

食物アレルギーの子どもは増加しており、これまで各自治体もさまざまな対応を取っ ている。文科省の委託を受け、日本学校保健会が 2008(平成 20)年 3 月に出した「学校 のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」は、アレルギー対応の基本的ソースと なり、各自治体ではこれを参考にした対応の手引きを発行し、対応を周知させた。愛知 県「学校給食における食物アレルギー対応の手引き」(平成 22 年3月)、札幌市教育委員 会「学校給食における食物アレルギー対応の手引き」(平成 20 年8月 平成 22 年9月一 部改訂)等々である。

また、兵庫県教育委員会「学校におけるアレルギー疾患対応マニュアル(平成 25 年3 月)、千葉県教育委員会「千葉市版 学校における食物アレルギー対応の手引き」第 2 版(平成 25 年2月)など、近時発刊された手引きも少なくない。今後、各自治体は対応 の周知徹底とともに、組織的なアレルギー対応に取り組むと思われる。

先述の「学校給食における食物アレルギー対応について」(中間まとめ)では、「事前 の対応」として「異なる学校段階(幼稚園、保育所、小学校、中学校等)との情報共有 を進めるべきである」と示している。

さて、厚労省の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(平成 23 年3月)は、

平成 21 年4月に施行された「保育所保育指針」及び、保育所保育指針の告示と同時に 策定された「保育所における質の向上のためのアクションプログラム」(以下、「アクシ ョンプログラム」という)に基づき作成された。保健・衛生面の対応の明確化としての ガイドラインであり、先に「保育所における感染症ガイドライン」(平成 21 年8月)が 作成されている。

保育所ではアレルギー疾患を有する子どもが年々増加傾向にあり、保育所の対応に苦 慮していることから、このアクションプログラムを受け、平成 21 年度児童関連サービス 調査研究等事業として、こども未来財団が保育所におけるアレルギーの調査・研究に取 り組み、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(平成 23 年3月)を作成した。

その目的は、保育所職員の保育所でのアレルギー対応に関する具体的な対応方法や取り 組みを共通理解し、保護者も含め、保育所関係機関が連携しながら組織的に取り組むこ とである。

作成に当たり、2010(平成 22)年7月には第1回のアレルギー対応ガイドライン作成 検討会が厚労省で開催され、参考資料の1つとして「学校のアレルギー疾患に対する取り 組みガイドライン」が出された。検討会では厚労省雇用均等・児童家庭局側から、先の文

ドキュメント内 教育・保育関係の (ページ 97-106)