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先行諸分類

ドキュメント内 教育・保育関係の (ページ 32-35)

第1章 教育・保育関係のクレーム・紛争

第4節 教育・保育関係クレームの分類

1 先行諸分類

実際に学校・教師をめぐるクレーム・トラブルが実際に増えているのかどうか、増えて いるとしてどの程度であるかについては、その種の統計が必ずしも詳らかでないために明 確にできないが、最近は、しばしば理不尽な「難クセ・イチャモン・無理難題」の類のク レームと、それに起因するトラブルが目立つ、と指摘されている。このような状況は、こ こ数年、周囲での見聞やマスコミの報道、この種の問題を扱う著書等が多いことからも、

窺い知れる。学校に対する保護者の「無理難題」を複数回にわたって特集する一般新聞や 専門紙・誌や著作などがそれである。そこには、保護者らからのいかにも理不尽な注文や 苦情が学校・教師に寄せられ、そのために教師たちが疲弊して、種々の症状に陥っている 様子が、生々しく記されている。教育クレームは教育紛争に発展する徴候でもある。

保護者から学校・教師に向けられるこれらクレームは、それぞれ個性があって千差万別 であるが、これへの対応を考えるにあたっては、当該クレームがどのような性格のもので あるかを見定める必要がある。同様のクレームには同様の対応をしなければならないとい う、クレーム対応のある種の原則に基づき、クレームのパターン化を図って安定的な解決・

処理を行うことが大切だからである。クレーム対処法を指南する近時の多種多彩な書物が、

広範にわたるクレームの分類を試みているのもここにあると思われる。まず、これまで一 般に行われている先行分類をみることとする

1つは、クレームの内容に着目するもので、たとえば、①教師にかかわるもの、②授業 方法や学習指導等に関するもの、③生活指導や制度にかかわるもの、④子ども同士の問題 や家庭レベルの問題を持ち込んでくるもの、⑤非常識なモラル欠如、といった分類(48)であ

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る。クレームの中身はどのようなものかという観点からのこの分類は、たとえば、対応に あたってその問題に詳しい教師に担当してもらうなど、校内の適任者を出動させて事を収 めようとするときに威力を発揮できよう。しかしこの分類は、雑多なクレームを静態的に 羅列しているに留まっており、また、分類そのものも内容を網羅しえているかどうか疑問 の余地もあることから、安定感はあるがやや平板な印象を受ける。

2つめは、内容とも連なるが、クレームの形態に着目するもので、たとえば、①要望、

②苦情、③無理難題要求(イチャモン)、といった分類である(49)。この分類は、簡潔で分か り易いとともに、学校側が対応するにあたり、それぞれ、①は学校・教師の側が要望の実 現に向けて積極的に努力し、②は学校・教師側が苦情を反省的に受け止め、③は保護者側 の言い分を丁寧に聴きつつも深入りせずに引き取ってもらうといった、クレームを向けら れた側の対応の違いを明らかにすることになる点で有益であろう。しかし一方、対応する 側の身構えを形成する上では役立つとしても、それらクレームをどのように解決・処理す るかという展望を示しにくいように思われる。

もう1つは、保護者のタイプに着目するもので、たとえば、①善意の提言者、②依存型 の提言者、③敏感型の提言者、④溺愛型の提言者、⑤自己防衛型の提言者、⑥欲求不満型 の提言者、⑦自己愛型の提言者、⑧利得追求型の提言者、⑨愉快犯型の提言者、⑩理解不 能型の提言者、といった分類(50)である。①わが子中心主義、②ネグレクト、③学校依存、

④ノーモラル、⑤権利主張、という分類(51)もこれと共通する。①攻撃型、②提言型、③協 力型、④愚痴型などといった、クレームのスタイルやトーンに着目してタイプ分けするこ ともできるかもしれない。

学校・教師にクレームを突きつけてくる親の側の態度や調子に着目するこの分類は、現 代日本でなぜこのようにクレームが多発しているのかを社会学的に分析する上で有意義な 示唆を与えるとともに、保護者側の事情や真理といったものを理解しながら対応を考える という点で、すこぶる実践的な対処策を提供しうるものと言える。しかし、それは同時に、

ともするとクレームへの対応の「技法」に重点を置き、いわば対応する側のテクニック修 得に陥ってしまい、クレームやトラブルの「解決・処理」からむしろ遠ざかってしまうの ではないか、との危惧を覚える。

クレーム・トラブルは、それを持ち込んでくる者(さしあたっては保護者)の意図や心 情を理解し、時には共感し、したがって相談的・カウンセリング的にこれに対応しなけれ ばならない場合があり、それによって問題が解消してしまうことも少なくない。しかし、

クレーム・トラブルへの対応は、相談やカウンセリングの手法を駆使するだけでは必ずし も十分ではなく、最終的には、これを「解決・処理」しなければならないのであって、そ の意味では、学校・教師が保護者に直接対応すること(のみ)を想定している先の三つの 分類には、やはり一定の限界があるように思われる。

次に、教育行政当局がどのように分類しているかをみる。保護者のクレームは、全国的

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にはいまだ調査分類されていないようであるが、各県市の校長会や県市事務長会、教育委 員会等においてそれぞれ独自の調査が行われている模様であり、佐賀県の事務長調査(52)や 福島市教育実践センターの調査(53)、徳島県教育委員会(54)、群馬県教育センターの調査等、

一般に公表されているものもある。そこでは、保護者のタイプ別の分類やイチャモン・無 理難題などクレーム内容の分類など様々あり、クレームに対応する担当者別(事務職員ま たは教員)の分類など種々試みられている。ここでは、主に事務職員が対応する「教育環 境」に関するクレームと教員が対応する「教育内容」に関するクレームとに大別して見て みる。

「教育環境」に関するクレームでは、2005(平成 17)~2007(平成 19)年度に佐賀県の公立 学校事務長が対応した調査がある。クレームの分類は①学校予算、②施設・設備、③地域 とのかかわり、の 3 区分である。3 年間のクレーム対応発生件数は 127 件であり、2006(平 成 18)年にはそれぞれの区分の発生件数は 2005(平成 17)年度のほぼ倍化している。内容は、

授業料督促の態度、私費会計の処理の仕方、スポーツ施設のクレーム、除草・樹木伐採の クレーム、生徒のマナー、学校の騒音、電話応対態度、生徒送迎用自家用車の混雑、学校 行事の開催時期について等々であり、クレーム対応が遅くなってこじれた案件や、解決で きない(相手に理解してもらえない)案件も数件ある。テニスボールの打音騒音のクレーム では、当事者が音に敏感で学校側が説明しても理解してもらえず、また、地域の学校案内 板設置のトラブルでは、学校側が地域の当事者に相談してもかたくなに断られて撤去した、

などがある。

「教育内容」に関しては、2007(平成 19)年度に福島県小中学校長会が県下の小中学校で 実施した調査がある。小学校では「教師の対応等」に関するクレームが 80 数件、次いで「行 事関係」40 数件、「生徒指導関係」、「授業等」と続いており、上記項目に含まれない「その 他」の内容は 100 件近い。また、中学校では、「生徒指導関係」約 90 件、「部活動」約 40 件、「担任・学級等」約 30 件と、クレーム内容が年々多様化していることが指摘されてい る。徳島県教委の調査対象は、小学校 217 校、中学校 90 校、高等学校 46 校、特別支援学 校 9 校(調査期間は、2007(平成 19)年 4 月から 2008(平成 20)年 3 月まで)である。学校や市 町村教育委員会だけでは対応が困難だった件数は、小学校においては、要望(クレーム)全 943 件中 39 件(4.1%)、中学校は 701 件中 55 件(7.8%)、高等学校・特別支援学校は 411 件 中 22 件(5.3%)、市町村教育委員会は 230 件中 24 件(10.4%)、計 2285 件中 140 件(6.1%) であり、その対応困難な案件は、次のようなものである。

・教員の異動や加配を学校に要望

・度重なる担任批判と恫喝的発言

・不登校の原因を学校に追及

・生徒間暴力事件の賠償を学校に求める

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・通学路の整備を学校に求める

・教室へのエアコンの設置を一方的に求める

・生徒の声がうるさく静かにさせるよう学校に要求

・自己の用事で、学校行事の日程変更を求める

・問題行動の原因は学校にあると責任を追及

・保護者が意図的に子どもを登校させない

・校則の見直しと違反を認めるよう要求

・親族間のトラブルの相談

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