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超音波ドップラー機能の原理と血流量計測方法

BASIS

5.2 超音波ドップラー機能の原理と血流量計測方法

いる超音波ドップラー機能の基本的な原理と測定方法などを網羅しておく必要 がある.

ドップラー効果は,1842 年にオーストリアの数学者 Johann Christian

Doppler によって発表された[142].それは波について,その発生源と観測者の

移動と観測される周波数との間係を示したものである.音波に限らず,あらゆ る波について成り立つことが知られている.今,音源が観測者の方向に近づい てくる速度をus,観測者が音源に向かって近づいてゆく速度をuoとする.また,

音の伝搬速度すなわち音速を c とすれば,音源から発生する音の周波数 fcに対 して観測者が感知する音の周波数fdは以下で与えられる.

f𝑑 = f𝑐𝑐 + 𝑢0

𝑐 − 𝑢𝑠

(5.1)

式(5.1)は,観測点の場所における周波数が音源の場所における周波数とは異 なることを示している.波数に変化を与える要因は,音場をつくる媒質と音源 または観測者の相対速度であって,音源の場合と観測者の場合とではその効果 が異なるというのが式(5.1)の示すところである.

音源が波の進行方向へ移動する場合を考えると,最初に発生した波面の進行 に対して遅れて発生した波面がそれを追いかけることになる.すなわち,波長 λが音源の移動によって(c-us)倍に短くなる.超音波ヅップラー法では,音源の 周波数に対して観測される周波数の差分が関心事であり,この周波数の差分は 一般にドップラー偏移と呼ばれ,式(5.2)にて表される.

∆f = 𝑓𝑑− 𝑓𝑐 = 𝑓𝑐𝑢0+ 𝑢𝑠

𝑐 − 𝑢𝑠

(5.2)

パルス法を用いた超音波ドップラー法では,血液からの反射波におけるドッ プラー偏移が測定対象である.この場合,音の反射源は一般に赤血球と血漿と の音響界面である.赤血球は血漿とともに血管中を移動するが,反射界面が移 動することによってドップラー偏移が得られる.ドップラー偏移発生の機序を 一般的には以下のように考えられている.音が赤血球に達したときに赤血球の 移動によって観測者の移動効果による偏移を受け,赤血球自体がこの偏移周波 数で振動する.つぎにこの振動が音源となり音源移動の効果を生じるとするも のである.すなわち血液からの音の反射においては u=uo=us なるドップラー効 果が生じていると考えられている.

ここで,音速約1,500m/sに対して,血流速度はせいぜい数m/sであり,c >>

uが成り立つ.従って式(5.2)は

∆f = 𝑓𝑐 2𝑢

𝑐 − 𝑢≈ 2𝑓𝑐𝑢

𝑐

(5.3)

と書き換えられる.Δfを検出することによって,既知の参照周波数fcおよび音 速cから血流速度uを知り得る.

一歩,前述の説明からわかるように,式(5.3)に示すドップラー効果は音の進 行方向についてのみ得られるものであり,音源と観測者との位置関係が音の進 行方向と異なっている場合には,音の進行方向におけるそれぞれの移動を考慮 しなければならない.音の進行方向と移動方向との間の角度をθとすれば,ド ップラー偏移周波数は,式(5.4)にて表される.

∆f = 2𝑓𝑐𝑢 cos 𝜃

𝑐

(5.4)

これが一般的に超音波ドップラー法で与えられるドップラー偏移周波数であ ると考えられている.現在の超音波診断装置には,モニタ上で断層像と超音波 ビーム角度を指定することで自動的にその角度を計算式に代入して,血流速を もとめる機能が内蔵されているため,本研究でもそれを利用することとする.

つづいて,超音波を用いた血流量の計測であるが,こちらは直接的に流量を 計測できる機能がないため,間接的に得られたデータから血流量を算出するこ とが求められる.ここで,R. W. Gillらにより,脈動により時間変化する断面積

S (t) と,脈拍により時間変化する血流速V (t) から血流量を算出する方法が式

5.5 として報告されている(Fig.5.1) [143].一方,血流量は単位時間当たりの流 量ではなく,1心拍ごとの平均流量である心拍出量として利用されることが多い.

また血流速測定時には,血流分布を考慮し,V(t)は最大血流速値でなく,測定ポ イントが含まれる血管の軸に垂直な断面上における,各時相の平均血流速を時 間平均した値である時間平均血流速(TAM)を用いた方がよい.よってこのよう な知見から,本手法では,1心拍周期分の血管断面積および時間平均血流速を計 測した上で,それらの積分値から血流量Qを算出することにした.

𝑆

(𝑡)

= ∫ 𝑆

(𝑡)

∙ 𝑉

(𝑡)

𝑑𝑡

𝑇 0

(5.5)