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縦断層像下における血流速の計測と血流量算出

BASIS

5.5 血流量計測アルゴリズムの設計

5.5.3 縦断層像下における血流速の計測と血流量算出

これにより描出された最適な横断層像において,2 値化されたROI 内の血管 輪郭内領域を自動計測し,その断面積変化波形のピーク検出時から 1 心拍分の 断面積変化を取得する.なお,後述する血流速計測のために,この横断層像に おいて,血管中心の位置変化から 1 呼吸分の変位の振幅・周期・振動中心,ま た脈動による血管径の変化をあらかじめ取得しておく.

1つ目の周期的追従では,横断像上で断面積計測時にあらかじめ取得しておい た,1呼吸分の血管変位の振幅・周期・振動中心から,プローブ制御の初期指令 値として式(5.13)を導出する.なお本手法では, 息を吐き切った時の血管位置 xmaxを制御開始点とし(t=t0),初動方向をx軸の負方向に設定する.

𝑥(t) = 𝐴 sin 2𝜋 (𝑡 − 𝑡0

𝑇 1

4) + 𝑥𝑐𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟

(5.13)

𝐴 =𝑥𝑚𝑎𝑥−𝑥𝑚𝑖𝑛

2 ,𝑥𝑐𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟=𝑥𝑚𝑎𝑥+𝑥𝑚𝑖𝑛

2

𝑥(t):プローブのx軸方向位置

𝑥𝑚𝑎𝑥:x座標最大値(横断層像上で取得) 𝑥𝑚in:x座標最小値(横断層像上で取得)

しかし,実際には1回の呼吸ごとに血管変位の位相や振幅,振動中心は変化し,

横断層像から縦断層像へプローブを切り替えた段階で,初期指令値に対してず れが生じてしまう.そこで本稿では,血管の変位周期は呼吸波形の周期と同等 であるということに着目し,1つ目の周期的追従で導出した式(5.13)における位 相と振幅,振動中心を補正するアルゴリズムを構築した.まず位相の補正では,

患者の呼吸情報にもとづいて,血管が変位の端点に到達して速度が 0 になるタ イミングを常に監視しておく.そしてその情報をもとに,プローブの制御速度 が0になるタイミングとの位相のずれ分∆Tを算出し,式(5.13)を補正した新たな 式(5.14)を導出する.

(𝑡) = 𝐴 sin 2𝜋 (𝑡 − 𝑡1

𝑇 + ∆𝑇1

4) + 𝑥𝑐𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟

(5.14)

t1: 制御開始点であるxmaxにおける時間

続いて振幅と振動中心の補正に関しては,縦断層像の状態でプローブと血管 中心とのずれを同定する必要がある.ここで,縦断層像上でプローブが血管中 心をとらえていた場合,血管径と血管壁間距離は一致することになり,逆に血 管中心からずれた位置で描出される血管壁間距離は,幾何学的に血管径より小 さくなるという特徴がある.

そこで本稿ではこの特徴に着目し,血管とプローブが停止する端点において,

エコー画像上に描出されている血管壁間距離を自動計測し,横断像描出時に取 得しておいた血管径と比較することによって,血管中心からの位置ずれの量を 求め,その分を補正することとした.具体的には,血管とプローブが端点にき たときに描出している血管壁間距離から,位置ずれの量を算出し,式(5.14)を補 正した式(5.15)を導出する.よって,最終的なプローブへの制御指令値は式(5.15) となり,1呼吸ごとに変位の端点が変動的に変わる血管に対し,式(5.14), (5.15) の補正が繰り返され,血管縦断層像の描出維持を実現する.

𝑥(𝑡) = Asin 2𝜋 (𝑡 − 𝑡2 𝑇′ 1

4) + 𝑥𝑐𝑒𝑛𝑡𝑒𝑟

√(d(t)2 )

2

− (D(t) 2 )

2

2

(5.15)

𝐴= 𝐴 ±√(

d(t)

2 )2−(D(t)2 )2 2

d(t):横断層像上で取得した血管径の変化 D(t):縦断層像上の血管壁間距離 t2:制御開始点であるxmaxにおける時間

T:T + ∆T

なお,血管壁間距離から認識した位置ずれの量を超音波診断装置のような 2 次元映像から同定する場合,そのずれ量の補正方向が問題となる.ここで,血 管の変位は呼吸数が増加,つまり周期が短縮すると振幅が減少し,その逆であ れば振幅が増加するという呼吸に連動する傾向がある.そこで本稿ではこの特 性を利用し,リアルタイムな呼吸周期や呼吸数といった呼吸情報にもとづいた 振幅の増減方向から,位置ずれの補正方向を決定した.

以上のように適切な縦断像が描出維持されたら,超音波画像上の血管壁間の 中点を血管中心とし,つなぎ合わせることによって血管中心線を描出する.ま たドップラーカーソルは,その中心線に合うように位置決め・角度補正を行い,

血流速波形を得る(Fig.5.10).そして,各時相の平均流速を時間平均した値(TAM) を,超音波診断装置にあらかじめ搭載されている機能を用いて取得し,計測済 みの血管断面積と共に式(5.5)から,1心拍の平均血流量Qを得る.