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源推定アルゴリズムを構築し,内出血源探索フローの具体化を行った.最後に,

本論文で提案する内出血源推定システムの設計における要件と手順に関して述 べ,その技術課題をまとめた.

第 3 章では,患者に直接装着する「体幹装着型」の診断システムをコンセプ トとした,迅速簡易超音波検査システムに関して述べた.まず,ポータブル性,

装着性,安全性の 3 つの指針の重要性を述べたうえで,考えうる装着機構を大 別し,病院前救護シーンにおいて最適な装着方法を選定した.また,迅速簡易 超音波検査を実施する上で必要となる自由度を決定し,それを再現する超音波 プローブの駆動メカニズムの詳細を述べた.続いて,内出血貯留箇所の探索精 度を向上させる必要があることを示したうえで,血液成分による低輝度領域の 抽出および低輝度集合解析に基づく臓器境界判定に基づく内出血貯留箇所の自 動検出アルゴリズムを新たに提案した.最後に,通信系ならびにインターフェ ースの概略を述べ,本システム全体の構成をまとめた.

第 4 章では,第 3 章で述べた迅速簡易超音波検査システムを用いて,医師お よび被験者協力のもと,以下 2 つの試験を行った.装着試験では,本システム の装着に要した時間と装着位置を評価指標とし,装着者(バイスタンダー役)

と被装着者(患者役)らによる試験を実施したところ,内出血貯留探索に必要 な診断箇所4部位への装着平均時間は約4[min],装着位置の最大ずれは4.8[cm]

以内に収まることを確認した.また診断試験では,診断時間,医師による定性 的画像評価を指標とし,被装着者(患者役)と専門医らによるシステムを用い た診断試験を行った.これらの試験結果から,本研究で提案する体幹装着型診 断システムが,FASTを実現する性能を有することを確認した.

第5章では,2章にて構築した手法に基づいて開発した超音波による血流量計 測システムに関して述べた.まず,血流速を計測するために利用する超音波ド ップラーの原理を説明するとともに,超音波を用いて血流量を算出する手法と 要件をまとめ,血流量を計測するための超音波プローブ把持 5 自由度マニピュ レータに関して述べた.続いて,整理した要件に基づいて血流量計測アルゴリ ズムの詳細設計を行った.血管断面積計測では,血管輪郭を抽出し,断面積の 時間変化を取得可能な画像処理システムを構築した.また血流速の計測では,

縦断層像および横断層像からの 2 種類のアプローチがあるため,それぞれの有 効性を検証すべく,本章で整理した要件を満たすための 2 つのプローブ制御手 法について述べた.

第 6 章では,第 5 章で述べた血流量計測システムおよび人体の血流循環モデ ルを用いて,血流量の計測試験を行った.本試験では,縦断層像下と横断層像 下のそれぞれの条件にて血流量の計測を実施し,縦断層像下では平均4.4[ml/s],

横断層像下では平均25.8[ml/s]の精度で血流量を計測できることを確認した.こ

の試験結果から,本研究で提案する血流量計測システムにより,これまでは不 可能であった超音波による血流量の計測が実現しうることが示された.

第 7 章では,第 2 章で提案した内出血源探索フローの評価を行うべく,第 3 章,第 5 章にて構築したシステムを用いた総合評価を行った.本評価試験は,

搬送と初療室の2つに大別されたシーンを想定し実施した.移動体搬送下にお ける FAST 診断試験では,横浜市大病院と早稲田周辺のコースを周回する実際 の移動体を用いて遠隔診断試験を行い,診断時間,および,医師による定性的 画像評価を実施し,医師による診断を満足する超音波画像が得られることを確 認した.続いて,内出血貯留の自動検出アルゴリズムの性能を検証すべく,内 出血の臨床画像をもとに検証したところ,内出血貯留検知感度は 77.8%あるこ とを確認した.次に内出血源推定試験では,搬送中に内出血貯留が診断された 後の初療室におけるシーンを想定し,疑似的な出血を再現した血流循環モデル を用いて,上下流における血流量の計測と比較検証より,内出血源の存在可否 を判定する試験を実施した.その結果,縦断層像下では平均約 7.7[ml/s],横断 層像下では平均約 27.4[ml/s]の誤差範囲内で内出血の存在を判定することが可 能であることが確認された.これらの結果から,本研究で提案する体幹装着型 診断システムおよび内出血貯留の自動検出アルゴリズムは内出血患者に対する 早期診断に有効であり,また血流量計測に基づく内出血源推定アルゴリズムは,

非侵襲的かつ定量的に内出血源を推定する全く新しい手法としての有効性を有 することが示唆できた.

第 8 章では,本研究で得られた成果をまとめて,残された課題に関して述べ た.また展望として,臨床応用および提案手法のその他の分野に対する応用事 例,また,応用する上での課題や解決指針に関して示した.

8.2 今後の展望

本論文冒頭でも述べたように,今後の救急医療においては,あらゆる工学的 技術の発展により,診療の質が格段に向上されていく.そのような折,救急医 療でも重要度の高い出血コントロールに対する支援システムの開発は,救急医 療の発展の根幹を担い,迅速かつ低侵襲で定量的な出血源推定を実現する要素 技術は,患者の生命に直結する主要なテーマとなる.このとき,本論文で提案 する,超音波を用いた非侵襲的出血源推定手法ならびに血流量計測技術は,極 めて有用な技術の一端となることが期待できる.

本研究では,医師の遠隔操作により救急搬送中に内出血貯留箇所を特定する 小型・軽量な体幹装着型システム,ならびに血管変位に追従しつつ血流量を計

測維持し,その流量値に基づいて出血源を推定するアルゴリズムの基盤技術を 構築した.これを踏まえ,今後は,本論文で陽に課題としたものに加え,高速 大容量ネットワークとの融合や,計測対象血管の検出,腸ガスへの対応などの 課題を解決していくことが望まれる.

以下に主要課題を整理し,本論文の締めとする.

●FASTele, BASISの改良

・人間工学的分析と患者重症度を考慮した装着手法の改良 ・計測対象血管の自動検知

●自律化システム(FASTele)への言及 ・診断漏れ範囲の特定

・個体差に応じたプローブ走査軌道の生成(最適画像取得)

●血流量計測(BASIS)の高精度化

・出血性ショックの閾値である1[L/min](17[ml/s])以下の出血量の定量的推定

・血管断面輪郭と断面積の最適化(エコーゲインの調整)

・血管の変位速度に応じた血流速補正(ドップラーノイズによる影響の抑制)

●技術的課題(実用化)

・高速大容量NWとの融合と検証

・腸ガスへの対応

・出血源情報(位置や量)の提示方法に関する検討 ・超音波を用いた低侵襲的止血手法の構築

・スマホ等のインターフェースとの融合