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内出血源推定システムの設計手順

第 2 章 内出血源推定システムの設計方針

2.7 内出血源推定システムの設計手順

でている.また,Funamotoらは,血流の超音波-測定-統合型(UMI)シミュレー ションにおいて,Doppler 速度から最適に推定した速度ベクトル差に比例する フィードバック(FB)信号を用いて流れ場を再現することに試みている[118].動 脈瘤性大動脈内の三次元血流に関する定常標準解を取得し,収束または振動流 に等価的に対応する周波数応答に必要な時間を決定する時定数によって,UMI シミュレーションの過渡特性を評価している.また,動脈瘤内の速度ベクトル の定常状態誤差によって定常特性も評価することで,UMIシミュレーションに おいては不正確な境界条件に起因する速度場誤差を FB 領域と下流領域内で低 減でき,最終的に定常値に到達しうる効果を示している.このような研究と同 様に,超音波信号解析技術の発展に伴い,計測した血流情報における誤差低減 を目的とした補正技術は,今後の診療技術に不可欠なものとなっている[119, 120].

ここで,平時医療とはことなる救急医療という現場において,超音波を用いた 血流量計測に基づき出血源を推定する場合,前述した通り,超音波画像処理に 基づく超音波プローブの追従技術,すなわち,患者の呼吸などに伴い大きく変 位する血管に対して計測を維持する技術が肝要となる.しかしながら,従来行 われてきた研究においては,超音波画像上から消失しうる方向への大きな変位 に適応して,超音波プローブを追従させ,血流量を計測・維持させることに着 目した技術開発はなされていない.また,血流速計測における誤差抑制に関し ては,ドップラー角と血管との成す角度が計測値に及ぼす影響が高いため,2次 元画像からその角度を認識し,適切な補正をする技術が必要となるが,このよ うな角度推定を 2 次元断層像で行うための抜本的手法,アルゴリズムは確立さ れていない.以上述べたように,超音波計測に関する従来研究の調査により,

血流量に基づく出血源推定のためのプローブの追従技術,および 2 次元断層像 下における血流情報の補正技術といった,本目的遂行上コアとなる要素技術・

方法論に関して,そのほとんどが未解決であることが明らかとなった.

とともに,本研究における設計思想のポイントを抽出して示す.

2.7.1 迅速簡易超音波検査(FAST)システム

本システムは,救急搬送車内における運用を想定しており,また,医師の遠 隔操作によって所望の FAST を完遂できる必要がある.よって,本システムに おいては以下大きく 3 つの事項を満たすべく,各々の要素技術を確立していく よう設計を進めていく必要がある.

(1)小型化技術

患者に装着できる程度の小型・軽量化,装着手法の導入

(2)FASTを行える遠隔操作技術

FASTのための超音波プローブ駆動メカニズム,遠隔操作系,映像伝送系

(3)内出血貯留の検出支援技術

医師の見逃しを防ぐための画像処理

このようなポイントでシステム設計を進めていく上で,本研究におけるポイン トは以下の2点となる.

●救急搬送車内の限定空間で運用可能なハードウェアの設計

⇒装着型マニピュレータの開発

●超音波画像から血液貯留の疑い箇所を抽出・提示する技術の確立

⇒貯留箇所の自動検出アルゴリズムの構築

2.7.2 超音波を用いた血流量計測システム

本システムは,初療室における出血源探索を想定しており,血管変位に追従 しつつ,より高精度に血流量を計測し,推定結果を医師に提示する必要がある.

よって,本システムにおいては以下大きく 3 つの事項を満たすべく,各々の要 素技術を確立していくよう設計を進めていく必要がある.

(1)計測のための画像処理技術 血管(動脈)の検出,血流速計測

(2)超音波プローブの走査技術

患者の呼吸や体動に伴う血管変位への追従

(3)計測誤差の低減技術

超音波ビームと血流方向の角度補正,縦 / 横断層像からの血流速計測アプ ローチ,流量の演算

このようなポイントでシステム設計を進めていく上で,本研究におけるポイン トは以下の2点となる.

●個体差に応じた腹部領域を走査可能なハードウェアの設計

⇒血流量計測マニピュレータの開発

●血管変位に適応して血流量を計測・維持する技術の確立

⇒血流量計測アルゴリズムの構築

2.8 まとめ

本章ではまず,内出血発生機序の分析に基づいて,内出血患者に対する新た な診断戦略を立案した.そして,内出血貯留の探索で行われている FAST を,

病院前救護段階において実現する上での問題点とし,診断の範囲と診断精度を 挙げ,ポータブル化のための技術と内出血貯留箇所検出のための新たな画像処 理技術の融合により,それらの問題を解決することが必要であることを示した.

続いて内出血源推定において,血流量計測に基づいた内出血源推定手法を新 たに提案した.まず,血流量の計測対象血管網を細分化したセグメントの概念 を定義し,流体力学的観点から内出血源の有無や分岐血管の有無に応じた上下 流の血流量変化のパターンを網羅した.続いて,血流量計測ならびにそれらの 比較に基づく新たな内出血源推定アルゴリズムを構築し,内出血源探索フロー の具体化を行うとともに,本論文で提案する内出血源推定システムの設計にお ける要件の概略を示した.

最後に,内出血源推定システムの構築で必要な,迅速簡易超音波検査(FAST)

システムと超音波を用いた血流量計測システムの 2 つのシステムに関して,上 述した要件を整理した上で,必要となる要素技術を整理し,本研究におけるポ イントを示した.