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血液成分による低輝度領域の抽出手法

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3.5 内出血貯留箇所の自動検出アルゴリズムの設計

3.5.3 血液成分による低輝度領域の抽出手法

(1) フィルタによる超音波画像の平滑化

超音波画像に含まれるノイズを可能な限り除去するため,前処理としてノイ ズフィルタを施す.利用するフィルタとしてはノイズ除去として一般的なガウ シアンフィルタを利用する.ガウシアンフィルタはガウス関数を利用したスム ージングフィルタであり,平滑化の強度はあるピクセルの周囲何ピクセルを平 滑化に利用するかで決まる.今回は5×5のフィルタを利用してノイズ除去を 行う.

(2) 境界強調2値化

前述したように,超音波画像の中で内出血貯留はFig.3.6のように黒く描出さ れる.したがって,超音波画像の中から低輝度領域を抽出する 2 値化処理が必 要となるが,超音波画像はノイズが多く画像の中での明るさの変化も大きい.

Fig.3.6の内出血貯留画像に対して,内出血貯留の範囲が抽出されるしきい値に て2値化処理を行う. Fig.3.6の画像に対してしきい値120 で2値化処理を行 い低輝度領域を赤くし,元画像に重ねた結果をFig.3.9に示す.しかし,超音波 画像においてはそのノイズ等により内出血貯留と同レベルの低輝度を示すもの が画像の中の多範囲に存在しているため,内出血貯留を抽出しようと通常のし きい値を用いた2値化を行なっても,Fig.3.9のように多くの範囲が内出血貯留 と同じように抽出されてしまう.

そこで,内出血貯留を他のノイズなどによる低輝度領域と区別するため,内 出血貯留周辺の輝度変化の大きさに注目する.前述したように,内出血が貯留 しやすい部位は,臓器や組織の境界に存在している.従って内出血貯留周辺は 大きな輝度変化を持っていると考えられる.そこで,大きな輝度変化を持った,

すなわち境界に囲まれた低輝度領域のみを超音波画像から抽出する手法を今回 新たに提案する.

境界を認識するために,画像ピクセルの輝度変化,つまり画像のピクセル輝 度値を位置変数で微分したものを利用する.通常であれば,あるしきい値との 関係性によって 2 値化を行うが,今回は微分値を利用することを試みる.つま り,ある微分値以上の変化を持ってしきい値を下回った場合に限り,低輝度と する条件を加える(Fig.3.10).この微分2値化により,低輝度領域の中でもある 輝度変化を持って下回ったもののみを抽出することが可能となる.

実際に本手法を用いて画像を左から右へ走査する作業を全ピクセルに対して 行った結果がFig.3.11である.

Fig.3.9 Low brightness area extracted by simple binarization

(3) 8方向フィルタ

Fig.3.11 では,内出血貯留にも消えている範囲があり,また残っているノイ

ズも存在する.そこで,上記の処置を左から右だけの1方向のみならず,全て のピクセルに対し右から左,上下に加え斜め4方向といった,計8方向から行 うことにより,より高い精度で内出血貯留を抽出する.ここで,この8方向か ら行った結果,各ピクセルは8方向のうちの何方向から検出されたかを0~8 の数値情報として式(3.1, 3.2)をもとに持たせる.例えば,本8方向フィルタの

Fig.3.10 Description of differential binarization

Fig.3.11 Low brightness area extracted by differential binarization

強度を5とした場合,0,1,2,3,4方向からのみヒットしたものは低輝 度領域ではなく,5,6,7,8方向から検出されたピクセルのみ低輝度領域 として抽出するようにする.このように,フィルター強度を0~8まで用意し,

その強度を強くするほど内出血貯留を抽出しやすいように調整することが期待 できる.

しかし,8方向フィルタの強度を強くするほどに,内出血貯留そのものも削 除されていく現象が発生する.これはつまり,内出血貯留が消えない範囲での フィルタ強度の最適値が存在することを示している.そこで今回のシステムで は,フィルタ強度は5とした(強度の決定方法は,第 7 章総合評価にて詳述す る).

実際にフィルタ強度5で Fig.3.6 の低輝度領域抽出を行った結果を Fig.3.12 に示す.

N(x,y) = ∑

p (3.1)

= 1: ∆P(x, y)

∆a 5 AND P(x, y) 120 (3.2)

N(x,y): Number which has been extracted as low-brightness : (1: Low-brightness, 0: High brightness)

p: Intensity of the 8-direction filter n: Direction number

P(x,y): Brightness value of the pixel of x, y

∆a : Distance between adjacent pixels in the direction number (n)

Fig.3.12Extracted low brightness area (Filter level = 5)

(4) グルーピング処理

検出された低輝度領域を幾つかのグループに分け番号を割り振る.これを行 うことで,各グループの面積や円形度を計算し,さらなるノイズの除去や実際 に内出血貯留が同定された際の低輝度領域抽出に役立つ.

先ず,低輝度領域は画像のピクセルと同じ数を持つunsigned int型配列変数 に 1 として記録され,それ以外は0として記録されている.ここから隣接する 低輝度領域を同一グループとみなしグループ番号を割り当てる処理を行う.処 理は,画像左上の原点 (x=0, y=0)から始める.

(i) 1行目の処理

1行目(y=0)は,上部にピクセルが存在しないため,あるピクセルのグルー プ番号割り振りを行うとして,左側のピクセルを参照すればよいことになる.

ある低輝度領域(変数の中身が1)に対して,その左側のグループ番号を参照する.

もし,左側が低輝度領域でない場合は,新しいグループ番号(過去に割り振っ た最大値+1)を割り振る.この操作をx=0から画像の横幅までx=0の全ピク セルに対して行う.

(ii) 2行目以降

2行目以降のピクセルに関しては,左側だけでなく,左斜め上,上,右斜め 上の4つのピクセルデータが関係してくる.論理的に左上から各ピクセルを横 に走査し,ある低輝度領域のグループ番号割り振りをする際,考えられるパタ ーンは以下のとおりである.

・上のピクセルにグループ番号が存在すればそれと同一視

・左側にグループ番号が存在すれば右上を確認し,小さい方に合わせグルー プを同一視

・左上にグループ番号が存在すれば右上を確認し,小さい方に合わせグルー プを同一視

・以上のどれにも当てはまらず右上にグループ番号が存在すればそれと同一 視

あるピクセルに対して隣接するグループ番号割り振り済みのピクセルは,4 つあり,その中に存在しているグループ番号は最大で二種類である.右上と左 が異なるか,右上と左上が異なる.これは,隣接するグループでは,同一グル ープとみなされているためである.

このように,あるピクセルが異なる2つのグループ番号に隣接する場合,小

さい番号を採用し,大きい番号は小さい番号で配列全体を再帰的に塗りつぶす.

以上の処理により,全ての内出血貯留にはグループ番号が割り振られ,配列 変数には0または2以上のグループ番号が存在することになる.