第4章 施設整備業務
10. 診療情報管理支援業務
(1) 基本的考え方
1) 再開発における位置付け
近年、病院では臨床や教育・研究の各場面において、高度な診療録管理・統計作成の技術が 求められるようになっており、診療情報管理業務の重要性は増している。医療の質向上に向け た活動を病院全体で本格的に推進するにあたり、病歴管理・診療情報管理室が医療のデータの 収集・フィードバックといった場面で中心的な役割を果たすことになる。
一方、現状の診療情報管理士業務の中には、診療記録類の整理や搬送など必ずしも専門的な 知識を必要としない業務も含まれ、これらのノンコア業務を委託化することにより、病院の診 療情報管理士業務の質の向上を期待する。
2) 業務概要
病歴管理にかかる一連の業務を行う。
また、病院の診療情報管理士業務の質の向上を図るため、診療情報管理にかかるノンコア業 務を実施する。医療事務との包括による業務の効率化も期待する。
(2) 要求水準 1) 前提条件
ア 業務日及び業務時間
a 休業日を除く日の次表の時間を基準とする。なお、夜間及び休業日においても、オンコー ル対応を可能とし、状況によって停電及び機器障害並びに診療上で緊急を要する場合は 速やかに出勤し、迅速に対応すること。
業務内容 時間 外来病歴業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分 入院病歴業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分 病歴統計業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分 カルテ保管業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分 フィルム保管業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分 検査記録保管業務 [ ]時[ ]分〜[ ]時[ ]分
イ 配置場所
a 病歴室には、業務日及び業務時間の間は、従事者を常時配置すること。
ウ 実施体制
a 業務を実施する企業は、以下の要件を満たすこと。
(a) 200 床以上の病床数を有する国立大学附属病院の業務請負等の実績を有すること。
b 業務の指揮命令系統を明確にし、必要な作業指示、監督、指導、研修が円滑かつ適切に 行えること。
(a) 従事者の頻繁な変更を避け、継続性の確保と成熟に努めること。
(b) 従事者を変更する場合は、十分な引継ぎ期間を設け、1ヶ月前までに変更予定日と 後任予定者を通知するとともに、業務に支障を生じさせないこと。
c 従事者は、以下の要件を満たし配置すること。
(a) 責任者は、200 床以上の病床数を有する総合病院の業務の作業管理、人事管理、従 事者の教育指導、病院との連絡調整等を統括し、円滑に推進できること。
(b) 病院の診療情報管理士との意思疎通を円滑にすることを目的とし、業務の指導・調 整役として、診療情報管理士を1名以上配置すること。
(c) 文書情報管理士の合格者を優先的に配置すること。
(d) 次のいずれかの資格取得者を配置すること。
・ 診療報酬請求事務能力認定試験合格((財)日本医療保険事務協会)
・ 医療請求事務検定1級又は2級合格(日本ビジネス技能検定協会)
・ 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)1級又は2級合格(日本医療教育 財団)
・ 保険請求事務技能検定試験合格(日本医療事務協会)
(e) 入院病歴業務従事者のうち1名以上は、会計及びDPC診療計算の経験を有する者 とし、DPC内容の精査、医業収益へ還元が行えること。
2) 遵守事項 ア 守秘義務
a 病院全体の個人情報、機密情報の管理に携わっていることを理解し、体系的に情報漏え いの起こらない仕組みを構築し、徹底すること。
イ 教育研修
a 従事者全員が診療情報管理の重要性・知識・技能を把握できる研修計画とすること。ま た、可能な限り従事者全員が全ての診療情報管理支援業務を実施可能となるように、配 置体制とあわせて計画的・段階的な教育を実施すること。
b 継続的な人材育成の視点に立ち、実務的な指導だけでなく、資質や能力の補完・向上に つながる研修計画とすること。
ウ 機器管理等
a 情報機器の使用にあたっては、病院の方針に従いセキュリティ管理を徹底すること。
b 設備機器は取り扱い手順等にもとづいて常に適切に管理を行うこと。
3) サービスレベル
ア 病院機能の維持(品質管理と医業収益の確保)
a 診療録等の入出庫及び整理並びに監査(オーディット)については、迅速かつ正確・適 切に処理を行うこと。
(a) データ入力は迅速かつ正確に行い入力ミス等の防止策を講じること。
(b) 診療録等の整理や記載内容の監査(オーディット)については、診療報酬情報及び 診療録の突合を遅滞なく行い、医業収益に還元できること。
(c) 各診療部門、診療グループとの連絡調整を円滑に行うこと。
(d) 診療実績調査依頼や監査、年1度の廃棄等に伴う業務量の一時的増加に対し、計画 的かつ柔軟に対応すること。
b 病院職員等が利用しやすい運用体制・管理方法であること。
(a) 必要資料が迅速かつ正確に出庫できること。
(b) 業務で取扱う書類のうち保管を要するものは、速やかに閲覧できる状態で整理保管 すること。
c 診療録等を常に良好かつ安全な状態で管理すること。
(a) 別紙「筑波大学附属病院診療録等管理要項」及び「筑波大学附属病院診療録等閲覧・
貸出要領」に従って管理すること。
(b) 品質管理の基準を定め、診療録等に変色、破損、汚損、紛失、虫害を生じさせない 保管環境を保つこと。
(c) 入退室管理に必要な体制・設備を整備し、入退室者管理を厳重に行うこと。
d 医療情報システムの障害発生時に適切な対応を取ること。
(a) 医療情報システム上の障害発生に備え、いつでも適切な診療録等の入出庫管理がで きる体制と緊急事態に対応できる連絡手段等マニュアルを整備すること。
(b) データのバックアップに関し万全の対応をとること。
e 病院の診療情報管理士が業務に専念できる環境を提供すること。
(a) 病歴統計等を遅滞なく作成すること。
(b) 病院の診療情報管理士と協議し、再加工・分析などの後利用がしやすいデータ管理 を工夫すること。
イ 協働体制の構築
a 病院の診療情報管理士、事務職員等が状況に応じた的確な判断ができるよう、情報共有 を徹底すること。
(a) 病院の診療情報管理士、事務職員等との必要十分な情報共有を可能とする仕組みを 構築すること。
(b) 責任者は、日常的・定期的な業務報告を行うこと。
b 診療録等の有効な活用方法について、技術補助・助言を行うこと。
(a) 経営支援業務、医療事務業務と連携し、統計結果について分析・助言を行うこと。
(b) 医療環境に応じた適切な分析ができるよう病院の診療情報管理士と協働で、統計項 目を定期的に見直すこと。
c 事業範囲外も含めた業務改善を継続的に実施し、担当エリア全体の業務の最適化を図る こと。
(a) 実務に即したボトムアップ型の意見・提案を可能とする仕組みをとること。
(b) 月1回以上、病院の診療情報管理士、事務職員等と協議を行い、課題の共有や病院 職員との一体的な業務改善を図ること。
ウ 環境変化への対応
a 医療制度等の改正に、円滑に対応すること。
エ 健全経営への貢献
a 経営支援業務、医療事務業務と連携し、診療報酬の観点からコスト意識を持ち対応する こと。
(a) 経営管理に必要なデータの提供及び経営管理システムへのデータ取込に協力する こと。
(b) 経営支援業務が実施する分析・評価に協力すること。
(c) 医療事務業務と定期的に協議を行い、請求漏れ防止、レセプトチェック体制等につ いて、継続的な業務改善と質の向上を図ること。
(3) 業務区分表
当該業務にかかる業務・作業について、以下のとおり病院と事業者とで区分するものとする。
診療情報管理支援業務
業務主体 業務区分 業務内容
病院 事業者
データ管理、検索、部門との連携・調整 ◎ 予約出庫・インアクティブカルテ処理 ◎
会計票チェック処理 ◎
報告書貼付・整理処理 ◎
退院サマリー処理 ◎
機能検査入力・整理処理 ◎
リロケーション処理 ◎
カルテ整理、記載内容チェック ◎
分冊処理 ◎
始業・終業等諸処理 ◎
外来病歴業務
受発信連絡処理 ◎
データ管理、検索、部門との連携・調整 ◎ 入院病歴業務
業務主体 業務区分 業務内容
病院 事業者
退院サマリー処理 ◎
報告書貼付・整理処理 ◎
記載不備・未到着カルテ処理・督促 ◎
緊急入院等処理 ◎
死亡患者カルテ処理 ◎
正常分娩児カルテ等処理 ◎
カルテ監査(オーディット)処理 ◎
始業・終業等諸処理 ◎
受発信連絡処理 ◎
疾病登録等 ◎ ○
臨床腫瘍センター内業務(がん登録等) ◎ 病歴統計業務(*1)
DPC等入力情報の精査、カルテ監査(オーディット)、
統計・分析、診療データベース構築・運営 ◎ ○ カルテ保管業務(院外保管カルテ
を除く)(*2)
過去の診療記録を含む保管管理(貸出出庫、回収・督促、
返却収納、貸出管理、廃棄処理等)及び統計・分析、資 料管理機器の運転管理
○ ◎ フィルム保管業務(*2) 過去の診療記録を含む保管管理(出庫、回収・督促、収
納、貸出管理、廃棄処理等)及び資料管理機器の運転管 理含む
○ ◎ 検査記録の保管管理(*2) 過去の診療記録を含む保管管理(出庫、回収・督促、収
納、貸出管理、廃棄処理等)及び資料管理機器の運転管 理
○ ◎ 診療実績調査等(不定期)(*3) 診療実績調査依頼、医療法に基づく立ち入り検査等に伴
う調査業務(カルテ入出庫、記録精査、調査資料作成等) ○ ◎ 凡例 ◎:当該業務の主担当 ○:従担当・協力
*1 病歴統計については、法令にもとづく統計・調査・報告等本学の診療情報管理の基幹業務であるため診療情 報管理士との協動で業務を行うが、事業者が主体となって実業務を実施する。
*2 廃棄・整理・精査・監査にかかる業務については本学職員(診療情報管理士等)との協動で業務を行うが、
事業者が主体となって実業務を実施する。なお、廃棄業務については、年1回定期的に実施している。
*3 診療実績調査等の業務が生じた場合、事業者は誠実に協力することとし、本学職員と協働で業務を行う。
(4) 費用負担区分表
当該業務にかかる費用区分は、共通費用負担区分にて示す項目のとおりとする。