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第4章  施設整備業務

9. 医療事務業務

(1) 基本的考え方 

 1) 再開発における位置付け 

ア  委託サービスの質向上及び成熟 

従来の医療事務の業務委託は、入札による単年度発注であることから、業務の質向上に対 する受託事業者のインセンティブが働きにくい点が問題である。病院も例外ではなく、中長 期的な委託による学習改善効果が得にくい。また、窓口業務の接遇に対する患者からの不満 の声も多いなど、改善の余地がある。 

したがって再開発計画においては今後、委託事業者に専門的な知識・技術とその継続的な 提供を強く求める。 

イ  医事課の人材育成 

病院の事務担当者は、数年で人事異動になることが多く、専門的な人材を育成する仕組み づくりが課題となっている。専門事業者を活用するメリットを最大限に活かし、病院職員に おいても専門家を育成する仕組みを構築する。 

ウ  適正な医業収益の確保 

今後は、適正な医業収益の確保に向けて更なる強化を図る。請求漏れ防止や査定減対策な どの充実を委託事業者に求めていくほか、大学が実施する未収金対策にも力を入れ、サービ サーの活用なども視野に入れて検討を進めていく。 

 2) 業務概要 

長期包括委託による継続的な学習効果、モニタリングによる継続的な改善効果を目指す。ま た、事業者が持つ専門的な知識・技術によって、病院職員の後継者育成へ貢献することを期待 する。

ア  外来業務、入院業務 

予約から受付、案内、料金清算、診療報酬請求までの一連の業務を包括的に行う。

なお、外来業務については事業者が全面的に実施するが、入院業務については、病院内で後 継者を育成し、ノウハウを蓄積し続けていく必要があることから、病院職員と事業者との協働 形態をとる。入院業務における事業者の担当病棟数は、病棟数に対し3:4(病院:事業者)

の割合で配分することを予定している。

イ  時間外業務 

救急部門の時間外窓口にて、電話応対、来院患者の受付、案内から料金計算、入退院手続き 等にかかる一連の業務を包括的に行う。

また、診療録等の準備や緊急搬送物(輸血等)の受付対応、患者死亡時の手続き処理なども 行う。

ウ  総合相談業務 

総合相談部内にて、患者及び利用者の各種相談、病診・病病連携の支援を行う。具体的には、

電話や窓口での受付、各種手続き対応のほか、病診・病病連携に伴う各部門との連絡調整、予 約管理等を行う。

(2)  要求水準   1)  前提条件 

ア  業務日及び業務時間 

a  時間外業務以外の業務については、事業者提案とする。 

(a)  病院運用にあわせた業務日及び業務時間とすること。 

(b)  案内及び自動再来機・自動支払機等の操作説明等を行う外来ホールの案内は、午前 7時 00 分より開始し、早朝来院患者への対応を行うこと。 

b  時間外業務については、休業日及び休業日以外について次の時間を基準とする。 

(a)  休業日を除く日は、外来受付終了時より翌日の外来受付開始時までとする。 

(b)  休業日は、24 時間対応とする。 

イ  配置場所 

a  次の場所には、業務日及び業務時間の間は、従事者を常時配置すること。 

業務内容 配置場所 外来ホール(案内)

予約受付 初診受付 再診受付 料金計算等受付 外来業務 受付

電話予約センター 入院業務 受付 入退院受付 時間外業務 救急受付 総合相談業務 総合相談部 

ウ  実施体制 

a  業務を実施する企業は、以下の要件を満たすこと。 

(a)  200 床以上の病床数を有する国立大学附属病院の医療事務業務の実績を有するこ と。 

 

b  業務の実施体制は、指揮命令系統を明確にし、必要な作業指示、監督・指導、業務連絡 等が円滑に行えるものとすること。 

(a)  従事者の頻繁な変更を避け、継続性の確保と成熟に努めること。 

(b)  従事者を変更する場合は、十分な引継ぎ期間を設け、1ヶ月前までに変更予定日と

c  従事者は、以下の要件を満たすこと。 

(a)  責任者は、総合病院の会計及びDPC等の仕組みを理解している者であること。 

(b)  次のいずれかの資格取得者を配置すること。 

・ 診療報酬請求事務能力認定試験合格((財)日本医療保険事務協会) 

・ 医療請求事務検定1級又は2級合格(日本ビジネス技能検定協会) 

・ 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)1級又は2級合格(日本医療教育 財団) 

・ 保険請求事務技能検定試験合格(日本医療事務協会) 

(c)  診療報酬請求業務の従事者は、通常診療計算(出来高)又はDPC診療計算に、2 年以上の経験を有すること。なお、入院業務従事者については、両方の計算につい て、それぞれ2年以上の経験を有することが望ましい。 

(d)  入院業務は、各病棟単位で担当者を取り決めること。なお、複数病棟の兼任を妨げ るものではない。 

また、ベッドコントロール会議(週1回)の際、翌週入院予定患者への連絡調整及び 入院カルテ、氏名ラベル、リストバンド等の準備について協働して行うこと。 

(e)  受付、会計業務、診療報酬請求事務の各種に精通した従事者を配置し、業務を適切 に実施すること。 

 2)  遵守事項  ア  教育研修 

a  従事者全員が医療事務業務に必要な知識・技能を修得できる研修計画とすること。また、

可能な限り従事者全員が全ての医療事務業務を実施可能となるように、配置体制とあわ せて計画的・段階的な教育を実施すること。 

(a)  診療報酬改定時期には必ず、改定内容等についての研修を行うこと。 

(b)  接遇研修を継続的に行うこと。また「患者さまの声」やモニタリング結果等を反映 し、実態に即した効果的な内容とすること。 

b  継続的な人材育成の視点に立ち、実務的な指導だけでなく、資質や能力の補完・向上に つながる研修計画とすること。 

 3)  サービスレベル  ア  病院機能の維持 

a  予約から受付、案内、料金清算までの一連の流れを円滑に保つこと。 

(a)  各担当エリア、診療科との連絡調整を円滑に行うこと。 

(b)  情報の伝達・入力等作業は、迅速かつ正確に行うこと。 

(c)  業務で取扱う書類のうち保管を要するものは、速やかに閲覧できる状態で整理保管 すること。 

(d)  従事者間の能力差を補完し、提供サービスのレベルを一定に保つこと。 

(e)  季節的な流行疾患や夜間休日・大型連休・年末年始等の前後における患者数の変動

にも臨機応変に対応すること。 

(f)  病院情報システムの障害発生時は、速やかに必要な対応を行い、受付・会計等にお ける来院者への影響を最小限に抑えること。 

b  確実な診療報酬請求を行うこと。 

(a)  診療報酬請求は当月請求とし、所定の期日までに払戻・査定が発生しないように最 善の注意を払い、遅滞なく完成させること。 

(b)  返戻・査定の防止策を講じること。また目標値を設定し、定期的に評価・見直しを 行うこと。払戻・査定の内容については、統計資料を作成すること。 

(c)  関連業務と連携して、請求漏れの防止策を講じること。 

(d)  医師やコメディカルとのコミュニケーションを充実し、積極的に病棟や手術部へ赴 いて診療行為確認を行うこと。 

(e)  高点数診療行為については専任の担当者を配置し、手厚いレセプトチェック体制と すること。 

(f)  適正な請求を行うために診療部門と連携し、請求漏れへの対応を講じるとともに、

期日までに診療報酬請求を完成させること。 

c  病診・病病連携が迅速に行える環境を提供すること。 

(a)  地域医療機関に関する情報を適切な頻度で更新し、最新に保つこと。 

(b)  各部門及び予約センターとの連携を図り、円滑に予約業務を行うこと。 

(c)  地域の病院・診療所との紹介・逆紹介の窓口業務を行うこと。 

(d)  高度医療機器等の共同利用窓口として積極的な支援・協力をすること。 

(e)  紹介状の処理業務を行うこと。 

(f)  診断結果等の送付業務を行うこと。 

d  病院職員が業務に専念できる環境を提供すること。 

(a)  健診等にかかる市町村等との契約事務を確実に行うこと。 

(b)  統計資料等を遅滞なく正確に作成すること。 

イ  協働体制の構築 

a  医事課の人材育成に協力すること。 

(a)  医事課職員に対し、定期的に医療事務に関する研修を行うこと。 

(b)  診療報酬改定時など必要な情報の積極的な提供を行うこと。 

(c)  請求漏れや払戻・査定等に関する新しい情報の収集が可能な体制を整え、診療報酬 請求事務の制度及び質の向上を協働して行うこと。 

(d)  病院職員と事業者間の意思疎通を図り、連携して業務の円滑な遂行を行うこと。 

b  医事課職員が状況に応じた的確な判断ができるよう、情報共有を徹底すること。 

努めること。 

(c)  責任者は、日常的・定期的な業務報告を行うこと。 

c  事業範囲外も含めた業務改善を継続的に実施し、医事課全体の業務の最適化を図ること。 

(a)  実務に即したボトムアップ型の意見・提案を可能とする仕組みをとること。 

(b)  月1回以上、医事課職員と協議を行い、課題の共有や医事課職員との一体的な業務 改善を図ること。 

ウ  患者満足の確保 

a  患者や来院者の満足を確保すること。 

(a)  患者や家族、利用者の抱える苦痛や困難さに配慮した丁寧な対応をすること。 

(b)  患者や家族への対応については、丁寧な言葉遣いをすること。また、問合せ等に対 しては用件を的確に把握してわかりやすく応対すること。 

(c)  清潔感のある身だしなみを維持すること。 

(d)  窓口周りは整理整頓を徹底し、煩雑な印象を与えないこと。 

(e)  接遇に関する指導・研修を定期的に行うこと。 

(f)  外国人の患者も多いことに留意し、英会話研修の実施や各種言語による対応マニュ アル等を配備すること。 

b  快適な環境を提供すること。 

(a)  外来患者の待ち時間を短縮する工夫をすること。 

(b)  外来患者が待ち時間を快適に過ごせる工夫をすること。 

(c)  入退院受付及び退院時会計業務において、患者を待たせない工夫をすること。 

エ  環境変化への対応 

a  医療制度等の改正に、円滑に対応すること。 

(a)  診療報酬改定について、改定月からの請求に迅速かつ確実に対応すること。 

(b)  公費負担制度等、業務に関連する法制度改正を把握し、確実に対応すること。 

 

オ  健全経営への貢献 

a  適正な医業収益の確保に資すること。 

(a)  経営支援業務と連携し、診療報酬改定が病院に与える影響を調査し、対応策を立案 すること。 

(b)  経営支援業務と連携し、現場の医師やコメディカルの診療行為に対するコスト意識 を喚起させる工夫をすること。 

(c)  高度専門的医療等を提供する病院であり、国立大学附属病院であること及びその特 徴を認識し、適正な医業収益の確保に努めること。