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第 6 章 水平変位低減を目的とした敷金網工法の設計手法の提案

6.2 設計手法の考え方

現時点では,盛土法尻および周辺地盤の水平変位低減を目的とした敷金網工法の設 計手法(以降,水平変位低減を目的とした設計手法と略す)は,5.5 節で実施したよ うに二次元弾塑性 FEM解析により敷金網をモデル化して予測する以外にない。

しかし,二次元弾塑性 FEM 解析は高度な解析技術を必要とし,また解析のために 多くの地盤調査や土質試験が必要となる。また,その一方で,地盤調査や土質試験,

解析自体の精度も問題となり,高度で高価な調査・試験・解析を行ってもその結果の 信頼性は調査・試験・解析技術者の技量に委ねられるところが大きい。

そこで,水平変位低減を目的とした設計手法は,精度よりも簡便さ,使いやすさを 優先し,広く一般的に用いられるようなものとすることを考えた。

道路土工軟弱地盤対策工指針 1)では,周辺地盤の変形量を予測する簡易式として,

以下が示されている。盛土法尻および周辺地盤の水平変位量は,盛土中央の沈下量と 軟弱地盤層厚の関係から式6.2.3および図- 6.2.1で容易に求めることができる。

沈下量 𝑆𝑆𝑡𝑡 =𝐶𝐶1∙ 𝑆𝑆 6.2.1 側方地盤隆起量 𝛿𝛿𝑣𝑣=𝐶𝐶1∙ 𝑆𝑆 6.2.2 側方地盤水平移動量 𝛿𝛿𝑥𝑥=𝐶𝐶2∙ 𝑆𝑆 6.2.3

ここに,

𝐶𝐶1,𝐶𝐶2:係数(図- 6.2.1の値)

𝑆𝑆 :盛土中央における最終全沈下量(m) 𝐻𝐻 :軟弱地盤層厚(m)

𝑥𝑥 :盛土法尻からの水平距離(m)

図- 6.2.1 盛土の沈下形状と側方への影響1)

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なお,図- 6.2.1は敷幅 30m~60m,立上りの期間 50 日~200 日で施工された名神,

東名,その他の高速道路および一般国道等の道路盛土で実際に観測されたデータをも とに作成されたものである 1)

図- 6.2.1をみると,盛土法尻の水平変位量は概ね盛土中央の最終沈下量の 1 割程度

であることが分かる。

図- 6.2.2は図- 6.2.1の係数𝐶𝐶2の図を読み取り,さらに 5.5 節で実施した無対策時と

敷金網敷設時の二次元弾塑性 FEM 解析結果をプロットしたものである。5.5 節の解 析条件は,敷幅 23m,盛土の立上り期間 48日と図- 6.2.1のもととなった道路盛土の 条件に比べると敷幅が少し小さいが,盛土の立上り期間はほぼ同一条件とみなすこと ができる。なお,図- 6.2.1は名神や東名高速道路でのデータが主体であり,日本でも 有数の軟弱地盤である有明粘土とは地盤条件は異なる。名神や東名高速道路の地盤条 件は明らかではないが,有明粘土地盤の方が軟弱で変形性に富むことが推察される。

そのため,5.5 節で行った無対策時の解析結果では係数𝐶𝐶2は道路土工よりも少し大き い。ただし,形状はほぼ一致しているとみることができる。一方で,敷金網を敷設し た場合の解析結果(𝐶𝐶2)は,盛土法尻からの距離𝑥𝑥 と軟弱地盤層厚𝐻𝐻 の比𝑥𝑥 𝐻𝐻⁄ が概ね 0.5 以上では道路土工とほぼ同程度であるが,それよりも盛土側では𝐶𝐶2が大きく減少 していることが分かる。

このことから,5.5 節で実施した解析条件(軟弱地盤層厚や敷金網の線径など)を 変える事で敷金網を敷設した場合の𝑥𝑥 𝐻𝐻⁄ と𝐶𝐶2の関係を比較的精度よく求めることが で きると考えられる。また,この道路土工のチャートを用いた簡易式は盛土中央の沈下 量が求まれば容易に盛土法尻および側方地盤の水平変位量を求めることができ, 簡便 さ,使いやすさを目指した設計手法に合致している。

そこで,敷金網を敷設した場合の𝑥𝑥 𝐻𝐻⁄ と𝐶𝐶2の関係を解析的に求め, 無対策時の 盛 土 法尻あるいは側方地盤の水平変位量を設計目標値(水平変位量の設定)とするのに必 要な敷金網の線径を選定するチャートを作成することを考えた。

具体的な設計手法は,図- 6.2.3のフローのイメージである。

0 0.1 0.2 0.3

0 0.5 1 1.5 2

無対策時 敷金網敷設時 道路土工

図- 6.2.2 𝑥𝑥 𝐻𝐻⁄ と係数𝐶𝐶2の関係

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地盤調査・土質試験

地盤モデル作成 地盤定数設定

一次元圧密沈下解析

(盛土中央の最終沈下量 𝑆𝑆 算出)

道路土工の簡易式による

無対策時の盛土法尻および側方地盤の 水平変位量の算出 𝛿𝛿𝑥𝑥𝑛𝑛=𝐶𝐶2∙ 𝑆𝑆

側方地盤の水平変位対策が必要?

(目標水平変位量𝛿𝛿𝑥𝑥𝑑𝑑 >𝛿𝛿𝑥𝑥𝑛𝑛=𝐶𝐶2∙ 𝑆𝑆)

YES

無対策時の盛土中央の最終沈下量 𝑆𝑆

および目標水平変位量𝛿𝛿𝑥𝑥𝑑𝑑より係数𝐶𝐶2𝑑𝑑(𝐶𝐶2𝑑𝑑=𝛿𝛿𝑥𝑥𝑑𝑑⁄𝑆𝑆)を算出し,

提案するチャートから𝐶𝐶2𝑑𝑑を満たす敷金網の線径などを選定する。

END NO

図- 6.2.3 提案する設計手法のフローとチャートのイメージ図

0 0.1 0.2 0.3

0 0.5 1 1.5 2

無対策時 敷金網敷設時 道路土工 凡 例 (敷金網の敷設間隔30cm

無対策時(道路土工)

敷金網工φ2.0mm、網目56mm 敷金網工φ2.6mm、網目56mm 敷金網工φ3.4mm、網目56mm 側方地盤水平変位量

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