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第 5 章 変形抑制効果のメカニズムに関する考察

5.3 二次元弾塑性 FEM 解析による抵抗要因の分析

5.3.1 検証条件

-79-

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表- 5.3.1 検討ケース一覧表

ケース名 目的 盛土のモデル化

Case0 初期値解析 線形弾性モデル

Case1 初期値解析 バイリニア弾性モデル

Case2 変形係数𝐸𝐸の効果 同 上

Case3 せん断強度𝑐𝑐の効果 同 上

Case4 引張強度𝑞𝑞𝑡𝑡の効果 同 上

Case5 ポアソン比𝜈𝜈の効果 同 上

Case6 せん断強度𝑐𝑐,引張強度𝑞𝑞𝑡𝑡両方の効果 同 上

Case7 変位を固定した場合の効果確認 同 上

まず,Case0,Case1で初期値解析を行うこととした。

Case0は盛土を線形弾性モデルとし,せん断破壊,引張破壊に関係なくモデル全体

にどのような応力が作用し,どの程度の沈下および側方地盤の水平変位が発生するか を把握するために実施した。Case1は,無処理地盤の変形量(初期値)を把握するこ とを目的とした。盛土材を砂質土と想定しているため,盛土底面に引張応力が発生し て引張破壊が生じることが想定される。その場合,盛土底面が延びる(水平に広がる)

ように変形する。このときの盛土内の応力状態の把握,盛土中央部の沈下量,盛土法 尻周辺の水平変位量の初期値を得るために実施している。

Case2~Case6は,5.2節で抽出した水平変位の抑制効果についての検証であり,図

- 5.3.2に示す敷金網に挟まれた地盤(盛土)の版状効果として考えられる要因をそれ

ぞれ検証するものである。版状効果として考えられる変形係数𝐸𝐸 等の変化(増大など)

範囲は図- 5.3.3に示す範囲とし,厚さ 0.6mで盛土底部の全幅とした。これは,敷金

図- 5.3.2 敷金網に挟まれた地盤の版状効果のイメージ図

図- 5.3.3 版状効果の解析上のモデル化範囲

14.0m 盛土 2.5m 沖積粘土

0.6m

版状効果として,この範囲 の地盤定数を変化(増大等)

敷金網 金網に挟まれた地盤

(盛土)の版状効果

軟弱地盤

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網を 60cm間隔で 2 枚敷設した場合を想定している。

Case2 変形係数𝐸𝐸の増大

→ 版状効果により,変形係数が増大することによって,盛土底部が延びること なく,側方地盤の水平変位が低減する(仮説 1)。

Case3 せん断抵抗の増大(粘着力𝑐𝑐 )

→ 版状効果により,せん断抵抗が増大し,盛土底部のせん断変形を抑制するこ とにより,盛土側方地盤の水平変位が低減する(仮説2)。このときのせん断 抵抗の増大は,せん断抵抗角φではなく,粘着力 c の増大と推察している。

Case4 引張抵抗の発揮(引張力𝑞𝑞𝑡𝑡

→ 版状効果により,引張抵抗が発揮され,盛土底部が軟弱地盤の側方への変形 に抵抗して,側方地盤の水平変位が低減する(仮説 3)。

Case5 ポアソン比𝜈𝜈の効果

→ 版状効果により,ポアソン比が低下し

て盛土底面が側方に延びる変形に抵抗する(仮説 4)。一般的に,地盤のポアソ

ン比は𝜈𝜈=0.33程度であるが,コンクリートやしらす(特殊土)のように,ポ

アソン比が𝜈𝜈=0.1~0.2程度に変化することを仮定した。

Case6せん断抵抗,引張抵抗両者の増大効果(粘着力𝑐𝑐,引張力𝑞𝑞𝑡𝑡

→ 版状効果により,せん断抵抗が増大し,また引張抵抗が発揮されることによ り,盛土底部が軟弱地盤の側方への変形に抵抗して,側方地盤の水平変位が 低減する(仮説5)。一般に,粘着力が増大すると,引張力も増大することか ら,このような仮説を立てた。

なお,Case7については,初期値解析とは逆に,盛土底部が延びない状態,すなわ

ち,盛土底部が側方に変形しない(X 変位固定,Y 自由:沈下は許容)条件での盛土 内の応力状態を把握する目的で実施した。

-82- (2) 地盤定数および地盤の構成式

解析モデルを図- 5.3.4に,地盤定数を表- 5.3.2に示す。

地 盤 モ デ ル お よ び 地 盤 定 数 は 佐 賀 平 野 の 某 所 に お け る 地 盤 調 査 結 果 に 基 づ い て 設 定した。具体的には,盛土の変形係数 E N 5 回相当と仮定して求めた。沖積粘 土の圧縮指数𝐶𝐶𝑐𝑐や透水係数 kは段階載荷による圧密試験より決定し,限界状態におけ る破壊応力比𝛭𝛭は三軸CU試験結果(内部摩擦角𝜙𝜙′)から設定するなど,シンウォール サンプリングにより採取された乱れの少ない試料を用いた室内土質試験結果から設定 した。

E=2,800N (kN/m2) =2.8N (MN/m2) 5.3.1

𝛭𝛭= 6 sin𝜙𝜙′

3−sin𝜙𝜙′ 5.3.2

(a) 地盤モデル図

(b) モデルメッシュ図

(c) モデルメッシュ図(拡大)

図- 5.3.4 検証に用いた解析モデル図

14.0m

2.5m 沖積粘土1層厚2.8m

沖積粘土2層厚4.3m

沖積粘土3層厚2.4m

沖積砂 層厚2.2m

洪積砂 層厚12.0m 線形弾性モデル γt=18kN/m3,E=56MPa, ν=0.33 線形弾性モデル γt=17kN/m3,E=42MPa, ν=0.33

Cam-clayモデル γt=14.5kN/m3,Cc=1.5, M=1.5, k=7.5×10-9m/s Cam-clayモデル γt=14.0kN/m3,Cc=2.0, M=1.5, k=7.5×10-9m/s Cam-clayモデル γt=14.0kN/m3,Cc=2.0, M=1.5, k=3.0×10-8m/s

盛土γt=19kN/m3,E=14MPa

42.80

16.00

(c)図 の 拡 大 範 囲

42.8

16.0

42.8

16.0

42.8

16.0

-83-

表- 5.3.2 地盤定数

項 目 盛 土 沖 積 粘 土1 沖 積 粘 土2 沖 積 粘 土3 沖 積 砂 洪 積 砂

構 成 式 バ イ リ ニ ア 線

形 弾 性 モ デ ル Cam-clay 線 形 弾 性

変 形 係 数E(MN/m2) 14.0 42.0 56.0

ポ ア ソ ン 比 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33 0.33

粘 着 力𝑐𝑐(kN/m2) 5.0

引 張 強 度𝑞𝑞𝑡𝑡 (kN/m2) 1.0

せ ん 断 抵 抗 角φ( °) 30 37 37 37

破 壊 応 力 比Μ 1.506 1.506 1.506

圧 縮 指 数 𝐶𝐶𝑐𝑐 2.0 2.0 1.5

膨 潤 指 数 𝐶𝐶𝑠𝑠 0.2 0.2 0.15

透 水 係 数k (m/sec) 1 × 10−6 3 × 10−8 7.5 × 10−9 7.5 × 10−9 1 × 10−5 1 × 10−5

間 隙 比𝑒𝑒0 3.5 3.0 2.6

単 位 体 積 重 量𝛾𝛾𝑡𝑡(kN/m3) 19.0 14.0 14.0 14.5 17.0 18.0

(盛土の構成式)

Case0の初期値解析は,盛土材を線形弾性モデルとしたケースである。それ以外の

Case1~Case7は盛土材を非線形材料としてモデル化した。具体的には,図- 5.3.5 お

よび図- 5.3.6に示すように,モール・クーロンの破壊基準によりせん断破壊が生じた

場合,引張破壊が生じた場合に変形係数が 0 となるような,バイリニア弾性モデルを 用いている。

(盛土の破壊基準)

 せん断破壊基準

𝑓𝑓𝑣𝑣 =(𝜎𝜎1− 𝜎𝜎3)

2 −(𝜎𝜎1+𝜎𝜎3)

2 sin𝜙𝜙 − 𝑐𝑐 ∙cos𝜙𝜙

=𝜏𝜏𝑚𝑚𝑚𝑚𝑥𝑥− 𝜎𝜎𝑛𝑛sin𝜙𝜙 − 𝑐𝑐 ∙cos𝜙𝜙= 0 5.3.3(a) ここに,

𝜎𝜎1,𝜎𝜎3,:最大主応力,最小主応力 𝜎𝜎1 =𝜎𝜎𝑥𝑥+𝜎𝜎𝑥𝑥

2 +��𝜎𝜎𝑥𝑥− 𝜎𝜎𝑥𝑥

2 �2+𝜏𝜏𝑥𝑥𝑥𝑥2 5.3.3(b)

𝜎𝜎3=𝜎𝜎𝑥𝑥+𝜎𝜎𝑥𝑥

2 − ��𝜎𝜎𝑥𝑥− 𝜎𝜎𝑥𝑥

2 �2+𝜏𝜏𝑥𝑥𝑥𝑥2 5.3.3(c)

𝜏𝜏𝑚𝑚𝑚𝑚𝑥𝑥:最大せん断応力

図- 5.3.5 盛土の破壊基準 せん断破壊 =0 引張破壊 0

-84- 𝜏𝜏𝑚𝑚𝑚𝑚𝑥𝑥=��𝜎𝜎𝑥𝑥− 𝜎𝜎𝑥𝑥

2 �2+𝜏𝜏𝑥𝑥𝑥𝑥2 5.3.3(d) 𝜎𝜎𝑛𝑛:平均直応力

𝜎𝜎𝑛𝑛=𝜎𝜎𝑥𝑥+𝜎𝜎𝑥𝑥

2 5.3.3(e)

 引張破壊基準

𝑓𝑓𝑣𝑣 =−𝜎𝜎3− 𝑞𝑞𝑡𝑡 =𝜏𝜏𝑚𝑚𝑚𝑚𝑥𝑥− 𝜎𝜎𝑛𝑛− 𝑞𝑞𝑡𝑡= 0 5.3.4

ここに,

𝑞𝑞𝑡𝑡:引張強度(正値)

 せん断破壊時及び引張破壊時では 𝐸𝐸𝑓𝑓 ≒0,𝜈𝜈𝑓𝑓≒0.5

ここに,

𝐸𝐸𝑓𝑓:破壊時の変形係数 𝜈𝜈𝑓𝑓:破壊時のポアソン比

(沖積粘土の構成式)

基 礎 地 盤 の 沖 積 粘 土 は 全 て オ リ ジ ナ ル の

Cam-clayモデル(Cam-clayモデルと略す)

を用い,沖積砂,洪積砂層は線形弾性モデル を用いた。解析には ALID-win ver5.3(地盤 ソフト工房)を用いており,Cam-clayモデ ルの破壊基準,降伏関数,流れ則,硬化則,

ダイレタンシー則は以下のとおりである 4)

① 破壊基準𝐹𝐹 𝐹𝐹=𝑞𝑞 − 𝛭𝛭𝑝𝑝= 0 5.3.5

②降伏関数𝑓𝑓 𝑓𝑓=𝛭𝛭𝐷𝐷ln 𝑝𝑝 𝑝𝑝𝑐𝑐+𝐷𝐷𝑞𝑞

𝑝𝑝= 0 5.3.6

③ 流れ則 塑性偏差ひずみ増分{∆𝑑𝑑𝑝𝑝}と偏差応力{𝑠𝑠}の共軸性

④ 硬化則 ∆𝑑𝑑𝑣𝑣𝑝𝑝=𝛭𝛭𝐷𝐷∆𝑝𝑝

𝑝𝑝 +𝐷𝐷∆𝜂𝜂,𝜂𝜂=𝑞𝑞 𝑝𝑝 5.3.7

⑤ダイレタンシー則 ∆𝑑𝑑𝑣𝑣𝑝𝑝⁄∆𝑑𝑑𝑠𝑠𝑝𝑝=𝛭𝛭 − 𝑞𝑞 𝑝𝑝⁄ 5.3.8 ここに,

𝑞𝑞 :等価軸差応力 𝛭𝛭 :破壊応力比

図- 5.3.6 盛土のせん断応力𝜏𝜏 −せん断ひず

み𝛾𝛾関係(平均主応力𝜎𝜎𝑚𝑚一定時)

せん断破壊 再載荷

最大せん断ひずみ 除荷

せん断破壊

最大せん断ひずみ 引張りからの回復 引張破壊

-85- 𝑝𝑝 :平均主応力

𝐷𝐷 :ダイレタンシー係数 p𝑐𝑐:圧密降伏平均主応力

∆𝑑𝑑𝑣𝑣𝑝𝑝:体積ひずみ増分

∆𝑑𝑑𝑠𝑠𝑝𝑝:等価せん断ひずみ増分

-86- (3) 解析手順

解析には ALID-win ver5.3(地盤ソフト工房)4)を用いた。

解析手順は,図- 5.3.7に示すとおりである。具体的には,自然地盤だけの状態で初 期応力解析を行った(STEP1)。次に,その時に発生した変位はクリアし,応力のみを 引き継いで,STEP2 以降,30cmずつ盛土を載荷させるステップ解析を行った。また , 盛土載荷時はポアソン比ν ≒0.5として計算する非排水条件とし,極端ではあるがせん 断変形のみを発生させ,体積変化は生じさせない解析を行った。そして,最上段の盛 土載荷後に盛土中に発生した過剰間隙水圧を消散(STEP11)させることとした。

STEP1:初期応力解析

(自然地盤のみ)

STEP2:盛土1層目(H=0.3m)

(非排水解析)

変位クリア 応力引継ぎ

変位、応力引継ぎ

過剰間隙水圧の消散はさせない STEP4:盛土3層目(H=0.9m)

~STEP9:盛土8層目(H=2.4m)

(非排水解析)

STEP3:盛土2層目(H=0.6m)

(非排水解析)

30cmずつ盛土載荷 変位、応力引継ぎ

過剰間隙水圧の消散はさせない 変位、応力引継ぎ

過剰間隙水圧の消散はさせない STEP10:盛土9層目(H=2.5m)

盛土立上り(完成)

(非排水解析)

STEP11:過剰間隙水圧消散

最終沈下形状

(排水解析)

変位、応力引継ぎ

図- 5.3.7 解析フロー

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