第 5 章 変形抑制効果のメカニズムに関する考察
5.3 二次元弾塑性 FEM 解析による抵抗要因の分析
5.3.3 検証結果のまとめ
表- 5.3.12 に盛土立上り時,すなわち最上段 2.5m の盛土載荷時の盛土中央の沈下
量,盛土法尻の水平変位量をケースごとに示した。また,図- 5.3.38に初期値解析Case1
(無対策時)の盛土法尻の水平変位に対する各ケースの比率を示した。
表- 5.3.12 解析による変位量一覧表
ケース名 目 的 盛土の
モデル化
盛土中央の 沈下量(cm)
盛土法尻の 水平変位(cm)
Case0 初期値解析 線形弾性
モデル 11.2 5.7
Case1 初期値解析 バイリニア
弾性モデル 12.8 11.5
Case2 変形係数Eの効果 同 上 12.4 10.8
Case3 せん断強度の効果 同 上 12.3 10.7
Case4 引張強度の効果 同 上 12.8 11.5
Case5 ポアソン比の効果 同 上 12.8 11.5
Case6 せん断,引張強度両方の効果 同 上 11.0 6.1
Case7 変位を固定した場合の効果 同 上 9.3 0.0
検証結果を総括して以下に示す。
1) 初期値解析(Case0,Case1)
初期値解析として,盛土材を線形弾性モデルとした場合(Case0),非線形材料とし てバイリニア弾性モデルとした場合(Case1)の 2 とおりの初期値解析を行った。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
Case0 Case1 Case2 Case3 Case4 Case5 Case6 Case7
初期値 (線形)
初期値 (無対策)
変形係数 せん断強 度
引張り強 度
ポアソン 比
せん断、
引張り強 度
変位固定 50%
100% 94% 93% 100% 100%
53%
Case1の水平変位量に対する比率 0%
図- 5.3.38 Case1(無対策時)の水平変位量に対する比率
-112-
Case1は文字通り,初期値解析であり,他のケースの効果を確認するための初期値
を得ることを目的としており,「無対策時」の解析値である。一方,Case0は,破壊を 考慮しない,要素応力と変形係数だけで求まる変形量であり,盛土底部がせん断破壊 も,引張破壊もしない場合の変形量といえる。
両者は表- 5.3.11のように,盛土中央の沈下量は 2cm弱の違いであるが,盛土法尻
の水平変位量は倍半分近い違いがある。
その要因は,Case1では盛土底部がせん断破壊して盛土の剛性が低下した解析結果 であるのに対して,Case0では引張破壊が生じるような応力状態にあるが,破壊を考 慮しない地盤の構成則を用いているため,盛土本来の剛性が維持されているためであ る。
したがって,Case0は盛土の剛性が維持された状態の変形量の最小値,Case1 は盛 土がせん断破壊した場合の,変形量の最大値,ということがいえる。
2) 変形係数および引張強度の増加効果,ポアソン比の低下効果(Case2,Case4,Case5)
Case2 の変形係数を増加させたケースのみ Case1 の無対策時に比べて6%の水平変
位低減効果が確認できるものの,いずれの場合も Case1と同様に盛土底部にせん断破 壊を生じ,ほとんど法尻の水平変位の低下は認めらない。したがって,変形係数や引 張強度の増加,ポアソン比の変化(低下)に関する効果は「ない」と言える。
3) せん断強度の増加による効果(Case3)
せん断強度を増加させると,盛土底部の要素にせん断破壊は生じなくなったが ,盛 土法尻の水平変位の低下は Case1 に比べて 8mm,7%の効果しかない。その要因は,
Case0のように盛土底部に引張応力が発生し,引張破壊が生じたためである。したが
って,引張強度だけが増加しても,水平変位の抑制効果は「ない」ということが言え る。
4) せん断強度の増加および引張強度の増加による効果(Case6)
表- 5.3.12 に示すように,盛土立上り時の沈下量,水平変位は Case0とほぼ一致し,
Case1に対して盛土法尻の水平変位は 53%まで低減した。これは,せん断破壊も引張
破壊も生じないためである。しかし,盛土底部(版状効果の範囲)の要素には図-5.3.33 に示すように,𝜎𝜎3 =−80~ −90 kN/m2の最小主応力が生じており,その値は引張強度
𝑞𝑞𝑡𝑡 = 100 kN/m2 に近くなっている。そのため,引張強度を小さくすると引張破壊が生
じて沈下,水平変位量は増すことは明らかである。また,敷金網の拘束効果が改良強
度𝑞𝑞𝑢𝑢= 1,000 kN/m2の浅層改良相当のせん断強度,引張強度になることは考え難く,
せん断強度,引張強度両者の増大効果は「ない」と考えられる。
-113- 5) 最小主応力が増大する効果(Case7)
盛土底面の水平変位を固定(ゼロ)した条件での盛土内の要素応力を確認するため に実施した Case7 の解析結果では,盛土底部に Case1 よりも大きな最小主応力𝜎𝜎3 が 発生した。これにより,盛土底部に発生するせん断応力𝜏𝜏は小さく,応力経路を見ても 破壊包絡線とは大きくかけ離れ,せん断破壊,引張破壊しない。
盛土底面の水平変位が固定された場合に,盛土底部の最小主応力(水平応力)𝜎𝜎3 が 大きくなるのは,土のうの理論 6)と関連付けて考えると十分に納得がいく。すなわち,
敷金網に挟まれた地盤が敷金網によって自由な変形を拘束されると,最大で受働土圧 相当の水平応力が発生することになる。また,敷金網に挟まれた地盤が自由な変形を 妨げられる場合にはダイレタンシーも関連してくる。安福ら 7)がジオテキスタイルの 拘束効果をダイレタンシーと関連付けているように,敷金網の拘束効果としてもダイ レタンシーによる効果も考えられる。すなわち,盛土底部の地盤が変形しようと体積 膨張を起こそうとするが,周囲を敷金網で拘束されているため変形できず,拘束圧が 増加するという考え方である。
いずれにしても,敷金網の拘束効果は敷金網に挟まれた地盤内に通常とは異なる大 きな水平応力が発生することが可能性として挙げられる。
詳細は次節で考察するが,これにより,大きなせん断応力が発生せず,せん破壊も 引張破壊も起こすことなく,盛土本来の変形係数が発揮されることが敷金網に挟まれ た地盤内の版状効果,すなわち拘束効果である可能性が高い。
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