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敷金網の拘束効果に関する研究として,土のうの理論を用いて敷金網に挟まれた地 盤の拘束効果を,敷金網に作用する張力が土の自由な変形を妨げて拘束する見かけの 拘束圧の増加と考えて評価手法を提案している。しかし,その効果は盛土本来の変形 係数が 2 割程度増加するという提案であり,実地盤における盛土法尻の水平変位の抑 制効果を考えると小さい値であり,説明がつかない。ただし,拘束圧の増加によるそ の他,強度などの要因としてメカニズムを検討する余地はあると推察された。

第 3章では,実際に敷金網を側方地盤の水平変位低減対策として用いられた施工事 例を紹介し,敷金網の効果を示した。具体的には,自然含水比が 100%を超え,非排水 せん断強さ cu 5 kN/m2の超軟弱な未圧密浚渫粘土地盤上に実盛厚さ 8m の道路盛 土が行われた際,盛土底面に 60cmの間隔で敷金網を 2 層敷いたところ,盛土中央の 沈下量が 3mと大きいにも係らず,盛土法尻の水平変位は 5cm程度と小さく,十分に 敷金網の効果が発揮されていることを示した。また,敷金網に働く張力を測定したと ころ,敷金網に作用した引張力は最大 6kN/m 程度と室内キャリブレーション試験時 の最大張力(50kN/m)の 1/8程度の極めて小さな引張力であった。このことから,敷金 網による水平変位の抑制効果は敷金網自体の引張力だけではないものと推察した。

第 4章では,敷金網による盛土法尻および側方地盤の水平変位低減効果を室内土槽 実験で検証した。第 3章の現場実験では敷金網を敷設しない場合の結果がなかったた め,定量的な効果の証明が出来なかったためである。具体的には,敷金網に模した厚

さ 0.7mm,網目 12.9mmの金網を用い,カオリンを模擬軟弱地盤とした室内土槽実験

を行った。その結果,金網を盛土底面に 1 枚敷いた場合の水平変位は,法尻,周辺地 盤の水平変位ともに金網無しの場合よりも小さくなり,敷金網による側方地盤の水平 変位抑制効果が確認された。また,金網を 1枚敷いた場合の水平変位よりも 2 枚敷い た場合の方が法尻,周辺地盤共に水平変位は小さくなり,1 枚よりも 2 枚敷いた方が より水平変位の抑制効果が大きいことが確認された。さらに,敷金網に引張力が作用 しなくても変形抑制効果が発揮されるのかを確認するため,敷設時に緩みの生じるポ リエチレンネットを敷金網に模して実験を行った。結果,金網無しの場合の水平変位 よりも法尻,周辺地盤ともに水平変位は小さくなり,ポリエチレンネットにおいても 水平変位の抑制効果が確認された。

第 5章では室内,現地実験により効果が検証された敷金網工法による盛土法尻 ,側 方地盤の水平変位低減対策のメカニズムを考察した。具体的には,敷金網に挟まれた 地盤には浅層改良のような版状効果があるものと考え,その効果が強度や変形係数に よるものなのか,二次元弾塑性 FEM 解析により検証した。その結果,せん断強度や 引張強度,変形係数などを大きくしても盛土底部にせん断破壊,あるいは引張破壊が 生じ,盛土本来の変形特性が維持されないことが,盛土法尻および側方地盤の水平変 位発生メカニズムであることを明らかにした。すなわち,軟弱地盤の沈下に伴い,盛

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土底面が側方に引っ張られるように変形する。盛土材料には引張抵抗はほとんど期待 できないため,引張破壊が生じて変形特性を失うという機構である。それに対する敷 金網を 2層敷くことによる効果,メカニズムとして考えたのが土のうの理論を用いた 最小主応力の増加である。敷金網によって変位を拘束された地盤(盛土)には, 自由 な変形を妨げるように最小主応力が増加する。これによって大きなせん断応力も引張 応力も働かず,盛土本来の変形特性が維持される,というものである。このメカニズ ムを検証するために二次元弾塑性 FEM 解析により敷金網をビーム要素としてモデル 化して検証した。その結果,敷金網に挟まれた地盤(盛土)に,敷金網を敷設しない 場合よりも大きな最小主応力が発生し,結果的に盛土施工中はせん断破壊も引張破壊 も生じずかつ,盛土法尻および側方地盤の水平変位も低下していることを確認した。

第 6章では,盛土法尻および側方地盤の水平変位低減対策としての敷金網工法を広 く知ってもらい,簡易に設計できることを目的として設計手法の提案を行った。具体 的には,道路土工軟弱地盤対策工指針の簡易式と同様に,盛土中央の沈下量と盛土側 方地盤の水平変位量の関係チャートを用いることとした。敷金網を敷設した場合のチ ャートを作成するため,二次元弾塑性 FEM解析により線径 2.6mm,網目 56mm,敷 設間隔 30cm の条件で盛土中央の沈下量が変化するように盛土高や軟弱地盤層厚を変 化させてチャートの作成を行った。ただし,サンドドレーン工法や深層混合処理工法 を併用する場合については道路土工の簡易式自体が適用範囲外であり,別途検討が必 要である。特に,深層混合処理工法を実施した場合には,改良率や改良長,フロート 長(未改良厚さ)などによって水平変位量が無対策時よりも大きくなる場合もあるの で注意が必要である。

以上が本研究成果の総括である。

しかし,本研究で敷金網による盛土法尻および側方地盤の水平変位低減に関する全 てのメカニズムが明らかになったわけではない。特に,敷金網により盛土自体の剛性 が維持されるとはいえ,盛土底部に全くの破壊が生じない訳ではなく,ある程度の剛 性低下が生じることも明らかである。そのため,厳密には軟弱地盤の強度や盛土高さ,

沈下量などによって側方変位の低減効果は異なるものと推察される。

また , 本研 究で は 側方 変位 低 減対 策と し ての 敷金 網 工法 の設 計 手法 を提 案 した が , 敷金網の網目,敷設間隔に関しては様々な組み合わせでの提案にまで至っていない。

ある限られた条件での設計手法とも言える。

このようなことから,今後は盛土中央部の沈下量と敷金網の敷設間隔,盛土法尻の 水平変位等から盛土底部の剛性低下率との関係を導き出し,その相関式も活用して必 要な敷金網の線径や網目,敷設間隔などを導き出せる設計式を提案できるよう, さら なる研究が必要と考える。

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謝 辞

本論文は、九州大学大学院 安福規之教授のご指導のもと、筆者が平成 20年 4 月か ら九州大学大学院工学府建設システム工学専攻博士後期課程在学中に行った研究の成 果を取りまとめたものです。社会人としての勤務の傍ら、本論文を取りまとめられた のも、数多くの方のご支援とご指導の賜物であると心より感謝しております。

九州大学大学院 安福規之教授には、11 年にわたった研究期間中に、終始変らぬ厳 しくかつ熱心なご指導をいただきました。さらには、実務の相談事に対しても、終始 懇切丁寧なご助言を賜りました。心より深く感謝申し上げます。

また、副査をお引き受けいただきました、九州大学大学院 三谷泰浩教授、同 島田 英樹教授には、論文審査の過程で、貴重なご指導とご助言を頂戴いたしました。本論 文がいっそう充実したものになりましたことに、深く感謝申し上げます。

長崎大学大学院 大嶺聖教授(入学当時九州大学)、立命館大学 小林泰三教授(入学 当時九州大学)には、研究初期段階で実験方法や研究の進め方など快く相談に応じて いただき、有益なご助言を多数頂戴いたしました。厚くお礼を申し上げます。

筆 者が こ の研 究に 取 り組 んだ き っか けは 、 九州 大学 落合 英俊 名 誉教 授を 委 員長 と する新北九州空港連絡橋設計施工委員会地盤・基礎工部会に参加させていただいたこ とでした。第 3章の敷金網の施工事例は、まさにこの委員会で採用されたものでした。

地盤・基礎工部会では右田隆雄氏(現福岡県道路公社 道路部長)をはじめとする福岡 県、北九州市の職員の皆様に、大変お世話になりました。この場を借りて、深く感謝 の意を表します。また、この部会では落合英俊先生をはじめ、主査としてご指導いた だいた安福規之教授、東京電機大学 安田進名誉教授、九州共立大学 前田良刀教授(現

NEXCO 西日本コンサルタンツ㈱代表取締役社長)に、地盤・基礎に関する様々なご

指導を賜りました。安福規之先生には軟弱地盤や解析理論を、前田良刀先生には杭基 礎のいろはを、安田進先生には液状化・流動化に関するいろはから解析までご指導い ただきました。落合英俊先生には、地盤技術者、設計技術者、発注者の域を超えた技 術者としての考え方、心構えを学ばせていただいたような気がしております。筆者が 本研究を行うにあたって、この部会での経験が大変役に立ちました。また、筆者が 11 年もの歳月をかけて本研究に取り組む間、常に暖かくそして何気なく励まし続けてい ただきました。この場を借りて、深く感謝の意を表します。

基礎地盤コンサルタンツ(株)常務取締役前九州支社長 田上裕氏には、筆者が九州 大学大学院で研究する機会を与えていただきました。また、安福先生、落合先生、前