第 2 章 中国観光ガイドの育成を対象にした先行研究のレビュー
第 2 節 定期刊行物に掲載された 135 件の研究概要
4 観光ガイド教育を担う教育機関に関連する研究
(1) 中等職業教育機関でのガイド教育を取り扱う研究(8
件)先行研究のうち中等職業教育機関でのガイド教育を取り扱う研究が
8
件,高等職業教育 機関でのガイド教育を取り扱う研究が28
件,4年制大学における観光ガイド教育を取り扱 う研究が8
件ある.表2-7 中等職業教育機関でのガイド教育を取り扱う先行研究の一覧
1.許迪楼(2007) 2.郭智慧(2010) 3.魯 奇(2010) 4.張 駿(2012)
5.陸 佳(2012) 6.劉燕婷(2012) 7.倪迦南・何勇(2014) 8.徐春燕(2014)
そのうちの中等教育機関に関する研究(表2-7参照)で許迪楼(2007)は,伝統的な観光ガ イド育成手法は,社会のニーズとの乖離している.そのため,技能型観光ガイドの人材育成 へ向けて,社会の要請,教育体系,教員構成などの多様な視点が教育制度構築のために必要 であると述べている.
また,郭智慧(2010)は,「中等職業学校の卒業生の多くは,ガイド職に就いており,観 光ガイドの主要な地位を占めている.しかし,彼らにはガイドに求められている能力面で 多くの問題があるため,中国全体の観光ガイドの能力に深刻的な影響を与えている」と主 張している.そして,その理由として,郭は,①ガイド説明が暗記した内容にとどまり,
新しいアイデアが欠如している,②説明が機械的で,感情が欠如している,③説明が定型 的であり,文化的な意味合いが欠如していることを指摘する.
他方,魯奇(2010)は,「ガイド専攻のインターンシップは,中等職業学校の人材育成の重 要な部分であり,学生の専門的な実践能力と革新能力を養う上で重要な一環であるととも に,学生の職業素質と就職競争力を養う重要な方法でもある」と指摘する.
さらに,張駿(2012)は,観光教育機関が優れた観光ガイド人材の育成を促進するために,
カリキュラムと教学の視点から,現状を改革する必要があると述べている.また,陸佳(2012)
は,「近年,マス観光の急速な発展により,観光ガイド専攻卒業生の雇用状況は良好で,観 光関係職業教育は喜ばしい成果を成し遂げた一方,観光ガイドの量的な増加に伴い,観光ガ イドの質の問題も顕著になっている」と指摘している.
加えて,倪迦南・何勇(2014)は,「中等職業学校は,観光業人材育成と社会へ送り出す重
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要な場所である」と述べ,浙江省寧波市市仑職業高等学校を事例に取り上げ,観光ガイド人 材育成に存在している問題について,教学理念,教学方法,企業との協力という
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側面から 考察している.この考察を通じて,中等職業学校の観光ガイドに一般的に存在している問題として,①活 発な学習意欲が欠如し,自己学習能力が低く,機械的で反復的なガイド作業に満足し,日常 の学習と蓄積に注意を払わず,仕事の経験を纏めるのが下手である,②社会的経験が少なく,
精神的な自己調整能力が弱く,緊急事態や特殊な問題などにうまく対応できない,③ガイド の解説文をまともに覚えるのができるが,ユニークな解説スタイルがない.また,ガイド解 説文の応用能力に欠けており,文学素養も欠けていることを指摘した.
さらに,徐春燕(2014)は,「『観光法』の公布と実施は,観光産業に大きな影響を与えて おり,また,観光ガイドの人材育成に更なる要求を提示している」と述べたうえで,「中等 職業学校観光ガイド人材の育成は,『観光法』施行後の観光市場の要求に応じて,正確な人 材育成の目標を設定し,全面的に教学の改革を促進し,学校と企業との協力で雇用を促進し,
全面的に,中等職業学校観光ガイド人材の育成レベルを高めるべき」と主張している.
(2) 高等職業教育機関でのガイド教育を取り扱う研究(28
件)高等職業教育機関での観光ガイド教育を取り扱う研究は,①外国語ガイド教育の問題点
(5件),②授業カリキュラム上の問題点(6件),③教育手法(7件),④観光ガイド教育の あり方(10件)を取り扱う
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つに大別することができる(表2-8参照).48
表2-8 高等職業教育機関でのガイド教育を取り扱う先行研究の一覧
外国語ガイド教育の 問題点
授業カリキュラム上の
問題点 教育手法 観光ガイド教育の
あり方
1.張鳳珍(2008) 6.王徳林(2008) 12.魏 凱(2007) 19.張建融(2005)
2.牛 抗(2010) 7.王 玉(2009) 13.秦 楠(2009) 20.劉韻琴(2006)
3.費斯威(2011) 8.劉 娟(2011) 14.陳微微(2010) 21.曹 華(2009)
4.呉 莉(2012) 9.曙 初(2011) 15.張江濤(2010) 22.段頴・李晋娜(2010)
5.廖林萍(2013) 10.柏 霊(2012) 16.張 頴(2011) 23.劉秀麗(2011)
――― 11.沈 雪(2012) 17.程林華(2012) 24.張 嫻(2011)
――― ――― 18.鄭燕華・
龍京紅(2013)
25.楊小冬・
王潔佳(2012)
――― ――― ――― 26.傅琴琴(2012)
――― ――― ――― 27.李雯麗(2013)
――― ――― ――― 28.葉小平(2014)
1) 外国語観光ガイド教育の問題点を取り扱う研究(5件)
高等職業教育機関における外国語観光ガイド教育に関して,張鳳珍(2008)は,現在のロ シア語観光ガイド不足を指摘しながら,その育成のためには,①明確的な人材育成目標の設 定,②合理的なカリキュラムの設置,③最適化された指導法の確立,④理論と実践経験がと もに備える教員の育成,⑤適切な教材の採用が必要であると主張する.
また,牛抗(2010)は,高等職業教育機関で観光英語を専攻する学生の育成のために,学 校での教育を通じて,学生に確かな理論知識と強力な実践的技能を持たせることで,卒業証 書を取得するだけでなく,専攻に相応しい国家職業資格証明書の取得を奨励している.
また,彼は,外国人客向けの観光ガイド育成が直面する問題として,①旅行業界と教育機 関のあいだの効果的なコミュニケーションと協力関係の欠如により,一部の地域では,高等 職業教育機関の観光英語専攻の外国人向け観光ガイドの人材育成が市場要求とかい離して
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いる,②高等教育機関における観光英語専攻の教員の資質を高める必要がある,③外国人向 け観光ガイドの専門性が低いことを問題として提示した.
そのうえで,①観光英語専攻のカリキュラムを再調整する,②外国人向け観光ガイド人材 育成課程を適切に設計する,③学外に外国人向け観光ガイドの実践訓練拠点を構築し,産学 連携を強化する,④理論的知識と実践経験をともに有する教員組織を構築することの重要 性を述べている.
さらに,費斯威(2011)は,「地域社会の貢献することは,各国の高等職業教育機関の持続 可能な発展のために重要であり,かつ不可欠である」と述べ,「高等職業教育機関の観光専 攻は,地域の観光ニーズに適応し,その観光上の特色を組み合わせ,教学法の変更を出発点 として,地元の特有なガイドコースをつくり,学校と企業が交流できる拠点を整備し,外国 人向け観光ガイド専攻のカリキュラムの改訂や,教学法や教材の開発などの側面から有益 な支援を行い,地域の経済・文化の発展に役立つバイリンガル観光ガイドの育成に集中すべ きである」と主張する.
加えて,呉莉(2012)は,雲南省の観光産業および観光ガイド市場の現状を分析したうえ で,到来するチャンスと挑戦について議論している.そして,呉は,高等職業教育機関にお ける東南アジア言語を用いた観光ガイド人材の育成に際して留意すべき課題として,①政 府の支援と指導,②思想観念の継続的な更新(すなわち,伝統的な授業講義重視の考え方を 変え,学生の実践能力の向上に注意を払う),③市場の需要に応じる全方位的で合理的に各 言語の設置,④教職員の知識体系にたいする継続的な改善,⑤学生の正しい職業観の確立を 指摘している.
一方,廖林萍(2013)は,「主なガイド養成機関としての高等職業教育機関は,実践的な教 育からのかい離と職業意識の未発達により,その育成上の効率が必ずしも高いといえない,
そこでの教育は観光産業界のニーズに合致していないため,卒業生は観光産業のニーズに 対応できていない」と主張し,①伝統的な理論知識偏重の教育手法を放棄すること,②異文 化コミュニケーション意識の育成することの重要性を説く.
2) 授業カリキュラム上の問題点を取り扱う研究(6
件)高等職業教育機関の授業カリキュラムに関して,王徳林(2008)は,河北省秦皇島職業技 術学院観光ガイド専攻の教育改革を事例に取り上げ,そこでは講義,練習,模擬,ガイドの 実践といった実践的な教育が施されていると述べている.なお,この場合の「講義」とは,
教師が詳しく教えることで,「練習」とは,授業での学生の技能練習のことで,「模擬」とは,
実践訓練室における学生の集中的な模擬解説のことで,「ガイドの実践」とは,学生が独立 して行うインターシップを指す.
また,王玉(2009)は,「現在,高等職業教育機関における観光ガイドの人材育成は業界の 発展ニーズに応じていないという矛盾があり,観光ガイドの育成は市場の需要と釣り合わ
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ず,専攻のカリキュラムは産業界の要求から外れている」と指摘する.
そして,王は,山西省観光職業教育観光ガイド専攻のカリキュラムを事例に捉え,①観光 ガイドの位置付けに対する分析が欠如している,②良いカリキュラム設置するための前提 条件の欠如している,③学生の職業能力に留意していない,④優秀な教員が不足し,コース が約束する教育を達成できていない,⑤良いカリキュラムの実践を保証する訓練用施設が 不足しているなどの問題点を指摘した.
これに対して,劉娟(2011)は,「カリキュラムの改革は,高等職業教育の発展における重 要なテーマである.中国の高等職業教育機関における観光ガイド人材育成のカリキュラム の改革は,過去の表面的な変更とは異なり,より実質的な開発段階に至っている.そして,
ガイドの仕事に基づくカリキュラム構築が必要である」と主張する.
そして,曙初(2011)は,「高等職業教育機関の人材育成は観光業界の需要に応じられず,
そのカリキュラムシステムは時代遅れである」と指摘したうえで,「教師チーム,教材や校 内校外の実践訓練拠点の構築を強化するのが,カリキュラムシステム改革の保障である」と 主張する.
加えて,柏霊(2012)は,カリキュラムや教育方法の観点から現在の高等職業教育機関に おける観光ガイド育成の問題点を論じた.
そして,①カリキュラムが観光産業の現実から乖離し,将来性と創造性が欠如している,
②教育手法が時代遅れであると述べ,①カリキュラムを最適化し,専攻の特徴を強調する,
②教育手法を刷新し,実践的な教育を強化することの重要性を説く.
他方,沈雪(2012)は,「中国観光業の急速な発展に伴い,質と実践能力がともに高い観光 ガイドが必要となっている.観光関係高等職業教育機関は質の高い観光ガイド育成の主体 であり,実践訓練は教育の重要な部分である」という.
そして,観光ガイド育成に存在する問題点として,①観光ガイド専攻のカリキュラムが不 適切である,②実践的な教育が少ない,③実践的な教育ができる教員が不足していることを 指摘した.
そのうえで沈は,①観光ガイド専攻の改革,つまり専攻コースと文化基礎コースを適切に 統合する,②校内と校外に実践的な訓練拠点を確保し,学校と企業との協力した教育を実施 する,③教職員組織を強化することを求めている.
3) 教育手法を取り扱う研究(7
件)高等職業教育機関における教育手法に関して,魏凱(2007)は,「観光業の高速な発展に伴 い,観光業はその従業員への包括的な品質の要求がますます高くなっている.観光教育の改 革を深め,産学研連携の道を歩み,観光市場の発展のニーズを満たす革新的で独特な観光ガ イド人材育成手法を構築し,観光産業に適した人材を提供することは現在の観光職業教育 の重要なテーマであり,観光業の持続可能な発展を保障し,観光市場における人材不足を解