第 4 章 オンライン観光時代の観光ガイドと政府観光機関の視点からみた中国観光
第 1 節 オンライン観光時代における観光ガイドの役割
前章で述べたように,中国観光産業の迅速な発展に伴い,その第一線で活躍する観光ガイ ドの役割がより一層重要になっている.しかし,新しいオンライン観光時代における中国観 光ガイドの役割は時代の変化に応じてどのように変化したのか,そして,新しい観光時代の 到来に伴い,政府観光機関からみた中国観光ガイドの育成課題は何だろうかはこれまでの 研究ではまだ明らかになっていない.
そこで,本章ではまず,中国のオンライン観光について触れ,オンライン観光時代におけ る観光ガイドの役割を論じる.さらに本章の後半では,観光ガイドの発展を支えた諸法規,
および観光ガイドの資格試験制度について概観し,政府観光機関の視点からみた中国観光 ガイドの育成課題を明らかにしたい.
まず,中国のオンライン観光について概説する.その理由は,新しい形態であるオンライ ン観光が観光ガイドの役割を変えようとしているからであり,その変化への対応が今日の ガイドにとって不可避だからである.
1.オンライン観光の出現
中国では,近年,科学技術の発展によるインターネットの普及に伴い,インターネットの 利用者数は年々拡大している.特に,5G時代の到来に伴い,携帯が簡単にインターネット に接続できるようになった.現在,国内旅行や海外旅行にかかわらず,人々は携帯やパソコ ンを利用し,ネットで観光情報を検索し,観光製品とサービスを購入するのが主流となって いる.つまり,新しい観光形態の「オンライン観光」が時代の要請に応じ,出現し,そして,
時代の大きなトレンドになったといえる.
「オンライン観光」とは,インターネット,モバイルインターネット,コールセンターな どの方式を通じ,消費者に観光関連情報,観光製品及び観光関連サービスを提供する業種で ある104.
中国では,新しいサービス業態として,「オンライン観光」の形成のきっかけは
Ctrip
旅 行サイトの2003
年12
月にアメリカのナスダックでの上場である.「Ctrip」は1999
年10
104 199it HP(http://www.199it.com/archives/592623.html)
106
月に設立された本社が上海にある中国で極めて有名な「オンライン観光サイト」である.
2017
年8
月3
日,中国インターネット協会と工業・情報化部情報センターに公布された「2017年中国インターネット企業トップ
100」
105によると,「Ctrip旅行サイト」はトップ テンの第9
位にランクインされた106.「2017年中国インターネット企業トップ100」には,
Ctrip
旅行サイトのほかに,中国で唯一2つのプラットフォームB2B
(旅行企業間プラットフォーム)と
B2C(マスツーリズムプラットフォーム)を運営し,2004
年に設立され,本 社を蘇州市に位置する「Tongcheng」が第26
位に入った.そして,第29
位にも2006
年10
月に江蘇省の南京市に設立された「tuniu旅行サイト」が入った.中国観光産業,特に,国内観光の発展に伴う休暇旅行,親子旅行の急増といった背景の中 で,「オンライン観光」は迅速な発展を成し遂げた.前瞻産業研究院の「中国オンライン観 光産業発展前景予測及び投資戦略企画分析報告」によると,近年,中国のオンライン観光市 場の市場取引規模は,2009年は
619
億元であったが,2015年,その数はもはや4,000
億 元を突破し,4,237億元に達した(図4-1参照).そして,前瞻産業研究院の予測によると,2020
年,中国のオンライン観光市場の総取引規模は6,500
億元を超える見込みであるとい う.105 「中国インターネット企業トップ100」は,2013年から開始し,年に一回発表され,2017年は5回 目になる.
106 「トップテンの企業」とはそれぞれ,Tencent,Alibaba,Baidu,Jingdong,NetEase,Sina,Sohu,
Dianping and Meituan,Ctrip,360のことである.
107
図4-1 中国オンライン観光市場取引規模の推移(2009~2015年) 単位:億元
出所:「中国オンライン観光産業発展前景予測及び投資戦略企画分析報告」に基づき,筆者作成.
オンライン観光取引市場規模は迅速な速度で増加しているが,観光産業全体への市場浸 透率はそれほど高いとはいえない.前瞻産業研究院の統計によると,2013年,オンライン 観光の浸透率は僅か
7.7%であった.
「インターネット+」の情報技術の更なる進歩により,2017
年オンライン観光の浸透率は15%になるという予測がある
107.このように,オンライン観光の市場シェアは拡大しつつあるのが事実であり,今の中国で は,観光製品の消費は「オフライン」から「オンライン」に移行している傾向が明らかにな った.この傾向は,中国では,インターネットが従来の伝統的な旅行会社を改造し,インタ ーネットの利用により,旅行会社の効率とサービスのレベルが確実に高められた原因によ る.インターネットプラットフォーム,特に,
APP
の発展により,将来,「オンライン観光」の発展が及ぶ規模がより一層拡大すると予想できる.
2.中国の主なオンライン観光プラットフォーム
伝統的な旅行会社は従来からオフラインの経営モデルを取り続けているが,今のネット 時代では,従来のオフラインだけの経営モデルはもはや時代遅れになり,「インターネット
+旅行会社」の経営モデルへの変更は必然である.
現在,中国には,多くのオンライン観光サイトが存在している.2015年,中国のトップ
100
のオンライン観光サービスプラットフォームを下表に示している(表 4-1と表 4-2参 照).107 参考ネットHP(http://www.fx361.com/page/2017/0308/999603.shtml)
619
954
1331
1740
2282
2773
4237
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
108
中国国際旅行会社本社,中国旅行会社本社などのような伝統的な大手旅行会社は時代の 流れに乗るため,積極的にオンライン観光システムを設置した.そして,実店舗が多すぎる ため,多くの困難に直面しているが,ある程度の成績は納めている.このように,従来の伝 統的なオフライン旅行会社がオンライン観光事業を開始したのと同時に,
Ctrip, Tongcheng,
tuniu
などの大手旅行サイトはオフラインの市場を開拓し,積極的特色ある「オフライン体験店」,「オフラインサービスセンター」を開始している.
それと同時に,中国の主なオンライン通信販売企業,団体購入プラットフォームは自身の 業務領域をオンライン観光市場に広げ,オンライン観光領域の企業に投資・出資するなどと いう形で,オンライン観光市場に進入している.
こうして,オンライン観光企業が同業界からだけではなく,他業界からの進入を受け,競 争が激しくなる一方である.
「インターネット+」の時代では,伝統的な旅行会社は業界で優位を立つのがますます困 難になり,「インターネット+旅行会社」のモデルはメリットがあるが,市場に存在する観光 商品が複雑であり,観光客が信用度の高いブランドを選ぶ傾向がある.伝統的な旅行会社が 激しい市場競争を勝つには,「インターネット+旅行会社」のモデルを取るだけでは足りず,
自分なりのブランドの特色を作り,取り込む必要があると考えられる.
表4-1 2015年中国インターネット+オンライン観光サービスプラットフォームトップ50位108
1-10位 11-20位 21-30位 31-40位 41-50位
携程网 酷讯网 中华户外网 拼途网 梦之旅
去哪儿网 户外资料网 十六番 80天环游网 Agoda 马蜂窝 同程网 游多多旅行网 阳光旅行网 驴评网
途牛网 芒果网 一起游 51766 泰格旅游网
欣欣旅游网 网易旅游 旅交汇 绿野户外 中国旅游信息网
艺龙网 搜狐旅游 春秋旅游 自在客 博雅旅游网
乐途旅游网 阿里旅行 九游网 相约久久旅游网 凤凰旅游
新浪旅游网 猫途鹰 遨游旅游 澳游搜 百度旅行
驴妈妈旅游网 磨房 悠哉旅游 神舟国旅 路趣网
穷游 米胖 小猪短租 第一旅游网 美辰旅游
出所:2015年Q3『インターネット週刊』&シリコンバレー美辰旅游動力編集選択ランキング
108 中商情報ネットHP(http://www.askci.com/news/data/2016/01/05/1480uxmn.shtml)
109
表4-2 2015年中国インターネット+オンライン観光サービスプラットフォームトップ51~100位109
51-60位 61-70位 71-80位 81-90位 91-100位
天巡网 中国古镇网 开元旅游 51you 世界邦 游侠客旅游网 众信旅游 金色世纪商旅网 度周末 天涯客
极限户外网 中国旅游网 ok旅行网 发现旅行 畅游旅行网 行天下 517网 108天 木岛短租 住哪儿 蝉游记 环视旅游网 百城旅行网 搜游网 面包旅行
来订吧预订网 畅游网 山水旅游黄页 爱旅行 路路行
旅视网 旅游名店城 锦江旅行家 航旅纵横 百酷网
背包兔 QQ旅游 非常准 铁友旅行网 蚂蚁短租
airbnb 远方网 6人游旅行网 途家网 青芒网
要出发旅行网 悦旅行 稻果旅游网 国旅在线 七洲网 出所:2015年Q3『インターネット週刊』&シリコンバレー美辰旅游動力編集選択ランキング
3.中国のオンライン観光が直面している問題
以上に述べたように中国では,オンライン観光サイトは雨後の筍のように発展している.
迅速な発展と同時に,オンライン観光サイトは多くの問題にも直面しているといわれてい る.
まず,国際化レベルの低さである.
アメリカの最大のオンライン観光企業
Priceline
110は四十数種の言語でサービスを提供で き,そして,その海外からの注文は注文総数の60%超を占めるという
111.世界最大の観光 コメントサイト,世界で最も人気のある観光コミュニティとしてのTripadvisor
112の下には24
個の観光サイトブランドがあり,世界の45
か国113で各々サイトを持ち,28種の言語で サービスを提供することができる.また,Expediaは12
個のブランドを持つとともに,全 世界の70
か国で150
個の観光チケット予約サイトを持っている.109 中商情報ネットHP(http://www.askci.com/news/data/2016/01/05/1480uxmn.shtml)
今回のトップ 100 のランキング統計は,主に,キーワードの検索数,サイトの収録数及び観光産業等級 評定(すなわち,iBrand,iSite,iPower)といった三つの方面から選んだものである.
110 1998年,アメリカ人の Jay Walker に設立された C2B モデルの観光サービスサイトである.
111 BaiduネットHP(https://baike.baidu.com/item/Priceline/7927470?fr=aladdin)
112 中国では,「猫途鹰」と称される.
113 アメリカ,イギリス,スペイン,インド,中国などの 45 か国である.