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観光ガイドを対象にした調査の概要

第7章 観光ガイド本人の視点からからみた中国観光ガイドの育成課題

第 1 節 観光ガイドを対象にした調査の概要

前章で述べたように,観光ガイド数の増加に反して,中国では,観光ガイドの定着率が低 い(例えば,李森:2013など),優秀で適性のある観光ガイドが不足している(例えば,史颹2013 など)などの指摘が多数存在している.ところが,観光ガイドを対象に従前行われてきた中 国の研究は,自己の主張を裏付ける根拠が存在せず,論者の私見を述べるだけであった.

また,従前の中国では,実証的な研究が不足していたため,現役観光ガイドのプロフィー ルがよくわからなかった.そして,学校時代のガイド教育が実務的にどの程度有効であった かも定かでなかった.

さらに,既存研究は観光ガイドの離職が頻発するといっていたが,観光ガイド自身がその 原因をどのように分析しているのかも不明であった.加えて,観光ガイドの離職に影響を与 えると思われる要因,例えば勤続意欲,仕事に対する好き嫌い,観光ガイドしての資質の有 無や職務上要求される知識・技能の充足状態を客観的に把握する研究もほぼ皆無であった.

そこで,本章は,これらの不明さに光を当て,実態を解明すると同時に,この解明過程を 通じて,観光ガイド本人の視点からみた育成課題を論じたい.

1.調査の概要

本論は,前節で述べた目的を達成するため,①北京市内の「北京市観光人材サービスセン ター」と「天安門広場」で待機している観光ガイドに直接調査票を無作為に配布する,②SNS ウェイチャット(wechat)を通じて,「北京市観光ガイドグループ」に調査票を送り回答を 依頼する手法を用いて,これらを明らかにする.なお,この調査期間は,2016年の

3

7

日から

4

3

日までの約

1

ケ月である(表7-1参照)

145

7-1 観光ガイド調査の概要

調査期間 2016年3月7日~3月11日 2016年3月11日~4月3日 調査場所 北京市観光人材サービスセンター 北京天安門広場 ネット上 調査方法 質問紙調査 質問紙調査 質問紙調査 調査票配布部数 95部 450部 50部 調査票回収部数 84部 375部 50部 有効調査票数 60部 290部 50部

有効調査票合計 400部

本調査の調査票は,

16

の質問項目で構成されており,そのうちの

11

項目は,性別,年齢,

学歴,学生時代の専攻などの回答者のプロフィールに関連する質問である.そして,残りの

5

項目は,観光ガイドの離職が頻発する理由,ガイドという仕事に対する好き嫌い,ガイド としての能力や適性などに関する自己評価と,学校時代のガイド教育の有効性を聴取する 内容である(表7-2参照)

7-2 観光ガイド調査での質問項目一覧

1.性別 2.年齢 3.学歴 4.学生時代の

専攻

5.ガイド時の 使用言語

6.観光ガイド経 験年数

7.ガイド等級 8.年収 9.ガイド適性

検査を受診し た経験の有無

10.転職した旅 行会社数

11.観光ガイド を続けたい年

―――――

12.離職が頻発 する理由

13.観光ガイド という仕事の 好き嫌い

14.観光ガイド に求められる 知識・技能の 充足度に対す る評価

15.観光ガイド としての適性 に対する評価

16.学校時代の ガイド教育の 有効性

146 2.調査回答者のプロフィール

(1) 回答者の性別,年齢,学歴と学生時代の専攻

回答者の性別は,女性が全体のおよそ

51%,男性は約 49%であり,回答者に性差がない

(表7-3参照)

7-3 回答者の性別 (N=400,%)

男 性 女 性

48.8 51.2

一方,回答者の年齢は,「23歳以上

29

歳以下」が最も多く,全体の約

45%を占めている.

次いで,「30歳以上

39

歳以下」が全体のおよそ

42%である.これに対して,

「40歳以上」

の回答者は全体の約

9%にすぎない.そのため,本調査の回答者は,いわゆる「働き盛り」

の人びとであるといえる(表7-4参照)

これに対して,回答者の学歴は,「3年制大学卒」が一番多く,全体のおよそ半分(46.8%)

を占めている.そして,「高卒以下」が,全体の約

3

分の

1(29.8%)を構成しており,この

二者で全体の

4

分の

3

を超える.他方,「4年制大学卒」は全体の

22.5%であり,

「修士の学 歴」を持つ回答者は僅か

1%であったことから,本調査の大半の回答者は,どちらかといえ

ば高学歴者でないことがわかる(表7-4参照)

さらに,回答者の学生時代の専攻をみると,「ガイド専攻」が

56.5%で過半であった.こ

のことから,回答者の半数以上が学生時代にガイドを専門的に学んでいたことが理解でき る(表7-4参照)

7-4 回答者の年齢,学歴と学生時代の専攻 (N=400,%)

年 齢 学 歴 学生時代の専攻

29歳以下 49.0 高卒以下 29.8 ガイド専攻 56.5

30-39 42.2 3年制大学卒 46.8 ガイド以外の専攻 43.5

40歳以上 8.8 4年制大学卒以上 22.4

注:この数値には,22歳以下4.3%を含む.

147 (2) ガイド時の使用言語

回答者がガイド時に使用する言語は,「中国語」が全体の

9

割以上(92.5%)を占めてお り,「外国語」を使用してガイドしている回答者は僅か

7.5%にすぎない

(表7-5参照)

7-5 ガイド時の使用言語 (N=400,%)

(3) 観光ガイド経験年数,等級と年収

ガイドとしての経験年数は,「5年以上

10

年未満」の回答者が最も多く, 32.5%を占め ている.次いで,「3年以上

5

年未満」が全体の

23.3%,

「3年未満」が全体の

28.0%になっ

ている.だが,「10 年以上(16.2%)」の長期間ガイドを続けている回答者は,相対的に少 ない.このことから,本調査の回答者は,どちらかといえば経験年数が浅い人が多いことに 気づく(表7-6参照)

また,回答者のガイド等級は,「初級」が最も多く,全体の約

9

割(約

88%)を占めてい

る.そのため,本調査の回答者のガイドとしての技能は,初歩段階であるといえる.

そして,年収は,「5万元以上

8

万元未満」が最も多く,全体の

36.0%を占める.さらに,

「5万元未満」の回答者もおよそ全体の

3

分の

1

存在する.これに対して,年収が「8万元」

を超える回答者は,全体の約

35%であった.この結果,本調査の回答者は,どちらかとい

えば低所得者であるといえる(表7-6参照)

表 7-6 ガイドとしての経験年数,等級と年収 (N=400,%)

経 験 年 数 ガ イ ド 等 級 年 収

3年未満 28.0 初級 87.8 5万元未満 28.5

3年以上5年未満 23.3 中級・高級 12.2 5万元以上8万元未満 36.0

5年以上10年未満 32.5 8万元以上 35.5

10年以上 16.2

使 用 言 語

中国語 92.5

外国語 7.5

148