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親しい者同士の自然会話における CN と JP の「弱い質問」の「ダロウ」使用

第 6 章 場面別に見た自然会話における CN の「ダロウ」の使用状況

6.2 親しい者同士の自然会話における CN の「ダロウ」の使用状況

6.2.2 親しい者同士の自然会話における CN と JP の各用法の「ダロウ」の使用

6.2.2.6 親しい者同士の自然会話における CN と JP の「弱い質問」の「ダロウ」使用

108 JPの「不定推量」の使用例を見ると、下の(205)(206)のような「不定推量」の「単純ダロ ウ」もあれば、(207)(208)のような「複合ダロウ」もある。

(205) JPF08:あ、そう、十年後ね<うん>十年後だから、どこに、どこに<あ、そっ か、どこに>【地名】?

JPF07:うん、地元

JPF08:あーん、どうだろう、最初でも、実家おって<うんうんうん>その後、

なんか結婚がなんたらどうなるかわからんけど<あー、なるほどなるほ ど>とりあえず実家、かな

(206) JPF06:うん、なんか、最近聞いた話、名前忘れちゃったんだけど<うん>なんか、

日本企業が海外でする、なんか、だい、なんだろう、企業説明会みたいな

<うんうんうん>あるんやね、確か<うーん>なんか、この間、【人名】先 輩が<うん>アメリカそれ行ったらしくて<へー>なんか、そういうのが 参加したら<うんうんうん>一般企業、あ、こんなあるんやとか普通に面 白いよね<うんうん、そう>興味があるのがあるかもしれない

JPF05:うん、そう、ね、でも、なんか、一般企業もね、大変そうやね (207) JPF05:院いく?【相手の名前?】

JPF06:院行きたいけど JPF05:うん、まず就職する?

JPF06:そう、あっ、でも、どうだろうな、院行くかもしれないし、行かないか もしれない

(208) JPM04:うん、や、都市部の寺のほうが、なんか、まあ、いやらしい話、儲かるん じゃないか

JPM03:いやー、でも<うん>どうなんだろうね、たぶん<うん>田舎は<あー>

田舎は、田舎寺みないな感じで、田舎のほうが<あー>寺って大きいんだ って

JPM04:あっ、そう?

これらの例から分かるように、JPに使用されている「不定推量」の「ダロウ」には「か」

が抜けているものが多く、(207)(208)のような「な」「ね」と共起するものが多く見られる。

109 日本のドラマ、ドラマの中で、でも、なんか、その、子供達といっしょ<

あーん>よく一緒に遊んでいるだろうかなって

CNM08:あ、そ、そ、それは、そうですよね、私は<うん>でも、現実には本当に そうでしょうか

CNM07:中国はよく分かりませんね、なんか、なんか、でも

(209)で、話し手(CNM08)は相手もはっきり知らないと思われることについて、「ダロウ」

によって自分の疑念を提示し、相手にそれについて共に思考することを、間接的に要求して いる。従ってこの「ダロウ」の使用は自然であると考えられる。

JPでも「弱い質問」の「ダロウ」はあまり使用されていないが、下の(210)のような「単 純ダロウ」もあれば、(211)のような「複合ダロウ」も分析される。

(210) JPM03:秋田都心部って、どんな感じなんだろう

JPM04:都心部<うん>とし、どんな感じつってもね、なんか、道は広いから通り やすいと思うけど

(211) JPM02:かわいそう、【人名】も十年後どうなってるんだろうね

JPM01:【人名】の十年後、想像できんわ、あいつ、でも、なんか、一筋縄じゃい かん気がする<うそ>就職とか

以上、話題や時間が統一されている親しい者同士の自然会話を利用し、JP の「ダロウ」

の使用状況と比較しながら、CN の「ダロウ」の使用状況及びその問題点を見てきた。その 結果、「ダロウ」の全体の使用頻度から見ると、JPよりCNの「ダロウ」の使用頻度が低い ことが分かった。また、「ダロウ」の各用法の使用傾向から見ると、CNでは「推量」の「ダ ロウ」が最も多く使用されており、「知識確認の要求」の「ダロウ」も比較的多く使用され ているが、ほかの用法の「ダロウ」の使用はほとんど見られない。一方、JPでは「知識確認 の要求」の「ダロウ」が最も多く使用されており、「不定推量」「推量」の「ダロウ」も比較 的多く使用されているが、ほかの用法の「ダロウ」はあまり使用されていない。さらに、各 用法での「ダロウ」の使用例を詳しく見ると、CNには不自然な「ダロウ」の使用例が存在す ることが分かった。また、JPの「推量」「不定推量」「弱い質問」では「単純ダロウ」だけで はなく、「複合ダロウ」の使用も比較的多く見られる。一方、CNでは「複合ダロウ」の使用 はまったく見られない。つまり、親しい者同士の自然会話でも、6.1で見た初対面同士の自 然会話と同じく、基準であるJPと比べると、CNの「ダロウ」の使用頻度が低く、用法ごと に見ると、JPと異なる使用傾向が見られる。また、CNの具体的な「ダロウ」の使用例を質 的に見ると、場面的に不自然な例が多く見られる。このように、中国の大学で日本語を専門 とし、中上級レベルになったCNでも、初級段階で習った「ダロウ」を会話では積極的に使 用する様子が見られず、場面に合わせて正確に産出するのが困難であると言えよう。

110 では、なぜCNにとって「ダロウ」の産出が困難であるのだろうか。それを明らかにする ために、CNが「ダロウ」の用法をどのように捉えているのか、CNに使用されている日本語 教科書では「ダロウ」がどのように扱われているのか、日本語教師がどのように「ダロウ」

を指導しているのかなどについて考察する必要があると思われる。そこで、本研究の第7章 では、CNへのアンケートとインタビュー調査を通し、CNが「ダロウ」の用法をどのように 捉えているのかを考察する。第8章では、CNに使用されている日本語教科書及び中国人日 本語教師へのインタビューを通し、中国の日本語教育では「ダロウ」をどのように指導して いるのかを考察する。

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第 7 章 CN による「ダロウ」の用法に対する理解

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