第 4 章 場面別に見た JP による自然会話における「ダロウ」の使用状況
4.2 親しい JP 同士の自然会話における「ダロウ」の使用状況
4.2.2 形態別に見た親しい JP 同士の自然会話における「ダロウ」の使用状況
4.2.2.2 親しい JP 同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況
51 か(ふーん)うん、ぐらいだけど。なあ。 (『名大』101)
次に「弱い質問」の「だろ(う)」である。上記の表30と図11から分かるように、親しい JP同士の自然会話では「弱い質問」の「複合だろ(う)」より「弱い質問」の「単純だろ(う)」
の方が多く使用されている。下の例(56)(57)は「弱い質問」の「単純だろ(う)」の使用例で ある。
(56) F123:<笑い>だって、忙しかった、それどころじゃなかった。(ねー)この店、
何時までだろう。
F093:まだ早いよね。 (『名大』049) (57) F057:ねー。ジャスコは何時までなんだろう。
F036:どうだろう、9時ぐらい? (『名大』045)
「弱い質問」の「複合だろ(う)」を見ると、次の表33に示すように「ね」と共起するの が圧倒的に多く、「な」と共起するのが極めて少ない。下の例(58)(59)はそれぞれ「ね」「な」
と共起するものである。
表33 親しいJP同士の自然会話における「弱い質問」の「複合だろ(う)」の共起形式
共起形式 ね な 小計
だろ(う) 68 3 71
(58) F160:でもね、これね、見せるとこれチカチカチカチカなってて、(うん)余計
どきどきするから、<笑い>隠してみた。ね。こんな変な歌も入ってるし。
F045:何の曲だろうね。
F160:知らない。 (『名大』067) (59) M011:ただ、時間がないから。
M013:時間がなかった。なんであれ時間なかったんだろうな。
M011:あれ卒論の、出してすぐ行ったんだよね。 (『名大』116)
52 表34 親しいJP同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況
推量 命題 知識 念押し 不定 弱い 丁寧 合計
でしょ(う)
179 (11.4)
328 (20.8)
890 (56.5)
137 (8.7)
12 (0.8)
23 (1.5)
7 (0.4)
1576 (100)
図12 親しいJP同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況
また、各用法での「でしょ(う)」が「単純でしょ(う)」なのか、「複合でしょ(う)」なの かを見ると、次の表35と図13のような結果が得られた。
表35 親しいJP同士の自然会話における「単純/複合でしょ(う)」の使用状況 単純でしょ(う)(%) 複合でしょ(う) (%) 合計(%)
推量 128(71.5) 51(28.5) 179(100)
命題 327(99.7) 1(0.3) 328(100)
知識 886(99.6) 4(9.4) 890(100)
念押し 137(100) 0 137(100)
不定 2(17.6) 10(83.3) 12(100)
弱い 11(47.8) 12(52.2) 23(100)
丁寧 7(100) 0 7(100)
小計 1498(95.1) 78(4.9) 1576(100)
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
推量 命題 知識 念押し 不定 弱い 丁寧
0.0%
50.0%
100.0%
150.0%
推量 命題 知識 念押し 不定 弱い 丁寧
図13 親しいJP同士の自然会話における「単純/複合でしょ(う)」の使用状況 単純でしょ(う) 複合でしょ(う)
53 表35と図13から、親しいJP同士の自然会話では、「単純でしょ(う)」の方が圧倒的に多 く使用されており、それに対して、「複合でしょ(う)」の使用頻度が非常に低いこと、及び どちらにおいても用法ごとに見るとばらつきがあることが分かる。「命題確認の要求」「知識 確認の要求」「念押し確認要求」「丁寧さの加わった質問」では、ほとんど「単純でしょ(う)」
が使用されており、「複合でしょ(う)」の使用はあまり見られない。「推量」では「複合でし ょ(う)」より「単純でしょ(う)」の方が多く使用されている。「不定推量」では「単純でし ょ(う)」より「複合でしょ(う)」の方が多く使用されている。「弱い質問」では、「単純でし ょ(う)」より「複合でしょ(う)」の方がやや多い。
次に、各用法での「単純/複合でしょ(う)」の具体的な使用例を提示し、親しいJP同士の 自然会話における「単純/複合でしょ(う)」の使用状況をもっと詳しく見ていく。
まず、「推量」の「でしょ(う)」である。下の例(60)(61)は「推量」の「単純でしょ(う)」
の使用例である。
(60) F123:来ないね、もうここって、あっ、でも丸の内とかかな、近いの。(ふーん)
やだな、今日、(うん)やっぱ、雪降ると思う?っていうか降ってるかな。
F093:雪。岐阜の方でしょう。(うん)そう、なんか新聞見たらー、名古屋の方
は雪マークなかったけど、(うん)岐阜の方は雪マークがついてたよ。
(『名大』049)
(61) F142:***もあったんだけどね。一般入学は、(うん)一般試験は、(うん)
うーんと、何人か落ちちゃったんだよね。
F052:あ、ほんと。で、どうするって、その人たち。(うーん)2月にもう一度
受ける?ほか受ける?
F142:2月厳しいでしょう、たぶん。うーん。
F052:ほか受けた方がいいよね。 (『名大』055)
「推量」の「複合でしょ(う)」を見ると、次の表36に示すように「ね」「けど」「し」と 共 起 す る も の が 見 ら れ る が 、 そ の う ち 、「 ね 」 と 共 起 す る も の が 最 も 多 い 。 下 の 例
(62)(63)(64)はそれぞれ「推量」の「でしょ(う)」が「ね」「けど」「し」と共起するもので
ある。
表36 親しいJP同士の自然会話における「推量」の「複合でしょ(う)」の共起形式 共起形式 ね けど し 合計
でしょ(う) 31 16 4 51
(62) F098:いや、それまで、去年からね、あっ、うん、去年から、去年はね、総長裁量 って、学内の経費が取れたわけ。それでそのちょっとほら、大きなパソ、パ
54 ソコンじゃないか、コンピュータだ、買ったりしたからね、それで助かって るわけね。で、もうほとんど、あの、始めてたから。(うーん、ふん)でー、
(なるほどね)うん、いろいろやって。
F132:まあ、そういうのがあるからやはり通るってこともあるでしょうね。ま、
でもこんなこう、あの、けん、プロジェクトはやはり、あのー、科研費通 りやすいってこともあるかもしれん。 (『名大』036)
(63) F110:そうかあー。文章力ねえ。でも私、卒論のときなんてあとから見たら、わ ーすごい何書いてんだかみたいな。<笑い>あっ、卒論どうだったあ?
F136:そうそう、聞いたんだよね。(うん)したらやっぱあのときに、ちょうど、
その、私、修論は必ずその、か、返すっていうか、本人の***、(本人に 返す、うん)で、なんか、私たちのちょっと前ぐらいだと、(うん)まあ一 応返すような、まあ、あいまいっていうか。(うん)それで、今だとほんと に返してるんだけど、(うん)ちょうどその転換の時期だったらしくて、(う ん)たぶん、たぶん学校にはある(ある)でしょうけど、この間、研究室 の中で探してもらったけど、(うん)ちょっと見当たらないから。
(『名大』127)
(64) F109:うん、だから、(うん)国際機関ていっても、もっと役所っていう雰囲気が
ちょっと、結構ある。
F130:そうでしょうね。働いてる人としてもそういう意識でいるでしょうし、(う
ん)周りの人もそういう目で見たりするし。
F109:うんうん。 (『名大』112)
次に「命題確認の要求」の「でしょ(う)」である。上記の表 35と図 12から分かるよう に、親しいJP同士の自然会話における「命題確認の要求」の「でしょ(う)」はほとんど「単 純でしょ(う)」であり、「複合でしょ(う)」は1例のみである。下の例(65)(66)はそれぞれ
「命題確認の要求」の「単純でしょ(う)」と「複合でしょ(う)」の使用例である。
(65) M034:ああ、そんなのも全然だいじょぶ、俺。(はー)ああ。大体、車線変更か らできないでしょう、F004、やっぱり。
F004:だ、できてるじゃんー。
M034:ていうかしないでしょ、あんまり。
F004:してるよー。 (『名大』031) (66) F001:本当に私のメール見てないでしょうね。
M033:見てないよ。見てないよ。 (『名大』046)
次は「知識確認の要求」の「でしょ(う)」である。上述したように親しいJP同士の自然
55 会話における「知識確認の要求」の「でしょ(う)」はほとんどが「単純でしょ(う)」であり、
「複合でしょ(う)」は4例のみである。下の例(67)(68)は「知識確認の要求」の「単純でし ょ(う)」の使用例である。
(67) M013:<笑い>なんかね、俺、新婚旅行で行ったでしょ。イタリア行って、そこ で、ま、パックでっていうかさ、(うん)行ってるから、ま、その同じツア ーで行ってる人もいるわけよ。(うん)で、千葉の夫婦とさ、あの向こうで ちょっと親しくなって、(うん)やってたんだけど、その千葉のさ、だんな さんがさ、失そうしちゃったの。
M011:うそー。 (『名大』116) (68) M033:品のない言葉、僕、使わないもん。
F001:品のないとか。
M033:品がないでしょう。
F001:あるある。
M033:ない。 (『名大』046)
4例の「知識確認の要求」の「複合でしょ(う)」を見ると、いずれも次の例(69)のような
「が」と共起するものである。
(69) F020:もう、だから、ほら、四国の、ほら、夏あるでしょうが。(うん)あのと
きの盆踊りの。
F025:阿波踊り?
F020:うん、阿波踊り。 (『名大』038)
上述したように、親しいJP同士の自然会話における「念押し確認用法」の「でしょ(う)」
はいずれも「単純でしょ(う)」であり、「複合でしょ(う)」の使用はない。次の例(70)(71) はその使用例である。
(70) M034:なんか単純に頑張るかどうかだけの問題じゃないんですか?
M030:いや、そう、そうだよ。そうだよ。
M034:そうでしょう?
M030:そうだよ。 (『名大』095) (71) F099:でも、手とか冷えているよ、触ってみて。
M021:ほんと。
F099:でしょ。
M021:食べたばかりにしてはな。 (『名大』048)
56 上述したように、親しいJP同士の自然会話における「不定推量」の「でしょ(う)」は「単 純でしょ(う)」より「複合でしょ(う)」の方が比較的多く使用されている。下の例(72)は「不 定推量」の「単純でしょ(う)」の使用例である。
(72) F057:でもF121さん、基礎があるしさー、声がいいからいいよね。
F121:いや、どうでしょう。うん、でもね、先生のにも書いてあったけどー、(う ん)なんていうのかな、スラーッて通りすぎちゃってー、(うんうん)な
んかこう心をぐっとつかむものがないんだって。 (『名大』079)
「不定推量」の「複合でしょ(う)」を見ると、いずれも次の例(73)(74)のような「ね」と 共起するものである。
(73) M030:でもエンターテイメントとしてはおもしろいんじゃないかなあ。
M034:ふーん。どうなんでしょうね、おもしろいのかな。 (『名大』095)
(74) F152:(前略)出席取るわけじゃないしー。(ああ、ああ)うん。取らないことも
ないかもしれないけど、何か、うん、おやつが出るわけじゃないしー。何 か、1個、今日はオセロならオセロを延々とやって***<笑い>何てい うんでしょうね、その、あのー、だから高学年とかでー、1時間ぐらいし かいられないのに***じゃないけど、<笑い>(ふーん)半日とかいな きゃいけないじゃん、1年生とかだと。
F111:うん、うん、うん。2時とかに終わるもんねー。(うん)3時とかねー。
(『名大』107)
上述したように親しいJP同士の自然会話における「弱い質問」の「でしょ(う)」は「単 純でしょ(う)」と「複合でしょ(う)」の使用頻度が大体同じである。下の例((75)(76)は「弱 い質問」の「単純でしょ(う)」の使用例である。
(75) F004:ポー、ポポロ?
M034:あ、惜しい。
F004:アポロー?
M034:そうだ。<笑い>アポロ何号でしょうか。
F004:13号。 (『名大』092) (76) M023:なんや、それ。
F128:なんでしょう、これ。チャンチャンチャンチャン、チャンチャンチャンチ ャン、ジャン、ジャーン。はい、なんでしょう。 (『名大』087)
57 「弱い質問」の「複合でしょ(う)」を見ると、いずれも次の例(77)のような「ね」と共起 するものである。
(77) F002:焼き増ししなきゃと思ってんですけどね。ここ、DPのお店もなくなっち ゃったんですよ、この商店街。
F066:そう。ふーん、じゃあ皆さんどこに行くんでしょうね。
F002:また、1軒でき、や、やっと線路の向こうにできたんですけどね。
(『名大』032)
最後に、「丁寧さの加わった質問」の「でしょ(う)」である。下の例(78)(79)は親しいJP
同士の自然会話に使用された「丁寧さの加わった質問」の「でしょ(う)」の例である。
(78) F057:うん、じゃあ、私で書きます。いいでしょうか?
F093:はい、お願いします。 (『名大』101) (79) F115:ねー、ねー1つ言っとこう。
F008:はい、何でしょう。
F115:絶対これ会話ちゃう。 (『名大』020)