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中国の日本語教科書と中国人日本語教師に対するインタビュー

第 3 章 研究課題と研究方法

3.2 研究方法

3.2.1 使用データ

3.2.1.5 中国の日本語教科書と中国人日本語教師に対するインタビュー

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35 表17 中国人日本語教師の属性

ID 性別 年齢 教授歴 日本留学期間 調査日時

T01 男性 51 23年 1年 2017年3月13日

T02 女性 30 3年 0 2017年3月13日

T03 女性 40 17年 1年 2017年3月17日

T04 女性 38 10年 1年 2017年3月17日

T05 女性 30 5年 1年半 2017年3月22日

T06 女性 31 6年 2年 2017年3月22日

T07 女性 43 20年 1年 2017年3月28日

T08 女性 31 5年 1年 2017年3月28日

インタビュー調査は1対1の半構造化インタビューの形で行われ、質問項目は次の表18 のとおりである。

表18 中国人日本語教師へのインタビュー質問項目の概要

① 「でしょう」を教える時、どのような用法を教えていますか。

② その用法を教えるとき、中国語の「吧」と対応させて説明しますか。

③ 「でしょう」と「だろう」の関係をどのように教えていますか。

④ 学習者にとって「でしょう(だろう)」の習得は難しいと思いますか。なにか「でしょ う(だろう)」についての学習者の誤用に気づいたことがありますか。

録音したデータを逐語的に文字化した後、元の中国語を日本語に翻訳し、カテゴリー化す るため、タグをつけてデータとして用いる。

3.2.2 「ダロウ」文の分類基準

上述したように、三宅(2010a、b)では、「ダロウ」及び「ダロウカ」の各用法の定義を 明確に提示するだけではなく、「用法基盤モデル」を用い、各用法間の拡張関係も明確に 示している。日本語教育における「ダロウ」の指導法を考えるにあたり、重要な参考にな ると思われる。そこで、本研究では、収集した「ダロウ」文を基本的に三宅(2010a、b) に従って分類する。なお、三宅(2010a、b)では言及されていないが、上述したように張 (2012)では相手が既に述べたことを強調的に復唱する「ダロウ」の用法を「念押し確認用 法」としている。

「念押し確認用法」の「ダロウ」は収集したデータにも存在することが確認できた。その ため、本研究では、三宅(2010a、b)の分類に、張(2012)に指摘されている「念押し確認用法」

を追加し、収集した「ダロウ」文を次の表19に示しているように7分類する。

なお、張(2012)では触れられていない次の(14)のような単独で使用されている「ダロウ」

36 も「念押し確認用法」を表すと考えられるため、本研究では(14)のような単独で使用され ている「ダロウ」も「念押し確認用法」とする。

表19 「ダロウ」文の分類方法

疑問詞や「カ」と共起しない「ダロウ」

①推量

②命題確認の要求

③知識確認の要求

④念押し確認用法

疑問詞や「カ」と共起する「ダロウ」

⑤不定推量

⑥弱い質問

⑦丁寧さの加わった質問

(14) F099:でも、手とか冷えているよ、触ってみて。

M021:ほんと。

F099:でしょ。 (『名大』048)

さらに、「ダロウ」の用法をよりはっきり把握するために、「ダロウ」の後ろに「ね」「し」

などの表現がつかない「ダロウ」を「単純ダロウ」、それらの表現がついている「ダロウ」

を「複合ダロウ」とした。

なお、本研究では、下の(15)のような命題内容が意味不明な「ダロウ」文、(16)のような 引用表現と共起する「ダロウ」文、(17)のような固定文型としての「ダロウ」文、(18)の ような「あれ」に後続する「ダロウ」文を考察の対象としなかった。

(15) F045:ウケる。<笑い>

F160:***でしょ。 (『名大』067) (16) M035:Bさん、顔でしょうとか言いそう。

M036:やっぱ男は顔でしょうって言ったら、ぶん殴ってやろうかと。

(『名大』119)

(17) M032:そら、安いのはマウンテンだろうがロードだろうが、そ、それなりの**。

F135:え、どういう、何。 (『名大』126)

(18) F093:あのー、あれでしょう、あのー、

F123:COCOだったっけ。 (『名大』049)

3.2.3 「ダロウ」文の分類認定

前述の7種類の「ダロウ」文の中における「不定推量」「弱い質問」「丁寧さの加わった質 問」「念押し確認用法」の分類は筆者によるものであるが、認定が難しい「推量」「命題確認 の要求」「知識確認の要求」の分類は3名の日本語学を専攻とする日本語母語話者に協力し てもらい、以下の手順で分類認定調査を行った。

37 手順① 3 名の協力者に三宅(2010a)の「推量」「命題確認の要求」「知識確認の要求」の

それぞれの定義と用例を提示し、3種類の違いを理解してもらう。

手順② 3種類の違いを理解してもらった上で、収集した実際の前後文脈を含む「ダロウ」

の使用例を15例提示し、分類の練習をしてもらう。

手順③ 分類の練習を通し、3種類の違いをさらに確認してもらった上で、3名の協力者 に音声また文字データによって、その用法を判断してもらう。

手順④ 手順③で得た 3 名の協力者のそれぞれの認定結果によって、どの種類なのかを 認定する。なお、協力者の3名或いは2名の認定結果が一致する場合に、最終の 認定結果とする。

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