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初対面 JP 同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況

第 4 章 場面別に見た JP による自然会話における「ダロウ」の使用状況

4.1 初対面 JP 同士の自然会話における「ダロウ」の使用状況

4.1.2 形態別に見た初対面 JP 同士の自然会話における「ダロウ」の使用状況

4.1.2.2 初対面 JP 同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況

初対面JP同士の自然会話で使用されている53例の「ダロウ」文のうち、39例(73.6%)が

「でしょ(う)」という形態の使用例である。39 例の「でしょ(う)」を詳しく見ると、次の 表24に示すように、いずれの用法も見られるが、「推量」が圧倒的に多く、そのほかの用法 は極めて少ない。

表24 初対面JP同士の自然会話における「でしょ(う)」の使用状況 推量 命題 知識 念押し 不定 弱い 丁寧 小計 でしょ(う) 27 2 3 2 1 3 1 39

また、各用法での「でしょ(う)」は「単純でしょ(う)」なのか、「複合でしょ(う)」なの かについて見ると、次の表25のような結果を得た。

表25 初対面JP同士の自然会話における「単純/複合でしょ(う)」の使用状況 単純でしょ(う) 複合でしょ(う) 小計

推量 8 19 27

命題 2 0 2

知識 3 0 3

念押し 2 0 2

不定 1 0 1

弱い 0 3 3

丁寧 1 0 1

42 表25から分かるように、「単純でしょ(う)」という形態では、「弱い質問」以外の用法が いずれも見られるが、「複合でしょ(う)」という形態では、「推量」「弱い質問」しか見られ ない。

次に、各用法での「でしょ(う)」の具体的な使用例を提示し、より詳しく見ていく。

まず、「推量」の「でしょ(う)」である。下の例(27)(28)は「推量」の「単純でしょ(う)」

の使用例である。

(27) M024:金払っても無理でしょうね、あれ、たぶん。金払ったらできるんですかね。

M006:たぶん、いや、無理、でしょう、一般人は。

M024:んー、たとえ映画撮影といっても無理。 (『名大』062)

(28) F011:何年アメリカにおられました。

F089:12年ぐらい。

F011:12年。(はい)あっそうですか。

F089:帰ってきた、これで帰ってきたんです、先生、わたし。

F011:あっ、そうなんですか。そうしたらお父さんやお母さんはとっても喜んで、

早く帰ってきてほしかった、はったでしょう。

F089:もう帰ってこないと思ってたみたいです。

F011:あっ、そうですか。<笑い> (『名大』007)

「推量」の「複合でしょ(う)」の使用例は、次の表26に示すように19例のうち、「ね」と

共起するのは17例であり、「けど」と共起するのは2例のみである。下の例(29)(30)はそれ ぞれ「でしょ(う)」は「ね」「けど」と共起するものである。

表26 初対面JP同士の自然会話における「推量」の「複合でしょ(う)」の共起形式 共起形式 ね けど 小計

複合でしょ(う) 17 2 19

(29) M024:ああじゃ、オリジナルっていう本は存在するんですか、それは。竹取物語 にしても***。

M006:んー、たぶんあるんでしょうねー。何か、あの、グリムあたりの話とか。

(『名大』062)

(30) F089:はーっ、そうですか。じゃ、考え方が根本的に違うんですねー。

F011:まあね。そうやね。(***っていう)うん。まあ、それはいろいろでしょ

うけど。その中でも、そのほか【た】、みんながみんな同じじゃないでしょ うけど。でもまあいろいろそういうふうなこう、あの、(ですねー)考え方 はいろいろあるみたいなんで。(うん) (『名大』007)

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次に「命題確認の要求」の「でしょ(う)」である。下の例(31)は初対面JP同士の自然会

話における「命題確認の要求」の「でしょ(う)」の使用例である。

(31) F122:京都も何かたまーに積もるんでしょう。

M006:たまに積もりましたね。年に2回ぐらい、数センチですけど。(『名大』063)

次に「知識確認の要求」の「でしょ(う)」である。下の例(32)は初対面JP同士の自然会 話における「知識確認の要求」の「でしょ(う)」の使用例である。

(32) M006:実家とか帰りますか。

F122:はい、一応帰ります。(うん)帰るとね、何もできないしねー。

M006:ああー、そうですね。(うん)うちはもう、パソコンもないから。

F122:そうそう。インターネットもつなげないですしね。(んー)で、ゆ、しかも 雪降ってるでしょう。(はあ)で、1回うちに帰ってしまうともう出られな い。 (『名大』063)

次に「念押し確認用法」の「でしょ(う)」である。下の例(33)は初対面JP同士の自然会 話における「念押し確認用法」の「でしょ(う)」の使用例である。

(33) F089:みんな、いい人ですね、ここ。

F011:いい人でしょう。

F089:うん。なんか、うん、そうなんです。 (『名大』007)

次に「不定推量」の「でしょ(う)」である。下の例(34)は初対面JP同士の自然会話にお ける「不定推量」の「でしょ(う)」の使用例である。

(34) F074:もうなんか、どこ住んでんの?とか言われて、藤沢とか言うとみんなよくわ かんないんで、もうなんか、じゃーあ、もういっそ笑いを誘うじゃないけど、

湘南?とか言って、ま、ね、とか言って、<笑い>海の近くから、とかって 格好つけてみたりしてもなんか笑われるだけ。

F087:湘南っていうとなんかでもかっこいい感じが。

F074:ねー、どうなんでしょう。 (『名大』054)

次に「弱い質問」の「でしょ(う)」である。初対面JP同士の自然会話で使用された「弱 い質問」の「複合でしょ(う)」の使用例を見ると、いずれも(35)のような「ね」と共起する ものである。

44 (35) F078:(前略)だからドクター普通大学で行った方がいいよーとか言われててー。

(そっかー)どうなん、え、どうなんでしょうねえ。

F122:ねえ。何かもうドクターに行く気がなくなった時点で全然そういうの調べ てなかったから、(ええ)わからないけど。 (『名大』064)

次に「丁寧さの加わった質問」の「でしょ(う)」である。下の例(36)は初対面JP同士の 自然会話における「丁寧さの加わった質問」の「でしょ(う)」の使用例である。

(36) F011:あっ、そうなんですか。アメリカへ?

F089:先生のときもそういうのありました?あのー、何か、フランス語、フランス とかもあるんでしょうか、わからないんですけど、アメリカはそのときはちょうど 1校だけだったんですけども、わたしの次の次の年ぐらいから3校ぐらいに増え て、トロント大学とかいろいろ。 (『名大』007)

以上、初対面JP同士の自然会話における「ダロウ」を用法別・形態別に分析した。用法 別に見た結果、全体的に、初対面JP同士の自然会話では「推量」が圧倒的に多く使用され ており、「不定推量」も比較的多く使用されているが、そのほかの用法は極めて少ないこと が分かった。また、形態別に見た結果、「だろ(う)」という形態では、「不定推量」「推量」

は見られるがそのほかの用法は見られない。「でしょ(う)」という形態では、「推量」が圧倒 的に多く、そのほかの用法は非常に少ない。さらに、各用法で使用された「ダロウ」が「単 純ダロウ」なのか「複合ダロウ」なのかを見るため、「だろ(う)」「でしょ(う)」をまとめて 次の表27と図8のような結果を得た。

表27 初対面JP同士の自然会話における「単純/複合ダロウ」の使用状況 単純だろ(う)

(%)

複合だろ(う) (%)

単純でしょ(う) (%)

複合でしょ(う) (%)

小計 (%)

推量 0 4(12.9) 8(25.8) 19(61.3) 31(100)

命題 0 0 2(100) 0 2(100)

知識 0 0 3(100) 0 3(100)

念押し 0 0 2(100) 0 2(100)

不定 10(90.9) 0 1(9.1) 0 11(100)

弱い 0 0 0 3(100) 3(100)

丁寧 0 0 1(100) 0 1(100)

表27と図8から分かるように、初対面JP同士の自然会話では、「推量」「弱い質問」は主 に「複合でしょ(う)」によって表されている。具体的に言えば、主に「でしょうね」によっ

45 て表されている。「命題確認の要求」「知識確認の要求」「念押し確認用法」「丁寧さの加わっ た質問」は「単純でしょ(う)」のみによって表されている。「不定推量」は主に「単純だろ (う)」という形態によって表されている。

図8 初対面JP同士の自然会話における「ダロウ」の各用法の使用形態

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