第 7 章 総合的考察
7.2 第二言語習得の観点からの考察
7.2.3 視点の効果的な指導法のモデル
視点の指導において、学習させたい内容を学習者自身に気づかせることが視点の意識化 に効果があることは確認できた。〈気づき重視〉指導法の教室では、学習者が受身的に学習 するのはなく、能動的に授業に参加し、提供された課題を学習者自身で考えたり分析した りしなければならない。教師は、学習者の気づきの補助者として、適切な課題作成をした り、学習者の考えを促進するための進め方を考えたりする準備が必要である。また学習者 は、視点について言語形式的なものにしか気づくことができないため、視座のような意味 的なものを気づかせるためのフィードバックの方法も考えておかなければならないだろう。
学習者主体型ではあるが、教師は、授業を全て学習者に任せるのではなく、学習者の言 動に気を配らなければならない。学習者には、まず自分一人の力で言語形式の違いなど、
具体的に目で見てわかることに気づかせる。次にグループで、そして最後に全員で言語形 式の情報を共有する。この時、教師は、学習者が何に気づき、何に気づかなかったかを見 極める。そして学習者自身が気づくことができない意味的な違いなど、抽象的なものを教
152 師がフィードバックで介入することにより導き出す。こうした教師の非明示的介入は、学 習者の気づきをより促進したり、気づきの内容を深めたりすることができる。さらに、本 研究の結果から、視点の問題の中に学習者が気づいても産出できないものがあり(視座)、 このようなものは、教師の明示的説明があると産出できるようになることがわかった。教 師の明示的な説明も視点の指導には必要不可欠だと考えられる。そこで気づきの指導が終 わった後に、教師は、学習者の気づきをもとに明示的説明を行う。
具体的に教師がどのようなことを行うべきか、その仕方でどのような効果があるかは、
以下の指導法モデルの図7-2で示す。
〈図7-2の説明〉
モデルの最初は、学習者に気づかせる段階である。一人で考えさせてからグループディ スカッションを行うと、学習者一人では気づかなかった視点表現や主語の言語形式的な相 違を共有することができる。この言語形式的な相違をクラスの全員に共有させ、教師が非 明示的介入をすることによって言語形式的相違の理由や意味的な相違を学習者に認識させ ることができる。非明示的介入を行った後に、教師の明示的説明を行う。明示的説明は、
学習者が既に知っている既知言語形式69の相違やその意味をより深く学習者に理解させる ための段階である。説明をすることにより、学習者が知らない未知のこと(主語の一貫性・
明示性や視座の概念など)への認識と理解を深めることもできる。
69 言語教育では、既習(既に学習した)と未習(学習していない)ということばがよく用 いられる。本論文は、学習者が既に知っていることを「既知」、知らないことを「未知」と 表し、「既習・未習」より広い意味で扱っている。
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が
言語形式の認識
個人→グループ間 (少人数)
既知言語形式の認識・理解の深化 未知項目の意味認識・理解の深化
未知概念の認識・理解の深化 言 語 形 式
相 違 へ の 注意
意味の認識 個人→クラス全員
意味の理解 クラス全員 言語形式の情報共有
個人→クラス全員
教師による明示的介入
気づき(学習者中心)
学習者に一人で考えさせる グループでディスカッションさせる 教師によるフィードバック(非明示的介入)
説明(教師中心)
学習者に起こったこと 教師がすること
図7-2 視点の意識化を促進するため効果的指導法-気づきを重視する〈学習者主体〉モデル
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