• 検索結果がありません。

第 6 章 研究 3-視点の指導法―〈気づき〉を重視する指導法の効果

6.3 実験の概要

6.3.3 実験の手順

104 図6-1 遅延テスト用の資料-資料④

105

① 一人での〈気づき〉

資料①(表6-2)を配布し、5分間読ませ、その後学習者一人ずつに気づいたことを 書かせた。

② グループディスカッションでの〈気づき〉

学習者一人で気づいたことを書かせた後に、5人ずつのグループを作り、再度資料

①を1グループに1枚配布し、グループディスカッションを行い、そこで気づい たことを記入させた。グループでのディスカッションをICレコーダーで録音した。

③ 指導者の非明示的介入(フィードバック)による〈気 づき〉

グループのディスカッションで気づいたことをグループごとに書かせた後、教師が クラス全員に向けてフィードバックを行った。フィードバックでは、グループディス カッションで気づいたことを発表し合い、さらにディスカッションで気づいたことの 他に、何かきづきはないか、指導者(研究者)がフィードバックの形で質問し、確認 した。フィードバックも、指導後に内容が分析できるようにICレコーダーで録音した。

全ての活動が終わった後、資料③(図5-2)を配布し、産出文章を書かせた。

学習者が一人ずつ書いた記録と、グループディスカッションごとで書いた記録及び録 音データ、フィードバックの録音データをもとに各段階における〈気づきの内容〉を分析 した(本章の6.5.1参照)。

本研究で扱う〈気づきの内容〉もしくは〈学習者が気づいた内容〉とは、学習者が日 本語母語話者の書いた文章とベトナム人学習者の書いた文章を読んで、両文章の違いにつ いて調査用紙(資料①・図6-2)に明確に書いたり、グループディスカッションで発言し たり、フードバックで指導者の質問に答えたりした内容である。

(2) 説明

〈説明のみ〉群に対しては、視点の説明用の資料②(表6-3)を配布し、指導者(研究者)

が日本語の視点の概念を説明し、例文を実験群と一緒に分析した。その後、資料③(図 5

-2)を配布し、産出文章を書かせた。

(3) 結合

〈結合〉群に対しては、〈気づきのみ〉のグループと同じことを実施した後に、説明を行っ た。それが終わった後、資料③(図5-2)を配布し産出文章を書かせた。

106 6.3.3.2 直後テスト(直後産出)

各グループともに、指導を行った後に資料③(図5-2)を配布し、30分程度で物語描写 文章を書かせた。指導を受けていない統制群の文章と母語話者の書いた文章を比較するた め、アウトプット段階の進め方は、研究2の産出調査と全く同じである。また、研究2と 同様に語彙レベルではなく、談話レベルで産出文章を検討するため、辞書を使っても注意 しないことにした。

6.3.3.3 遅延テスト(遅延産出)

視点問題の意識が学習者に残っているかどうかを検討するために、実験調査の3か月後、

遅延テストを行った。テストの進め方は、実験直後のアウトプットと同様に学習者に漫画 描写の資料④(図6-1)を配布し、30分程度で書かせた。テストの前に、視点の問題につ いては触れなかった。

6.3.3.4 フォローアップ・インタビュー

直後テストと遅延テストの産出文章を比較した後、学習者がどの程度指導の内容を覚え ているか、どのように視点について意識をしているのかを把握するために、実験群の中か ら9名(実験群1:3名、実験群2:3名、実験群3:3名)を選び、基本的にベトナム語 で53フォローアップ・インタビューを実施した。インタビューの対象者として選んだ基準 は、次の通りである。

・直後テストと遅延テストの文章における視点の表し方がほぼ同じ (S1)

・直後テストと遅延テストの文章における視点の表し方が異なる

+直後テストの文章のほうが母語話者の文章に近い (S2)

+遅延テストの文章のほうが母語話者の文章に近い (S3)

インタビューの主な内容は、「主語や視点表現を用いた理由について」「文章を書く際 の視座の意識について」「視点全体の意識について」である。具体的には、以下のような質 問をした。

Q1:どこから描写したか覚えていますか。

Q2:どうしてここに、本動詞ではなく授受表現/受身表現/移動の補助動詞を使ったの ですか

Q3:どうしてここに主観表現/感情表現を使ったのですか。

Q4:この文の主語は何ですか。どうして主語を省略したのですか。

Q5:「視点」の授業についてどんなことを覚えていますか。

53 実際に学習者がベトナム語でうまく表現できないこともあるため、日本語と混ざった 場合が多い。

107 インタビューの内容は、レコーダーに録音した。

6.3.3.5 実験手順のまとめ

指導の段階からフォローアップ・インタビューの段階までの過程は、以下の図6-2の通 りである。

一人

教師による明示的説明

一人

グループディスカッション グループディスカッション

教師による非明示的介入

教師による非明示的介入

教師による明示的説明

直後産出

遅延産出

フォローアップ・インタビュー

6-2 調査手順図

実験群1(気づきのみ) 実験群2(説明のみ) 実験群3(結合)

108