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第 2 章

2.2.3 複合 語の親 密度

大 人 を 被 験 者 と し た 心 理 実 験 で は 語 幹 レ ベ ル の 複 合 語 で あ っ て も 、 名 詞 の組 み 合 わ せ 方 に 応 じ て 被 験 者 の 理 解 の 程 度 に 隔 た り が あ る こ と が 観 察 さ れ て い る 。

34 本 節 で は 、 名 詞 複 合 語 を 意 味 関 係 及 び 親 密 度 の 観 点 か ら 考 察 し 、 先 行 研 究 の 分 析の 妥 当性を検 証 する。

英 語 を 母 語 と す る 大 人 を 被 験 者 と し た 先 行 研 究 で は 、 名 詞 複 合 語 の 理 解 の程 度 や 反 応 時 間 に 隔 た り が あ る こ と を 説 明 す る た め に 大 別 し て 二 通 り の 分 析 が提 案 され て おり、一 つ は Gangé and Shoben (1997) の CARINモデ ル (Competition

Among Relations in Nominals) である。CARINモデルの詳細について述べる前に、

右 側 主 要 部 の 内 心 複 合 語 が (日 本 語 の よ う な 生 産 的 な 言 語 で は) 形 態 論 (及 び 統 語論) と 語用 論の イン ター フェ イスに 関 わる現 象であるこ とを確 認する。

内 心 複 合 語 で は 第 二 要 素 の 名 詞 が 主 要 部 で あ る が 、 こ れ は 語 構 造 内 の 特 性で あ る。 第 1 章で考察し た (3a-b) を以 下 に再掲 する。

(50) a. リンゴジ ュ ース b. リンゴ ジュー ス レシ ピ ei ei

リンゴ ジュー ス ジュース レシピ ei

リ ン ゴ ジュース

(50a-b) にお いて それ ぞれ 構造 上 、 右方に 導 入され る「ジュー ス」と 「レシ ピ」

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に 投射 (あ るい はラ ベル 付け) が 適 用され る ことで 範疇が決定 する。つま り、「リ

ンゴジュース」は「ジュース」の類、「リンゴジュースレシピ」は「レシピ」の 類 を 表 す こ と が 語 構 造 に 依 存 し て 導 き 出 さ れ る 。35 一 方 、 内 心 複 合 語 に お け る 第 一 要 素 は 修 飾 語 で あ る が 、 複 合 語 全 体 の 解 釈 に 関 わ る 意 味 関 係 (semantic relationships) は どの よう に決 定 され る のであ ろ うか 。 次 例 (51) を 考 察 し よ う 。

(51) a. リンゴジュース (材料)、リ ン ゴタル ト (材料)

b. リン ゴ農 園 (対 象)、リン ゴ ピーラ ー (対象) c. リ ンゴ風船 (?)、 リン ゴ 男 (?)

(51a-c) は いずれも修飾 語 として「 リ ンゴ」を 含む複合語 であり 、『広辞 苑』に 記

載 され て いない点 で 共通し て いるが、(51a-b) と (51c) には明確な差異が存在す る。例えば、(51a) の「リンゴジュ ース」における「リンゴ」は「材料」として、

(51b) の「リンゴ農園」におけるそれは「対象」として解釈するのが最も自然と

考 え ら れ る が 、 こ れ ら の 例 は い ず れ も 『 広 辞 苑 』 に 記 載 さ れ る ま で に 至 っ ては い な い も の の イ ン タ ー ネ ッ ト で 検 索 す る と 多 数 の 例 が 観 察 さ れ る こ と か ら 、ほ ぼ 語彙 化 している (つまり、常に同じ意味関係として解釈される、あるいは同じ 意 味関 係 を意図し て 用いら れ る) と 言って 差 し支え ないであろ う。36, 37

で は 、(51c) の「リンゴ風船」や「リンゴ男」はどのように解釈されるのであ ろ う か 。 少 な く と も 筆 者 に と っ て こ れ ら の 複 合 語 は (51a-b) の 例 に 比 べ て 耳 慣 れ ない 複 合語であ る が、「*犬育て」や「*本持ち」のような動詞由来名詞複合語 に 見 ら れ る 非 文 法 性 は 感 じ ら れ な い 。 こ こ で 大 切 な こ と は 、 名 詞 複 合 語 に おけ る 修 飾 語 は 副 詞 的 要 素 で あ る 付 加 詞 で あ り 主 要 部 と の 間 に 動 詞 と 内 項 の よ うな 特 定の 文 法関係を 持 たない た め、語 幹 レベル (及び単純語 同士の 語根レベル) で は 二つ の 名詞に単 語 の種類 な どを問 わ ず自由 に 併合が 適用できる ことで ある。

38 例 え ば 、(51c) の 「 リ ン ゴ 男 」 は 単 純 語 同 士 が 語 根 レ ベ ル で 併 合 さ れ て で き る 複 合 語 で あ る が 、 第 一 要 素 の 「 リ ン ゴ 」 は 漢 語 、 第 二 要 素 の 「 男 」 は 和 語で あり、両者は単語の種類で異なっている。しかし、「リンゴ」は付加詞として分 析 可 能 な こ と か ら 、 主 要 部 で あ る 「 男 」 と 併 合 し て も 不 適 格 と 判 断 さ れ な いこ と が 導 か れ る 。 ま た 、 修 飾 語 と 主 要 部 の 意 味 関 係 は 項 構 造 の 反 映 で あ る 動 詞由

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来 名 詞 複 合 語 と 異 な り 、 実 際 に 使 用 さ れ る 文 脈 や 頻 度 に 依 存 し て 決 定 さ れ る。

つ まり 、 複 合語 全 体 の 意味 は 、(少な く とも 新 語 を解 釈 す る 際は) 形 態 論 レベ ル で は な く 語 用 論 レ ベ ル で 決 定 さ れ る 。39 名 詞 複 合 語 の 本 質 は 他 の 語 彙 化 表 現 と 同様に、名付け機能 (naming function) であ る ことが知 られて いる。例えば、「 リ ンゴ風船」は「リンゴの形をした風船」のように「形」として解釈する (ある い は 意図 し て用いる) こ とも でき る し 、「 リ ンゴの模 様が入 った風船」のように「特

徴/所 有(物)」として解釈することもできる。40 (51c) の例は (51a-b) の例 に比 べ

て 大 多 数 の 人 に と っ て 聞 き 慣 れ な い 複 合 語 で あ る と 思 わ れ る が 、 両 者 の 容 認度 を 分 け 隔 て て い る の は 適 格 か 不 適 格 か 、 と い う 二 者 択 一 的 な も の で は な く 、ど れ だ け コ ミ ュ ニ テ ィ に 浸 透 し て 語 彙 化 し て い る か ど う か で あ る 。 新 語 の 形 成は 文 脈 上 の 要 請 に よ っ て 行 わ れ る も の で あ り 、 必 ず し も 語 彙 化 を 前 提 と し て 行わ れ るわ け ではない 。41

他方、フランス語のような言語では生産的な新語の形成が認められないため、

歴 史 的 な 名 残 と し て 語 彙 化 し た 複 合 語 の み が 存 在 す る (Roeper, Snyder, and Hiramatsu 2002 な ど)。

(52) a. homme grenouille lit. ‘man frog’ = ‘undersea diver’

(Roeper, Snyder, and Hiramatsu 2002: 2) b. homme orchestre lit. ‘man orchestra’ = ‘a man who plays many instruments at once’ (Nicoladis 2001: 636)

フ ラ ン ス 語 の 複 合 語 で は 第 一 要 素 が 主 要 部 、 第 二 要 素 が 修 飾 語 で あ る が 、 例え

ば (52a) の homme grenouille は「(海中 の) 潜水夫」 が唯一 の解釈であ り、 「 カ

エ ルが 好 きな男」などを 意 味する こ とはで き ない。このよう に、複合語 (大半 は 新 語) に 多 様な 解釈 が可 能か どう か に は 言語間で 違いが 観察され、複合語形 成の

(非)生 産 性と多様な 解 釈の可 否 には相 関 が見られ る。

話 を Gangé and Shoben (1997) の CARIN モデルに戻そう。英語は日本語と同様 に 、複 合 語 形 成が 生 産 的な 言 語 と して 分 類 され 、(53) に 示 さ れ るよ う に 新 語 に は 複数 の 解釈が可 能 である 。

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(53) giraffe pencil = ‘a pencil that HAS a picture of a giraffe on it ’

= ‘a pencil which is used FOR drawing a giraffe’ etc.

英 語の 新 語を解釈 す る場合 も 、話 し手/書き 手 が意図 した解釈を 聞き手/読 み手 が 文 脈を 頼 りにして 判 断する こ とにな る。以 上 の言語事 実を踏 まえた上で 、Gangé

and Shoben (1997) は 意味 関係 の 差 異が新 語 を解釈す る際の 難易度に影 響す ると

提 案す る 。 具体 的 に は 、(主 要 部 では な く) 修飾 語 の 最も 頻 度の 高 い 意味 関 係 は 頻 度が 低 いそれに 比 べて容 易 であり 、 解釈に 至 る反応 時間が短い という CARIN モ デル を 提案する (Gangé and Shoben 1997: 74)。次 例 (54) を考察しよ う。

(54) a. mountain cabin, mountain scream, mountain goat, mountain resort b. mountain magazine

(54a-b) は い ず れ も mountain を 修 飾 語 と し て 含 む 複 合 語 で あ る が 、Gangé and

Shoben (1997) によれば、コーパスによる調査の結果、mountain が 複合語 の修 飾

語 とし て 用いられ る 場合に 最 も頻繁 に 用いら れ る意味 関係は「場所 」である が、

(mountain を含 む) あ らゆ る名 詞 が 修飾語 と して用い られる ときに、各 々の 意味

関 係 が ど の く ら い 用 い ら れ る か 、 と い う 頻 度 に 関 す る 情 報 が 意 味 素 性 の 一 部と し て 辞 書 に 登 録 さ れ て い る 。 従 っ て 、 無 標 と し て 登 録 さ れ て い る 「 場 所 」 とし て 解釈 す るのが最 も 自然な (54a) の mountain cabin など は、解 釈に至るま での 時 間が 短 くて済む 。他 方 、mountain が「 対象」 として用 いられ ることはほ とん ど なく 有 標である た め、(54b) の mountain magazinemountain cabinなどに比べ て 解 釈 に 至 る ま で に 時 間 が か か る と 説 明 さ れ る 。42 主 要 部 よ り も 修 飾 語 の 方 が 解 釈す る 際の難易 度 に影響 す ると Gangé and Shoben (1997) が仮定す る背景 には、

英 語 や 日 本 語 な ど で は (例 外 を 除 き) 第 一 要 素 で あ る 修 飾 語 (の 音 韻 情 報 ま た は 視覚 情 報) が 主要 部に 先行 して 脳内で 処 理され るため、修飾語の意 味に関 する 情 報 に 呼 応 し て 脳 が 主 要 部 の 処 理 に 先 行 し て 賦 活 す る と い う こ と が あ る 。 賦活 し た 脳 内 の 修 飾 語 に 関 す る 意 味 情 報 が 後 に 主 要 部 の 意 味 の 観 点 で 評 価 さ れ 、最 終的に「場所」、「対象」のような意味関係が決定する (Šteakauer 2009)。

こ の よう な CARIN モ デル のも とで、Gangé and Shoben (1997) は 英語を 母語 と

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す る大 学 生 (49 名) を 被験 者 と して 複 合 語 の理 解 に 至る ま で の 反応 時 間 を調 査 す る実 験 を行った 。 その結 果 、同じ 修 飾語 (e.g. mountain) を含む複 合語で も、

最 も頻 度 が 高 い意 味 関 係で 解 釈 す るの が 自 然な 複 合 語 (e.g. mountain cabin) の 方が、 その 他の意 味 関係で 解釈 するの が 自然な 複合 語 (e.g. mountain magazine) よ りも 解 釈に至る 時 間が統 計 的に有 意 に短い こ と を観察して いる。43 Gangé and

Shoben (1997) は、 文レ ベル の表 現と同 様 に無限に 存在す る名詞複合 語を一 様に

分 析 す る の で は な く 、 従 来 の 言 語 獲 得 研 究 で は 一 般 に 考 察 の 対 象 と さ れ て こな か っ た 意 味 関 係 の 観 点 か ら 分 類 ・ 分 析 し 、 実 証 的 な 研 究 を 通 し て 具 体 的 な 提案 を 行っ た 点で画期 的 であっ た 。

他 方 、 複 合 語 の 難 易 度 や 反 応 時 間 の 隔 た り を 説 明 す る た め の も う 一 つ の 主 要 な 立場 は Wisniewski and Murphy (2005)、Murphy and Wisniewski (2006) に よる ア ン ケー ト に基づく 親密 度 (familiarity) の 観 点からの 複合語 の分類・分析 である。

天 野・ 近 藤 (1998; 1999; 2003) に よれば 、 新密 度は 以下のよう に定義 される 。

(55) 新 密 度: あ る 語 が ど の 程 度 馴 染 み が あ る と 感 じ ら れ る か を 表 し た 主 観 的 評 定値 のこ と 44

心 理言 語 学的実験 や 脳科学 的 実験で は 、被験 者 の言語 能力に加え て刺激 の (音 声・意味などの) 性 質が結 果 に影響 し うるこ とが知られ るが、頻度と 同様に 親密 度 は 後 者 に 分 類 さ れ る 。 こ こ で 留 意 し な け れ ば な ら な い こ と は 、 親 密 度 に はあ る 語 が 日 常 生 活 に お い て ど の 程 度 用 い ら れ て い る か を 被 験 者 自 身 が 適 切 に 認識 し て い る か と い う 心 的 側 面 が 関 わ っ て お り 、 彼 ら の 言 語 知 識 や 経 験 を 直 接 反映 し てい る と考えら れ る点で あ る (横 川 2006)。 他方、天野 ・近藤 が指摘する よう に 、 語 の 頻 度 は コ ー パ ス を は じ め と す る 言 語 資 料 に 基 づ く 客 観 的 尺 度 で あ り、

語 (や文) の産出・処理に対して間接的な関わりしか持たないと考えられる。従

っ て 、 親 密 度 の 観 点 か ら 語 の 産 出 ・ 処 理 を 考 察 す る こ と は 被 験 者 の 主 観 的 観点 か ら語 の 性質を考 察 する上 で 重要と な る。

筆 者 が 知 る 限 り 日 本 語 に お け る 多 様 な 複 合 語 の 親 密 度 を 調 査 し て い る 先 行 研 究 は 皆 無 で あ る が 、 単 純 語 の 親 密 度 に 関 し て は 、 例 え ば 奥 村 ・ 北 村 ・ 栗 本 ・水 田 (2011) は国立国語研究所 (2001) で 挙 げられて いる名 詞 (61語) を8~9歳 の

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子 供 (14名) を 対象 に4段 階 (4: よ く 知って い る 1: 知らな い) で評 価させ て 親 密度 を 考察 してい る 。45 以 下 に奥村 他 (2011: 14) が挙げている親密 度が 高い 語 と 低い 語 の例を示 す 46

(56) a. 親 密度 が高い語:

e.g. あさ (朝)、うし (牛)、え き (駅)、あ たま (頭)、 つくえ (机)

おおか み (狼)、こと ば (言葉)、えん とつ (煙突)、 ともだ ち (友達) b. 親 密度が低い語:

e.g. きんがく (金額)、 とびう お (飛魚)、か くれが (隠れ 家) ちか どう (地下 道)、 お んじん (恩 人)、くう ふく (空腹)

こ こ で 複 合 語 の 親 密 度 に 目 を 向 け る と 、 複 合 語 の 親 密 度 は 日 常 生 活 に お い て見 聞 きす る 二つの名 詞 の個々 の 馴染み 深 さ (やそれ らの和) ではなく、複合語を構 成 す る 二 つ の 名 詞 の 組 み 合 わ せ と し て ど の 程 度 馴 染 み が あ る か と 言 う こ と がで きる。例えば、「リンゴ農園」と「リンゴ風船」 は「リンゴ」を修飾語として含 む 点で 共 通してい る が、「 リン ゴ 」の親密 度 自 体はこれら の複合 語の親密 度の決 定 に直 接 的に影響 し ない。「リンゴ + 農園」、「リンゴ + 風船」のように二つの 名 詞の ま とまりが 親 密 度 の評 価対 象 と なる点 に注意する 必要が ある。

話 を Murphy and Wisniewski に戻そう。彼らが CARINモデル を採用せずに親密

度の 観 点か ら複合 語 を分析 す る主だ っ た理由 と して、以 下の二 点が挙げら れる。

(57) a. 意味関係の頻度 は 日常生 活 にお いて 見 聞きす る親密 な複合 語の言 語入 力

を通 して 辞書 に登 録 さ れ る もので あ るが、Gangé and Shoben (1997) にお い て 使 用 さ れ て い る 刺 激 は 二 つ の 名 詞 を 恣 意 的 に 組 み 合 わ せ て 作 成 し ているため、全ての刺激が被験者にとって親密かどうかが明らかではな い。また、刺激の意味関係の頻度が、日常生活における意味関係の頻度 と相 関し てい るか どう か が明 ら かではな い。

b. Gangé and Shoben (1997) の刺激には親密と思われる複合語 (e.g. cream

sauce) と親密ではないと思われる複合語 (e.g. plastic crisis) が含 まれ て

いるため、意味関係ではなく親密 度 が 結果に影響 してい る可能性が ある。

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Murphy and Wisniewski が (57a-b) で 強調し て いるの は複合語の 親密 度 が解釈の

難 易 度 に 与 え る 影 響 で あ る 。 つ ま り 、 頻 度 の 高 い 意 味 関 係 で 解 釈 さ れ る 複 合語 ほ ど難 易 度が低い 可 能性が あ るのと 同 様に、Gangé and Shoben (1997) の実験に お い て 複 合 語 の 親 密 度 が 解 釈 の 難 易 度 (最 終 的 に は 反 応 時 間) に 与 え て い る 可 能 性 も 存 在 す る 。 親 密 度 が 結 果 に 与 え る 影 響 を 最 小 限 に す る に は 、 実 験 で 用い る 刺 激 を 日 常 生 活 で 見 聞 き す る よ う な 親 密 な 複 合 語 に す る な ど し て 刺 激 を 統一 し なけ れ ばならな い 。

こ の よう な背景 を 踏まえ 、例 え ば Wisniewski and Murphy (2005) で はGangé and

Shoben (1997) で用 い られた 刺 激を使 用 して英 語 を母語 とする大学 生を被 験者

(30 名) と して複合 語 の親密 度 が 解 釈 の難易 度 に与え る影響につ いて調 査・考察 し てい る 。47 彼 らの 実験 で Gangé and Shoben (1997) のそれと決定的に 異なる のは、第三者の大学生 (28 名) に 複 合 語の親 密 度を評価さ せて下 位タイプに 分け、

そ の分 類 に基づき 被 験者の 複 合語を 解 釈する ま でに至 る時間を分 析して いる点 で ある 。 分析の結 果 として 、Wisniewski and Murphy (2005) は 親密 度の 高いタ イ プ ほど 反 応時間が 有 意に短 い ことを 指 摘し、 親 密 度に基づく 分析の 方が意味関 係 に基 づ く分析よ り も反応 時 間 (の 短さ) と 強い相関が 観察さ れたことな どを 根 拠に 、 親密度 に 基づ く分 析の 方 が 優れて い ると論じ ている 。

で は 、 日 本 語 の 名 詞 複 合 語 の 知 識 の 獲 得 を 調 査 ・ 考 察 す る た め の 実 験 デ ザ イ ンを考えたとき、先に概観した二つの分析ではどちらが適しているであろうか。

Wisniewski and Murphy (2005) が指 摘 すると お り、Gangé and Shoben (1997) の 実 験 に お い て 親 密 度 が 結 果 に 影 響 し て い る 可 能 性 は 排 除 で き な い が 、 刺 激 を 親 密 度 が 高 い 複 合 語 で 統 一 す る な ど し て 親 密 度 に 関 わ る 変 数 を 最 小 限 に と ど め れ ば 、 日 本 語 を 調 査 対 象 と し た 場 合 も 意 味 関 係 の 頻 度 に 基 づ く 実 験 デ ザ イ ン を 援 用 す る こ と は依 然として有 意 義と思 わ れるし かし、刺激を親密 度 が高いもので統一 した場合、「リンゴジュース」のように『広辞苑』に記載 されて いなく ても意 味 関 係 が 確 立 さ れ て い る 点 で 被 験 者 に と っ て 馴 染 み の あ る 複 合 語 の み が 使 用 さ れ る こ と が想 定される。その よ うな 場合、被験者 が (親密度 の高い 複合語を辞 書に 登 録 し て い る た め) 言 語 計 算 や 文 脈 情 報 を 用 い て 主 要 部 の 同 定 や 意 味 関 係 の 選 択 を し て い る と は 考 え に く く 、 被 験 者 の 複 合 語 の 知 識 を 厳 密 に 測 定 で き な い 、