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第 4 章

名詞複合語の獲得 5. 2 フ ランス 語の名詞複 合語と 類似表 現

5.4 刺激と 実験手 続き

日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル を 被 験 者 と し て 実 施 し た 意 味 判 断 課 題 で 用 い た 刺 激 (計 6 リ スト 84 種類) を その まま 使 用 した。 従 って、前 章で説 明したよう に 刺激は

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語 幹 レ ベ ル で 形 成 さ れ る 複 合 語 、 及 び 語 根 レ ベ ル で 単 純 語 同 士 の 併 合 に よ って 形 成さ れ る 複合 語 が 含 まれ る 。 両者 の 具 体 例と し て 、前 章 の (3) を 以下 に 再 掲 す る。

(7) a. 語幹 レベ ル の 複合語 (50 種類)

e.g. 花火橋、玄 関 ねこ(猫)、 学校ガ エ ル(蛙)、玉 葱サラ ダ

b. 語根レベルの複合語 (34 種類)

e.g. バナ ナワ ニ、 ゴリ ラ ゾウ(象)、雷雲 、 プリンヨー グルト

同様に、各々の刺激には大人を対象としたアンケート結果に基づいて 親 密度 (高 /中/低) と 支配的な 意 味関係 が それぞ れ 設定さ れている。 親密度 に基づいて 分類 さ れた 刺 激の具体 例 と、各々 の支 配 的な意 味 関係を 示した 前章の表 4.1 を以下に 再 掲す る 。

5.1 刺激の サン プル

複 合語 親 密度 支配 的な意 味関係 玉 葱サ ラダ 高 材料

と んか つ弁当 高 所有 雷雲 高 原因 玄 関ねこ 中 場所 キリ ン鉛筆 中 形 ヨー グルトプ リン 中 材料 海 たん ぽぽ 低 場所 ス イカ ピザ 低 所有 ジ ュー スぶ どう 低 用途

前 章で 考 察したよ う に、本論文 で は (モ ノ リンガル である か、バ イリン ガルであ る か を 問 わ ず) 親 密 度 が 高 い 複 合 語 が 日 常 生 活 の 頻 度 や 学 習 に 基 づ い て 辞 書 に 機 械 的 に 登 録 さ れ る 一 方 、 親 密 度 が 低 い 複 合 語 の 産 出 ・ 処 理 に は デ フ ォ ル ト値 と し て の 言 語 計 算 が 関 与 す る と 考 え る 。 こ の 分 析 が 正 し け れ ば 、 日 仏 バ イ リン

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ガ ル は 辞 書 に 機 械 的 に 記 憶 し て い な い 親 密 度 が 低 い 複 合 語 (e.g. 海 た ん ぽ ぽ) ほ ど 環 境 要 因 (フ ラ ン ス 語 の 前 置 詞 句 に よ る 修 飾 を 含 む 名 詞 句 な ど の 入 力) の 影 響 を 受 け や す く 主 要 部 の パ ラ メ ー タ 値 を 誤 っ て し ま う こ と が 予 測 さ れ る 。従 って、親密 度 が低 い (あ る いは標 準 的な) 複 合 語も刺 激に含める ことが 実験デザ イ ン上 不 可欠であ り 、本章 に おけ る 重 要な論 点となる。

日 仏 バ イ リ ン ガ ル を 対 象 と し た 心 理 実 験 は 一 回 の み で あ っ た が 、 刺 激 の 難 易 度 が 課 題 の 出 来 に 与 え る 影 響 を 日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル の 場 合 と で き る だ け 等 しく す る観 点 から、彼 ら も日本 語 モノリ ン ガルと 同 様に 4 名 から成る 6 つのグルー プ に 分 け て 、 各 々 の グ ル ー プ に 異 な る リ ス ト を 使 用 し て 実 験 を 実 施 し た 。 実験 手 続 き も 基 本 的 に は 、 日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル を 被 験 者 と し て 実 施 し た 心 理 実 験の 手 続きと 同じであった 。し かし 、5.1 節で述 べ たよう に本実験の 主要な 目的は日 仏 バ イ リ ン ガ ル の 資 料 を 基 に 形 態 レ ベ ル に お け る 言 語 間 転 移 が 観 察 さ れ る か 否 か を 検 証 し 、 そ れ を 踏 ま え て 言 語 間 転 移 が 生 じ る メ カ ニ ズ ム を 考 察 す る こ とで あ る 。 従 っ て 、 日 仏 バ イ リ ン ガ ル を 対 象 と し た 心 理 実 験 で は 、 日 本 語 に お ける 名 詞複 合 語の内心 性 の理解 を 調査す る 主 要部課題 のみを 実施した。5

こ こ で 再 度 、 主 要 部 課 題 の 手 順 を 確 認 し よ う 。 ま ず 被 験 者 に 複 合 語 の 構 成 素 と な る 二 つ の 絵 を コ ン ピ ュ ー タ ー の 画 面 上 に 順 不 同 で 提 示 し 、 そ れ ぞ れ の 単語 の 名 前 を 答 え る よ う に 指 示 し た 。 そ し て 、 固 定 画 面 に 切 り 替 え た 上 で 提 示 した 二 つ の 単 語 を 併 合 し て 形 成 さ れ る 複 合 語 に つ い て 、 当 該 の 複 合 語 が ど ち ら の単 語 を指 示 している の かを回 答 す るよ う に指示 した。「ひ まわり公園 」を 刺激 とし た 場合 の 実験者と 被 験者の 対 話例を (8) に 示す。6

(8) 実 験 者: (公園の 絵を見 せ て)「 こ れ何か 分 かる?」

被 験者:「公園!」

実 験者: (ひまわ り の絵を 見 せて)「 こ れ何か分 かる?」

被 験者:「ひまわり!」

実 験者: (固定画 面 に切り 替 えて)

「 ひま わり 公園 って 公 園の こ と? それと も ひまわり の こと?」

被 験者:「公園!」

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主 要 部 課 題 の 結 果 に 関 し て 想 定 さ れ る シ ナ リ オ は 、 以 下 の 通 り で あ る 。 日 本 語 優位 で ある日仏 バ イリン ガ ルであ る 被験者 が 、5~6 歳 の段階で日 本語に おけ る 内 心 複 合 語 の 右 側 に 主 要 部 を 持 つ 構 造 を 日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル と 同 程 度 に 理解 し て い る の で あ れ ば 、 彼 ら は 主 要 部 課 題 に お い て 日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル と 有 意差 な く正 答 すること を 予測す る 。

他 方 、 フ ラ ン ス 語 の 入 力 が 日 本 語 に お け る 複 合 語 の 内 心 性 の 理 解 に 影 響 し 、 生 後間 も ない頃か ら の 5~6 年 間 が 相当程 度 の影響 を及ぼしう る年月 ならば、主 要 部 課 題 に お い て 日 仏 バ イ リ ン ガ ル の 正 答 率 は 日 本 語 モ ノ リ ン ガ ル の 正 答 率よ り も有 意 に低くな る ことを 予 測する 。

最後に、DM 仮説 に基づ く 本論文 の 分析が 正 しけれ ば、概して辞書 への機 械的 記 憶 が 関 わ る と 想 定 さ れ る 親 密 度 が 高 い 複 合 語 は 視 覚 情 報 の な い 実 験 デ ザ イン や フラ ン ス語の入 力 の影響 を 受けに く く、正答率が高く なるこ とが予測さ れる。

他 方 、 産 出 ・ 処 理 に 言 語 計 算 が 関 わ る と 想 定 さ れ る 親 密 度 が 低 い 複 合 語 は それ ら の影 響 で正答率 が 低くな る ことを 予 測する 。