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概念・カテゴリーの生成とその特徴

ドキュメント内 著者別名 SUGANO Masako (ページ 141-148)

第 5 章 介護労働の特性と職場上司のリーダー行動

4. 結果:RQ2-②の結果

4.1 概念・カテゴリーの生成とその特徴

RQ2「②介護事業所でリーダーシップを実践し成果を出している優れた上司が、日頃から重視 するリーダー行動はどのようなものだろうか」に関するインタビューの分析の結果、生成された概念 は 9 つあり、3 つのカテゴリーにまとめられた。リーダー行動の概念の一覧と定義を整理したのが 表 5-5である。

定義された概念に対応する対象者の個別の対応関係は、表 5-6 のとおりである。RQ2-①で抽 出された概念と同じものもあるが、該当者が異なるケースがある。「問題への対処」として行使する リーダー行動と、「日頃から重視している」リーダー行動は、重複しつつも、重点の置き方が異なる ものと考えられる。

表 5-5 日頃から重視するリーダー行動の概念一覧と定義

表 5-6 日頃から重視するリーダー行動 概念と対象者の対応

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 11 19 30

人に応じた育て方 6 11 17

厳しさと配慮のバランス考慮 9 10 19

視点の転換促進 6 5 11

常に人に向き合う 8 14 22

感情のコントロール 2 5 7

率先垂範 3 1 4

他者の力を借りる 4 9 13

対話の促進 6 9 15

利用者本位でチームをまとめる ○ 5 0 5

6 5 4 7 3 3 3 5 1 3 5 3 4 1 4 4 3 4 5 4 2 4 2 8 3 2 4 2 6 3 49 64

M (計)

L (計)

概念への該当数(合計)

施設 施設

(計)

個々の育成 47

信頼蓄積 33

カテゴ

リー カテゴリ― 概 念

訪問 訪問

相互作用促進 33

113 人に応じた育て方 部下のタイプや力量に応じた接し方や育て方をする

厳しさと配慮のバランス考慮 指示や厳しさと配慮・優しさ双方のバランスを考えながら部下に対応する

変化志向 視点の転換促進 顧客の側に問題を置かない、自分たちの関わりで結果が変わる、利用者を多面的に知る、立場を置き換 えて考える、なぜを考えるなど、専門職としての見方や意識を転換させようと働きかける

常に人に向き合う 誰に対しても、自ら歩み寄り、向き合い、話を聴き、問題解決を支援するなど、一人ひとりに向き合うことに より信頼関係を築く

感情のコントロール 誰に対しても、常に安定した感情で接する

変化志向 率先垂範 自らが重要だと思ったことは率先垂範で取り組み、部下や関係者に影響を与える

他者の力を借りる リーダー1人が孤軍奮闘するのではなく、チーム内で協力者を作り、力を借りながら物事を進める

対話の促進 職員の意見やアイデア出しを奨励し、チーム内の議論・対話を促進する

利用者本位でチームをまとめる 迷ったり、意見が対立した時に、「利用者のために」という価値を判断基準にして、チームをまとめる 個々の育成

信頼蓄積

カテゴリ― サブカテゴリ― 集約後の概念 定 義

関係志向 相互作用促進

関係志向

関係志向

135

RQ2-①の分析と同様、本文中の≪ ≫はカテゴリーレベル、【 】はサブカテゴリーレベル、

『 』は概念レベル、[ ]は根拠となる主な発話の表記を示す。発話表記の後の( )は発言者 で、表 5-1ならびに表 5-6の対象者№に対応している。生成されたカテゴリーは≪個々の育成≫、

≪信頼蓄積≫、≪相互作用促進≫の3 つであり、以下、カテゴリーごとに内容や特徴を概説する。

(1) 個々の育成

第 1 のカテゴリーである≪個々の育成≫は、『人に応じた育て方』、『厳しさと配慮のバランス考 慮』、『視点の転換促進』の3つの概念から構成された。上司としていかに多様な人材を個々に動 機づけ育てるかに関するリーダー行動の概念群である。

『人に応じた育て方』(M=6、L=11、計 17)は、相手のタイプや力量に合わせた接し方、育て方 をすることである。RQ2-①でも抽出された『個別配慮』と近似する【関係志向】のリーダー行動であ るが、一人ひとりの個性を見極めてそれに対応するという点が強調されている。介護事業所に入 職する人材が年齢、就業動機、学歴、保有資格、意欲、能力・経験など多様で一律の方法が通 用せず、『人材の多様性』と『未熟練性』を指摘する語りが多かった。また技術的不確実性が高く 形式知化しにくいため、マニュアル化や技能研修等の効果は限定的であり、時間と手間はかかる が個々に応じた育成をしていく必要があると認識している様子がうかがわれた。『人に応じた育て 方』は、『職務の不確実性、曖昧性』、および『人材の多様性』と『未熟練性』に対応したリーダー行 動であると考えられる。

[この人はこうなんだな、この人はここなんだなというスイッチを見つけねばと。その人に合った 伝え方で。本当に感覚なんですけど。やはり一人ひとりのヘルパーさんに見せる顔もたぶん、

全部違っていると思います] (訪問M1)

[やってもらうことは同じですけど、それぞれ得意・不得意もあるので分野ごとに時間の掛け方 は人それぞれ違いますね] (訪問L8)

[いろんな資格を持った職員が入っているので、知識に差はあると思うんです。学校を卒業して 入った職員、ヘルパー2 級を取って中途で入ってくる、他の会社から。私みたいな人かもしれ ないけど。あと介護福祉士を持っている職員もいたりというところで。知識に差があるので。その へんでお客さんへのサービスを考えた時に、何が基準になったりとか、職員それぞれがそのへ んが違うので、一人ひとり、合わせて指導しないと。画一的な指導では駄目なんだな、というの は思います。職員のことを本当にまず理解しないといけないな、というのも思っています] (施設 L22)

『厳しさと配慮のバランス考慮』(M=9、L=10、計 19)は、部下を育てていくためには厳しさと配 慮双方が必要であることを認識し、相手によって、あるいは状況によってそのバランスを考慮して 働きかけることである。「厳しさ」というタスク志向の概念も含まれるが、バランスを考慮しているとい う点で相手に対する配慮の視点が強く、【関係志向】であると捉えた。仮に正当な指示・指導であ っても職員に受容されなかったという経験を背景に、厳しさと配慮のバランスを考慮することの重 要性を認識する様子が語られた。

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[現場のヘルパーさんって常に指導者を望んでいるんですよね。しかも自分の言うことを否定し ない。だけれども時々、がつっと言う時は言って、しっかりフォローしてくれる人。(中略)やはり 望んでいるのは指導者なので。自分が指導されたという実感も持ちたいと思っているような気 がするんですね。何でも「いいよ、いいよ」って優しくて笑っているだけのサ責(サービス提供責 任者)には、やはりヘルパーさんがついてこなくて。駄目な時には駄目だけれども、その駄目な ことをやった気持ちはしっかり理解できるよということが言えるサ責さん。介護特有だと思うんで すけど、そこのヘルパーさんが持っている優しさとか福祉の心とか、そこを上手に扱えないと]

(訪問M1)

[内容ははっきり言わないといけないんだと思うんです。言い方をちょっと柔らかく。駄目なこと はちゃんと伝えるんですけど、その言い方です。言い方に気を遣いながらだけど、でも遠慮は しないというところで。頭ごなしに、あれ駄目、これ駄目では駄目なんだと思って。相手の気持 ちを考えて、ものを言うようにしています] (訪問L11)

[人を指導したあとに、褒めるようにしています。多分、怒りっぱなしだと、駄目じゃないですか。

でも、前は怒ったあとも、怒ったというか指導したあともフォローができなかったような気がして。

言いっ放しじゃないですけど。ちゃんと言ったあとは人によりますけど、その人がちゃんとできる ようになったら褒めるというか。「ちゃんとできるじゃん!」みたいな感じで言ってあげないと。怒 られっぱなしだと、何がいいんだかがわかんなくなっているかもしれない気がして。怒った時に は、「できると思うから言うんだよ」とは言いますけど、必ず。あまり人に怒られるというのが慣れ ていない人もいるから。怒り方というか、それも人に合わせてはしたいなと思うように。指導した あとにちゃんとフォローを入れてあげれば、ちゃんと普通にというか、私を避けるようなことはな いというか] (施設M16)

『視点の転換促進』(M=6、L=5、計11)は、一人ひとりに応じて、相手に響くような言葉やアプロ ーチを選択して、専門職としての見方や意識を転換させようと働きかけることである。RQ2-①でも 抽出された概念で、【変化志向】である。指示型のスタイルでは部下の自発性が高まらないことか ら、相手に響くような言葉がけで物の見方を変えることを重視していた。

[「相手の立場になって考える」ということをいつも言っています。自分がされた時のことを考えて いって、という意味です。それを考えてもらって行動してもらっているので。あれやれ、これやれ、

あれ駄目、これ駄目じゃなくて] (訪問L11)

[いつも「自分だったらどう?」っていうことを、今も常日頃必ず言っているんです。「自分だっ たらどう?」、「自分がそんなだったら、自分の大事なお父さん、お母さんが毎日、毎日朝起き て、顔も拭いてもらえない、歯も磨いてもらえない、どう思う?」って。必ずその言葉は投げかけ ています。どんなことでも。「僕だったら嫌です」、「嫌だよね」と。それでしんみりと、話を聞いて くれるようになって。それからは利用者に向ける目が変わってきて。(中略)やはり、「相手の立 場になって考えろ」という感じかな。「もし、そう言われたらどう?」という感じで] (施設L24)

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[共通して私が言うのは、入居者さんのためにここに来ているんだよねっていう話と、あとそれが 面倒くさいって思うんだったら、きっと自分が介護職としてこれからやっていくのに正直難しいよ っていう話はもうしちゃうんですよ。(中略) あとは、こんな、こんなと言っちゃあれですけど、従 来型の施設ってやっぱり家庭的な雰囲気を作るのがすごく難しくて、私がマネジャーになって からのテーマは、家庭的な雰囲気をいかに作り出すかっていうところです。雰囲気だったり、も ちろんケア内容だったりしますけど、それ家だったらやんないよねとかも、たまには使いますね。

あと、普通やらないでしょって。施設の普通と世の中の普通、自分たちの普通が全く違うならそ れは違うよ、とかはよく言いますね] (施設M18)

(2) カテゴリー2:【信頼蓄積】

第 2 のカテゴリーである≪信頼蓄積≫は、『常に人に向き合う』、『感情のコントロール』、『率先 垂範』の3つの概念から構成された。リーダーとしていかに信頼を蓄積して人心と現場情報を集め るかに関する概念群である。金井(1991)によれば「信頼蓄積」は【関係志向】であり、革新指向を 部下に受容させるための触媒となるものである。

『常に人に向き合う』(M=8、L=14、計 22)は、誰に対しても自ら歩み寄り、向き合い、話を聴き、

個別に配慮することにより信頼関係を築くことであり【関係志向】である。過去にそうした配慮がで きなかった時に、部下のマネジメントがうまくいかず、向き合うことの重要性に気付く。そして向き合 うことを意識的に行うことにより、部下との関係性がうまくいくようになったという経験に裏付けられて いることが多く語られた。30名中22名から語りが聞かれ、9つの概念の中で、最も該当数が多か った。

[基本的に私が気を付けているのは、全般のことなんですけど、話しかけられたら自分から行く。

話しかけられた時にはどんなに切羽詰まっていても手を置いて顔を見て話をする。協力をして もらうために、やはり私が日常から人の話をきちっと聞く体制を。いつ何を私に言っても大丈夫 なんだよという信頼関係を作っていく、それをすごく心掛けていますけど] (訪問M1)

[「あなたで大丈夫なんだから、頑張ってね」って伝えて。応えてくれた時には「お疲れさま」と

「ありがとう」ということは、報告をもらった時もそうですし、それは添えますね。それで「あなたの 報告でこうなったわよ」とか、「喜んでいたよ」というようなことも伝えますし。そうするとやはり自分 がやっていることの位置付けがヘルパーもわかるのかなというところですかね。だから言い合え るというか、上にいるわけではなく仲間としてまず自分を位置付けてくれるのかなと思って。何 かの時には責任を取ったり何か代行してやったり頭を下げたりするのはこっちだけれども、普 段は対等なんだよっていう信頼関係っていうか] (訪問L9)

[やはり、頼まれたこととかはきちっとやっていって、信頼関係を持っていくのは心掛けているつ もりなんです。だからそれで、言ってくれる。「私はあなたたちのお母さんなんだよ」という感じで いつも話すんです。「だから何でも言ってね」ということ。だからもし失敗しても怒らずに聞いて あげるという形で、部下に対してはね。やはり部下との信頼関係だと思う] (施設L24)

ドキュメント内 著者別名 SUGANO Masako (ページ 141-148)