第三章 ユーロ圏後発 3 カ国の OCA 指数 1 算出
3.4 結果と仮説の検証そして解釈
第三章 ユーロ圏後発参加3カ国のOCA 指数 53
5)右辺第五項SIZEについては、大きければ大きいほどドイツとの経済規
模格差が小さいことを示している。
第三章 ユーロ圏後発参加3カ国のOCA 指数 54
表3-1 多重回帰式モデルに基づく計算結果(OCA指数)
Year Slovakia Slovenia Cyprus Poland Hungary
2002 0.0580153 0.11780826 0.02892503 0.021019458
2003 0.05793664 0.005732555 0.255896 0.0392604 0.021166025 2004 0,005611238 0.004891147 0.092284 0.023081709 0.019991057 2005 0.001917005 0.006146689 0.311955 0.054997715 0.012868802 2006 0.000141344 0.004791435 0.266942 0.033102784 0.018427481
2007 0.014843158 0.022737412 0.024666207
2008 0.009743961 0.024076527
2009 0.064060247 0.0338932
2010 0.070484505 0.028933236
Czeck Sweden Britain Denmark Average 2002 0.016621 0.012149733 0.003812026 0.001177792 0.032441071 2003 0,027937 0.013251817 0.023142422 0.000486964 0.049423313 2004 0.028659 0.001702479 0.025788058 0.000478769 0.022498606 2005 0.022001685 0.005367749 0.026020291 0.000863579 0.049126501 2006 0.016441496 0.005134768 0.006431653 0.000459648 0.044231724 2007 0.010896998 0.005032726 0.002582956 0.000557763 0.012333869 2008 0.018439383 0.001756023 0.039261368 0.000926376 0.015200606 2009 0.034686493 0.020627621 0.033943942 0.001494509 0.031451002 2010 0.035195718 0.04644342 0.044465976 0.001544527 0.037844487
第三章 ユーロ圏後発参加3カ国のOCA 指数 55 表の数値を見ながら、仮説の検証と数値の解釈を試みるが、ここでは OCA 指数とみなし ている、左辺のSD(e)に焦点を合わせる。このSD値が大きいほど為替レートの変化が 大きいと前述したが、このことは、言い換えれば SD 値が小さいほど、共通通貨圏形成に 向けた条件がより整っているといえる。
1)キプロス
キプロスのユーロ圏入りは 2007年と後発国の中では比較的早かったので SD は4 年 分のデータ(2003-2006)しかないが、本研究で取り上げたほかの後発二カ国(スロバ キアとスロベニア)と比べて値が大きい。さらに、ユーロ圏入りが当分先と見られるチェ コ、ハンガリー、ポーランドの東欧三カ国さえ 2002 年を除いて大きく上回っている。こ れらのことはキプロスについてはユーロ圏入りの準備が Mundell ら 3 人が掲げる条件に 照らし合わせて十分整っていなかったことを示唆し得るとも言えよう。案の定、キプロス は2013年春に金融危機に直面し、EUからの支援を仰がなければならなかった。
2)スロバキア
スロバキアのSDは2002年から 2006年にかけて順調に低下し、2007年にはやや上昇 したものの、同年にはハンガリーとポーランドの東欧2カ国をも大きく下回っている。こ のことはスロバキアの共通通貨圏入りの条件は整っていたことを示唆しうると言えよう。
ただ、チェコに対しては上回った。2007 年にはユーロ圏入りを躊躇しているデンマーク、
スウェーデン、英国の先進西欧三カ国の数字を上回っている。
3)スロベニア
スロベニアも「優等生」である。スロバキアと比べると 2003〜2004 年は下回ったが、
2005~2006年は上回った。2006年では先進3カ国のうちデンマークとスウェーデンを上
回ったが、英国を下回った。一方、東欧三カ国の数字も下回っている。スロベニアのユー ロ圏入りの条件は整っていたと言えよう。
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本章で取り上げたユーロ圏後発三カ国のうち、スロバキアとスロベニアについては 3.1 で立てた仮説が実証された。しかし、キプロスについてはそうではなかった。経済の規模 や産業構造、ロシアなどからの大量の資金流入などの特殊要因が影響したものと推察され る。
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4)デンマーク、英国、スウェーデン
これら三カ国についてはデンマークの数値がコンスタントに最も低い。スウェーデン も2009年まで低水準を維持したが、2010年には東欧三カ国のうちハンガリーとチェコを 上回った。英国はスウェーデンとデンマークをおおむね上回っている。2007 年以降の状 況は、世界金融危機及びユーロ圏危機がデンマーク及びスウ
ェーデンのケースと比べ て
より大きく影響しているのかもしれない。5)チェコ、ハンガリー、ポーランド
第三章 ユーロ圏後発参加3カ国のOCA 指数 56 チェコは 9 カ国の数字がそろっている最後の年である 2006 年時点では西欧三カ国およ びスロベニア、スロバキアを上回ったが、キプロスおよび東欧のハンガリー、ポーランド を下回った。2010 年でみると、デンマークとハンガリーを上回ったが、スウェーデン、
英国、ポーランドを下回った。ハンガリーについては 2006 年時点でユーロ圏未加盟東欧 三カ国の中ではチェコを上回り、ポーランドを下回った。西欧三カ国およびスロベニア、
スロバキアに対しては上回った。2010 年時点ではデンマークを上回ったが、スウェーデ ン、英国、チェコ、ポーランドに対しては下回った。最後にポーランドであるが、2006 年時点では下回ったのは対キプロスだけである。2010 年には西欧三カ国のみならず、チ ェコ、ハンガリーをも上回っている。
ここで本稿執筆時点での東欧諸国のユーロ圏入りの展望について触れる。
東欧諸国の中では既にスロバキアとスロベニアがユーロ圏メンバーとなっているが、そ のほかの EU 諸国では近いうちにマーストリヒト条約(欧州連合条約)が定める、財政赤字 や累積債務の削減などに関するユーロ圏参加基準を満たせるようになるEU加盟国は見当 たらない。そうした中でも東欧の大国ポーランドとチェコは好位置につけているとされる が、両国の政府はここ数年の深刻なユーロ圏危機を目の当たりにして、ユーロ圏の今後を 見定める必要があるとして、様子見に転じたようだ。ポーランド政府高官は、「ユーロ危 機を受けて、外国資金の調達が容易になるなどのユーロ圏参加の便益はフィクションであ ることが判明した」と指摘、早期のユーロ圏入りへ向けた「圧力」は存在しないことを明 らかにした。
両国はマ条約基準のうち財政赤字削減とインフレ率については 3-4 年以内にクリアで きると専門家はみている。
一方、ハンガリーやブルガリア、ルーマニア、クロアチアにとって今後の道のりは遠そ うだ。このうちブルガリアは 4 年以内に、ルーマニアは 18 年にユーロ圏入りしたいとの 希望を表明しており、現実と理想のギャップは大きい。
第三章 ユーロ圏後発参加3カ国のOCA 指数 57 以下が多重回帰モデル式を使った計算結果の概要である。
概要