2.3 セグメントごとの BtoB EC の実態と市場規模
2.3.9 紙・事務用品
2.3.9.1 紙・事務用品〜 BtoB の概要
紙・事務用品の2004 年の狭義の BtoB EC市場規模は 1 兆1,580億円、EC 化率は 6.1%であった。また、従来型EDI等を含めた広義のECについては4兆2,370億円、EC 化率22.3%となった。
これらのEC市場規模には、紙/紙加工品/パルプについて、代理店や卸商が各社個別 の EC サイトで印刷会社等に対し洋紙を販売するもの、また事務用品について、一般の企業 などがECサイト、e-マーケットプレイス等を経由して調達するもの、さらに事務用品メーカーと 代理店、卸商、小売りの間での受発注を行うもの等が含まれている。
事務用品では、企業のインターネット接続が一般化したことにより EC の裾野が広がり、需 要家が間接品をECで調達する取組がさらに進んだため、市場規模が伸びている。
紙/紙加工品/パルプにおいて洋紙の受発注を行うものについては、広義 EC から狭義 ECへの移行は急激には進まないものと見られる。
表 2.3.9-1 「紙・事務用品」BtoB EC市場規模
(単位:億円)
品目
EC化率 EC化率
紙・事務用品 11,580 6.1% 42,370 22.3%
狭義EC市場規模 広義EC市場規模
図 2.3.9-1 「紙・事務用品」
狭義BtoB EC市場規模・経年推移
図 2.3.9-2 「紙・事務用品」
狭義BtoB EC化率・経年推移
(億円)
100 160
1,340 1,970
4,900 11,580
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
0.1%
0.8%
1.1%
2.6%
6.1%
0.1%
0%
1%
2%
3%
4%
5%
6%
7%
1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年
2.3.9.2 紙・事務用品〜 EC の実態
紙・事務用品セグメントは、紙/紙加工品/パルプ(洋紙、板紙、ダンボール、衛生用紙 等)、事務用品(文具等の備品、机類等)のサブセグメントより構成されている。以下にサブセ グメント毎の業界構造やECの実態について記す。
(1) 紙/紙加工品/パルプ
紙/紙加工品/パルプにおいては、製紙メーカーで製造された紙やパルプ製品が、代理 店、卸商を経由し、需要家に流通している。
製紙メーカーが製造する紙は、主に洋紙、板紙、新聞紙、段ボール原紙に分けられる。こ のうち、洋紙のほぼすべてと板紙の一部は、代理店および卸商を経由して需要家へ流通する。
これに対し、新聞紙は製紙メーカーから直接需要家である新聞社へ流通している。段ボール 原紙を加工して製造される段ボールについては、地域の段ボールメーカーから需要家に直 接販売されている。なお、ティッシュペーパーやおむつ等に加工された家庭紙は、繊維/日 用品セグメントの、化粧品/トイレタリー製品のサブセグメントにおける品目として扱っている。
図 2.3.9-3 「紙/紙加工品/パルプ」業界構造の概略と主なEC取組
図2.3.9-3に示す、紙/紙加工品/パルプの業界構造のうち、主なEC取組としては、(a)
製紙メーカーと代理店間で VAN サービスを用いて受発注を行うものと、代理店と卸商間で VAN サービスを用いて受発注を行うものがある。また、(b)製紙メーカーが需要家に紙を直 接販売するECサイト、(c)代理店、卸商と需要家との間で紙の受発注を行うe-マーケットプレ イスや、代理店、卸商によるECサイトの取組がある。
製紙 メーカー
代理店
需要家
(新聞社、
印刷社、
出版社等)
卸商
(a)VANサービス (c)e-マーケットプレイス 代理店・卸商のECサイト
(b)製紙メーカーのECサイト
紙/紙加工品/パルプにおいて、洋紙に関する受発注については製紙メーカーと代理店 間、および代理店と卸商間においてVANサービスが活用され(図2.3.9-3 (a))、このうちほ とんどが全銀BSCプロトコル等を利用する従来型EDIとなっている。洋紙は、市況の変動や 需要の流動性が大きい一方で、生産量を柔軟に変化できない特性がある。そのため、代理店 や卸商が適正な在庫量を確保し、かつ製紙メーカーが無駄な生産を行わないために、各プ レイヤー間で需要情報の交換を行っており、このための情報連携基盤としてEDIが活用され てきた。また、中期的な受発注だけでなく、スポットで洋紙を調達する目的にも、この EDI が 長く活用されている。
VAN サービス事業者では、接続する製紙メーカー、代理店や卸商に対し、インターネット 技術ベースのEDIへの移行を働きかけているものの、各プレイヤーにおいては、既存のシス テムが充分機能していることから、インターネット技術ベースへの移行は進んでいない状況で ある。
製紙メーカーが需要家に洋紙を直接販売するECサイト(図2.3.9-3 (b))や、代理店、卸 商と需要家との間で洋紙の受発注を行う e-マーケットプレイス、および代理店、卸商による ECサイトの取組(図2.3.9-3 (c))は、特に目立った動きを見せてはいないものの、2004年に おいてもわずかであるが取扱額を増やしている。
製紙メーカーの調達における EC 取組については、大手製紙メーカーによる調達コスト低 減に向けた取組として、工場の設備品や薬品等の資材調達にオープンインターネットを活用 する例が見られた。この資材調達に関するEC取引額は、産業関連機器・精密機器セグメント において算入している。なお、原料や燃料については、長期契約による相対取引が中心であ り、電子化は確認されなかった。
(2) 事務用品
事務用品においては、事務用品メーカーが製造した商品が、販社/代理店/卸商、コン ビニエンスストアや文具店等の小売りを介し、需要家へ流通する。近年では街の文具店は減 少をしており、商業統計によると、この20 年で半減している。これは、企業の OA 化に伴う文 具需要の低下、コンビニエンスストア(CVS)等における文具の販売の増加、およびカタログ 通販の台頭等が背景として挙げられる。
図 2.3.9-4 「事務用品」業界構造の概略と主なEC取組
事務用品の主なEC取組としては、図 2.3.9-3に示す業界構造の概略のうち、(a)需要家 が事務用品を購入する際に、メーカー、販社、小売が提供するECサイト、e-マーケットプレイ ス、および需要家側で構築した調達ソリューションを利用するもの、さらに、(b)事務用品メー カー、販社/代理店/卸商、小売間で受発注を行うための業界の VAN サービスや事務用 品メーカーが構築した個別EDIがある。
メーカー、販社、小売が提供するECサイト、e-マーケットプレイスおよび需要家側で構築し た調達ソリューションを利用した事務用品の調達(図 2.3.9-4 (a))は、堅調に利用が拡大し ていることが確認された。これは、企業におけるインターネット接続が一般化したことが要因と 考えられ、中小企業における事務用品調達の電子化の裾野が広がっている。
こうした環境の中、各プレイヤーは、需要家へのEC サイトによる販売を重視し取組を強化 している。事務用品メーカーの中には、自社が提供する EC サイトでありながら、既存の代理 店、卸商や小売りの営業力や与信・決済の機能を活用する等の取組例も見られる。これは、
代理店、卸商や小売りによる需要家に対する既存の取引関係を事務用品メーカーが奪うもの ではなく、代理店、卸商や小売りが自社では導入できない顧客との間の EC チャネルを事務 用品メーカーが提供するものである。代理店、卸商や小売りにとってはコストをかけてECサイ トを構築する必要が無く、事務用品メーカーにとっては、自社製品を優先的に扱うことができ るため、各プレイヤーがメリットを享受できる取組となっている。この取組においては、他の業 界に属する企業が代理店として新たに参画するなど、需要家に対する事務用品の EC 販売 は、間口の拡がりも見られている。
事務用品 メーカー
小売
(CVS、
文具店等)
需要家
(企業、
最終消費者)
販社、
代理店、
卸商
(b)VANサービス、
事務用品メーカー側の個別EDI
(a)メーカー・販社・小売側ECサイト、
e-マーケットプレイス、
需要家側ソリューション
また、大企業を中心に間接品の集中購買に関する取組も進んでおり、自社で電子稟議等 と連動した調達ソリューションを導入する場合や、e-マーケットプレイスが提供する電子稟議等 の機能を活用する例が増えている。社内業務の効率化を行うと共に、調達コストの低減に即 効性が期待できることが、集中購買が進んでいる背景と言える。
事務用品メーカーによる個別EDIや、業界のVANサービスを用いたEC取組(図2.3.9-4
(b))については、インターネット技術ベースを積極的に取り入れる企業が存在する一方、従 来型EDIを継続して利用する企業も見られる。各メーカーとも現状の売上高を確保しながら、
販売や物流にかかわるコスト削減を行うことを課題として捉えており、EC の活用度合いをさら に高める取組を行っている。
ある大手事務用品メーカーでは、従来から自社で EDI を構築し代理店、卸商や小売りに 提供しているなか、代理店や卸商の発注業務のさらなる効率化のために、WEB ベースによ る発注インターフェースを提供した。これは、従来のEDIにおいてカタログを参照し文字ベー スによる発注業務を行っていたものを、WEB 上のカタログを参照し、ショッピングバスケットを 用いた直感的な操作性を可能にしたものである。この取組により、発注側の負担を減らすと共 に、今までEDI を利用していなかった小売り等を誘導し、事務用品メーカーにおけるEC の 活用度合いを高める狙いがある。
このような取組が行われていながら、電話や FAX による受発注は一部残存している。この 大手事務用品メーカーでは、EC の活用度合いを高めることと並行して、残存している電話・
FAXによる販売コストを最小にするべく、コンタクトセンターを集約し、受注業務の効率化を図 っている。
2.3.9.3 紙・事務用品〜市場規模
紙・事務用品の狭義EC市場規模は全体で1兆1,580億円、EC化率は6.1%となってい る。これは2003年の4,900 億円に比べて6,680 億円、136.3%の増加となっている。また、
広義EC市場規模は4兆2,370億円となっている。
当セグメントでは、業界の代表的企業を含む 377 社の情報を元に個社の実績の積上げ、
および個社の実態を推計し市場規模を算出している。