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第 4 章 楕円関数フィルタ 100

4.5 設計例

4.5.3 両端開放共振器

減は確認できず,リプルが大きくなっている.ただし,(a)に示したS11の測定結 果において,シールドを施すことにより,整合も影響を受けて若干の悪化が見ら れることから,シールド後においても同様に整合が得られた場合には,挿入損失 が改善されると考えられる.

場合よりも特性インピーダンスの値を調整する際に自由度が増えるため,本節を 含め以降の節に示す共振器の基本特性から新たに減衰極を実現する設計例ではCr1 によってインバータ部分の特性インピーダンスZg1の値を調整することとし,1,3 段目の共振器部分の特性インピーダンスについては新たに実現する減衰極の周波 数によって調整を行う.したがって,Cr1 = 4.93 pF(Zg1= 100Ω)と設定する.

さらに,阻止レベルSBおよび両端開放共振器を用いることにより実現する減 衰極の周波数f1, f2に対して,楕円関数BPFの特性がどのような影響を受けるか を検討するために,SBとf1, f2を変化させたときの図4.28に示した分布定数線路 による回路構成の特性を図4.29に,そのときの各素子値を表4.5にそれぞれ示す.

-100 -80 -60 -40 -20 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

-0.10 -0.05 0.00

2.4 2.5 2.6

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

f1=1.3 GHz, f2=4.2 GHz f1=1.7 GHz, f2=4.09 GHz f1=1.9 GHz, f2=3.79 GHz

(a) SB = 40 dB

-100 -80 -60 -40 -20 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

f1=1.3 GHz, f2=4.2 GHz f1=1.7 GHz, f2=4.09 GHz f1=1.9 GHz, f2=3.79 GHz

-0.10 -0.05 0.00

2.4 2.5 2.6

(b) SB = 50 dB

-100 -80 -60 -40 -20 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

-0.10 -0.05 0.00

2.4 2.5 2.6

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

f1=1.3 GHz, f2=4.2 GHz f1=1.7 GHz, f2=4.09 GHz f1=1.9 GHz, f2=3.79 GHz

(c) SB = 60 dB

図 4.29: SB及びf1, f2による図4.28に示したフィルタの特性の変化

表 4.5: 各阻止レベルSBにおける図4.28に示したフィルタの素子値 (a)SB = 40 dB

f1 = 1.3 GHz f1 = 1.7 GHz f1 = 1.9 GHz f2 = 4.2 GHz f2 = 4.09 GHz f2 = 3.79 GHz Z11 21.74 Ω 48.25 Ω 88.88 Ω Z12 242.6 Ω 62.85 Ω 81.47 Ω Z21 106.4 Ω 106.4 Ω 106.4 Ω Z22 94.30 Ω 94.30 Ω 94.30 Ω

Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω

l11 57.65 mm 44.06 mm 39.45 mm l12 17.84 mm 18.32 mm 19.80 mm l21 26.65 mm 26.65 mm 26.65 mm l22 33.72 mm 33.72 mm 33.72 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm

(b)SB = 50 dB

f1 = 1.3 GHz f1 = 1.7 GHz f1 = 1.9 GHz f2 = 4.2 GHz f2 = 4.09 GHz f2 = 3.79 GHz Z11 21.34 Ω 47.36 Ω 87.23 Ω Z12 238.1 Ω 61.69 Ω 79.97 Ω Z21 51.11 Ω 51.11 Ω 51.11 Ω Z22 42.68 Ω 42.68 Ω 42.68 Ω

Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω

l11 57.65 mm 44.06 mm 39.45 mm l12 17.84 mm 18.32 mm 19.80 mm l21 25.25 mm 25.25 mm 25.25 mm l22 35.59 mm 35.59 mm 35.59 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm

(c)SB = 60 dB

f1 = 1.3 GHz f1 = 1.7 GHz f1 = 1.9 GHz f2 = 4.2 GHz f2 = 4.09 GHz f2 = 3.79 GHz Z11 21.15 Ω 46.96 Ω 86.49 Ω Z12 236.1 Ω 61.16 Ω 79.28 Ω Z21 25.86 Ω 25.86 Ω 25.86 Ω Z22 19.58 Ω 19.58 Ω 19.58 Ω

Zg1 100 Ω 100 Ω 100 Ω

l11 57.65 mm 44.06 mm 39.45 mm l12 17.84 mm 18.32 mm 19.80 mm l21 23.35 mm 23.35 mm 23.35 mm l22 38.49 mm 38.49 mm 38.49 mm lg1 29.98 mm 29.98 mm 29.98 mm

図4.29に示した特性から通過帯域の特性については帯域幅,リプル幅共にSBf1, f2の影響はほぼ受けていない.また,通過帯域近傍の阻止域について,高域 側ではいずれの場合においてもほぼ設定したSBを実現できており,低域側では f1が高くなるに従って,SBよりも大きな阻止レベルを実現できているが,阻止レ ベルを大きくすると阻止域が狭くなるため,仕様上必要な阻止レベルと阻止帯域 との間でトレードオフを考える必要がある.

さらに,表4.5に示した各素子値からSB = 40 dBの場合,f1 = 1.3 GHz,f2 =

4.2 GHzとしたときに特性インピーダンスが200 Ωを超える大きな値となるものや,

約20Ωと小さな値となるものが存在し,回路パターンとしての実現が困難であるこ とや,これらが混在することによって不連続部の影響が大きくなることが考えられ る.ただし,f1, f2が他の値の場合は素子値としての問題はないが,通過帯域近傍 の阻止域の低域側における阻止レベルが大きくとることができない.SB = 50 dB の場合も同様にf1 = 1.3 GHz,f2 = 4.2 GHzでは非常に大きな値と小さな値の特性 インピーダンスがあり,実現性の点において問題がある.SB = 60 GHzの場合で は,f1, f2の値によらず,20Ωを下回る特性インピーダンスがあり,やはり実現性 の観点から問題がある.

したがって,1段目および3段目の共振器に両端開放共振器を用いた場合にお

いて,阻止レベルと回路の実現性を考慮し,各パラメータをSB = 50 dB,f1 = 1.70 GHz,f2 = 4.09 GHzとする.

また,表4.3に示した諸元の基板に構成したときの回路パターンを図4.30に示 し,電磁界シミュレータにより計算された特性および実測によって得られた特性 を,誤差の検討のために図4.13に示した集中定数回路および図4.28に示した分布 定数線路から得られる特性と併せて図4.31に示す.

Unit : mm

Port 1 Port 2

99.9

67.1

2.3 1.7

18.3 13.3

23.75 23.35

22.9 22.9

32.1

25.7

0.7

3.1

2.6

26.3

図 4.30: 1,3段目の共振器が両端開放共振器の場合の楕円関数BPFの回路パターン

図4.31に示した特性から分布定数線路による特性において,f0付近で楕円関数 特性が得られていることが分かる.また,1段目および3段目の共振器として両端 開放共振器を用いたことによって実現された減衰極f1を1.70 GHzに確認すること ができる.さらに,前項に示した短絡スタブを用いた場合と比較して阻止帯域を インバータの機能範囲を超える範囲にまで広げることができており,通過帯域近 傍の阻止帯域において,低域側では阻止レベルが61.1 dBとなり,高域側では2.90 から3.19 GHzまでの範囲で50 dBとなっている.

他方,電磁界シミュレータにより計算された特性について,通過帯域は中心周波

数が2.46 GHz,中心周波数における挿入損失は1.15 dBとなり,低域側へシフトし

-30 -20 -10 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

|S11| [dB]

Frequency [GHz]

Lumped circuit Distributed circuit EM

(a)シミュレーション結果(S11

-100 -80 -60 -40 -20 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

Lumped circuit Distributed circuit EM

(b)シミュレーション結果(S21

-100 -80 -60 -40 -20 0

1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

|S11|,|S21| [dB]

Frequency [GHz]

|S11|

|S21|

-5 -4 -3 -2 -1 0

2.3 2.4 2.5 2.6

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

(c)測定結果

図 4.31: 1,3段目の共振器が両端開放共振器の場合の楕円関数BPFの回路パター

ンの特性

ている.また通過帯域近傍の阻止域については,通過帯域低域側において2.15 GHz 付近の減衰極が高域側へずれたことによって,減衰量が十分得られず阻止レベル

が56.6 dBとなり,分布定数線路による特性と比較して悪化している.これは分布

定数線路では考慮されていなかった共振器部分とインバータ部分との不連続部分 の影響であると考えられる.回路基板サイズは99.9×67.1 mm2であり,線路長は εrによる波長短縮のために,表4.5(b)に示した値よりも小さな値となっている.

また,実測結果では中心周波数が2.45 GHzであり,中心周波数における挿入損

失は1.12 dBとなった.電磁界シミュレータによる計算結果と比較して2.1 GHz付

近において阻止レベルが悪化しているが通過帯域近傍の阻止帯域において低域側 の阻止レベルは53.8 dBであり,高域側では2.95 から3.25 GHzの範囲で50 dBと なっており,概ね一致した特性となった.

以上の結果から,1段目および3段目に2つの開放スタブによって構成される共 振器を用いた場合,前節で示した短絡スタブを用いた場合と同様に通過帯域近傍

においては楕円関数特性を得ており,さらに楕円関数特性とは独立に実現可能な 減衰極を用いることにより,通過帯域近傍の楕円関数特性に大きな影響を及ぼす ことなく,通過帯域近傍の阻止域において,特に低域側で設定した阻止レベルで

ある50 dBよりも大きな阻止レベルを実現できた.これは,従来の楕円関数特性

では通過帯域近傍の阻止域での阻止レベルは等しくなる必要があったが,特に低 域側の阻止レベルに対して大きな阻止量を必要とするような仕様についても,本 節で示した構成を用いることによって対応可能であることを意味する.

最後に,通過帯域内での放射損失の影響を検討するためにシールドケースを用 いて特性を測定した.このときのシールドケース内に回路パターンを設置したと きの様子を図4.32に,蓋を閉じてシールドを施し,得られた測定結果を図4.33に それぞれ示す.

図 4.32: 1,3段目の共振器が両端開放共振器の場合の測定の様子

図4.32に示した回路パターンは,シールドケースの大きさに合わせるために,

50 Ω伝送線路による励振線を接続している.また,図4.33(b)に示した測定結果か ら,通過帯域内の約3.9 GHzから2.5 GHzの範囲において,シールドを施した場合 に挿入損失が低減していることが確認できる.さらに,(a)からシールド後に整合

-30 -20 -10 0

2.3 2.4 2.5 2.6

|S11| [dB]

Frequency [GHz]

Shielded Unshielded

(a)S11

-10 -9 -8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0

2.3 2.4 2.5 2.6

|S21| [dB]

Frequency [GHz]

Shielded Unshielded

(b)S21

図 4.33: 1,3段目の共振器が両端開放共振器の場合の放射損失の影響

が悪化していることを考慮すると,前節の1段目および3段目に短絡スタブを用 いた場合と比べて,放射損失による影響を大きく受けていると考えられる.