第 4 章 楕円関数フィルタ 100
4.4 スタブ形共振器による構成
4.4.1 楕円関数フィルタとスタブ形共振器
試作,測定し特性の評価を行う.まず,図4.11に示す3段楕円関数フィルタの原 型LPFに周波数変換を適用して得られる3段楕円関数BPFの回路構成を図4.12 に示す.
g 0
g 1 g 2
g 3
g 2 ’ g 4
図 4.11: 3段楕円関数フィルタの原型LPF
G
0C
1L’
21G
4L
1L’
22C’
21C’
22C
3L
3図 4.12: 周波数変換後の3段楕円関数BPF
いま,図4.12に示した楕円関数BPFにおける各素子値は,
L1 = g1R
ω0∆fr (4.97)
C1 = ∆fr
ω0g1R (4.98)
L3 = g3R
ω0∆fr (4.99)
C3 = ∆fr
ω0g3R (4.100)
L21 = g2
ω0∆frR (4.101)
C21 = ∆frR
ω0g2 (4.102)
L22 = g′2R
ω0∆fr (4.103)
C22 = ∆fr
ω0g′2R (4.104)
G0 = G4 = 1
R (4.105)
となる.ただし,ω0 = 2πf0であり,f0[Hz]は中心周波数,∆frは比帯域幅,R[Ω]
はポートの内部抵抗である.
図4.12に示した楕円関数BPFにおいて,2段目はLC直列共振器とLC並列共 振器が直列に接続された構成となっており,この構成は今後スタブ形共振器に置 換することが難しい.そこで,2段目の共振器に対してスタブ形共振器へ置換し易 い等価回路[20]へ変換を行う.変換後の3段楕円関数BPFを図4.13に示す.
図4.13に示した楕円関数BPFにおいて,等価回路変換によって変化した素子
G
0C
1L
21G
4L
1L
22C
21C
22C
3L
3図 4.13: 3段楕円関数BPF
値は
L21 = a(a−e2)
e(ad−ce) (4.106)
C21 = ad−ce
a−e2 (4.107)
L22 = a−e2
c−ed (4.108)
C22 = e(c−ed)
a−e2 (4.109)
a = L′21C21′ L′22C22′ (4.110) b = L′21C21′ +L′22C22′ +L′21C22′ (4.111) c = L′21C21′ C22′ (4.112)
d = C22′ (4.113)
e = b+√
b2−4a
2 (4.114)
と計算される.さらに,Jインバータを用いて回路変換を行う.ただし,変換の際 に計算を簡単にするために対称回路とし,また,変換前後で各共振器の共振周波 数は変化させない,2段目の共振器については値を変更しないという3つの条件を 課す.このとき,得られる回路構成を図4.14に示す.
GA Cr1 Lr21 GB Lr1
Lr22
Cr21 Cr22
Cr3
Lr3
J1 J2 J3 J4
図 4.14: インバータを用いた3段楕円関数BPF
ここで,各素子値は
Lr1 = Lr3 = 1 ω20Cr1
(4.115)
Cr3 = Cr1 (4.116)
Lr21 = L21 (4.117)
Cr21 = C21 (4.118)
Lr22 = L22 (4.119)
Cr22 = C22 (4.120)
Ji =
√Cr1GA
L11G0 (i= 1,2,3,4) (4.121) と計算される.ただし,GA, GB[S]はインバータ変換後の入出力ポートの内部コン ダクタンスである.したがって,Cr1はインバータ変換によって得られた任意に設 定可能な自由度となる.
また,共振器を接続する各Jインバータはλ/4伝送線路を用いて構成すること とし,そのときの伝送線路の特性インピーダンスZgi[Ω]及び線路長lgi[m] (i = 1,2,3,4)は
Zgi = 1 Ji =
√L11G0
Cr1GA (4.122)
lgi = v
4f0 (4.123)
と求められる.ただしv[m/s]は媒質中の光速である.
ここで,図4.14に示した回路をみると,1段目および3段目は同様の構成となっ ており,2段目のみ異なる構成となっている.これは,楕円関数特性を用いたこと
による特徴であり,図2.19に示したようにバターワースやチェビシェフ特性を用 いた場合は全て同じ共振器構成となっている.バターワースおよびチェビシェフ 特性は無極特性で,楕円関数特性は有極特性であることから,図4.14に示した回 路における2段目の共振器によって減衰極が実現されることが分かり,2つのLC 直列共振器の共振周波数が楕円関数特性から要求される減衰極周波数と一致する.