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スタブ形共振器による実現

第 2 章 フィルタの古典設計理論 13

2.2 回路合成

2.2.4 スタブ形共振器による実現

らに,入力アドミタンスがYin =となる条件,すなわち減衰極が発生する条件は l = λ

2i (i= 1,2,· · ·) (2.110) となり,スタブ長lが半波長の整数倍となる周波数において減衰極が発生する.

他方,開放スタブは図2.28(a)に示すように線路端を開放したものであり,開放 スタブの等価回路は図2.28(b)に示すようなLC直列共振器となる.

Z

0

C L

(a) (b)

l

Y

in

Y

in

図 2.28: 短絡スタブ

開放スタブの入力アドミタンスは

Yin= jZ0tanβl (2.111)

である.また,開放スタブの入力アドミタンスがYin= 0となる条件,すなわち共 振条件は

l = λ

2i (i= 1,2,· · ·) (2.112) であり,スタブ長lが半波長の整数倍となる周波数において共振状態となる.さら に,入力アドミタンスがYin=となる条件,すなわち減衰極が発生する条件は

l= λ

4(2i1) (i= 1,2,· · ·) (2.113) となり,スタブ長lが1/4波長の奇数倍となる周波数において減衰極が発生する.

(a) (b) (c)

Z0, l1 Z0, l1

Z0, l2 Z0, l2

Z0, l1

Z0, l2

図 2.29: スタブ形共振器

さらに,これらの開放スタブと短絡スタブを複数個組み合わせることによって,

スタブ形共振器を構成することができる.2つのスタブを組み合わせたスタブ形共 振器を図2.29に示す.

これらのスタブ形共振器は,単なるスタブとは異なり,共振周波数の近傍高域 側,もしくは低域側と高域側の両側に減衰極を実現できるなどの特徴を有する.

以上に示したスタブ形共振器を用いたBPFの実現例を示す.まず,図2.23に示 したBPFにおける1段目の共振器付近に着目し,図2.28(a)に示した開放スタブ に置換を行う.このときの様子を図2.30に示す.

C

r1

L

r1

Z

0

l Y

in

C

g12

C

g2

Y

in

図 2.30: LC並列共振器の開放スタブへの置換

図2.30に示したように,集中定数回路を分布定数線路に置換する際に,図2.23 に含まれていた隣接する負性容量素子を打ち消すための容量素子を伴ったスタブ へと置換する.ここで,置換前の集中定数回路の各素子値は既知であるので,これ らの値から分布定数線路の各素子値を導出しなければならない.短絡スタブに含 まれている未知数は特性インピーダンスZ0とスタブ長lの2つである.したがっ てこれらの値を特定するためには何らかの条件を2つ課す必要がある.そこで,ま ず用いる条件として,まず共振角周波数が一致するための条件を課す.まず,図

2.30(b)に示した置換後の開放スタブの入力アドミタンスは

Yin= 1

jZ0tanβl + jωCg12+ jωCg2 (2.114) となる.したがって,集中定数回路の共振角周波数はBPFの中心角周波数ω0で あるので,

1

Z0tanω0

v l

+ω0(Cg12+Cg2) = 0 (2.115) なる式を得る.

そして,もう一つの条件として,サセプタンススロープパラメータが一致する という条件を課す.サセプタンススロープパラメータbとは,

b = ω0 2

∂ℑ(Yin)

∂ω

ω=ω0

(2.116) で定義されるパラメータであり,入力アドミタンスの虚部,すなわち入力サセプ タンスの共振角周波数ω0付近での角周波数ωに対する変化傾向を表わしている.

そこで,置換前後の回路においてそれぞれサセプタンススロープパラメータを求 めると,

b = ω0 2

∂ω (

ωCr1 1 ωLr1

)

ω=ω0

= ω0 2

(

Cr1+ 1 ω2Lr1

)

ω=ω0

=ω0Cr1 (2.117)

b = ω0

2

∂ω

1 Z0tanω

vl

+ω(Cg12+Cg2)

ω=ω0

= ω0 2

l/v Z0sin2 ω

vl

+Cg12+Cg2

ω=ω0

= ω0 2

l/v Z0sin2 ω0

v l

+Cg12+Cg2

 (2.118)

となる.ただし,ω0 = 1

√Lr1Cr1 を用いた.したがって,これらの式が一致すると の条件から

l/v Z0sin2ω0

v l

+Cg12+Cg2= 2Cr1 (2.119) なる式を得る.したがって,共振条件から得られた式(2.115)とサセプタンススロー プパラメータが一致するとの条件から得られた式(2.119)の2つを連立させ,特性 インピーダンスZ0及びスタブ長lについて解けば未知数を決定することができる.

ただし,これらの連立方程式から解析解を得ることは困難であり,一般に数値解 として特性インピーダンスZ0及びスタブ長lを得る.

ここまでは図2.23に示したBPFの1段目の共振器を例に説明したが,残りの2 段目,3段目の共振器についても同様に短絡スタブへと置換すると,図2.31に示 すように分布定数線路素子であるスタブを用いたBPFが得られる.

In Cg11 Cg2 Cg3 Cg41 Out

Z01 l1

Z02 l2

Z03 l3

図 2.31: 短絡スタブを用いて構成されたBPF